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ハロー・マイ・クラスメイツ
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ヒナが教室についたときには、授業開始まで残り5分を切っていた。
ホームルームはない。あるときもあるが、週に一度きり。通常は諸連絡がブレス端末に回ってくる。出席もブレス端末でカウントされている。
冗談のつもりが、ほんとに遅刻になるとこだったなぁ……なんて気楽に話していたヒナは、
「おはよー……」
開いたドア先の光景に硬直した。背後にいたカミヤハヤトも止まった。
「おはよう」
クラスメイトが揃う教室に、なめらかな声が響く。ラスボスみたいな存在感で教卓にいたのは、
「さ、サクラ先生っ……おはようございます!」
美しい顔で微笑む、ぼくらの担任。たるんでいた背筋が伸びた。
(早っ。いつも授業3分前きっかりに来るのに、いつからいたんだっ?)
動揺して入り口でもたつくヒナから、サクラの目はするりと背後に流れた。
「狼谷さんも、おはよう」
「……おはよーございます」
「二人で寮から登校してきたのか? クラス仲がよくて何よりだね」
「いや、」
「——鬼ごっこをするほど仲がよい。だが、今後はもう少し気をつけなさい。昨日の鴨居さんの怪我について、注意喚起の連絡が回っているね? 職員会議で議題になったため、私からも口頭で話をしようと思ってね。二人とも、席に着きなさい」
「……はい」
スクールバッグの持ち手を握りしめて、びくびくと自席についた。
座る前に、奥の琉夏と目が合った。
(アンタなんでハヤトと来てンの?)
心を読めたので、フッと不敵に笑っておいた。そこだけ強気に。
「……さて、全員が揃ったね。始めようか」
着席して、電子黒板に映る文字を見る。敷地内で走り回る際の注意点。
(これブレス端末に連絡来てたやつ……同じこと聞かされるのか……)
うんざりな感情をおくびにも出さず、ヒナはサクラを見る。
真面目な生徒としてがんばる。おれは優等生。
いい子スイッチを入れてキリリとしていると、目を合わせたサクラがにこやかな顔で、
「この社会で、暴力が認められていないことは知っているな?」
……うん?
つい、自然と首をかしげていた。
電子黒板に映る話と、サクラの口から出てくる話に、大いなる齟齬が。
「ここでいう暴力とは、他者に対する身体的、精神的な害を引き起こす行為を指し、法律や社会的規範に反するものを——」
噛み合わずに展開していく講義に、だんだんと理解が及んでいく。冷や汗が、じわり。
左後ろを横目に振り返ってみる。鬼ごっこ仲間の3人も、察した顔で押し黙っている。
始まった先生のお話は、保護者に向けて『トラブルに対応しましたよ』と言い張るための些末な注意喚起ではなく、純然たる説教。
しかも、喧嘩があった前提の。
「暴力というものが、法治社会においていかに稚拙な手段か教えよう。——とくに狼谷さん、鴨居さん。よそ見せず、しっかりと聞くように」
(おれの名前が入ってる!)
微笑するサクラの目は笑っていない。
優しい声でこんこんと湧き出る説教に、ヒナは耳が痛い思いで身を縮めていた。
無関係のクラスメイトには、心のなかで謝罪を捧げるしかなかった。
ホームルームはない。あるときもあるが、週に一度きり。通常は諸連絡がブレス端末に回ってくる。出席もブレス端末でカウントされている。
冗談のつもりが、ほんとに遅刻になるとこだったなぁ……なんて気楽に話していたヒナは、
「おはよー……」
開いたドア先の光景に硬直した。背後にいたカミヤハヤトも止まった。
「おはよう」
クラスメイトが揃う教室に、なめらかな声が響く。ラスボスみたいな存在感で教卓にいたのは、
「さ、サクラ先生っ……おはようございます!」
美しい顔で微笑む、ぼくらの担任。たるんでいた背筋が伸びた。
(早っ。いつも授業3分前きっかりに来るのに、いつからいたんだっ?)
動揺して入り口でもたつくヒナから、サクラの目はするりと背後に流れた。
「狼谷さんも、おはよう」
「……おはよーございます」
「二人で寮から登校してきたのか? クラス仲がよくて何よりだね」
「いや、」
「——鬼ごっこをするほど仲がよい。だが、今後はもう少し気をつけなさい。昨日の鴨居さんの怪我について、注意喚起の連絡が回っているね? 職員会議で議題になったため、私からも口頭で話をしようと思ってね。二人とも、席に着きなさい」
「……はい」
スクールバッグの持ち手を握りしめて、びくびくと自席についた。
座る前に、奥の琉夏と目が合った。
(アンタなんでハヤトと来てンの?)
心を読めたので、フッと不敵に笑っておいた。そこだけ強気に。
「……さて、全員が揃ったね。始めようか」
着席して、電子黒板に映る文字を見る。敷地内で走り回る際の注意点。
(これブレス端末に連絡来てたやつ……同じこと聞かされるのか……)
うんざりな感情をおくびにも出さず、ヒナはサクラを見る。
真面目な生徒としてがんばる。おれは優等生。
いい子スイッチを入れてキリリとしていると、目を合わせたサクラがにこやかな顔で、
「この社会で、暴力が認められていないことは知っているな?」
……うん?
つい、自然と首をかしげていた。
電子黒板に映る話と、サクラの口から出てくる話に、大いなる齟齬が。
「ここでいう暴力とは、他者に対する身体的、精神的な害を引き起こす行為を指し、法律や社会的規範に反するものを——」
噛み合わずに展開していく講義に、だんだんと理解が及んでいく。冷や汗が、じわり。
左後ろを横目に振り返ってみる。鬼ごっこ仲間の3人も、察した顔で押し黙っている。
始まった先生のお話は、保護者に向けて『トラブルに対応しましたよ』と言い張るための些末な注意喚起ではなく、純然たる説教。
しかも、喧嘩があった前提の。
「暴力というものが、法治社会においていかに稚拙な手段か教えよう。——とくに狼谷さん、鴨居さん。よそ見せず、しっかりと聞くように」
(おれの名前が入ってる!)
微笑するサクラの目は笑っていない。
優しい声でこんこんと湧き出る説教に、ヒナは耳が痛い思いで身を縮めていた。
無関係のクラスメイトには、心のなかで謝罪を捧げるしかなかった。
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