168 / 267
第八章 天からの贈り物
お岩さん
しおりを挟む
「氣持ちいいな~!何だか、森も馬と一緒だといいね~!」
心地良さそうに目を細める馬上の姫に、自分の考えを述べたくなってしまう。
「俺、思うんだけどさ。山に行くにも、馬に乗ってれば遭難も減るし、馬は熊の気配が分かるから、熊にも出会いにくくなるし、もし、出会ってしまったとしても、人間の足で逃げるより、逃げ切れる確率も高いよ。」
「あ~、そうか。そうだよね。自然の中も、馬と一緒なら、楽しさも、安全も100倍かな?」
「うん、本当だよ。」
ふいに、佑夏は歌を口ずさみ始める。
「♪おうまは、みんな、ぱっかかはしる~!ぱっかかはしる~!」
いつ聞いても、とびきりの美声。この、光差す森の為にあると言っても、過言ではない。
「ねえ、中原くんも、一緒に歌って!」
「え?俺も?」
「一人じゃ寂しいな~!」
「分かったよ。参ったな。」
僕は、彼女には逆らえない。
いつしか、二人で声を合わせながら笑顔になり、柔らかな光が降り注ぐ落ち葉の森を抜け、僕達は、もと来た道を戻って行く。
今度は、馬上の姫が、ご質問される。
「中原くん、楓ちゃんのお母さん、写真しか見たことないけど、綺麗な猫よね~!美人さん!」
「え?ああ、そうだね。」
まただ.......。
「どうして、”お岩さん”なんて呼ばれてたの?四谷怪談の、あれでしょ?」
「そ、それは、楓と同じ、日本猫の標準通りの三毛猫で、和風情緒があるというか.......」
僕はしどろもどろになってしまう。
彼女の不細工好みは、ここでも、遺憾なく発揮されているのである。
楓の母猫は、この乗馬クラブに居着いていた。
あまりに不気味で醜い顔から、ここでは「お岩さん」と呼ばれていたことを、佑夏には話し、画像も見せた。
しかし、姫のリアクションは
「すごい美人ね~!楓ちゃんにソックリ!美人親子なんだね~!」
って??誰が見ても美少女猫の楓とは、似ても似つかないんだけど?
どうして、あんな不細工な母親から、楓のような可愛い娘が産まれたのか、ここでは不思議がられていたものだ。
だが、単純に不細工が好き、と決めつけるのは、早計かもしれない。
お岩さんは、自分の子供ではない、他の仔猫の面倒も看る、優しい猫だった。
佑夏は、美しい心を見抜く天才なのか?本人に美しい心があってこそだと思うが。
「楓ちゃんには、お母さんの命もきっと、一緒なのよ。姿は見えなくても。」
「うん、そうかもしれないね。楓はすごい甘えん坊だから。」
ともかく、クラブに着いて、アリエルを繋ぎ、馬具を外し、ひとまず、姫の初の体験乗馬は終了となる。
「アリエルちゃん、ありがと~!すっごく、楽しかった!」
ご褒美の人参を、白馬に食べさせて、佑夏は笑顔でお礼を言っている。
ただでさえ、美女である彼女の美しさが、さらに大幅に増しているじゃないか、馬の力は偉大だ。
「佑夏ちゃん、こっちだよ。」
楓と、初めて出会った場所に、姫をお連れしよう。
心地良さそうに目を細める馬上の姫に、自分の考えを述べたくなってしまう。
「俺、思うんだけどさ。山に行くにも、馬に乗ってれば遭難も減るし、馬は熊の気配が分かるから、熊にも出会いにくくなるし、もし、出会ってしまったとしても、人間の足で逃げるより、逃げ切れる確率も高いよ。」
「あ~、そうか。そうだよね。自然の中も、馬と一緒なら、楽しさも、安全も100倍かな?」
「うん、本当だよ。」
ふいに、佑夏は歌を口ずさみ始める。
「♪おうまは、みんな、ぱっかかはしる~!ぱっかかはしる~!」
いつ聞いても、とびきりの美声。この、光差す森の為にあると言っても、過言ではない。
「ねえ、中原くんも、一緒に歌って!」
「え?俺も?」
「一人じゃ寂しいな~!」
「分かったよ。参ったな。」
僕は、彼女には逆らえない。
いつしか、二人で声を合わせながら笑顔になり、柔らかな光が降り注ぐ落ち葉の森を抜け、僕達は、もと来た道を戻って行く。
今度は、馬上の姫が、ご質問される。
「中原くん、楓ちゃんのお母さん、写真しか見たことないけど、綺麗な猫よね~!美人さん!」
「え?ああ、そうだね。」
まただ.......。
「どうして、”お岩さん”なんて呼ばれてたの?四谷怪談の、あれでしょ?」
「そ、それは、楓と同じ、日本猫の標準通りの三毛猫で、和風情緒があるというか.......」
僕はしどろもどろになってしまう。
彼女の不細工好みは、ここでも、遺憾なく発揮されているのである。
楓の母猫は、この乗馬クラブに居着いていた。
あまりに不気味で醜い顔から、ここでは「お岩さん」と呼ばれていたことを、佑夏には話し、画像も見せた。
しかし、姫のリアクションは
「すごい美人ね~!楓ちゃんにソックリ!美人親子なんだね~!」
って??誰が見ても美少女猫の楓とは、似ても似つかないんだけど?
どうして、あんな不細工な母親から、楓のような可愛い娘が産まれたのか、ここでは不思議がられていたものだ。
だが、単純に不細工が好き、と決めつけるのは、早計かもしれない。
お岩さんは、自分の子供ではない、他の仔猫の面倒も看る、優しい猫だった。
佑夏は、美しい心を見抜く天才なのか?本人に美しい心があってこそだと思うが。
「楓ちゃんには、お母さんの命もきっと、一緒なのよ。姿は見えなくても。」
「うん、そうかもしれないね。楓はすごい甘えん坊だから。」
ともかく、クラブに着いて、アリエルを繋ぎ、馬具を外し、ひとまず、姫の初の体験乗馬は終了となる。
「アリエルちゃん、ありがと~!すっごく、楽しかった!」
ご褒美の人参を、白馬に食べさせて、佑夏は笑顔でお礼を言っている。
ただでさえ、美女である彼女の美しさが、さらに大幅に増しているじゃないか、馬の力は偉大だ。
「佑夏ちゃん、こっちだよ。」
楓と、初めて出会った場所に、姫をお連れしよう。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる