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第七節 〜遷(うつり)・初茜(はつあかね)〜
083 最初の一分、最初の一時間、最初の一日目 3
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81 82 83 84 は“遷”初日、その最初の激突の一コマとしての“ひと綴りの物語”です。《その3》
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
◆ 引き続き、『兵站盾付きの女《シヅキ》』の視点です。
―――――――――
まだ開始一時間どころか、十分も経っていない。
◇
『僕が考えるに、故事の文献の通りにこれは“防衛戦”ではなく、獲物を効率よく狩る為の“猟”でしか無かったのだと思うよ。ギルドの本来の目的『特異生物産資源収集』に沿った正当なね』
散々聞かされた。確かに古い文献を当たれば唯の戯言だと失笑に付すことも出来ないと、ギルド長は仰っていた。それが、これ程まで的を得ていたとは思わなかった。ただ、“狩り場”としても“狩り方”も既に失われて久しく、再現することは非常に困難だったのだと改めて思い知らされた。
ハムさんもこれが正しいやり方だとは思っていないようだった。
もっと時間が有れば、と嘆いていた。でもこれが現状で採り得る最低であっても最適解であったと。
でも実際に目にしたそれは、より低ランクな、御為倒でしかない虚構であるとしか感じ得なかった。ハムさんには本当に申し訳ないのだけど。それでも、私達はハムさんを盲信して着いて行かざるえないのだけれども。
分散し、空中を舞う個体一つ一つを狙い落とすことは不可能だ。なら一箇所に集めて叩けばいい。それが基本コンセプトだし、昔の人もそう考えたのだろう。集める場所は擁壁で囲まれたギルドの底。そこまではいい。ではどうやって集めるのか。集めたカトンボをどう叩くのか。
カトンボは基本的に“花魁蜘蛛”しか狙わない。そういう魔物だしそれが“遷”の本質でもある。ただそれは単純に一番というだけで、邪魔する者は排除しようとするし、蜘蛛が見つからない、或いは狩り尽くせば他を襲う。きっかり三日間、二年前のように。
擁壁で囲まれたギルド鍋底に花魁蜘蛛を並ばせ誘き寄せれば良い。単純だ。
それが不可能な理由も至極単純、そもそも“遷”攻防戦とは即ち花魁蜘蛛を守る事にほかならない。大切な街の財産を失うは即ち、街の死に直轄するから。それを一言で表せば本末転倒。
そこで今回はギルド長の大規模幻影魔術を使う。幻影を使う案も昔の人が考えなかった訳では無いし、使ったらしい。でも効果がなかった。
意外かも知れないが、魔物に目はない。目っぽい造形は在るが、見えている訳では無いらしい。事実、目を潰しても動きに変化は無い。皆口を揃えて言う。シカタないよマモノだからと。
でも敢えてハムさんには幻影を使う案を押した。
ハムさんは“忌溜まりの深森”で知ったそうだ。見えていないはずの魔物にフェイントが効いたと。それも酷く単純なバカでも見破れる罠に容易にu 引っ掛かるのだと。それで何編も命を拾ったと。
要は“見せる”のでは無く、“見えていると思わせる”。どう違うのか理解に苦しむが、ギルド長だけが納得した顔をしていた。ルナマジックの真髄だと。幻影は投影とは違うと。
擁壁で囲まれたギルド鍋底に集めることは出来たとして、その後はどうするのか。ギルドは広いが、カトンボが雲霞の如く集まれば瞬く間に擁壁いっぱいまで溢れ出る。それ程にカトンボの数は多い。
『まずは修練場の地面から背の高さよりちょい上に“蜘蛛糸”を張り巡らせる。飛来してきたカトンボを“蜘蛛の巣”で絡め取る。そこで、下から“羽竜落とし”の槍で魔晶石を一撃で破壊するか、抜き取る。
知っての通りこれで魔物は一瞬で溶解する。それを繰り返す。“羽竜落とし”はそれを可能とする機能が組み込まれた、専用魔導具だ。
