【R18】勿忘草 Forget-Me-Not

ep.2 プリンセス・シンドローム

Looking-Glass flamingo Fin.

　物語の終わりなんて、ハッピーエンディングじゃないなら、聞きたくない。
　——だから、私たちのラストは話したくない。私目線で紡がれる物語は、私を悲劇のヒロインのように語ってしまう。
　私はロキが主人公であってほしいし、彼を悪役にしたくない。彼を主人公とした、彼の目線からの私だけが残っていたら……それでいい。彼は頭がいいって言ってたし、私のことを忘れないでいてくれる。——きっと。

　思い出に泣きたくなるとき、正しい選択をしたと心に言い聞かせてるけど……ときおり後悔してしまうから、優しくて性格のいいコにはやっぱりなれないなって思う。物語の主人公やプリンセスは、ハッピーエンディングが待ってるから、あんなに慈悲深くいられるのかな。自分を犠牲にしても、後悔なんてしないよね？

　ロキにも、いつか本物のヒロインが現れる。それは私じゃなくて、もっと美人で頭もよくて、彼と並んでも見劣りしない完璧なひと。そしたら、私も、諦めがつく……はず。それか、できることなら、誰のものにもならないで——。

　残されたガラスの靴なんて、砕けてしまえばいい。
　王子様は孤独なまま。でも、それを悲しいと思う心も未完成。
　そんな物語の結末を、心の奥底で望んでる。

　どうか、いびつなハートの片割れを、見つけないでほしい。
　鏡に映った自分自身で、ハートを完成させてしまうような——そんなひとでいて。
　私のものにならなくていいから、誰のものにもならないで——。


　幼い私の願いは、近い未来で、あなたに災難をかけてしまう。
　……ごめんなさい。でも、あなたには、あなたを護ろうとしてくれるひとが沢山いるから……赦ゆるされるかな。
　たったひとりくらい——あなたを貶おとしめようとしても。