52 / 72
オペラ座の幻影
Chap.5 Sec.6
しおりを挟む
——すぐにまた誘いに行くけど。
たしかに言ってた。言ってたけども。
「……早い」
小犬のような丸い黒眼を前に、わたしは隠すことなく思いっきり息を吐き出していた。にかっと笑う顔はたぶん褒め言葉と捉えている。だめだ、しっかり話さないと何も伝わらない。
「フィリップ様」
「ん?」
「あなた、ちょっと非常識だわ。昨日の今日で当たり前のように我が家のリビングに……しかも普通は先に連絡をよこすのよ。こんな遠方だというのに……なぜ早馬ではなくあなたが先に来るの?」
「早馬に俺が乗ってきてるから?」
「……嘘でしょう? あなたそれでも貴族なの?」
「そのほうが早いだろ? あとから馬車も来るし」
「……あなた、わたしのこと散々バカにしておきながら……」
「——それより、馬車が来たら出掛けるぞ。食事でもして、そのあとオペラ座に。ラウルが出るから、父上があんたと……あいつもどうか、と」
フィリップの目をたどらなくても分かる。わたしの後ろに控えているルネのことを示している。
使用人である彼を、ひょっとするとラウルと旧知の間柄ということで、わざわざ名指しで誘ってくれたのか。
「……どうせ連れてくんだろ?」
ぼやくような言い方に、疑問をいだいてフィリップの顔を見る。彼は以前までルネを見下して「俺が連れてってやるぜ」みたいな感じだったかと思うのだが、今日はやけに乗り気じゃない。連れて行きたくない空気をひしひしと感じる。
——とはいえ、
「……もちろん」
連れて行かないという選択肢は、わたしには無い。
§
「いきなりの誘いで悪かったね……都合がついたようでよかったよ」
「いえ、こちらこそお招きいただきありがとうございます」
オペラ座で再会したタレラン氏は、当然なのだが昨日ぶりなので変わりなく。昨日も上質な服を着ていたが、今夜はより華やかな装いだった。
ウール地の黒に近いブラウンの燕尾服。中の黒のベストには全面に花模様の押し型があしらわれていて、オペラ座の照明を受け美しい光沢を見せている。フィリップも高価な物を着ているなと思うが、父のほうは本人の風格もあってより上等な物に感じられた。本来の貴族としての地位は我が父も変わらないというのに……権力と貧富の差を感じる。いや、父のへそくり宝石のせいなのか。
「ルネ君、といったね? ラウルから君のことも聞いているよ。あの子はずっと君に憧れていたらしい……君が来ることを先ほど伝えたら、とても喜んでいた。来てくれて本当に感謝するよ」
「いいえ……私のような者にお声掛けくださり、恐縮至極でございます」
「そう気を張らなくても構わないからね。ラウルは家族のようなものだから……その友人である君も、家族の友人として扱わせておくれ」
にこやかにルネへと話すタレラン氏に、ちょっと目が飛び出そうになった。
フィリップの顔と、フィリップ父と思えないタレラン氏の顔を目で何度も往復する。親子と思えないこの対応。嘘だ。信じられない。
わたしの目を受けたフィリップがじろりと見返してきた。
「……なんだよ、なんか文句あるか?」
「その返し……自覚はあるのね?」
「うるさい。使用人でも〈黄金のろば〉は別だ。ラウルだって使用人というよりも俺の遊び相手みたいなもんだった」
「そう、その〈黄金のろば〉について……もっとちゃんと訊かないといけないと思ってたのよ……」
「訊かれても答えられないぞ。あれ以上の情報は俺もない」
「……そうなの?」
「ああ。……訊いて回るのもやめとけよ? 俺の勘だけど、俺らのレベルで首を突っこんでいいものじゃない」
「……そんなこと言われると、よけい気になるわ……」
「やめとけ。好奇心は猫をも殺す。分をわきまえないと、厄介事を招くぞ」
「………………」
「……なんだ、その目は」
「あなた……賢いことも言うのね」
「ふん、まぁな。俺は頭もいいからな」
そこも褒め言葉として受け取るのか。
だんだん分かってきたのだが、彼はちょっとあほの子かもしれない。
フィリップに唖然とした気持ちを送りながら、用意されていたイスに座った。
ルネの分まで席が用意されていて、タレラン氏が自身の隣を勧めている。ルネは断りを入れたようだが、押しきられて席についていた。家族の友人と言われようが、一介の使用人であることに変わりはない。立場が上の者の言葉をそう何度も断れるはずがない。
そうしてフィリップがわたしの横に座ると、わたしはタレラン親子に挟まれるかたちとなり……父側は多少の距離があるとしても、なんだか非常に居心地がわるい。
舞台は前と同じでとびきり近く、照明も熱かった。舞台はすでに始まっていたが、もともと社交の場であるオペラを、最初から最後まで集中して見る者なんて少ない。
ラウルが出てくるまではタレラン氏もそこまで興味がないのか、ルネに何か話しかけていた。話の内容は聞こえないが、雰囲気をみるにラウルについて話しているように思う。
「……あなたのお父様、お優しいのね」
「表向きはな」
軽い感想を述べただけだったのだが、フィリップから冷淡な切り返しがきて、ぱっと振り返っていた。こちらに横目を流した彼が、
「あんたの目にどう映ってるのか知らないが、俺の父は優しくなんかない。せいぜい自分の身内だけだ。あんたの父親とは違うぞ」
「……そんな、自分の父親のことを悪く言うなんて……」
言いながら、ふと脳裏にルネの警告がよぎった。
——タレランに気をつけろ。
……すっかり忘れていたが、あれはいつだったか。ピアノを弾いていた? そうだ、ルネに邪魔されて……いや、邪魔されたのは、そのあと……? なんでそんな話になったのだったか……
どうしよう、ぜんぜん思い出せない。
たぶん余計な記憶が思い出すのを妨害している。
悩んでいると、フィリップが鼻で笑った。
「あんたは呑気そうでいいよな」
「いいえ。……わたしは悩みだらけよ」
「……母親のことか?」
「……そうね」
それだけではなかったが、一番は母と言える。
フィリップはしばらく口を閉じていたが、静かに、考えを述べるように、
「……あんたは最善を尽くしてると思う。母親も、あんたの父親に愛されて……幸せそうだった。別れがじきに来るのかもしれないけど……最期まで夫にも娘にも愛されて終われるなら……充分だろ」
思いがけない言葉に、胸が、ぎゅっと掴まれたような痛みが走った。
痛みだと感じたけれど、それはすぐに解けて、じんわりと沁みていく。
泣きそうになったのは、単に言葉が胸を打ったからではなく——
「……フィリップ様、わたし、」
「様は、もういらないな。フィリップでいい」
言いかけた真実が、彼の言葉に遮られて言葉にならなかった。
言わなくてはいけないと——その瞬間は思い立ったのに、そのわずかな時間だけで意思は掻き消えてしまった。
言葉のないわたしに、彼は顔ごと振り返る。
「……どうした?」
「……いえ」
「? ……お、次からやっとラウルの見せ場だな」
長い前置きに飽きあきしていたフィリップは、明るく告げ、彼女の手を取った。
以前はルネがいなくなったことを知ったうえで捕まえたが、もう逃げることはないだろうと思い、軽い気持ちで。
——しかし、フィリップの予想に反して彼女は手を引き抜くと、頑なな声で囁いた。
「……困ります。婚姻の日までは……みだりに触らないで」
「…………これくらい別にいいだろ」
「いいえ、わたしは、厳しく教育されてきたから……受け入れられないわ」
「………………」
フィリップにとって強い貞操観念は望ましいものであったはずだが、いざそれが自分に向くと不満が生まれる。
逃げられた不快感からも何か言おうとしたが、奇妙なこわばりを見せる彼女の表情を目にして、言葉なく前を向いた。そこまで思い詰めた顔をするなんて、自分が悪かっただろうか——と。
照明は暗く落とされ、舞台にはラウルの歌声が響き始める。
子に復讐を促す、夜の王の歌。
『奴に死の苦しみを! ——それができぬなら、お前はもはや我が子ではない』
オペラ座に響きわたるようなラウルの歌声は、聞き慣れたフィリップですら、怖気づくような恐ろしい迫力があった。彼女の肩も小さく震えていて、フィリップはその手を握ってやろうかと思ったが、二度伸ばす気にはならない。
(泣いたりはしないよな……?)
