51 / 129
第五節 〜ギルド、さまざまないろ〜
051 此処(ここ)で噛みつかなくて、如何(どう)するのよ。
しおりを挟む
ハナさま降臨。悪役令嬢としての本性が垣間見れます。
それとも“御(おほみ)たる”の片鱗?
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
―――――――――
そうだ蜘蛛だ! あの蜘蛛は何処に行った? って、そもそもあの蜘蛛はなんだったんだ?
僕らの周りでは未だ蹲っている者、未だ気を失っている者、気丈に立ち上がり周りを気遣う者、色々だ。
何がどうなった? どんな状況だ、これ?
ふと影が差す。
普段と変わらない歩みの赤鬼ゲートさんが日を背に僕の足元に立ち、切断面がやけに綺麗な、二分割された愛棍棒を両の手に持ち、見下ろしていた。若干怒ってらっしゃる? 仕方ないじゃん。僕のせいじゃないし。
「引き分けだな」と赤鬼ゲートさん。
「僕の負けでしょ? 完全に一本取られてた」
てか、頭かち割られてた。
スッとハナの手が伸び、真っ直ぐにゲートの握る棍棒を指差す。それも切断面を。そして鼻で笑った。
うわぁ~追い込みかける気だ。それも酷えヤツ。堂に入っている様で察し、久々の侯爵令嬢モードだ。それも素の悪役の方。
「最初から使っていたら、最初からやる気になっていたら……。
それなのに大人の貴方は手加減もできない……ってどう思います? 赤鬼さん」
赤鬼さんが眉間に力を込めてグヌヌってなってる。手に持つ棍棒の切断面を再確認するように凝視し。
「……だから引き分けだ」
「フフッ、わかってらっしゃるのならよろしくてよ。ではこれは借りと言うことで。これから宜しくね、ギルドの負けられない英雄な隊長さん。
ところで周りのアレ、どうにかしてくださらない。私達いま、イチャラブ中だから」
怖、コノ二人ったら怖! なんか冷たい視線同士で話し通じてますけど。怖!
「あ、イチャラブはしてないですよ」と僕。
ハナに思いっきり頬っぺたを抓られた。
苦い顔で丸っと無視し、僕から視線を外すと未だ混乱している自分の兵隊達に向かい「何時までダラけている! 余興は終わりだ、訓練に戻れ」
おいおい、全てうっちゃって、それでいいの?
いいみたい。若干動きは鈍いが兵隊さん達は日常に戻ろうと動き始める。強か。
さてと、僕もハナの膝枕から復帰しようかな。いい加減恥ずかしいし。その前に。
「あんまり煽ってやるなよ。かわいそうだぞ。それにそもそもの原因ってこんな試合しようって言ったハナだからな」
「わかってないのねハム君。最初に絡んできたのはギルドのトップ、最初に私達を舐め腐ったのはギルドのナンバー2。
此処で噛みつかなくて如何するのよ。小突かれ回されるのはいやよ私。
お尻を噛まれたら噛み返す。ハムくんだってそうでしょ?」
そう……なんだけれどもね。
「それに、どうして最初から手を抜いていたの? 負けてあげるのと、手を抜くのとは違うのよ。最後、ちょっと怖かったんだから」
ごもっとも。ちょっとどころじゃなかった。僕も正直焦った。でもゲートとの勝負は勉強になった。強い魔物と強い人と戦うのとは全く違うって事がわかった。何より、対人戦は感情のコントロールが大事だって事。殺してしまうかもしれないと思う恐怖と、強者を殺せる喜びと要求。
うわ、やなこと考えちゃった。ちょっと反省。
でもなあ……。
でもなあ……、さっきから小っ恥ずかしい膝枕状態でハナと話してるんだけど、下と上で。こういうシチュエーションだと夢のような幸せな出っ張りで向こうにある顔が見えないって言うのがお約束なのに、ストレート障害物なしって……あ! ダメ。ゴメンなさい。肘直スタンプはやめて。
鼻、陥没してね。……もうしません。
「ところでさ、話し、元に戻るんだけどさ、蜘蛛、イッパイいたよね」と僕。
「いたね」とハナ。
「今どこいったか知ってる?」
「お家に帰ったみたいよ」
「そうなんだ、ところでコレがなんだか知ってる?」
「分蜂ね。蜂じゃないけど」
と、さっきまで赤鬼が立っていた位置に膝を抱えてしゃがんでいる委員長系ギル長様のご尊顔が近い。そしてパンツ見えそう。後ろに申し訳なさそうな顔のサチを連れて。
「蜂と違って“花魁蜘蛛”は新たな巣を探して独立するのは新しく生まれた王女なの。ここの蜘蛛は全て識別されているのだけれど、“コノの子”は見た事ないからさっき出てきた現行の女王から今、生まれたのでしょうね。分離かな。よくわかんない。
でも見て、純白銀な個体だけど背に藍く五芒星が描かれているでしょ? それが女王の証。
でも感動。分蜂なんて文献によると三百年ぶりよ」
「で、どうしてその新女王様が僕の自我存在理由にしがみ付いている?」
そうなのだ。15センチ程のミニマムな蜘蛛が僕の細くたおやかな“はんなり”ちゃんに八本の足でシッカリとしがみ付いているのだ。なんだそれ。
「知らないわよ。所詮は魔物のやる事だしね。気に入ったんでしょ。理解できないけど。
そんな事より(そんな事って……コレ、十分重要案件だと思うけど)
何時までもそんな所で寝てないで、ソレを連れて来てちょうだい。これからの事を相談しましょ。ゲートとのお話し合いは終わったんでしょ」
と、立ち上がる委員長系ギル長。
ケッ、やっぱり隔てる物は皆無、一直線で空がよく見えるぜ。最初に出会った時の豊満はやっぱフェイクだったのでゴザル。あ! ダメ。ゴメンなさい。膝ダブル直スタッピング顔面はやめて。
足が綺麗だった事は記述する。眼福。
“飛び膝蹴り”はヤベーって! 褒めてるだろ!
〈 ∮ 検索及び検証考察結果を報告
同じ場所を短時間で負傷されますと、修復に時間が掛かるようです。
今後の検討、改修案件ですね。良好なデータの回収が何よりです。
と結論 ∮ 〉
そうですか、去ね。
ソレを連れて、もとい貼り付けて歩くと、ギルド兵達が皆怯えてモーゼの海割りの如く道ができる。女性兵が引き攣った悲鳴をあげて腰を抜かし、そのまま尻を擦りながらカサカサと器用に後退していった、面白いものが見れた。
ああそうさ、赤鬼との戦闘でまたもや服はズタボロ、なのに股間に蜘蛛を貼り付けてるなんて笑えるだろ? うっせぇわ。
パンツ見えてるぞ。
「かわいいのに」とハナ。
ありがとうハナ。そのぶっ壊れ審美感に感謝。感謝か?
◆ (『女王ハナちゃん』の視点です)
蜘蛛って、やっぱり拡大で見るとキモいのよね。細かくびっしり生えた毛がゾワって来るし、リアルで引くわ。
でもなんか逆張りで可愛いと思ってしまう私は異端? でも私は進むの、此の邪な感情に身を委ねるの。ああ、此手触り、ワンコの耳バリの綺麗な白銀色のベルベット。チュキ。
「ぬしさま、すみません。わたしも、わたしもワンコの耳ベルベット、堪能してよろしいでしょうか。もう、もう、正直に申します。我慢がもう無理でしゅ」
ようこそ、異端で淫靡な世界に。
◇
「やめんか!」と委員長系ギル長。ハナとサチの頭を叩く。
「男子の股間に女子二人で手を伸ばし、頬を赤らめ、わしわし擦るのはやめなさい。ダメな女子になってる!
そして小僧、なに目を逸らし顔を赤らめ、なおかつ股間を押し出すのはやめろ」
いいじゃん。所詮蜘蛛だけだし、気分だけだし。
「よくないわ!」
◆ ※サチ談
「ええ、私は蜘蛛に押し倒されましたよ。ガッツリ。どういう訳でしょうかね? その他と十把一絡げにされましたね。私、一緒に“溜まりの深森”を抜けましたよね。扱いひどくないですか」
◆ ※ハナ談
「なんかね、気づいたら蜘蛛さん達が私の周りで円陣? を組んでくれていて、守っていてくれる感? がすごかったの。
でも、直ぐにハムくんの処に行きたかったんだけど、なかなか退いてくれなかったから、蹴り飛ばしちゃった。てへへ。
ああ、大丈夫だよ。蜘蛛さん達みんな許してくれたから。
なんとなくだけど。蜘蛛さん達、みんな私に懐いてる感じ? ほら私って、女王様体質だから」
◇
ギルド長室、その豪華でもなく質素でもなく中途半端な、広さも。な部屋に連れ込まれドアが閉まって外には漏れ聞こえない状態になった瞬間に、僕は委員長系ギル長に首元を捕まれ吊し上げられた。足、浮いてるし。
「どういうことよコレ、どういうことよコレ、どうなってるのよどうすんのよコレ! 説明しなさいよ‼︎」
説明って言ったって、説明して欲しいのは僕の方なんだけどな。足がぶらぶらしてるし。我関せずとサチはそっぽを向き、ハナに至っては勝手にオートクチュール的な豪華な机の引き出しを開け、中を物色してるし。
「ソコ! 勝手に開けない。手を突っ込んで物色しない」
「はぁ~」
と、大きなため息をつくハナ。
「いい大人が見っともないわよ、説明なんて誰も出来ないわよ。私達の頭の中に届いた、たぶん蜘蛛達のあの声が全て。そして分からない。分からない事を何時までもグダグダ言っていないで、出来る事をして行くほうが宜しくてよ。
それに説明をしてもらいたいのは逆に私たちの方。この街とかギルドとか蜘蛛とかね。
私達の力を本当に借りたいと思うならね」
カッチョいーぞハナ。なんか出来る女上司って感じで思わず『一生付いて行きます』って言っちゃいそう。
「ところで甘い物ないの? 甘いものを所望するわ……ビスケット、ないの?」
「僕は蜘蛛の外しかたを所望」
なんとか言えよ!
ココがいいの。ココに決めたんだから。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
それとも“御(おほみ)たる”の片鱗?
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
―――――――――
そうだ蜘蛛だ! あの蜘蛛は何処に行った? って、そもそもあの蜘蛛はなんだったんだ?
僕らの周りでは未だ蹲っている者、未だ気を失っている者、気丈に立ち上がり周りを気遣う者、色々だ。
何がどうなった? どんな状況だ、これ?
ふと影が差す。
普段と変わらない歩みの赤鬼ゲートさんが日を背に僕の足元に立ち、切断面がやけに綺麗な、二分割された愛棍棒を両の手に持ち、見下ろしていた。若干怒ってらっしゃる? 仕方ないじゃん。僕のせいじゃないし。
「引き分けだな」と赤鬼ゲートさん。
「僕の負けでしょ? 完全に一本取られてた」
てか、頭かち割られてた。
スッとハナの手が伸び、真っ直ぐにゲートの握る棍棒を指差す。それも切断面を。そして鼻で笑った。
うわぁ~追い込みかける気だ。それも酷えヤツ。堂に入っている様で察し、久々の侯爵令嬢モードだ。それも素の悪役の方。
「最初から使っていたら、最初からやる気になっていたら……。
それなのに大人の貴方は手加減もできない……ってどう思います? 赤鬼さん」
赤鬼さんが眉間に力を込めてグヌヌってなってる。手に持つ棍棒の切断面を再確認するように凝視し。
「……だから引き分けだ」
「フフッ、わかってらっしゃるのならよろしくてよ。ではこれは借りと言うことで。これから宜しくね、ギルドの負けられない英雄な隊長さん。
ところで周りのアレ、どうにかしてくださらない。私達いま、イチャラブ中だから」
怖、コノ二人ったら怖! なんか冷たい視線同士で話し通じてますけど。怖!
「あ、イチャラブはしてないですよ」と僕。
ハナに思いっきり頬っぺたを抓られた。
苦い顔で丸っと無視し、僕から視線を外すと未だ混乱している自分の兵隊達に向かい「何時までダラけている! 余興は終わりだ、訓練に戻れ」
おいおい、全てうっちゃって、それでいいの?
いいみたい。若干動きは鈍いが兵隊さん達は日常に戻ろうと動き始める。強か。
さてと、僕もハナの膝枕から復帰しようかな。いい加減恥ずかしいし。その前に。
「あんまり煽ってやるなよ。かわいそうだぞ。それにそもそもの原因ってこんな試合しようって言ったハナだからな」
「わかってないのねハム君。最初に絡んできたのはギルドのトップ、最初に私達を舐め腐ったのはギルドのナンバー2。
此処で噛みつかなくて如何するのよ。小突かれ回されるのはいやよ私。
お尻を噛まれたら噛み返す。ハムくんだってそうでしょ?」
そう……なんだけれどもね。
「それに、どうして最初から手を抜いていたの? 負けてあげるのと、手を抜くのとは違うのよ。最後、ちょっと怖かったんだから」
ごもっとも。ちょっとどころじゃなかった。僕も正直焦った。でもゲートとの勝負は勉強になった。強い魔物と強い人と戦うのとは全く違うって事がわかった。何より、対人戦は感情のコントロールが大事だって事。殺してしまうかもしれないと思う恐怖と、強者を殺せる喜びと要求。
うわ、やなこと考えちゃった。ちょっと反省。
でもなあ……。
でもなあ……、さっきから小っ恥ずかしい膝枕状態でハナと話してるんだけど、下と上で。こういうシチュエーションだと夢のような幸せな出っ張りで向こうにある顔が見えないって言うのがお約束なのに、ストレート障害物なしって……あ! ダメ。ゴメンなさい。肘直スタンプはやめて。
鼻、陥没してね。……もうしません。
「ところでさ、話し、元に戻るんだけどさ、蜘蛛、イッパイいたよね」と僕。
「いたね」とハナ。
「今どこいったか知ってる?」
「お家に帰ったみたいよ」
「そうなんだ、ところでコレがなんだか知ってる?」
「分蜂ね。蜂じゃないけど」
と、さっきまで赤鬼が立っていた位置に膝を抱えてしゃがんでいる委員長系ギル長様のご尊顔が近い。そしてパンツ見えそう。後ろに申し訳なさそうな顔のサチを連れて。
「蜂と違って“花魁蜘蛛”は新たな巣を探して独立するのは新しく生まれた王女なの。ここの蜘蛛は全て識別されているのだけれど、“コノの子”は見た事ないからさっき出てきた現行の女王から今、生まれたのでしょうね。分離かな。よくわかんない。
でも見て、純白銀な個体だけど背に藍く五芒星が描かれているでしょ? それが女王の証。
でも感動。分蜂なんて文献によると三百年ぶりよ」
「で、どうしてその新女王様が僕の自我存在理由にしがみ付いている?」
そうなのだ。15センチ程のミニマムな蜘蛛が僕の細くたおやかな“はんなり”ちゃんに八本の足でシッカリとしがみ付いているのだ。なんだそれ。
「知らないわよ。所詮は魔物のやる事だしね。気に入ったんでしょ。理解できないけど。
そんな事より(そんな事って……コレ、十分重要案件だと思うけど)
何時までもそんな所で寝てないで、ソレを連れて来てちょうだい。これからの事を相談しましょ。ゲートとのお話し合いは終わったんでしょ」
と、立ち上がる委員長系ギル長。
ケッ、やっぱり隔てる物は皆無、一直線で空がよく見えるぜ。最初に出会った時の豊満はやっぱフェイクだったのでゴザル。あ! ダメ。ゴメンなさい。膝ダブル直スタッピング顔面はやめて。
足が綺麗だった事は記述する。眼福。
“飛び膝蹴り”はヤベーって! 褒めてるだろ!