もちろん蜘蛛の巣だけで絡めてもアイツラだって抵抗して爪や牙で逆襲してくるだろう。一振りでコッチは即死だ。その為に擁壁の上に並べた“投網”だ。落ちる前から絡め取り拘束状態にする。後は“溜まりすぎない”様に素早く溶かす。自転車操業でメチャ忙しそうだけどね。
言ってしまえば簡単かつ単純だ。でもそんなに上手く行かない。自分で言っておいてなんだけど』
数えだしたら切りは無いが、大きな問題点は三つ。
一つは擁壁の上の“投網”を撃つ兵士の安全確保だ。
カトンボもバカではない。自分たちに攻撃を加えようとする人間を素通りはしない。当然ながら襲ってくる。正面であれば魔法で撃退も、“投網”で絡み取り落とすことも可能だろう。では背後はどうするのかと。擁壁の上は身を隠す遮蔽物などない。
二つ目は魔物は体内にあるうちに魔晶石を少しでも傷つけられると『狂乱状態』化する。その対策。ランクも二・三段階上昇し、見境なく暴れ、最後には木っ端微塵に爆発する。魔力暴走だと言われている。その被害は尋常ではなく、側に居たものはことごとく破壊される。下にいる槍使い組は逃げること出来ず、損害は甚大となるだろう。
爆発までには呼吸三百回分。その間迄に動かなく成るまで滅し切る必要がある。ただ滅するために挑む兵たちの損耗は著しいものとなるだろう。
三つ目は他の二つより幾分容易ではある。カトンボの習性として人の声に含まれる恐怖や負の感情に敏感に反応し、群れて襲ってくる。集中的に。暫くすると収まるが、その間の襲撃の密度は高く、其処から瓦解することもありうるほどに。
一つ目の問題には背後を守る盾使いを配することで対処とした。
二つ目の問題としては、そもそもが“投網”の使用がその対策であるし、“飛竜落とし”のオーバースペックな機能が作業の簡易化を促進している。そして普通のキマイラの常識としてその出鱈目な肢体からどこに魔晶石があるかその系統からだいたいの位置しか分からないものだが、准ネームド種としてのカトンボは珍しいことに位置が固定されている。首下腹側に、まるでわざわざ此処まで運んでくれ、差し出すように。それも半分露出した形で。まるで取ってくれと言わんばかりに。そんな無防備な魔物など聞いたことがない。
それでも、一度でも“投網”での捕獲に失敗し、暴れられ、下手に魔晶石を傷付けでもしたら。
その場を何とか誤魔化すことは出来るかもしれない。それでも、一度生じた歪はやがて積み重なり、取り返しの付かない瑕疵へと繋がるだろう。あとは連鎖した先の破滅だけが待つ。
それは、一度もミスが出来ないと同義だ。
私達の殆どが新兵ばかりで、対カトンボ実戦の経験値が絶対的に足りない。
素直に無理だと思う。
ハムさんには悪いが。
三つ目の対策は簡単だ。声に負の感情を乗せない。ただ考えただけでは襲ってこないし、普通の声も、大声だって問題ない。兵士間の意思の疎通に会話は必要で、全面会話禁止とは絶対に認められない。
ならばと、場面やシチュエーションで“決まり事”を徹底する事で対処できると考えていた。今までもそうだったから。でもハムさんだけは納得していないと言うか、一番懸念していたのが三つ目だったような気がする。
『そこで最初の一分、最初の一時間、最初の一日目だ、それを乗り越え支える為の君達、盾使い組と槍使い組それぞれの兵站班だ。その為の“負荷超過”の顕現化だった。まあ、その点では君達に酷い負担を掛けたっていうか……すまないね』
そこで全員のブーツがハムさんに投げ付けられた。勿論私のブーツも。その他諸々、手有り次第。そんなんで許されると思うなよ。
「ちょっと、お前ら、止めろよ。顕現する時に確認したよね。途中で止めてもいいて言ったよね。オレ謝ったよね。ごめんなさいって。そしたら許すって、頑張るって……それはそれ、そうですか。他にもある? いろいろ?……そうですか、スイマセンでした」
こんなんで許されたと思うなよ。それとブーツ返す時に匂い嗅いだな。連日の訓練でムレムレなのに、そういうトコ。だってブーツを避けずに手で受け止めたのって女の子のだけだから。それも八足ってなんで。手が何本あるの? そういうトコだから。何でニヤッてるの?
