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31.恋する乙女と言ったところかしら?
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今日は学園で入学式があって、生徒会の二年生メンバーはとても忙しい一日を過ごした。先日の卒業パーティーで体調を崩したフランツはマリオンの魔法のお陰かすぐに回復し、在校生代表のスピーチでも立派にその役目を果たしていた……ちょっと緊張していたけどね。パトリシアのスピーチも素晴らしかったし、この国の王子と王女が在学する今年度は私たちにとって特別な一年になるに違いない。
忙殺されて弟のラリーにはあまり構ってあげられなかったけれど、初めてのクラスはどうだった? パトリシアやマリオンと同じクラスの様だから、初日から面白いことがあったんじゃないか? 気になっていたのはお母様も同じ様で、夕食時の話題は専らラリーの学園生活についてだった。
「学園には馴染めそうですか? ラリー」
「はい、母上。良いクラスに入れましたし、勉学に励もうと思います!」
我が弟ながら、優等生な回答だね。しかし私が聞きたいのはマリオンやパトリシアのこと。
「二人と一緒のクラスだったみたいだね」
「はい……本日の主役は間違いなくマリオンでした」
聞けば早々にマリオンが男子であることが話題となり、マリオンは皆から質問攻めに合っていたらしい。フフフ、入学初日から洗礼を浴びたわけだね。
「本当に彼は……マリオンは男なのですか? 僕は未だに信じられません」
「ああ、間違いないよ。フランツは彼の体を触って確認していたからね。私は拒否されてしまったけど」
「姉上は女性なのですから、無闇に男子の体を触ってはいけません!」
「そうね。でもあのお人形の様な子が男子だなんて、私も少し興味があるわ」
「母上まで!」
二人に笑われて必死になるラリー。マリオンは彼にとってなかなかに刺激の強い存在と見える。
「僕はまだ、彼にどう接していいのか分かりません。外見は女子だし、パトリシアといつもくっ付いてるし」
「私とフランツのちょうど逆じゃないか。普通に接すればいいのでは?」
「……姉上はどうなのですか? 彼が男と分かる前から気にかけておられましたが、今でも彼のことが好きなのですか?」
「そうだね……」
鋭い所を突いてきたね、ラリー。私はマリオンのことがずっと気になっていて、男性だと分かった時は女性としての自分の感情が間違っていなかったことに内心ホッとしていた。でもマリオンが女性だったとしても気持ちは変わらなかったと思うし、男性であろうが女性であろうが私はマリオンのことが好き、そう言う結論に至った。とは言え私も恋愛に関しては初心者。女子から好意を寄せられることには慣れているつもりだが、自分の好意をどう相手に伝えていいのかなんて丸で分からない。マリオンには助けられたり守られたりするばかりだが、本当は私がマリオンを守りたいし、許されるのであればずっと一緒に過ごしたいと言う気持ちが強いのだけれど……
「あらあら、あなたがそんな女性らしい優しい表情なのは珍しいわね、ミランダ。恋する乙女と言ったところかしら?」
「そ、そんなことは!」
お母様に指摘されて少し取り乱す……乙女……乙女!? この私が!? 考えれば考えるほど焦ってしまい、ラリーにまでニヤニヤされる始末。
「姉上の女性らしいところを初めて見ました」
「ウ、ウルサイなあ! ラリーだってパトリシアのことが気になっているんだろう?」
「なっ! か、彼女は幼馴染なだけで、別に意識してるわけでは……」
「フフフ、二人とも学園生活を謳歌しているようで安心しました。でも学生の本分は忘れるんじゃありませんよ。またあの二人を連れていらっしゃいな。彼女たちともっと話してみたいわ」
お母様の仲裁で、ちょっとした姉弟の口喧嘩は終了。まさかラリーと恋愛について口論する時がくるなんてね。私も少し熱くなりすぎたかな? 反省せねば。
外見や雰囲気から言えばマリオンの方がよほど乙女だけど、彼のことを好きだと自覚したと同時に自分も女性だったと再認識した。でも家の外でそんな表情を見せてしまうのは恥ずかしいから気を付けないと……我ながら、よりにもよって自分とは真逆の人を好きになってしまうとはね。
私も模索しながらなので、この気持ちを上手く伝えられないかも知れないけれど、願わくは君も同じ気持ちであって欲しい。マリオン……君を愛してる。
忙殺されて弟のラリーにはあまり構ってあげられなかったけれど、初めてのクラスはどうだった? パトリシアやマリオンと同じクラスの様だから、初日から面白いことがあったんじゃないか? 気になっていたのはお母様も同じ様で、夕食時の話題は専らラリーの学園生活についてだった。
「学園には馴染めそうですか? ラリー」
「はい、母上。良いクラスに入れましたし、勉学に励もうと思います!」
我が弟ながら、優等生な回答だね。しかし私が聞きたいのはマリオンやパトリシアのこと。
「二人と一緒のクラスだったみたいだね」
「はい……本日の主役は間違いなくマリオンでした」
聞けば早々にマリオンが男子であることが話題となり、マリオンは皆から質問攻めに合っていたらしい。フフフ、入学初日から洗礼を浴びたわけだね。
「本当に彼は……マリオンは男なのですか? 僕は未だに信じられません」
「ああ、間違いないよ。フランツは彼の体を触って確認していたからね。私は拒否されてしまったけど」
「姉上は女性なのですから、無闇に男子の体を触ってはいけません!」
「そうね。でもあのお人形の様な子が男子だなんて、私も少し興味があるわ」
「母上まで!」
二人に笑われて必死になるラリー。マリオンは彼にとってなかなかに刺激の強い存在と見える。
「僕はまだ、彼にどう接していいのか分かりません。外見は女子だし、パトリシアといつもくっ付いてるし」
「私とフランツのちょうど逆じゃないか。普通に接すればいいのでは?」
「……姉上はどうなのですか? 彼が男と分かる前から気にかけておられましたが、今でも彼のことが好きなのですか?」
「そうだね……」
鋭い所を突いてきたね、ラリー。私はマリオンのことがずっと気になっていて、男性だと分かった時は女性としての自分の感情が間違っていなかったことに内心ホッとしていた。でもマリオンが女性だったとしても気持ちは変わらなかったと思うし、男性であろうが女性であろうが私はマリオンのことが好き、そう言う結論に至った。とは言え私も恋愛に関しては初心者。女子から好意を寄せられることには慣れているつもりだが、自分の好意をどう相手に伝えていいのかなんて丸で分からない。マリオンには助けられたり守られたりするばかりだが、本当は私がマリオンを守りたいし、許されるのであればずっと一緒に過ごしたいと言う気持ちが強いのだけれど……
「あらあら、あなたがそんな女性らしい優しい表情なのは珍しいわね、ミランダ。恋する乙女と言ったところかしら?」
「そ、そんなことは!」
お母様に指摘されて少し取り乱す……乙女……乙女!? この私が!? 考えれば考えるほど焦ってしまい、ラリーにまでニヤニヤされる始末。
「姉上の女性らしいところを初めて見ました」
「ウ、ウルサイなあ! ラリーだってパトリシアのことが気になっているんだろう?」
「なっ! か、彼女は幼馴染なだけで、別に意識してるわけでは……」
「フフフ、二人とも学園生活を謳歌しているようで安心しました。でも学生の本分は忘れるんじゃありませんよ。またあの二人を連れていらっしゃいな。彼女たちともっと話してみたいわ」
お母様の仲裁で、ちょっとした姉弟の口喧嘩は終了。まさかラリーと恋愛について口論する時がくるなんてね。私も少し熱くなりすぎたかな? 反省せねば。
外見や雰囲気から言えばマリオンの方がよほど乙女だけど、彼のことを好きだと自覚したと同時に自分も女性だったと再認識した。でも家の外でそんな表情を見せてしまうのは恥ずかしいから気を付けないと……我ながら、よりにもよって自分とは真逆の人を好きになってしまうとはね。
私も模索しながらなので、この気持ちを上手く伝えられないかも知れないけれど、願わくは君も同じ気持ちであって欲しい。マリオン……君を愛してる。
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