ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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第十章 幸せのキャンパスライフ

幸せのロックスター

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「面白い授業を心掛けて、子供達の興味をどうやって引き出すか、にとっても心をくだいてたのね。
 生徒から、教えられることも、多かったんだって。これ、私、すごく良く分かるわ。」

「参考になった?」

「うん!とっても!ステージでも、サービス精神、出てたよね。また行きたいな!」

「佑夏ちゃん........。」

「なに?」

「あ、いや。この人さ、社会派のアーティストで、色んな社会活動してるんだよね。」

 違う。言いたいのは、こんなことじゃない、自分と結ばれて、二人で一生、彼のコンサートに通わないか?
 来日公演だけじゃもったいない、この人の自国、イギリスまで、一緒に出かけようよ、というのが本音なんだけど、いくら何でもね。

「そうなのよ!このロンドンでやった、チャリティーコンサートのお話、いいな~!
 入場料はおもちゃで、集まったおもちゃは、施設に寄付したのね、素敵~!」

「ああ、そうだね。
 日本のアーティストで、そういう話、あまり聞かないね。」

「アハハ、何でだろうね?でも、だからかな~?この人の音楽は、何ていうか、深みっていうのかな?
 大きな感動がすごく、伝わってきたわ。スケールが地球規模なんだね。」

(おい、ジンスケ。外国の奴らより、日本はずっとお互いに助け合って生きてきた国なんだ。
 儲けは全部、自分のモノにしないで、社会の施しに回してたんだよ。
 真白様のお父上は、そういう方だったぜ。
 
 今みたいに何でも”慈善事業じゃない”の一言で片づけて、誰も何も感じなくなっちまったのは、つい最近のことなんだよ。)

(そうだろうな、ぽん太。俺だって日本武術あいきどうの先生やってるんだ。そのくらい分かる。)

「ねえねえ、中原くん。この人、生まれはとっても貧乏だったのね。
 お金が全然無い状態で、ロンドンに出て来て、成功できたのは20代後半で、丁度いい時期だったんだのよ。」

 ん?何のことだ?分からないな。
 ヒルティの”早死の法則”について、彼女から聞くのはまだ少し先だ。

 僕の表情を氣に止めず、「熱弁」を振るう佑夏。

「成功できても、”これまで貧しくて、二度とお金に困るような目には遭いたくない。しかし、だからといって自分が変わってしまうつもりも無い。
 お金は人をダメにする、堕落が始まるのはこういう時だ”って。

 自分を戒めてるのが偉いよね。」

「プロデビューしたばっかりの頃、バンドがまるで売れなくて、アメリカで初めてツアーやった時は、客が四人しかいなかったこともあったらしいよ。

 安いモーテルに泊まって、男三人で一つのベッドに寝たんだってね。」

「ああ、それも書いてあったわ。そんなこともいい経験になってるのね。」
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