殺ッていいの?。
「まあ、頼むよ。お前らのフォローはオレがするからさ。見捨てたりしないし、なんとかなるから」
なんとかなるかどうかなんて……。
「今まで言っていたことは二年前までやっていたことと変わらない。
二年前に破綻したのはそれまでの武器である“投網”も“羽竜落とし”も徐々に経年劣化に伴いその数を減らし、それを補う為に兵の練度と人海戦術で遣り繰りしていた。
まあ、相当無理をして犠牲も相当出していたのだろう。擁壁の上の赤黒い染みが物語るように。ギルドの敷地に呼び込む為に自らをタゲとする真似もしたかもしれない。
その分水嶺がとうとう負債に傾き、一気に破綻した。まあ、あと二・三回は持つ計算だったのを、男爵様が蹴り落とした。そんな感じかな。
二年前と今の僕たちとの違いはそう変わらない。武器は豊富となったが、それを使ってくれる人員が絶対的に少ない。メリット・デメリット差し引いて、二年前とイーブンって感じかな。でも二年前と違ういい方の不確定要素もある。君達、兵站班の存在だ。
大いに期待しちゃうよ。
まあ、そんな難しい事は考えずに、今日ぐらいゆっくり仲間たちと魔物ではないマトモな飯を喰って、明日に備ええてくれ。
すまなかったな、決戦を明日に控えてた前日の夕飯前にこんな話しをしてしまって……タイミングが難しくてな。こんな時間になってしまった。許してほしい。
以上だ」
嘘だ。ワザとの、このタイミングだ。クソ抉ってきますねハムさん。嫌らしすぎます。
でも、信じますよ。本当の心の底から。
……心では判ってるんですけどね、頭のほうがね……。それでも、すべての兵器を用意したのも貴方だし、私達を用意したのも貴方だ。だから。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
◆ 引き続き、『兵站盾付きの女《シヅキ》』の視点です。
―――――――――
まだ開始一時間どころか、十分も経っていない。
◇
『僕が考えるに、故事の文献の通りにこれは“防衛戦”ではなく、獲物を効率よく狩る為の“猟”でしか無かったのだと思うよ。ギルドの本来の目的『特異生物産資源収集』に沿った正当なね』
散々聞かされた。確かに古い文献を当たれば唯の戯言だと失笑に付すことも出来ないと、ギルド長は仰っていた。それが、これ程まで的を得ていたとは思わなかった。ただ、“狩り場”としても“狩り方”も既に失われて久しく、再現することは非常に困難だったのだと改めて思い知らされた。
ハムさんもこれが正しいやり方だとは思っていないようだった。
もっと時間が有れば、と嘆いていた。でもこれが現状で採り得る最低であっても最適解であったと。
でも実際に目にしたそれは、より低ランクな、御為倒でしかない虚構であるとしか感じ得なかった。ハムさんには本当に申し訳ないのだけど。それでも、私達はハムさんを盲信して着いて行かざるえないのだけれども。
分散し、空中を舞う個体一つ一つを狙い落とすことは不可能だ。なら一箇所に集めて叩けばいい。それが基本コンセプトだし、昔の人もそう考えたのだろう。集める場所は擁壁で囲まれたギルドの底。そこまではいい。ではどうやって集めるのか。集めたカトンボをどう叩くのか。
カトンボは基本的に“花魁蜘蛛”しか狙わない。そういう魔物だしそれが“遷”の本質でもある。ただそれは単純に一番というだけで、邪魔する者は排除しようとするし、蜘蛛が見つからない、或いは狩り尽くせば他を襲う。きっかり三日間、二年前のように。
擁壁で囲まれたギルド鍋底に花魁蜘蛛を並ばせ誘き寄せれば良い。単純だ。
それが不可能な理由も至極単純、そもそも“遷”攻防戦とは即ち花魁蜘蛛を守る事にほかならない。大切な街の財産を失うは即ち、街の死に直轄するから。それを一言で表せば本末転倒。