〈 ∮ 検索及び検証考察結果を報告
同じ場所を短時間で負傷されますと、修復に時間が掛かるようです。
今後の検討、改修案件ですね。良好なデータの回収が何よりです。
と結論 ∮ 〉
そうですか、去ね。
ソレを連れて、もとい貼り付けて歩くと、ギルド兵達が皆怯えてモーゼの海割りの如く道ができる。女性兵が引き攣った悲鳴をあげて腰を抜かし、そのまま尻を擦りながらカサカサと器用に後退していった、面白いものが見れた。
ああそうさ、赤鬼との戦闘でまたもや服はズタボロ、なのに股間に蜘蛛を貼り付けてるなんて笑えるだろ? うっせぇわ。
パンツ見えてるぞ。
「かわいいのに」とハナ。
ありがとうハナ。そのぶっ壊れ審美感に感謝。感謝か?
◆ (『女王ハナちゃん』の視点です)
蜘蛛って、やっぱり拡大で見るとキモいのよね。細かくびっしり生えた毛がゾワって来るし、リアルで引くわ。
でもなんか逆張りで可愛いと思ってしまう私は異端? でも私は進むの、此の邪な感情に身を委ねるの。ああ、此手触り、ワンコの耳バリの綺麗な白銀色のベルベット。チュキ。
「ぬしさま、すみません。わたしも、わたしもワンコの耳ベルベット、堪能してよろしいでしょうか。もう、もう、正直に申します。我慢がもう無理でしゅ」
ようこそ、異端で淫靡な世界に。
◇
「やめんか!」と委員長系ギル長。ハナとサチの頭を叩く。
「男子の股間に女子二人で手を伸ばし、頬を赤らめ、わしわし擦るのはやめなさい。ダメな女子になってる!
そして小僧、なに目を逸らし顔を赤らめ、なおかつ股間を押し出すのはやめろ」
いいじゃん。所詮蜘蛛だけだし、気分だけだし。
「よくないわ!」
◆ ※サチ談
「ええ、私は蜘蛛に押し倒されましたよ。ガッツリ。どういう訳でしょうかね? その他と十把一絡げにされましたね。私、一緒に“溜まりの深森”を抜けましたよね。扱いひどくないですか」
◆ ※ハナ談
「なんかね、気づいたら蜘蛛さん達が私の周りで円陣? を組んでくれていて、守っていてくれる感? がすごかったの。
でも、直ぐにハムくんの処に行きたかったんだけど、なかなか退いてくれなかったから、蹴り飛ばしちゃった。てへへ。
ああ、大丈夫だよ。蜘蛛さん達みんな許してくれたから。
なんとなくだけど。蜘蛛さん達、みんな私に懐いてる感じ? ほら私って、女王様体質だから」
◇
ギルド長室、その豪華でもなく質素でもなく中途半端な、広さも。な部屋に連れ込まれドアが閉まって外には漏れ聞こえない状態になった瞬間に、僕は委員長系ギル長に首元を捕まれ吊し上げられた。足、浮いてるし。
「どういうことよコレ、どういうことよコレ、どうなってるのよどうすんのよコレ! 説明しなさいよ‼︎」
説明って言ったって、説明して欲しいのは僕の方なんだけどな。足がぶらぶらしてるし。我関せずとサチはそっぽを向き、ハナに至っては勝手にオートクチュール的な豪華な机の引き出しを開け、中を物色してるし。
「ソコ! 勝手に開けない。手を突っ込んで物色しない」
「はぁ~」
と、大きなため息をつくハナ。
「いい大人が見っともないわよ、説明なんて誰も出来ないわよ。私達の頭の中に届いた、たぶん蜘蛛達のあの声が全て。そして分からない。分からない事を何時までもグダグダ言っていないで、出来る事をして行くほうが宜しくてよ。
それに説明をしてもらいたいのは逆に私たちの方。この街とかギルドとか蜘蛛とかね。
私達の力を本当に借りたいと思うならね」
カッチョいーぞハナ。なんか出来る女上司って感じで思わず『一生付いて行きます』って言っちゃいそう。
「ところで甘い物ないの? 甘いものを所望するわ……ビスケット、ないの?」
「僕は蜘蛛の外しかたを所望」
なんとか言えよ!
ココがいいの。ココに決めたんだから。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる