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18.入学
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いよいよアカデミー入学の日。アカデミーには寮も用意されているけど、王宮のすぐ近くだし私とレオは王宮から通うことにした。三国の王子たちも王都内にあるそれぞれの邸宅から通うとのこと。朝、制服に袖を通して鏡の前に立つ。前世でも高校時代は制服だったけど、中身は大学生だから今更の制服にはちょっとムズムズするわね。ただエマは美人だし制服も可愛いし、鏡に写った姿はかなりイケてる。思ったよりスカートが短くて生足が見えてるけど、こっちの世界はその辺りゆるいのかな? 良くある異世界設定では中世の貴族設定が引き継がれていることが多いから、あまり肌を見せることは良しとされていないと思ってたけど。
暫くすると制服姿のレオが迎えに来てくれて、一緒に入学式へ。短い距離だから歩いてアカデミーに行こうかと思っていたのに却下されてしまった。王女が歩いてきたら他の生徒が馬車で来にくいってのもあるし、仕方ないか。
「どう? 制服似合ってる?」
「ま、まあな」
一瞬足の辺り見ただろ? レオぐらいの年齢の男子にはちょっと刺激的な格好かな? エマのスタイルはいいんだけど、胸はもう少し欲しいところ。小さくはないんだけどね、もうちょっとこうバイン! としてた方が嬉しいと言うか何と言うか。
「あなたも似合ってるわよ。いつもは鎧とかばっかりだから、そんな格好は新鮮ね」
「軽くて逆に落ち着かないんだよ。切りつけられたらどうするんだ」
アカデミー内で切りつけられたら終わりだろうけどそんなこともまずないだろうし、第一レオは帯剣を許されてる。私も剣を持ちたいと言ったらこれも却下された。むぅ、王女は制約が多いなあ。因みに女性で帯剣が許されているのは貴族の護衛役の女生徒だけらしい。今年はそんな女生徒はいるだろうか……いたらきっとカッコイイだろうし友達になりたいもんだ。
馬車に乗り込んであっという間にアカデミーに到着。入学式なので生徒とその父兄も集まっていて、アカデミーの正門すぐの広場には何台も馬車が。そんな中でも王族の馬車は中央を突っ切って建物の入口までスムーズに進むことができる。やっぱすげーな、ロイヤルパワー!おっと、ここからは王女らしく振る舞わねば。
レオにエスコートされて馬車を降りると、一斉にこちらに視線が集まる。感嘆の声やヒソヒソ話の声、多分女生徒のキャーキャーと騒ぐ黄色い声など色々と聞こえてくるが、笑顔で軽く手を振ったりしつつ入学式場へと向かった。そこは一番大きな講堂で、私の席は一番前。その両隣には三国の王子とそのお付の生徒がならぶ。彼らとは後々挨拶しておく必要がありそうだけど、取り敢えずは軽く会釈。やがて壇上に学長始め数人の教授陣が現れたけど、彼らがいちいちこちらに礼をするもんだから私も軽く会釈……王女も楽じゃないわね。更に当然の様に私は新入生代表として壇上で挨拶しなければならない。緊張してきた! けど、それを顔に出すわけにもいかないので、スマイル、スマイル。
学長の少し長めの挨拶……こういう挨拶が長いのはどの世界でも一緒なのね。そしてお父様からの祝辞が紹介されたり、宰相からの祝辞が紹介されたり。在学生代表の挨拶が終わったらいよいよ私の番。もっと緊張するかと思ったけれど、私が中に入る前からエマは王女としての仕事に慣れていたので、存外あっさりと緊張せずに役目を果たすことができた。エマの記憶がない素の私だったらきっと噛み倒してただろうな。
「さすが」
「ありがとう」
席に戻ると小さい声でレオが褒めてくれる。フフン、もっと褒めていいのよ! しかしこれはスタートの合図でもある。まだアカデミーで命を狙われると決まったわけではないけれど、気を引き締めていかなければ。とにかく目標は『全員と仲良く』だ。特定の誰かを選択すると前の三枚の扉の中と同じになりかねないから、適度に距離を保ちつつ満遍なく仲良くすることが必要なのよ。
式が終わるとクラス分けが発表されて、諮ったように全員が同じクラス。王子、王女を複数クラスに分散させるよりも、一箇所に集めておいた方が何かと管理しやすいのかも知れない。百五十人程いる生徒は担任に引率されてぞろぞろと教室へ。一クラスは三十人前後か。教室に入ってそれとなく他のメンバーを見回す。ゲームのパッケージに描かれていた人物で、まだ登場していない女性。あの女性は……いた! 私たちが比較的前の方に座っているのに対して、彼女は窓際の一番後ろに座っていた。私とは対照的とも言うべき紫がかった黒い長髪に切れ長の目と赤っぽい瞳。背も私より高そうだし、何より座ってても分かる巨乳! 近寄りそうな雰囲気だから、誰も話しかけてないわね。
クラスには下は私と同じ十五歳から、上は三十歳ぐらいまでの生徒がいる。アカデミーの入学年齢は上限と下限が決まっているだけだから、幅広い年齢の人材が集まってくるのよね。なので講義内容も専門的なものが多いし、前世で言えば高校と言うよりも大学に近い感じかしら。共通の授業もあれば選択もあるから、まさに大学ね。
担任からある程度説明があった後は自己紹介のコーナー。当然の様に順番は私から。
「初めまして、エマ・イグレシアスと申します。本日は周辺国も含め沢山の方々に我が国のアカデミーに入学頂き、嬉しく思います。私はアカデミーでの生活を通して沢山の方と知り合い、そして沢山のことを学びたいと考えております。皆様にとりましてもここでの生活が有益でありますように。最後になりましたが、アカデミーの方針に則り私もここでは一生徒です。どうぞ気軽に『エマ』とお呼びください」
どう? なかなか良い挨拶だったでしょう! 入学式での挨拶と合わせて考えてきたからばっちりよ。あとでレオに自慢しよう。そして例の黒髪女性はシアーラ・マクニース。簡単な自己紹介だったけど落ち着いた声。出身諸々は不明なままだったけど、要注意だわ!
暫くすると制服姿のレオが迎えに来てくれて、一緒に入学式へ。短い距離だから歩いてアカデミーに行こうかと思っていたのに却下されてしまった。王女が歩いてきたら他の生徒が馬車で来にくいってのもあるし、仕方ないか。
「どう? 制服似合ってる?」
「ま、まあな」
一瞬足の辺り見ただろ? レオぐらいの年齢の男子にはちょっと刺激的な格好かな? エマのスタイルはいいんだけど、胸はもう少し欲しいところ。小さくはないんだけどね、もうちょっとこうバイン! としてた方が嬉しいと言うか何と言うか。
「あなたも似合ってるわよ。いつもは鎧とかばっかりだから、そんな格好は新鮮ね」
「軽くて逆に落ち着かないんだよ。切りつけられたらどうするんだ」
アカデミー内で切りつけられたら終わりだろうけどそんなこともまずないだろうし、第一レオは帯剣を許されてる。私も剣を持ちたいと言ったらこれも却下された。むぅ、王女は制約が多いなあ。因みに女性で帯剣が許されているのは貴族の護衛役の女生徒だけらしい。今年はそんな女生徒はいるだろうか……いたらきっとカッコイイだろうし友達になりたいもんだ。
馬車に乗り込んであっという間にアカデミーに到着。入学式なので生徒とその父兄も集まっていて、アカデミーの正門すぐの広場には何台も馬車が。そんな中でも王族の馬車は中央を突っ切って建物の入口までスムーズに進むことができる。やっぱすげーな、ロイヤルパワー!おっと、ここからは王女らしく振る舞わねば。
レオにエスコートされて馬車を降りると、一斉にこちらに視線が集まる。感嘆の声やヒソヒソ話の声、多分女生徒のキャーキャーと騒ぐ黄色い声など色々と聞こえてくるが、笑顔で軽く手を振ったりしつつ入学式場へと向かった。そこは一番大きな講堂で、私の席は一番前。その両隣には三国の王子とそのお付の生徒がならぶ。彼らとは後々挨拶しておく必要がありそうだけど、取り敢えずは軽く会釈。やがて壇上に学長始め数人の教授陣が現れたけど、彼らがいちいちこちらに礼をするもんだから私も軽く会釈……王女も楽じゃないわね。更に当然の様に私は新入生代表として壇上で挨拶しなければならない。緊張してきた! けど、それを顔に出すわけにもいかないので、スマイル、スマイル。
学長の少し長めの挨拶……こういう挨拶が長いのはどの世界でも一緒なのね。そしてお父様からの祝辞が紹介されたり、宰相からの祝辞が紹介されたり。在学生代表の挨拶が終わったらいよいよ私の番。もっと緊張するかと思ったけれど、私が中に入る前からエマは王女としての仕事に慣れていたので、存外あっさりと緊張せずに役目を果たすことができた。エマの記憶がない素の私だったらきっと噛み倒してただろうな。
「さすが」
「ありがとう」
席に戻ると小さい声でレオが褒めてくれる。フフン、もっと褒めていいのよ! しかしこれはスタートの合図でもある。まだアカデミーで命を狙われると決まったわけではないけれど、気を引き締めていかなければ。とにかく目標は『全員と仲良く』だ。特定の誰かを選択すると前の三枚の扉の中と同じになりかねないから、適度に距離を保ちつつ満遍なく仲良くすることが必要なのよ。
式が終わるとクラス分けが発表されて、諮ったように全員が同じクラス。王子、王女を複数クラスに分散させるよりも、一箇所に集めておいた方が何かと管理しやすいのかも知れない。百五十人程いる生徒は担任に引率されてぞろぞろと教室へ。一クラスは三十人前後か。教室に入ってそれとなく他のメンバーを見回す。ゲームのパッケージに描かれていた人物で、まだ登場していない女性。あの女性は……いた! 私たちが比較的前の方に座っているのに対して、彼女は窓際の一番後ろに座っていた。私とは対照的とも言うべき紫がかった黒い長髪に切れ長の目と赤っぽい瞳。背も私より高そうだし、何より座ってても分かる巨乳! 近寄りそうな雰囲気だから、誰も話しかけてないわね。
クラスには下は私と同じ十五歳から、上は三十歳ぐらいまでの生徒がいる。アカデミーの入学年齢は上限と下限が決まっているだけだから、幅広い年齢の人材が集まってくるのよね。なので講義内容も専門的なものが多いし、前世で言えば高校と言うよりも大学に近い感じかしら。共通の授業もあれば選択もあるから、まさに大学ね。
担任からある程度説明があった後は自己紹介のコーナー。当然の様に順番は私から。
「初めまして、エマ・イグレシアスと申します。本日は周辺国も含め沢山の方々に我が国のアカデミーに入学頂き、嬉しく思います。私はアカデミーでの生活を通して沢山の方と知り合い、そして沢山のことを学びたいと考えております。皆様にとりましてもここでの生活が有益でありますように。最後になりましたが、アカデミーの方針に則り私もここでは一生徒です。どうぞ気軽に『エマ』とお呼びください」
どう? なかなか良い挨拶だったでしょう! 入学式での挨拶と合わせて考えてきたからばっちりよ。あとでレオに自慢しよう。そして例の黒髪女性はシアーラ・マクニース。簡単な自己紹介だったけど落ち着いた声。出身諸々は不明なままだったけど、要注意だわ!
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