致死量の愛を飲みほして＋

What's Rock?

　音楽についてアリアから教わるなかで、ひとつ大きな疑問が生まれた。

「〈ろっく〉は……なに？」
「音楽の定義でしょうか？ それは難しい質問ですね……私には答えが分かりませんが、」

——セトさんたちなら、答えてくれるのではないでしょうか？

　そのとおりだと思い、夕食の時間で尋ねてみた。それぞれの返答は、

セトから「ビートが効いてる。それと魂を感じる曲だな」
ロキは「シャウトしたくなったらロック！」
ハオロンが「ヘドバンしたくなったらやと思うけどぉ？」

　おのおの順にコメントして、互いに「魂って何？ 抽象的すぎて分かんねェし」「お前のシャウトしたくなったらも同じもんだろ！」「ヘドバンやって。ロックは頭ぶつける勢いで振りまくってるやろ？」わあわあと言い合い始めた。

　隣に座っていたアリアと目を合わせ、（3人とも感覚的だな……）似たような意見を胸に、うなずき合った。
　答えのない答えに、定義の確定をあきらめて、

「……〈ろっく〉は、むずかしい」
「ええ、そのようですね」
「………………」
「お姫様、」
「？」
「よければ、また歌の練習に付き合っていただけますか？」
「はい」

　穏やかな笑顔に、同じく笑い返した。
　知識がなくとも、定義が分からなくとも、

「〈おんがく〉は、たのしい」
「……そうですね」

　応えるアリアの瞳には、なにか別の気持ちが映ったようにも見えたが……それは、すぐに消えた。
　にこりと温かな笑顔を浮かべて、

「イシャンさんも、お誘いしても？」
「はい、もちろん」

　迷いのない答えに、アリアは屈託くったくのない笑顔を浮かべた。

「それは——本当に、とても楽しみです」

　にこやかな空気に、温かな食事。
　一部だけ、

「アリスちゃん、ギターを壊せば〈ロック〉になるんだよ」
「それやわ！」
「あァ、たしかに？」
「ちげぇだろ！」

　いまだロックについて揉もめている。
　発端のふたりは、のんびりと食事を進めていた。