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第十節 〜十字路(クロスロード)〜
122 夢見た在りし日の幻想のように 2
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121 122 123 は“ひと綴りの物語”です。
っていうか、ひとりごと?
《その2》
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
◆ (『引き続き、賢老エルフ サトリ』の視点です)
―――――――――
それが全て引っ繰り返った
何時の間にか目の前に女神が降臨していた。それが昨日見かけた心の壊れていた見窄らしい少女だったとは俄は信じられなかった。
それは全ての者を平伏させる女王だった。里の長老様達から聞かされた古の“御たる誰か”、そのものだった。
ワタシは溢れる涙をそのままに膝を折り、頭を垂れていた。そんなワタシを見て【ボクの女王は目を見開き驚いていたが、そんな仕草さえ崇高って、思っちゃった】
欲しいと思った。今直ぐ自分だけのものとする事を決めた。
立ち上がると【ボクの女王様の元に進み出る。ボクの歩みを邪魔するサキュバス。今直ぐ屠ってやろうか。でも彼女の前を血で汚すのも憚っちゃうな。なので瞬間加速で脇をすり抜け、ボクの女王様へとサッと手を伸ばす。
『耽溺』
触れさえすればキミはボクのモノ。
次の瞬間、ボクはあり得ない程の強大な力により弾かれ、壁に背中で大きな放射状の亀裂を作り、暫く空中で止まっていた。その後にズルズル落ち、座り込む。何が起こったか咄嗟には理解できなかった。
「なに? 何でそんなに飛ぶの? 軽く小突いただけなのに。ワザと? ワザとだろ。ドッキリか何か?」
ボクの女王様はボクを弾き飛ばした者の頭をペチリとハタキ「もう、そんなワケあるはず無いでしょ。もうここは“忌溜まり”じゃないんだから手加減して」
そう言い、ボクの元に歩み寄ると膝を床に突き、手を取ると「ごめんなさいね、ハム君程には上手くはないのだけど」
魔法陣が煌めき、治癒魔法を使ったのがわかった。今までに見たことない鮮やかな手際だった。
「これで無かった事に。よろしくて?」
ボクは言われた意味も分からずただ頷いていた】
女王は清楚に優雅に立ち上がるとニコリと笑い「それでは御機嫌よう」
「マジあれ自分で飛んでったんだって。俺は悪くないって」
「まだ言ってるの? もうこの話しはおしまい。逃げるわよ」
「でもあの者は不審でした。お気を付けてください、主様」
「もう、その呼び名はヤダって言ってるでしょ」
わかったことが幾つか。
『耽溺』が拒絶された。それは既にコウ・シリーズの誰かとのパス経路を構築済みである証。
それでもワタシの『耽溺』なら容易に乗っ取りが出来たはずなのに。
それよりも驚いたのは彼女には一切の『耽溺』の形跡が見当たらなかったことだ。侵食されていれば、その魂に澱のような濁りが必ず混じるのに、一切が純白であった。
感嘆する完璧な美しさだった。そんな究極の美に触れられたことでも歓喜に値し、ワタシは震えた。
それで納得する。ワタシの『耽溺亜種の乗っ取り』は相手の『耽溺』の“濁り”を足掛かりとして干渉し、喰い尽くす事で遂行される。その『耽溺』自体が無ければ干渉もできない訳だ。
そこで気づく。そんな事が可能なのか?『耽溺』が存在しない状態でパス路を通し、且つ強固な維持まで成している。誰とパス路を繋いでいるのだ。
一気に血が頭に上る。
【 誰だ! 誰がボクの女王を奪った‼ 】
残念なことにソコまでは自個保有魔系技能“解読解析”でも観えなかった。観えないことにも驚愕であったが。ただ、誰かはわかっている。ワタシを弾き飛ばした見窄らしい小僧だ。何故なら、ワタシを弾き飛ばした魔法こそコウ・シリーズの証である“万有間構成力制御魔技法”そのものであったから。
改めて小僧を見る。それまで一行の下僕など目の端にも映らず、初めて視認した。
嫌な顔をしていた。嫌いな顔だった。顔の造作は関係ない。ただ増悪した。殺したいと思った。
そして誓った。ワタシの、【 ボクだけの女王を必ず奪い返してやると 】
その後、動けるまで時間がかかった。
廊下の壁に背を預け、座り続けていた。同室のアラクネの少年に見つけてもらうまで二時間半。ギルド地下施設は広すぎて人が居なさすぎる。
女王様の治癒魔法は完治まで至らなかった。たぶん脊髄は砕けていた。普通なら呼吸もままならない状況を救ってもらえたのだ。瞬時に完治出来る程に優秀な治癒魔法師などこの世に存在しないのだから、感謝に堪えない。
逆にとっさに防護障壁を展開出来なかった自分が不甲斐ない。女王の前でとんだ醜態を晒してしまった。実戦の勘が鈍っているのを痛感させられた。
許しまじ小僧。二千年を生き抜き、各国に盤石の権力の根を張る高貴貴族であるワタシを、最高の“コウ”であるワタシを此処まで侮辱した事を後悔させてやる。
結局、医務室で治癒ポーションを飲むことで完治したが、本当に歩けるまでにまるまる一日を要した。結果、副ギルド長ゲートと小僧の模擬試合を見逃す事となった。それを人伝ではなく、直接この目で見ていたら、その後の対応も自ずと変わっていたかも知れなかった。それが本当の後悔かも知れない。
ワタシは半分遊びの遊覧気分のまま、一人でこの街に赴いた。手下の一人も付けずに。それがワタシの最近の楽しみでもある。ワタシを害そうと考える者などこの世界で数えるほどしかいないのだから。
ここ数百年、戦闘系は一人も創っていないことに改めて思い至った。 各領土の代官や各組織の代表などが占め、全て優秀な官吏系で揃えていた。もちろんワタシは十数万人の領兵を持っているし、表も裏も荒事の仕事を任せられる専門の人員も数多く揃えているが、全てその代表に一任している。直接動かせる手駒は皆無だった。
昔は警護を付けるよう進言してくれた娘も居たが、並大抵の者よりワタシのほうが強く、代替わりしてそんな声も聞こえなくなった。今の娘は少々従順すぎるか。これも『耽溺』の熟練度が上がった弊害かもしれない。
無論のこと誰かを呼べば事足りるが、時間を要するし、待つのは嫌だ。
現地で金で人を集めようかとも考えたが、ワタシは基本、自分のハーレムしか信用していない。面倒くさい。忖度してくれない者は疲れるし、むさいオヤジなどと話が合うとは思わない。
何より、“遷”まで時間も迫っており、なにやら祭りの前の高揚感と相まってワタシは数百年ぶりの胸の高鳴りを覚えていた。この気持ちを大切にした。何せここは聖地であり約束の地だ。
古ではこの地を征した者が次代の魔王と成るとされていたのだから。
そして何時の間にか小僧達が対カトンボの迎撃対策考案及び指導を担うことに成っていた。
今は見向きもされないが、歴代の勇者候補達もこの地の争奪に名乗りを上げ、領主・ギルドとの三つ巴の抗争を繰り広げたのは遠い昔。真っ先にこの地より潰走し、与えた影響は大きく、ギルドが疲弊し弱体していく最初の原因を造った。
新たなコウ・シリーズとしてか、曾ての罪への謝罪の為か、或いは魔王として立つのか。いいじゃないか小僧、遊ぼうじゃないか。
小僧と副ギルド長ゲートの模擬戦を同室のジンクから聞いた。俄は信じられなかった。
今考えると、この子にも含むところがあったのか実際にあった事柄とその品評がチグハグで、それに多少引っ張られた感が否めない。
ジンクは言った。自分の目を潰したように見せ、瞬時に治す幻術を見せられたと。ワタシは納得してしまった。
小僧個人が直接戦闘を行った事は事実らしい。終始副ギルド長に押さられていたとの事で、さもありなんと思ってしまった。何より、コウ・シリーズのセオリーに則り、ハーレムのサキュバスを使えばよいものを、と思ったが、電撃では広範囲攻撃専門で対人には向かず仕方なかったのだろう。ハーレム員の補強を疎かにするなど情けない。
観た処、副ギルド長は強者だがそれなりだ。それに手も足も出なかったと言うならばワタシの配下の官吏たちでも充分相手が務まるレベルと判断した。例え幻術を使われたとしても。所詮は三流以下の目眩ましでしかない。最後に見せた眩い光を放つ剣の話も、直視出来なかったとの事から、やはり幻術の類であると判断してしまった。
ただし、光の剣と一緒に聞かされた事柄は別だ。
何を世迷い言かと半分呆れ、半分怒りを覚えた。其程に驚愕し、あり得ない事だった。
この地の聖なる獣“花魁蜘蛛”を従えたとのことだ。どうなっている。そればかりは、明確な答えを見出す事が出来なかった。いや、出す事を自ら拒んだ。
勇者と魔王の違い。勇者は人族の要であり人族を従える。
魔王は魔物をも従える総べる者。最初に従属させた魔物はこの地に住まう蜘蛛だったという。
だからカトンボは二年毎に襲いかかる。
だから勇者はこの地に挑んだ。だがカトンボとは理由が違う。カトンボは二度と魔王を生み出さない為に。
勇者は人族の要であり人族のみを従える者。魔物を從わせる新たな力を求めて。
ギルド、いや、落国の民は何時か魔王が生まれる事を願いこの地を守る者。
違うのかもしれないと思った最初だった。
普通のコウ・シリーズとは違う異端者。立ち位置も、戦い方も異端な、それでも【 ボクの女王 】を“御たる誰か”に頂き、不埒にも“祝たる従者”を標榜する。それであるならば早めに潰そう。全てを奪って。新たな力を得る為に。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
っていうか、ひとりごと?
《その2》
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
◆ (『引き続き、賢老エルフ サトリ』の視点です)
―――――――――
それが全て引っ繰り返った
何時の間にか目の前に女神が降臨していた。それが昨日見かけた心の壊れていた見窄らしい少女だったとは俄は信じられなかった。
それは全ての者を平伏させる女王だった。里の長老様達から聞かされた古の“御たる誰か”、そのものだった。
ワタシは溢れる涙をそのままに膝を折り、頭を垂れていた。そんなワタシを見て【ボクの女王は目を見開き驚いていたが、そんな仕草さえ崇高って、思っちゃった】
欲しいと思った。今直ぐ自分だけのものとする事を決めた。
立ち上がると【ボクの女王様の元に進み出る。ボクの歩みを邪魔するサキュバス。今直ぐ屠ってやろうか。でも彼女の前を血で汚すのも憚っちゃうな。なので瞬間加速で脇をすり抜け、ボクの女王様へとサッと手を伸ばす。
『耽溺』
触れさえすればキミはボクのモノ。
次の瞬間、ボクはあり得ない程の強大な力により弾かれ、壁に背中で大きな放射状の亀裂を作り、暫く空中で止まっていた。その後にズルズル落ち、座り込む。何が起こったか咄嗟には理解できなかった。
「なに? 何でそんなに飛ぶの? 軽く小突いただけなのに。ワザと? ワザとだろ。ドッキリか何か?」
ボクの女王様はボクを弾き飛ばした者の頭をペチリとハタキ「もう、そんなワケあるはず無いでしょ。もうここは“忌溜まり”じゃないんだから手加減して」
そう言い、ボクの元に歩み寄ると膝を床に突き、手を取ると「ごめんなさいね、ハム君程には上手くはないのだけど」
魔法陣が煌めき、治癒魔法を使ったのがわかった。今までに見たことない鮮やかな手際だった。
「これで無かった事に。よろしくて?」
ボクは言われた意味も分からずただ頷いていた】
女王は清楚に優雅に立ち上がるとニコリと笑い「それでは御機嫌よう」
「マジあれ自分で飛んでったんだって。俺は悪くないって」
「まだ言ってるの? もうこの話しはおしまい。逃げるわよ」
「でもあの者は不審でした。お気を付けてください、主様」
「もう、その呼び名はヤダって言ってるでしょ」
わかったことが幾つか。
『耽溺』が拒絶された。それは既にコウ・シリーズの誰かとのパス経路を構築済みである証。
それでもワタシの『耽溺』なら容易に乗っ取りが出来たはずなのに。
それよりも驚いたのは彼女には一切の『耽溺』の形跡が見当たらなかったことだ。侵食されていれば、その魂に澱のような濁りが必ず混じるのに、一切が純白であった。
感嘆する完璧な美しさだった。そんな究極の美に触れられたことでも歓喜に値し、ワタシは震えた。
それで納得する。ワタシの『耽溺亜種の乗っ取り』は相手の『耽溺』の“濁り”を足掛かりとして干渉し、喰い尽くす事で遂行される。その『耽溺』自体が無ければ干渉もできない訳だ。
そこで気づく。そんな事が可能なのか?『耽溺』が存在しない状態でパス路を通し、且つ強固な維持まで成している。誰とパス路を繋いでいるのだ。
一気に血が頭に上る。
【 誰だ! 誰がボクの女王を奪った‼ 】
残念なことにソコまでは自個保有魔系技能“解読解析”でも観えなかった。観えないことにも驚愕であったが。ただ、誰かはわかっている。ワタシを弾き飛ばした見窄らしい小僧だ。何故なら、ワタシを弾き飛ばした魔法こそコウ・シリーズの証である“万有間構成力制御魔技法”そのものであったから。
改めて小僧を見る。それまで一行の下僕など目の端にも映らず、初めて視認した。
嫌な顔をしていた。嫌いな顔だった。顔の造作は関係ない。ただ増悪した。殺したいと思った。
そして誓った。ワタシの、【 ボクだけの女王を必ず奪い返してやると 】
その後、動けるまで時間がかかった。
廊下の壁に背を預け、座り続けていた。同室のアラクネの少年に見つけてもらうまで二時間半。ギルド地下施設は広すぎて人が居なさすぎる。
女王様の治癒魔法は完治まで至らなかった。たぶん脊髄は砕けていた。普通なら呼吸もままならない状況を救ってもらえたのだ。瞬時に完治出来る程に優秀な治癒魔法師などこの世に存在しないのだから、感謝に堪えない。
逆にとっさに防護障壁を展開出来なかった自分が不甲斐ない。女王の前でとんだ醜態を晒してしまった。実戦の勘が鈍っているのを痛感させられた。
許しまじ小僧。二千年を生き抜き、各国に盤石の権力の根を張る高貴貴族であるワタシを、最高の“コウ”であるワタシを此処まで侮辱した事を後悔させてやる。
結局、医務室で治癒ポーションを飲むことで完治したが、本当に歩けるまでにまるまる一日を要した。結果、副ギルド長ゲートと小僧の模擬試合を見逃す事となった。それを人伝ではなく、直接この目で見ていたら、その後の対応も自ずと変わっていたかも知れなかった。それが本当の後悔かも知れない。
ワタシは半分遊びの遊覧気分のまま、一人でこの街に赴いた。手下の一人も付けずに。それがワタシの最近の楽しみでもある。ワタシを害そうと考える者などこの世界で数えるほどしかいないのだから。
ここ数百年、戦闘系は一人も創っていないことに改めて思い至った。 各領土の代官や各組織の代表などが占め、全て優秀な官吏系で揃えていた。もちろんワタシは十数万人の領兵を持っているし、表も裏も荒事の仕事を任せられる専門の人員も数多く揃えているが、全てその代表に一任している。直接動かせる手駒は皆無だった。
昔は警護を付けるよう進言してくれた娘も居たが、並大抵の者よりワタシのほうが強く、代替わりしてそんな声も聞こえなくなった。今の娘は少々従順すぎるか。これも『耽溺』の熟練度が上がった弊害かもしれない。
無論のこと誰かを呼べば事足りるが、時間を要するし、待つのは嫌だ。
現地で金で人を集めようかとも考えたが、ワタシは基本、自分のハーレムしか信用していない。面倒くさい。忖度してくれない者は疲れるし、むさいオヤジなどと話が合うとは思わない。
何より、“遷”まで時間も迫っており、なにやら祭りの前の高揚感と相まってワタシは数百年ぶりの胸の高鳴りを覚えていた。この気持ちを大切にした。何せここは聖地であり約束の地だ。
古ではこの地を征した者が次代の魔王と成るとされていたのだから。
そして何時の間にか小僧達が対カトンボの迎撃対策考案及び指導を担うことに成っていた。
今は見向きもされないが、歴代の勇者候補達もこの地の争奪に名乗りを上げ、領主・ギルドとの三つ巴の抗争を繰り広げたのは遠い昔。真っ先にこの地より潰走し、与えた影響は大きく、ギルドが疲弊し弱体していく最初の原因を造った。
新たなコウ・シリーズとしてか、曾ての罪への謝罪の為か、或いは魔王として立つのか。いいじゃないか小僧、遊ぼうじゃないか。
小僧と副ギルド長ゲートの模擬戦を同室のジンクから聞いた。俄は信じられなかった。
今考えると、この子にも含むところがあったのか実際にあった事柄とその品評がチグハグで、それに多少引っ張られた感が否めない。
ジンクは言った。自分の目を潰したように見せ、瞬時に治す幻術を見せられたと。ワタシは納得してしまった。
小僧個人が直接戦闘を行った事は事実らしい。終始副ギルド長に押さられていたとの事で、さもありなんと思ってしまった。何より、コウ・シリーズのセオリーに則り、ハーレムのサキュバスを使えばよいものを、と思ったが、電撃では広範囲攻撃専門で対人には向かず仕方なかったのだろう。ハーレム員の補強を疎かにするなど情けない。
観た処、副ギルド長は強者だがそれなりだ。それに手も足も出なかったと言うならばワタシの配下の官吏たちでも充分相手が務まるレベルと判断した。例え幻術を使われたとしても。所詮は三流以下の目眩ましでしかない。最後に見せた眩い光を放つ剣の話も、直視出来なかったとの事から、やはり幻術の類であると判断してしまった。
ただし、光の剣と一緒に聞かされた事柄は別だ。
何を世迷い言かと半分呆れ、半分怒りを覚えた。其程に驚愕し、あり得ない事だった。
この地の聖なる獣“花魁蜘蛛”を従えたとのことだ。どうなっている。そればかりは、明確な答えを見出す事が出来なかった。いや、出す事を自ら拒んだ。
勇者と魔王の違い。勇者は人族の要であり人族を従える。
魔王は魔物をも従える総べる者。最初に従属させた魔物はこの地に住まう蜘蛛だったという。
だからカトンボは二年毎に襲いかかる。
だから勇者はこの地に挑んだ。だがカトンボとは理由が違う。カトンボは二度と魔王を生み出さない為に。
勇者は人族の要であり人族のみを従える者。魔物を從わせる新たな力を求めて。
ギルド、いや、落国の民は何時か魔王が生まれる事を願いこの地を守る者。
違うのかもしれないと思った最初だった。
普通のコウ・シリーズとは違う異端者。立ち位置も、戦い方も異端な、それでも【 ボクの女王 】を“御たる誰か”に頂き、不埒にも“祝たる従者”を標榜する。それであるならば早めに潰そう。全てを奪って。新たな力を得る為に。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
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