149 / 267
第七章 嵐の夜に
幸せの台風
しおりを挟む
県会議員、下田欲蔵氏の一件から、一ヶ月が過ぎ、10月になると、もうすっかり、秋も深まっている。
僕の部屋で、雑種犬・レオナと遊ぶ従妹の苺奈子ちゃんは、可愛さ満点である。
「レオナちゃん、レオナちゃん、アハハ~!」
母犬が仔犬をあやすように顔を舐めてもらって、苺奈子ちゃんはご機嫌だ。
現在は不妊手術済みだが、レオナには、出産と子育ての経験がある。
幼児の世話など、お手の物といった様子。
(おい、ジンスケ。苺奈子、今日の夜、泣くだろ?ちゃんと、オレを寝させてくれよ。)
(ぽん太、勝手なこと言うな。お前だって手伝え。)
ここまで、苺奈子ちゃんは、数え切れないくらい預かっている。
しかし、全て日帰りだった。
だが、今日は、苺奈子ちゃんの母親である僕の叔母が精密検査の為、一昼夜の入院になり、初の泊まりでの預かりで、僕も不安に感じている。
ご主人は、出張で、先週から留守にしているのである。
やっぱり、いつもより長い預かりの時間に、苺奈子ちゃんはソワソワし始め
「ジンシュケにいちゃん、ゆーかねーちゃんは~?」
「佑夏お姉ちゃんは、今日は来ないよ。台風が来てるからね。」
現在、午後3時、「10年に一度」とされる大型台風が接近中である。
既に、風と雨足が強まり、今晩、深夜には暴風域に入る予報だ。
「ちゅまんないな~。モナ、ゆーかねーちゃんと、あそびたいな~。」
「モナちゃん、仕方ないんだ。佑夏お姉ちゃんは、大学のお勉強もあるからね。
そんなには、来られないんだよ。」
本当は、今日は、佑夏がぽん太の世話をしに来る日に当たっていた。
だが、朝の内に「台風だから、今日は来ないで」と、姫にLINEを送ったのである。
「だって、ゆーかねーちゃん、こんど、モナに、はじっコらいふ、ちゅくってくれるっていったんだも~ん。」
「ああ、そうだったね。大丈夫、次にモナちゃんに会う時に、持って来てくれるよ。」
この前に、苺奈子ちゃんと顔を合わせた際、今度来る時までに、佑夏はキャラ物「はじっコらいふ」の、ぬいぐるみを作ってあげると約束していた。
「モナ、はじっコらいふ、いまほしいの~!ゆーかねーちゃん、きょう、くるっていったのよ~!」
幼児のくせに、約束の日付まで正確に覚えてるのか?侮れないな。
「モナちゃん、ワガママ言わないの!」
と言ったものの、ちょっと氣になるのは佑夏からのLINEの返事は「モナちゃん、今日来る?」だったことだ。
僕はすぐに「お母さんが入院だから(台風でも)必ず来る」と返している。
それに対する姫の答えが「は~い!」って、どういうことだ?まさか.........!?
実は、叔母は病気になる前はご主人と共働きで苺奈子ちゃんを育てていた。
しかし、現在は働けなくなり、世帯収入はガタ落ちの上、伯母本人の医療費もかかる。
生活は苦しく、苺奈子ちゃんは以前のようにオモチャを買ってもらえなくなって、欲求不満がたまっている。
優しい佑夏は、それを肌で感じているのが、僕には分かっている。
だから、指人形に続いて、ぬいぐるみまで、作ってあげたくなったんだな。
でも、だからといって?いや、胸騒ぎがしてしまう。
ますます台風の轟音が強くなってきた頃、玄関の呼び鈴が鳴る。
!僕の懸念が当たったのは、もう間違いない!
「じゃ~ん!サプライズ登場で~す!モナちゃん、どこ~!?」
幼児との約束を守る為に、ずぶ濡れの佑夏が舞い降りたのである。
僕の部屋で、雑種犬・レオナと遊ぶ従妹の苺奈子ちゃんは、可愛さ満点である。
「レオナちゃん、レオナちゃん、アハハ~!」
母犬が仔犬をあやすように顔を舐めてもらって、苺奈子ちゃんはご機嫌だ。
現在は不妊手術済みだが、レオナには、出産と子育ての経験がある。
幼児の世話など、お手の物といった様子。
(おい、ジンスケ。苺奈子、今日の夜、泣くだろ?ちゃんと、オレを寝させてくれよ。)
(ぽん太、勝手なこと言うな。お前だって手伝え。)
ここまで、苺奈子ちゃんは、数え切れないくらい預かっている。
しかし、全て日帰りだった。
だが、今日は、苺奈子ちゃんの母親である僕の叔母が精密検査の為、一昼夜の入院になり、初の泊まりでの預かりで、僕も不安に感じている。
ご主人は、出張で、先週から留守にしているのである。
やっぱり、いつもより長い預かりの時間に、苺奈子ちゃんはソワソワし始め
「ジンシュケにいちゃん、ゆーかねーちゃんは~?」
「佑夏お姉ちゃんは、今日は来ないよ。台風が来てるからね。」
現在、午後3時、「10年に一度」とされる大型台風が接近中である。
既に、風と雨足が強まり、今晩、深夜には暴風域に入る予報だ。
「ちゅまんないな~。モナ、ゆーかねーちゃんと、あそびたいな~。」
「モナちゃん、仕方ないんだ。佑夏お姉ちゃんは、大学のお勉強もあるからね。
そんなには、来られないんだよ。」
本当は、今日は、佑夏がぽん太の世話をしに来る日に当たっていた。
だが、朝の内に「台風だから、今日は来ないで」と、姫にLINEを送ったのである。
「だって、ゆーかねーちゃん、こんど、モナに、はじっコらいふ、ちゅくってくれるっていったんだも~ん。」
「ああ、そうだったね。大丈夫、次にモナちゃんに会う時に、持って来てくれるよ。」
この前に、苺奈子ちゃんと顔を合わせた際、今度来る時までに、佑夏はキャラ物「はじっコらいふ」の、ぬいぐるみを作ってあげると約束していた。
「モナ、はじっコらいふ、いまほしいの~!ゆーかねーちゃん、きょう、くるっていったのよ~!」
幼児のくせに、約束の日付まで正確に覚えてるのか?侮れないな。
「モナちゃん、ワガママ言わないの!」
と言ったものの、ちょっと氣になるのは佑夏からのLINEの返事は「モナちゃん、今日来る?」だったことだ。
僕はすぐに「お母さんが入院だから(台風でも)必ず来る」と返している。
それに対する姫の答えが「は~い!」って、どういうことだ?まさか.........!?
実は、叔母は病気になる前はご主人と共働きで苺奈子ちゃんを育てていた。
しかし、現在は働けなくなり、世帯収入はガタ落ちの上、伯母本人の医療費もかかる。
生活は苦しく、苺奈子ちゃんは以前のようにオモチャを買ってもらえなくなって、欲求不満がたまっている。
優しい佑夏は、それを肌で感じているのが、僕には分かっている。
だから、指人形に続いて、ぬいぐるみまで、作ってあげたくなったんだな。
でも、だからといって?いや、胸騒ぎがしてしまう。
ますます台風の轟音が強くなってきた頃、玄関の呼び鈴が鳴る。
!僕の懸念が当たったのは、もう間違いない!
「じゃ~ん!サプライズ登場で~す!モナちゃん、どこ~!?」
幼児との約束を守る為に、ずぶ濡れの佑夏が舞い降りたのである。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる