ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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第六章 幸福は義務

漫画家女房

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 あの、漫画家の奥さんの手記、うろ覚えだが、こんなことが書いてあったように思う。

 売れなくて貧しかった貧乏時代が一番、懐かしい。

 人生の入り口で幸運を手に入れることで、その後の人生が決まってしまうと思っている人が多い。
 私達は、人生の入り口は幸福とは言えなかったけれど、私は不幸ではなかった。

 人生は入り口で決まるのではなく、選んだ道でどう生きていくか、なんだろうと思う。

 そして、最も印象に残っている一節。

 どんなに赤貧で苦しくても、別れたいと思ったことはなかった。
 伴侶とともに、歩いていく過程で、お互いに信頼関係を築いて行けるかにこそ、全てがかかっている。

 ルミ子さんも、売れなかった無名時代から、総司氏と信頼関係を築いて来たから、今の幸福があるのか。

 また、ルミ子さんが、「オタクでダサ男」と言うように、漫画家と言えば、お世辞にも、女性が胸をときめかせるような、カッコいい職業ではない。

 こう言っては何だが、容姿の面でも、漫画家に一目惚れする女性はいないのではないだろうか?

 しかし、だからこそ。
 恋愛ホルモンで盛り上がった結婚ではなかったからこそ。

 逆に一緒に暮らすことによって信頼が深まり、この二組の漫画家夫婦は、長年連れ添うことができたのかもしれない。

「この頃は、おかん、漫画に口出しするんです。゛ぴょんぴょんはこんなん言わへん!“、゛新しいキャラ考えたわぁ。キャラデザ頼むなぁ。“って。それで、おとん、゛これじゃ、どっちが原作者か分からん。そやけど、おおきに。“言うて、喜びます。」
 理夢ちゃん、こんなご両親の下に生まれて、本当に幸せだ。
 母子家庭の僕からは、本当に羨ましい。

 水野さんが手を叩く
「あら~!ルミ子さん、ノロケ入りましたね!
 そう言えば、今日、ここに来てる女性で結婚してて、ご主人がいるの、ルミ子さんだけですね。」

 佑夏も、両手を握った「祈りのポーズ」でテーブルに両膝をつき、顎を手の上に乗せ、
「それも、こんな素敵なご主人。お話だけで、ウットリしちゃいます。
 お幸せで、いいですね~!」

「うちはなんも言うてまへん。このアホ娘勝手に言うたこっとすなぁ。ほんまにせんない!」
 ルミ子さんは、理夢ちゃんを睨み付けるが、心無しか、嬉しそう。

 佑夏がニコッと笑って、首を傾け
「私、ぴょんぴょん、読んでて、何だか女の人の作ったお話みたいだな~って思うことが何度もあったんです。
 感性が女性的というか、アハッ!
 今夜、その謎が解けました!ありがとうございます!」

「白沢さん、ぴょんぴょんの作者が女性なのではないか、という噂は、一部の読者の間で根強く言われていたことですよ。」
 小林さん、ファンの声まで分析するくらい、ぴょんぴょん、読み込んでいたのか...........。
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