心配ではなく、ルネに挑発された影響で邪な興味をもってして眺めていたのだが、はからずしもその奥で立ち上がったルネのほうに目がいってしまった。
——青白い顔で、今にも倒れそうな。
そのまま外へと出ていってしまった彼に、フィリップがあっけに取られていると……気づいたらしい彼女も、「ルネ……?」と彼のゆくえを追って目を後ろに回し、いないと分かると立ち上がっていた。
「……おい」
フィリップの呼び声など聞こえていない。
前回のこともあって、自分に黙ってルネがいなくなることの不吉さを知っている彼女は、迷いなく追いかけていた。
とっさにフィリップも後を追い——
残るひとりだけが、唇の端で笑っていた。
たしかに言ってた。言ってたけども。
「……早い」
小犬のような丸い黒眼を前に、わたしは隠すことなく思いっきり息を吐き出していた。にかっと笑う顔はたぶん褒め言葉と捉えている。だめだ、しっかり話さないと何も伝わらない。
「フィリップ様」
「ん?」
「あなた、ちょっと非常識だわ。昨日の今日で当たり前のように我が家のリビングに……しかも普通は先に連絡をよこすのよ。こんな遠方だというのに……なぜ早馬ではなくあなたが先に来るの?」
「早馬に俺が乗ってきてるから?」
「……嘘でしょう? あなたそれでも貴族なの?」
「そのほうが早いだろ? あとから馬車も来るし」
「……あなた、わたしのこと散々バカにしておきながら……」
「——それより、馬車が来たら出掛けるぞ。食事でもして、そのあとオペラ座に。ラウルが出るから、父上があんたと……あいつもどうか、と」
フィリップの目をたどらなくても分かる。わたしの後ろに控えているルネのことを示している。
使用人である彼を、ひょっとするとラウルと旧知の間柄ということで、わざわざ名指しで誘ってくれたのか。
「……どうせ連れてくんだろ?」
ぼやくような言い方に、疑問をいだいてフィリップの顔を見る。彼は以前までルネを見下して「俺が連れてってやるぜ」みたいな感じだったかと思うのだが、今日はやけに乗り気じゃない。連れて行きたくない空気をひしひしと感じる。
——とはいえ、
「……もちろん」
連れて行かないという選択肢は、わたしには無い。
§
「いきなりの誘いで悪かったね……都合がついたようでよかったよ」
「いえ、こちらこそお招きいただきありがとうございます」
オペラ座で再会したタレラン氏は、当然なのだが昨日ぶりなので変わりなく。昨日も上質な服を着ていたが、今夜はより華やかな装いだった。
ウール地の黒に近いブラウンの燕尾服。中の黒のベストには全面に花模様の押し型があしらわれていて、オペラ座の照明を受け美しい光沢を見せている。フィリップも高価な物を着ているなと思うが、父のほうは本人の風格もあってより上等な物に感じられた。本来の貴族としての地位は我が父も変わらないというのに……権力と貧富の差を感じる。いや、父のへそくり宝石のせいなのか。
「ルネ君、といったね? ラウルから君のことも聞いているよ。あの子はずっと君に憧れていたらしい……君が来ることを先ほど伝えたら、とても喜んでいた。来てくれて本当に感謝するよ」
「いいえ……私のような者にお声掛けくださり、恐縮至極でございます」
「そう気を張らなくても構わないからね。ラウルは家族のようなものだから……その友人である君も、家族の友人として扱わせておくれ」
にこやかにルネへと話すタレラン氏に、ちょっと目が飛び出そうになった。
フィリップの顔と、フィリップ父と思えないタレラン氏の顔を目で何度も往復する。親子と思えないこの対応。嘘だ。信じられない。
わたしの目を受けたフィリップがじろりと見返してきた。
「……なんだよ、なんか文句あるか?」
「その返し……自覚はあるのね?」
「うるさい。使用人でも〈黄金のろば〉は別だ。ラウルだって使用人というよりも俺の遊び相手みたいなもんだった」
「そう、その〈黄金のろば〉について……もっとちゃんと訊かないといけないと思ってたのよ……」
「訊かれても答えられないぞ。あれ以上の情報は俺もない」
「……そうなの?」
「ああ。……訊いて回るのもやめとけよ? 俺の勘だけど、俺らのレベルで首を突っこんでいいものじゃない」
「……そんなこと言われると、よけい気になるわ……」
「やめとけ。好奇心は猫をも殺す。分をわきまえないと、厄介事を招くぞ」
「………………」
「……なんだ、その目は」
「あなた……賢いことも言うのね」
「ふん、まぁな。俺は頭もいいからな」
そこも褒め言葉として受け取るのか。
だんだん分かってきたのだが、彼はちょっとあほの子かもしれない。
フィリップに唖然とした気持ちを送りながら、用意されていたイスに座った。
ルネの分まで席が用意されていて、タレラン氏が自身の隣を勧めている。ルネは断りを入れたようだが、押しきられて席についていた。家族の友人と言われようが、一介の使用人であることに変わりはない。立場が上の者の言葉をそう何度も断れるはずがない。
そうしてフィリップがわたしの横に座ると、わたしはタレラン親子に挟まれるかたちとなり……父側は多少の距離があるとしても、なんだか非常に居心地がわるい。
舞台は前と同じでとびきり近く、照明も熱かった。舞台はすでに始まっていたが、もともと社交の場であるオペラを、最初から最後まで集中して見る者なんて少ない。
ラウルが出てくるまではタレラン氏もそこまで興味がないのか、ルネに何か話しかけていた。話の内容は聞こえないが、雰囲気をみるにラウルについて話しているように思う。
「……あなたのお父様、お優しいのね」
「表向きはな」
軽い感想を述べただけだったのだが、フィリップから冷淡な切り返しがきて、ぱっと振り返っていた。こちらに横目を流した彼が、
「あんたの目にどう映ってるのか知らないが、俺の父は優しくなんかない。せいぜい自分の身内だけだ。あんたの父親とは違うぞ」
「……そんな、自分の父親のことを悪く言うなんて……」
言いながら、ふと脳裏にルネの警告がよぎった。
——タレランに気をつけろ。
……すっかり忘れていたが、あれはいつだったか。ピアノを弾いていた? そうだ、ルネに邪魔されて……いや、邪魔されたのは、そのあと……? なんでそんな話になったのだったか……
どうしよう、ぜんぜん思い出せない。
たぶん余計な記憶が思い出すのを妨害している。
悩んでいると、フィリップが鼻で笑った。
「あんたは呑気そうでいいよな」
「いいえ。……わたしは悩みだらけよ」
「……母親のことか?」
「……そうね」
それだけではなかったが、一番は母と言える。
フィリップはしばらく口を閉じていたが、静かに、考えを述べるように、
「……あんたは最善を尽くしてると思う。母親も、あんたの父親に愛されて……幸せそうだった。別れがじきに来るのかもしれないけど……最期まで夫にも娘にも愛されて終われるなら……充分だろ」
思いがけない言葉に、胸が、ぎゅっと掴まれたような痛みが走った。
痛みだと感じたけれど、それはすぐに解けて、じんわりと沁みていく。
泣きそうになったのは、単に言葉が胸を打ったからではなく——
「……フィリップ様、わたし、」
「様は、もういらないな。フィリップでいい」
言いかけた真実が、彼の言葉に遮られて言葉にならなかった。
言わなくてはいけないと——その瞬間は思い立ったのに、そのわずかな時間だけで意思は掻き消えてしまった。
言葉のないわたしに、彼は顔ごと振り返る。
「……どうした?」
「……いえ」
「? ……お、次からやっとラウルの見せ場だな」
長い前置きに飽きあきしていたフィリップは、明るく告げ、彼女の手を取った。
以前はルネがいなくなったことを知ったうえで捕まえたが、もう逃げることはないだろうと思い、軽い気持ちで。
——しかし、フィリップの予想に反して彼女は手を引き抜くと、頑なな声で囁いた。
「……困ります。婚姻の日までは……みだりに触らないで」
「…………これくらい別にいいだろ」
「いいえ、わたしは、厳しく教育されてきたから……受け入れられないわ」
「………………」
フィリップにとって強い貞操観念は望ましいものであったはずだが、いざそれが自分に向くと不満が生まれる。
逃げられた不快感からも何か言おうとしたが、奇妙なこわばりを見せる彼女の表情を目にして、言葉なく前を向いた。そこまで思い詰めた顔をするなんて、自分が悪かっただろうか——と。
照明は暗く落とされ、舞台にはラウルの歌声が響き始める。
子に復讐を促す、夜の王の歌。
『奴に死の苦しみを! ——それができぬなら、お前はもはや我が子ではない』
オペラ座に響きわたるようなラウルの歌声は、聞き慣れたフィリップですら、怖気づくような恐ろしい迫力があった。彼女の肩も小さく震えていて、フィリップはその手を握ってやろうかと思ったが、二度伸ばす気にはならない。
(泣いたりはしないよな……?)
心配ではなく、ルネに挑発された影響で邪な興味をもってして眺めていたのだが、はからずしもその奥で立ち上がったルネのほうに目がいってしまった。
——青白い顔で、今にも倒れそうな。
そのまま外へと出ていってしまった彼に、フィリップがあっけに取られていると……気づいたらしい彼女も、「ルネ……?」と彼のゆくえを追って目を後ろに回し、いないと分かると立ち上がっていた。
「……おい」
フィリップの呼び声など聞こえていない。
前回のこともあって、自分に黙ってルネがいなくなることの不吉さを知っている彼女は、迷いなく追いかけていた。
とっさにフィリップも後を追い——
残るひとりだけが、唇の端で笑っていた。
21
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

専属執事は愛するお嬢様を手に入れたい
鳥花風星
恋愛
結婚は待遇や世間体のためであり結婚しても恋愛が自由という国で、一途に思い合う結婚を思い描く令嬢エリス。その理想のせいで五度も婚約破棄をされている。
執事であるディルへの思いを断ち切りたくて結婚を急ぐが、そんなエリスにディルは「自分が貴族の令息だったならすぐにでも結婚して一途に思うのに」と本気とも冗談ともとれることを言う。
そんなある日、エリスの父親がだまされて財産を失いかける。そんな父親にとある貴族が「自分の息子と結婚してくれれば家はつぶれない」と話を持ち掛けてきた。愛のない結婚をさせられそうになるエリスに、ディルがとった行動とは。
専属執事とご令嬢の身分差ハッピーエンドラブストーリー。
◇他サイトにも掲載済み作品です。
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる