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26.王宮庭園
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浮遊スケボーの構想は順調だわ。まだ工房から連絡はないけれど、あれだけの技術がある職人が揃ってるんだからきっとなんとかなるはず。設計諸々は王宮の蔵書室……の奥にある秘密の部屋で進めるとして、アカデミーでの勉強も手抜きはできないわね。
アカデミーの日々は平和そのもので、自分が命を狙われているかも知れないことを忘れそうなほど。やっぱり興味のある分野の勉強は楽しいし、リケジョというかオタク魂に火が付いてしまいそうだわ。ただ王女エマとしてあんまり熱中してるところを皆に見せるわけにもいかないので、アカデミー構内では程々に。
三人の王子やカーラ、サイモンもイグレシアスでの生活のペースが掴めてきた様で、それぞれがキャンパスライフをエンジョイしているのが分かる。分かるわよ、王子や王女は城にいれば身分相応の生活態度を求められる存在。気が休まる暇もあまりないんだから。そりゃ他国でアカデミーの学生やっていれば、色々ストレスからも開放されるでしょう。
中でもイキイキしているのがマシュー王子。生活時間をほぼ全て研究や勉強に使えるとあって、それはもう楽しそう。アカデミーでの成績も良く、周りに友達も多い。マシュー王子は無意識に母性を刺激してくるものだから、前の扉の中でエマがそうであった様に彼に惹かれる女性も多く、ちょっとお姉さんタイプの女生徒たちのお気に入りの様子。それも良く分かるわよ!
ゲームの中でレジナルドとの恋愛は相思相愛感が一番強くて抱きしめて守られている感じ。ユージーンとの恋愛はグイグイ攻められて、クラクラしながらもちょっと危険な火遊びをしている感じ。そしてマシューとの恋愛は唯一エマの方から積極的にアピールして彼との距離を縮めていく感じなのよね。そういう意味では三者三様の恋愛を楽しめた訳だから、クソゲー認定は違う気もするけど、手抜きなところも目立ったから仕方ない。
この世界線では私の方からグイグイいくことはしないから、マシューとの関係はあまり親密にならないかな? と思っていたある日、マシューの方から声を掛けてきた。
「エマ、実はお願いがあるんだけど……」
「何かしら?」
「イグレシアスの王宮には立派な庭園があって、珍しい草花が沢山あるって聞いたんだけど」
「そうですわね。花が好きなお母様の意向でね、王宮の裏手に大きな庭園がありますわ」
前の扉の中でフォーセット王国に訪れた時に見た王立の植物園も凄かったが、イグレシアス王宮の庭園もなかなかのもの。あくまでも庭なんだけど、花好きの王妃が色々と草花や木を植えている。昔はエマの遊び場所だったけれど、最近ではちょっとした散歩コースの様になっていたわね。私がエマの中に入ってからは行ってなかったかな?
「マシューは植物に興味があるみたいだから、楽しめるんじゃないかしら? 宜しければ招待しますわ」
「ホント!?」
パッと明るくなるマシューの顔と、そしてそれとは反対に後ろで話を聞いていたサイモンは不服そう。あからさまだな、おい。しかしここで彼の反感をかって後ろから刺されたらたまったものではない。私は知ってるのよ、あなたたち二人がBLに片足を突っ込んでるってことをね!
「サイモンも一緒にどう? 滅多に入れる場所ではないし、城の中もレオが案内してくれるわよ。ねえ、レオ」
「ああ、いいぜ。俺の親父は騎士団長なんだ。サイモンを紹介したいし」
「ホントか!? 行く、行く!」
フッ、チョロいわね。やっぱり私の記憶が有るのと無いのとでは、危機回避スキルが段違いなのよ。エマはちょっと世間知らずなところもあったから。
「もう一人、最近知り合った薬草に興味がある人がいるんだけど、一緒にいいかな?」
「もちろん。庭園に薬草があるかどうか分からないけど、沢山の人に楽しんでもらえるならお母様もきっと喜ぶわ」
「ありがとう!」
幼い子どもの様な笑顔にちょっとキュンとする。いや、ダメダメ。あれは結果的には悪魔の微笑みなのよ。ここで心を奪われたら待っているのはバッドエンド。適度な距離を保つのを忘れるな、私!
早い方が良いだろうという事で、週末に三人を招待することに。当日、レオと王宮で待っているとやってきたフォーセットの馬車。先ずサイモンが降りてきてその次にマシュー。そして最後に降りてきたのは、女性だった! スラッとした黒髪長髪の美人……シアーラ・マクニース!? マシューの友達って彼女だったの!?
「エマ、今日は有り難う。こちらはシアーラ。同じクラスだから君も知ってるよね?」
「え、ええ、もちろん。ようこそ、シアーラさん」
「お招き頂き光栄です、王女様」
あんただと分かってたら招かなかったけどね! いやまあ、悪い人と決まったわけじゃないけど、危険な香りはする。大体ゲームのパッケージ絵からして、どう考えても悪役だし。まあ前の扉の中では登場してないしエマに害を為したわけでもないんだけど。でも、警戒はしないと。
マシューとシアーラ・マクニースは親しげで、庭園に移動している間も植物の話などをしていた。時々サイモンにも話を振って会話していて、サイモンの方も特に警戒している様子もない。私にはあれだけ不満そうな顔したんだから、こいつも警戒しろよ……などと思いつつ、王宮裏手にある庭園へと向かった。
アカデミーの日々は平和そのもので、自分が命を狙われているかも知れないことを忘れそうなほど。やっぱり興味のある分野の勉強は楽しいし、リケジョというかオタク魂に火が付いてしまいそうだわ。ただ王女エマとしてあんまり熱中してるところを皆に見せるわけにもいかないので、アカデミー構内では程々に。
三人の王子やカーラ、サイモンもイグレシアスでの生活のペースが掴めてきた様で、それぞれがキャンパスライフをエンジョイしているのが分かる。分かるわよ、王子や王女は城にいれば身分相応の生活態度を求められる存在。気が休まる暇もあまりないんだから。そりゃ他国でアカデミーの学生やっていれば、色々ストレスからも開放されるでしょう。
中でもイキイキしているのがマシュー王子。生活時間をほぼ全て研究や勉強に使えるとあって、それはもう楽しそう。アカデミーでの成績も良く、周りに友達も多い。マシュー王子は無意識に母性を刺激してくるものだから、前の扉の中でエマがそうであった様に彼に惹かれる女性も多く、ちょっとお姉さんタイプの女生徒たちのお気に入りの様子。それも良く分かるわよ!
ゲームの中でレジナルドとの恋愛は相思相愛感が一番強くて抱きしめて守られている感じ。ユージーンとの恋愛はグイグイ攻められて、クラクラしながらもちょっと危険な火遊びをしている感じ。そしてマシューとの恋愛は唯一エマの方から積極的にアピールして彼との距離を縮めていく感じなのよね。そういう意味では三者三様の恋愛を楽しめた訳だから、クソゲー認定は違う気もするけど、手抜きなところも目立ったから仕方ない。
この世界線では私の方からグイグイいくことはしないから、マシューとの関係はあまり親密にならないかな? と思っていたある日、マシューの方から声を掛けてきた。
「エマ、実はお願いがあるんだけど……」
「何かしら?」
「イグレシアスの王宮には立派な庭園があって、珍しい草花が沢山あるって聞いたんだけど」
「そうですわね。花が好きなお母様の意向でね、王宮の裏手に大きな庭園がありますわ」
前の扉の中でフォーセット王国に訪れた時に見た王立の植物園も凄かったが、イグレシアス王宮の庭園もなかなかのもの。あくまでも庭なんだけど、花好きの王妃が色々と草花や木を植えている。昔はエマの遊び場所だったけれど、最近ではちょっとした散歩コースの様になっていたわね。私がエマの中に入ってからは行ってなかったかな?
「マシューは植物に興味があるみたいだから、楽しめるんじゃないかしら? 宜しければ招待しますわ」
「ホント!?」
パッと明るくなるマシューの顔と、そしてそれとは反対に後ろで話を聞いていたサイモンは不服そう。あからさまだな、おい。しかしここで彼の反感をかって後ろから刺されたらたまったものではない。私は知ってるのよ、あなたたち二人がBLに片足を突っ込んでるってことをね!
「サイモンも一緒にどう? 滅多に入れる場所ではないし、城の中もレオが案内してくれるわよ。ねえ、レオ」
「ああ、いいぜ。俺の親父は騎士団長なんだ。サイモンを紹介したいし」
「ホントか!? 行く、行く!」
フッ、チョロいわね。やっぱり私の記憶が有るのと無いのとでは、危機回避スキルが段違いなのよ。エマはちょっと世間知らずなところもあったから。
「もう一人、最近知り合った薬草に興味がある人がいるんだけど、一緒にいいかな?」
「もちろん。庭園に薬草があるかどうか分からないけど、沢山の人に楽しんでもらえるならお母様もきっと喜ぶわ」
「ありがとう!」
幼い子どもの様な笑顔にちょっとキュンとする。いや、ダメダメ。あれは結果的には悪魔の微笑みなのよ。ここで心を奪われたら待っているのはバッドエンド。適度な距離を保つのを忘れるな、私!
早い方が良いだろうという事で、週末に三人を招待することに。当日、レオと王宮で待っているとやってきたフォーセットの馬車。先ずサイモンが降りてきてその次にマシュー。そして最後に降りてきたのは、女性だった! スラッとした黒髪長髪の美人……シアーラ・マクニース!? マシューの友達って彼女だったの!?
「エマ、今日は有り難う。こちらはシアーラ。同じクラスだから君も知ってるよね?」
「え、ええ、もちろん。ようこそ、シアーラさん」
「お招き頂き光栄です、王女様」
あんただと分かってたら招かなかったけどね! いやまあ、悪い人と決まったわけじゃないけど、危険な香りはする。大体ゲームのパッケージ絵からして、どう考えても悪役だし。まあ前の扉の中では登場してないしエマに害を為したわけでもないんだけど。でも、警戒はしないと。
マシューとシアーラ・マクニースは親しげで、庭園に移動している間も植物の話などをしていた。時々サイモンにも話を振って会話していて、サイモンの方も特に警戒している様子もない。私にはあれだけ不満そうな顔したんだから、こいつも警戒しろよ……などと思いつつ、王宮裏手にある庭園へと向かった。
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