現実放棄し異世界へ

井出 遥玖

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第二章

二ー三

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「これで試験は終了です。明後日の朝八時から合格者の張り出しを行います。それでは解散」
 みんなバラバラと帰って行く。あとは結果を待つのみ。確率は五分五分かな?
 と、それは置いといて、俺はまず宿を見つけないとな。
 ケイはそう思い歩き出す。
「…ッ!!」
 その瞬間、後ろから誰かが来る。と思った径は後ろを振り向きながら貫手を放った。
「うわぁっ!!」
 その、後ろから来ていた襲撃者(仮)は悲鳴をあげて尻もちを着いた為、貫手が当たらなかったようだ。初めから当てる気は無かったけど…
 襲撃者(仮)はどうも同い年ぐらいの雰囲気がある。勘だけど。身長は大体一五〇センチメートルぐらいか?女子にしてもかなり小柄だな。赤髪の…ロング?ボサボサだし髪型の名前なんて知らないからわからん。手入れしてないだけならかなりガサツだな。
「まさか声を掛けようとしただけで攻撃されるとは思わなかったぜ」
「声を掛けようとね…」
…だったらその右手で持ってる抜き身のナイフは何だよ。大きさからして明らかに人を襲う用じゃねーか。
「流石はオレが見込んだだけはあるな」
「それは置いといて、どう言った用件ですか?」
 言葉が雑な気がするけど、襲われかけたわけだし別にいいか。
「端的に言うとオレのパーティーにスカウトしに来たんだ」
「は?」
「スカウト」
「いや聞こえたけど…」
 初対面の人間をスカウト?馬鹿かコイツ。てか、仮にここでパーティー組んだとして、どっちかが試験に落ちたらとんでもなく気まずい雰囲気になるぞ。短くても次の試験日がある来月まで。この体格からして大した筋力もないだろうしな。それとも魔法使い志望?ナイフ使うあたりからして無いな。
「いや、でもなぁ…やっぱり試験の結果が出るまではお互いになんとも…それに、その体格だと…」
「ん?お互い?体格?」
 あれ?今ピキッて音が聞こえた気が…
「ぐあぁぁっ!!」
 ジャンプしながら回し蹴りをされた。と認識した時には、ケイは地に伏せていた。
「何すんだよ!!」
 いきなり何にキレたんだよコイツは!!
「オレは先輩だぞ!!一月前に合格しているんだ!!」
 ケイが思ったことは二つ。
 ①あ、何となく合格出来る気がして来た。
 ②先輩に見えねぇ。特に身長が…
「大人しくオレのパーティーに入るなら、オレも泊まっている良い宿を紹介してやる。どうだ?」
 そこまで悪い話ではない。良い宿かどうかは泊まっている人から聞いた方が信用できるし、四人ほどのパーティーに入れば最低限の安全を確保しやすい。
「そういうことなら、悪い話じゃねぇな。これからよろしく」
「よし、決まり。宿はここから三つ目の道を右に曲がって、そこから二本目の道を左に曲がった所にある『万福』ってとこだ。オレはこれから用事があるから、次に会うのは明後日の結果発表の時だな。じゃあな」
 ケイはその姿を見送った後『万福』に行って受付を済ませた。その後、近くの銭湯で汗を流し、『万福』で(三食食事付きである)夕食を済ませた。
 夜になり、ケイはストレージの整理を終え、今日は早めに寝ようと、ベッドの上に仰向けになった。
 眠りにつく直前にふと思う。
 そういえば、あの人ーーー(元)襲撃者、改めパーティーメンバー(仮)の名前を聞くの忘れたな。
「まいっか」
 そうして、今度こそケイは眠りについた。
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