そこで今回はギルド長の大規模幻影魔術を使う。幻影を使う案も昔の人が考えなかった訳では無いし、使ったらしい。でも効果がなかった。
意外かも知れないが、魔物に目はない。目っぽい造形は在るが、見えている訳では無いらしい。事実、目を潰しても動きに変化は無い。皆口を揃えて言う。シカタないよマモノだからと。
でも敢えてハムさんには幻影を使う案を押した。
ハムさんは“忌溜まりの深森”で知ったそうだ。見えていないはずの魔物にフェイントが効いたと。それも酷く単純なバカでも見破れる罠に容易にu 引っ掛かるのだと。それで何編も命を拾ったと。
要は“見せる”のでは無く、“見えていると思わせる”。どう違うのか理解に苦しむが、ギルド長だけが納得した顔をしていた。ルナマジックの真髄だと。幻影は投影とは違うと。
擁壁で囲まれたギルド鍋底に集めることは出来たとして、その後はどうするのか。ギルドは広いが、カトンボが雲霞の如く集まれば瞬く間に擁壁いっぱいまで溢れ出る。それ程にカトンボの数は多い。
『まずは修練場の地面から背の高さよりちょい上に“蜘蛛糸”を張り巡らせる。飛来してきたカトンボを“蜘蛛の巣”で絡め取る。そこで、下から“羽竜落とし”の槍で魔晶石を一撃で破壊するか、抜き取る。
知っての通りこれで魔物は一瞬で溶解する。それを繰り返す。“羽竜落とし”はそれを可能とする機能が組み込まれた、専用魔導具だ。
もちろん蜘蛛の巣だけで絡めてもアイツラだって抵抗して爪や牙で逆襲してくるだろう。一振りでコッチは即死だ。その為に擁壁の上に並べた“投網”だ。落ちる前から絡め取り拘束状態にする。後は“溜まりすぎない”様に素早く溶かす。自転車操業でメチャ忙しそうだけどね。
言ってしまえば簡単かつ単純だ。でもそんなに上手く行かない。自分で言っておいてなんだけど』
数えだしたら切りは無いが、大きな問題点は三つ。
一つは擁壁の上の“投網”を撃つ兵士の安全確保だ。
カトンボもバカではない。自分たちに攻撃を加えようとする人間を素通りはしない。当然ながら襲ってくる。正面であれば魔法で撃退も、“投網”で絡み取り落とすことも可能だろう。では背後はどうするのかと。擁壁の上は身を隠す遮蔽物などない。
二つ目は魔物は体内にあるうちに魔晶石を少しでも傷つけられると『狂乱状態』化する。その対策。ランクも二・三段階上昇し、見境なく暴れ、最後には木っ端微塵に爆発する。魔力暴走だと言われている。その被害は尋常ではなく、側に居たものはことごとく破壊される。下にいる槍使い組は逃げること出来ず、損害は甚大となるだろう。
爆発までには呼吸三百回分。その間迄に動かなく成るまで滅し切る必要がある。ただ滅するために挑む兵たちの損耗は著しいものとなるだろう。
三つ目は他の二つより幾分容易ではある。カトンボの習性として人の声に含まれる恐怖や負の感情に敏感に反応し、群れて襲ってくる。集中的に。暫くすると収まるが、その間の襲撃の密度は高く、其処から瓦解することもありうるほどに。
一つ目の問題には背後を守る盾使いを配することで対処とした。
二つ目の問題としては、そもそもが“投網”の使用がその対策であるし、“飛竜落とし”のオーバースペックな機能が作業の簡易化を促進している。そして普通のキマイラの常識としてその出鱈目な肢体からどこに魔晶石があるかその系統からだいたいの位置しか分からないものだが、准ネームド種としてのカトンボは珍しいことに位置が固定されている。首下腹側に、まるでわざわざ此処まで運んでくれ、差し出すように。それも半分露出した形で。まるで取ってくれと言わんばかりに。そんな無防備な魔物など聞いたことがない。
それでも、一度でも“投網”での捕獲に失敗し、暴れられ、下手に魔晶石を傷付けでもしたら。
その場を何とか誤魔化すことは出来るかもしれない。それでも、一度生じた歪はやがて積み重なり、取り返しの付かない瑕疵へと繋がるだろう。あとは連鎖した先の破滅だけが待つ。
それは、一度もミスが出来ないと同義だ。
私達の殆どが新兵ばかりで、対カトンボ実戦の経験値が絶対的に足りない。
素直に無理だと思う。
ハムさんには悪いが。
三つ目の対策は簡単だ。声に負の感情を乗せない。ただ考えただけでは襲ってこないし、普通の声も、大声だって問題ない。兵士間の意思の疎通に会話は必要で、全面会話禁止とは絶対に認められない。
ならばと、場面やシチュエーションで“決まり事”を徹底する事で対処できると考えていた。今までもそうだったから。でもハムさんだけは納得していないと言うか、一番懸念していたのが三つ目だったような気がする。
『そこで最初の一分、最初の一時間、最初の一日目だ、それを乗り越え支える為の君達、盾使い組と槍使い組それぞれの兵站班だ。その為の“負荷超過”の顕現化だった。まあ、その点では君達に酷い負担を掛けたっていうか……すまないね』
そこで全員のブーツがハムさんに投げ付けられた。勿論私のブーツも。その他諸々、手有り次第。そんなんで許されると思うなよ。
「ちょっと、お前ら、止めろよ。顕現する時に確認したよね。途中で止めてもいいて言ったよね。オレ謝ったよね。ごめんなさいって。そしたら許すって、頑張るって……それはそれ、そうですか。他にもある? いろいろ?……そうですか、スイマセンでした」
こんなんで許されたと思うなよ。それとブーツ返す時に匂い嗅いだな。連日の訓練でムレムレなのに、そういうトコ。だってブーツを避けずに手で受け止めたのって女の子のだけだから。それも八足ってなんで。手が何本あるの? そういうトコだから。何でニヤッてるの?
殺ッていいの?。
「まあ、頼むよ。お前らのフォローはオレがするからさ。見捨てたりしないし、なんとかなるから」
なんとかなるかどうかなんて……。
「今まで言っていたことは二年前までやっていたことと変わらない。
二年前に破綻したのはそれまでの武器である“投網”も“羽竜落とし”も徐々に経年劣化に伴いその数を減らし、それを補う為に兵の練度と人海戦術で遣り繰りしていた。
まあ、相当無理をして犠牲も相当出していたのだろう。擁壁の上の赤黒い染みが物語るように。ギルドの敷地に呼び込む為に自らをタゲとする真似もしたかもしれない。
その分水嶺がとうとう負債に傾き、一気に破綻した。まあ、あと二・三回は持つ計算だったのを、男爵様が蹴り落とした。そんな感じかな。
二年前と今の僕たちとの違いはそう変わらない。武器は豊富となったが、それを使ってくれる人員が絶対的に少ない。メリット・デメリット差し引いて、二年前とイーブンって感じかな。でも二年前と違ういい方の不確定要素もある。君達、兵站班の存在だ。
大いに期待しちゃうよ。
まあ、そんな難しい事は考えずに、今日ぐらいゆっくり仲間たちと魔物ではないマトモな飯を喰って、明日に備ええてくれ。
すまなかったな、決戦を明日に控えてた前日の夕飯前にこんな話しをしてしまって……タイミングが難しくてな。こんな時間になってしまった。許してほしい。
以上だ」
嘘だ。ワザとの、このタイミングだ。クソ抉ってきますねハムさん。嫌らしすぎます。
でも、信じますよ。本当の心の底から。
……心では判ってるんですけどね、頭のほうがね……。それでも、すべての兵器を用意したのも貴方だし、私達を用意したのも貴方だ。だから。
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お読み頂き、誠にありがとうございます。
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