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42.成功報酬
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アマンダお姉様を見送ってイグレシアスに戻る。カーラとユージーンはアカデミーの二年目が始まるまではラッシュブルックで過ごし、婚約の報告やその他諸々の後処理をするそう。その中にはアマンダお姉様にあることないこと吹聴した、サーティス家の令嬢のことも含まれているそうだ。
「兄の婚約者候補らしいけどな。俺はそれを許すつもりはないぜ」
意地悪そうに言ったユージーン。普段は割りとクールでポーカーフェースなのに、カーラのことが絡むと表情豊かよね。前の扉の中でエマと付き合っているときはこんな表情しなかったから、やっぱり無理して付き合っていたんだと実感する。
レジナルドとアナスタシア妃、それにマシューとサイモンもそれぞれ自国に戻っていて、二年目が始まるまでは私も落ち着いて過ごせそう……そうだ、シアーラのことを忘れていたわ。彼女の協力なしに今回の事件は解決しなかっただろうから、成功報酬はきっちり支払わなければ。
彼女はイーサクルの古文書さえ見せてくれれば報酬はいらないと言っていたけれど、私に協力して事件解決に大いに貢献したと言うことでお父様から報奨が。謁見の間に彼女を招き、結構な額の金貨と、そして王家に伝わるあるものが贈られた。
「そなたは古代イーサクルに造形が深いと聞く。エマに協力して事件解決に貢献したことを称し、これを遣わそう」
私も見たことなかったけど、それは渋い銀色に輝く杖。杖と言っても長いアレではなく、魔法使いが使う五十センチぐらいのもの。おー、この世界でも昔はあんなものを使っていたのか! 私に持たせてくれたら、絶対『エクスペクトー!』とかやってただろうな。まあ、何も起きないんだけど。
「この様なものを宜しいのですか?」
「イグレシアスはもう十分平和ゆえイーサクルではなくイーサラムが主流だ。しかし今後も今回の様なことがあるやもしれん。そなたがその杖を以て今後も正義を為さんこと期待しておる」
「はっ! 拝命致しました」
それってもう、宮廷魔導師じゃん! ちょっとカッコいいんですけど。
杖をもらって上機嫌のシアーラ。顔には出さない様にしてるみたいだけど、会話してる端々で彼女のテンションが上がっているのが分かる。そんな彼女を連れて蔵書室へ。人払いをしたあといつもの壁際に行って、秘密の部屋への通路を開ける。
「こんな通路が!?」
「知ってるのは私とあなただけだから、内緒よ」
通路を進んで秘密の部屋に入ると、私の研究成果などが机の上に散らかっているのが目に入ったのか、そちらに寄っていくシアーラ。
「これはあのボード?」
「そうよ。イーサグラムの小型化をここでやっていたの。今は別のことを研究中だけど」
「あなた、本当に王女様なの?」
「表の顔はね」
冗談を言い合いながら奥の本棚へ。結構な数の本が並んでいるそこは、現状私もノータッチ。数冊はチラッっと中身も見てみたけど全然分からなかった。
「ここにあなたのお目当ての本があるかは分からないけど、イーサ関係のかなり古い本が集まってるのは確かよ」
「……」
恐る恐る一冊を手に取り開くシアーラ。途端に表情がパッと明るくなり、もう笑みが隠せない感じに。食い入る様に読んでいたかと思うと、別の本、また別の本と何冊も手に取り、少し震えている様にすら見える。
「これ、全部見てもいいの!?」
「もちろん。好きなだけどうぞ……って言うか、あなたもそんな顔するのね」
「ハッ!」
普段の彼女からは考えられない、キラキラした目の緩んだ表情。いつものミステリアスさはどこに行ったの? どこかあどけない彼女のそんな表情を見て、彼女に対する親近感が一気にレベルアップ! その顔はオタクが目的の薄い本を手に入れた時の顔よ! 私の中でシアーラは魔法オタク確定だわ。
「ああ、もうここに住み込みたいぐらいだわ!」
「住めばいいじゃない。流石にこの部屋は無理だけど、王宮内に部屋を準備してあげるぐらいならできるわよ」
「ホント!? いや、でも、一介の占い師が王宮に住むのは変よね」
まあ、それもそうか。じゃあ宮廷魔導師団長……はちょっと違う気もするし、バーバラの後釜のメイドってわけにもいかないし、そもそも彼女とは同じアカデミーのクラスメイトとして対等な立場の方がいいなあ。えーっと、じゃあ家庭教師的なコンサル的な何かかな。
「じゃあ、私専属の相談役に任命します。表向きはアカデミーの勉強に対するアドバイスをするってことで」
「いいの!?」
「ええ。それでは改めてよろしく、シアーラ」
「はい、姫様。拝命致します」
こうしてシアーラは私の相談役として王宮に住み込むことに。部屋も用意されて蔵書室及び秘密の部屋への出入りも許可する。彼女のオタク性も見いだせたし、これからはもっと親しく付き合えそうだわ。カーラを呼んで女性同士お茶するのもいいわね。とにかくこれからも宜しく、シアーラ。
そうそう。余談だけどどこから漏れたのか、その後シアーラが王都でも話題になっていた占い店の占い師だと王宮内に広まって、時々こっそり彼女の元に占ってもらいに来る人が増えたそう。本人も楽しそうだしまあいいんだけど、どこから漏れたかなあ。恐らくレオ辺りでは? と思っているんだけど……その内問い詰めてやろう。
「兄の婚約者候補らしいけどな。俺はそれを許すつもりはないぜ」
意地悪そうに言ったユージーン。普段は割りとクールでポーカーフェースなのに、カーラのことが絡むと表情豊かよね。前の扉の中でエマと付き合っているときはこんな表情しなかったから、やっぱり無理して付き合っていたんだと実感する。
レジナルドとアナスタシア妃、それにマシューとサイモンもそれぞれ自国に戻っていて、二年目が始まるまでは私も落ち着いて過ごせそう……そうだ、シアーラのことを忘れていたわ。彼女の協力なしに今回の事件は解決しなかっただろうから、成功報酬はきっちり支払わなければ。
彼女はイーサクルの古文書さえ見せてくれれば報酬はいらないと言っていたけれど、私に協力して事件解決に大いに貢献したと言うことでお父様から報奨が。謁見の間に彼女を招き、結構な額の金貨と、そして王家に伝わるあるものが贈られた。
「そなたは古代イーサクルに造形が深いと聞く。エマに協力して事件解決に貢献したことを称し、これを遣わそう」
私も見たことなかったけど、それは渋い銀色に輝く杖。杖と言っても長いアレではなく、魔法使いが使う五十センチぐらいのもの。おー、この世界でも昔はあんなものを使っていたのか! 私に持たせてくれたら、絶対『エクスペクトー!』とかやってただろうな。まあ、何も起きないんだけど。
「この様なものを宜しいのですか?」
「イグレシアスはもう十分平和ゆえイーサクルではなくイーサラムが主流だ。しかし今後も今回の様なことがあるやもしれん。そなたがその杖を以て今後も正義を為さんこと期待しておる」
「はっ! 拝命致しました」
それってもう、宮廷魔導師じゃん! ちょっとカッコいいんですけど。
杖をもらって上機嫌のシアーラ。顔には出さない様にしてるみたいだけど、会話してる端々で彼女のテンションが上がっているのが分かる。そんな彼女を連れて蔵書室へ。人払いをしたあといつもの壁際に行って、秘密の部屋への通路を開ける。
「こんな通路が!?」
「知ってるのは私とあなただけだから、内緒よ」
通路を進んで秘密の部屋に入ると、私の研究成果などが机の上に散らかっているのが目に入ったのか、そちらに寄っていくシアーラ。
「これはあのボード?」
「そうよ。イーサグラムの小型化をここでやっていたの。今は別のことを研究中だけど」
「あなた、本当に王女様なの?」
「表の顔はね」
冗談を言い合いながら奥の本棚へ。結構な数の本が並んでいるそこは、現状私もノータッチ。数冊はチラッっと中身も見てみたけど全然分からなかった。
「ここにあなたのお目当ての本があるかは分からないけど、イーサ関係のかなり古い本が集まってるのは確かよ」
「……」
恐る恐る一冊を手に取り開くシアーラ。途端に表情がパッと明るくなり、もう笑みが隠せない感じに。食い入る様に読んでいたかと思うと、別の本、また別の本と何冊も手に取り、少し震えている様にすら見える。
「これ、全部見てもいいの!?」
「もちろん。好きなだけどうぞ……って言うか、あなたもそんな顔するのね」
「ハッ!」
普段の彼女からは考えられない、キラキラした目の緩んだ表情。いつものミステリアスさはどこに行ったの? どこかあどけない彼女のそんな表情を見て、彼女に対する親近感が一気にレベルアップ! その顔はオタクが目的の薄い本を手に入れた時の顔よ! 私の中でシアーラは魔法オタク確定だわ。
「ああ、もうここに住み込みたいぐらいだわ!」
「住めばいいじゃない。流石にこの部屋は無理だけど、王宮内に部屋を準備してあげるぐらいならできるわよ」
「ホント!? いや、でも、一介の占い師が王宮に住むのは変よね」
まあ、それもそうか。じゃあ宮廷魔導師団長……はちょっと違う気もするし、バーバラの後釜のメイドってわけにもいかないし、そもそも彼女とは同じアカデミーのクラスメイトとして対等な立場の方がいいなあ。えーっと、じゃあ家庭教師的なコンサル的な何かかな。
「じゃあ、私専属の相談役に任命します。表向きはアカデミーの勉強に対するアドバイスをするってことで」
「いいの!?」
「ええ。それでは改めてよろしく、シアーラ」
「はい、姫様。拝命致します」
こうしてシアーラは私の相談役として王宮に住み込むことに。部屋も用意されて蔵書室及び秘密の部屋への出入りも許可する。彼女のオタク性も見いだせたし、これからはもっと親しく付き合えそうだわ。カーラを呼んで女性同士お茶するのもいいわね。とにかくこれからも宜しく、シアーラ。
そうそう。余談だけどどこから漏れたのか、その後シアーラが王都でも話題になっていた占い店の占い師だと王宮内に広まって、時々こっそり彼女の元に占ってもらいに来る人が増えたそう。本人も楽しそうだしまあいいんだけど、どこから漏れたかなあ。恐らくレオ辺りでは? と思っているんだけど……その内問い詰めてやろう。
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