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第五章 天の川を一緒に歩こ!
弟君と①
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インターバルの間、水分補給しながら、隼君と話をする機会があった。
グランド脇、二人で座り込んで。
子供達は、今度はキャッチボールをしたり、鬼ごっこしたりして、好きに遊んでいる。
「中原さん、どうして高校では、サッカー続けなかったんですか?あんなに上手いのに?」
隼君は、首を傾げている。
「高校になると、遠征もあるしね。金がかかるから。授業料もタダじゃなくなって、バイトして自分で払ってたんだよ。
家が貧乏だから、部活までは無理だった。」
佑夏達のしている卓球の音を聞きながら、僕は答える。
「ああ、そうだったんですか。すいません。」
隼君は、゛聞いてはいけないことを聞いてしまった“という表情である。
ひどく、悪そうに思ってくれているようだ。
都会育ちの少年なら、馬鹿にしてくるんじゃないか?
いかにも、田舎の純朴な中学生といった感じの隼君。
こんなところ、人の良さも、やっぱり佑夏の弟である。
「でも、姉ちゃんが。
中原さんのこと、家が裕福じゃないのに、少しも腐らずに、大学まで行って学ぶ氣持ちを捨てなくて、学費まで自分で払って、立派な人だって、いつも言ってます。」
隼君の、この言葉に、僕は驚かされる。
「え?佑........お姉さんが、そんなこと言ってるの?」
子供がキャッチボールをしていたボールが、足元に転がって来る。
それを投げ返しながら、僕は隼君に尋ねた。
「はい。そうなんです。
それと、中原さんは恵まれた生まれじゃないから、周りの人が、今、何をして欲しいのか、すごく敏感に感じ取れる、って。
サービス精神と、奉仕の心がある人だって、すごく褒めてます。
お坊ちゃんじゃ、ああはいかないと思う、とも言ってました。」
「そ、そう?アハハ?」
こりゃ、僕もまんざらでもない。
「午前中、エリカちゃんが川に落ちて、中原さんが助けた時も、姉ちゃん、゛中原くんって、ああいう心配りができる人なのよ~!“って。嬉しそうに笑ってましたよ。」
いいじゃないか、佑夏の中原仁助評。
嬉しいが、褒められっ放しもなんだな、ちょっと話題を相手のことにしよう。
「隼君も、県教大行って、先生になるの?」
午後の日射しは強いが、僕達は木陰に入っている。
「い、いえ。姉ちゃんみたいに、頭良くないんで。
大学は厳しいです。」
頭をかく弟君。
「それじゃ、高校出たら、養魚場、継ぐのかな?」
僕が進路相談してどうする、という氣もするが。
「さあ?お父さんは何も言わないし、まだ決めてません。
でも、継ぐにしても、いきなりでなく、一度は家を出ようと思ってます。」
そう答える隼君。
「うん、そうだね。それがいいよ。」
僕も相槌を打つ。
優しい佑夏を見れば分かるが、白沢家は、子供に何かプレッシャーをかけたり、本人の意にそぐわないことを強制したりはしない家風のようだ。
「姉ちゃんも、一人暮らしは、めっちゃいい経験になるって言ってます。」
目を輝かせる隼君は、大分、「お姉ちゃん子」だったようだな。
心から、佑夏を尊敬している様子がありあり。
そりゃ、あんな優しくて面倒見のいい姉は、そういないだろう。
「昨日、姉ちゃんが、中原さんは苦労した人の特徴で、誰にでも面倒見が良くて、親切だ、一緒にサッカーしてみれば分かる、って言うんで。」
そんな話、隼君としてたのか!?佑夏ちゃん!?
「俺、姉ちゃんに小野伸二の動画、見せてみたんです。
そしたら、姉ちゃん、“うん、この人!中原くんに感じ似てる!顔は全然、似てないけど゛って。」
小野.......伸二?
佑夏ちゃん、君には、僕がサッカー界のレジェンドに見えるのか?
グランド脇、二人で座り込んで。
子供達は、今度はキャッチボールをしたり、鬼ごっこしたりして、好きに遊んでいる。
「中原さん、どうして高校では、サッカー続けなかったんですか?あんなに上手いのに?」
隼君は、首を傾げている。
「高校になると、遠征もあるしね。金がかかるから。授業料もタダじゃなくなって、バイトして自分で払ってたんだよ。
家が貧乏だから、部活までは無理だった。」
佑夏達のしている卓球の音を聞きながら、僕は答える。
「ああ、そうだったんですか。すいません。」
隼君は、゛聞いてはいけないことを聞いてしまった“という表情である。
ひどく、悪そうに思ってくれているようだ。
都会育ちの少年なら、馬鹿にしてくるんじゃないか?
いかにも、田舎の純朴な中学生といった感じの隼君。
こんなところ、人の良さも、やっぱり佑夏の弟である。
「でも、姉ちゃんが。
中原さんのこと、家が裕福じゃないのに、少しも腐らずに、大学まで行って学ぶ氣持ちを捨てなくて、学費まで自分で払って、立派な人だって、いつも言ってます。」
隼君の、この言葉に、僕は驚かされる。
「え?佑........お姉さんが、そんなこと言ってるの?」
子供がキャッチボールをしていたボールが、足元に転がって来る。
それを投げ返しながら、僕は隼君に尋ねた。
「はい。そうなんです。
それと、中原さんは恵まれた生まれじゃないから、周りの人が、今、何をして欲しいのか、すごく敏感に感じ取れる、って。
サービス精神と、奉仕の心がある人だって、すごく褒めてます。
お坊ちゃんじゃ、ああはいかないと思う、とも言ってました。」
「そ、そう?アハハ?」
こりゃ、僕もまんざらでもない。
「午前中、エリカちゃんが川に落ちて、中原さんが助けた時も、姉ちゃん、゛中原くんって、ああいう心配りができる人なのよ~!“って。嬉しそうに笑ってましたよ。」
いいじゃないか、佑夏の中原仁助評。
嬉しいが、褒められっ放しもなんだな、ちょっと話題を相手のことにしよう。
「隼君も、県教大行って、先生になるの?」
午後の日射しは強いが、僕達は木陰に入っている。
「い、いえ。姉ちゃんみたいに、頭良くないんで。
大学は厳しいです。」
頭をかく弟君。
「それじゃ、高校出たら、養魚場、継ぐのかな?」
僕が進路相談してどうする、という氣もするが。
「さあ?お父さんは何も言わないし、まだ決めてません。
でも、継ぐにしても、いきなりでなく、一度は家を出ようと思ってます。」
そう答える隼君。
「うん、そうだね。それがいいよ。」
僕も相槌を打つ。
優しい佑夏を見れば分かるが、白沢家は、子供に何かプレッシャーをかけたり、本人の意にそぐわないことを強制したりはしない家風のようだ。
「姉ちゃんも、一人暮らしは、めっちゃいい経験になるって言ってます。」
目を輝かせる隼君は、大分、「お姉ちゃん子」だったようだな。
心から、佑夏を尊敬している様子がありあり。
そりゃ、あんな優しくて面倒見のいい姉は、そういないだろう。
「昨日、姉ちゃんが、中原さんは苦労した人の特徴で、誰にでも面倒見が良くて、親切だ、一緒にサッカーしてみれば分かる、って言うんで。」
そんな話、隼君としてたのか!?佑夏ちゃん!?
「俺、姉ちゃんに小野伸二の動画、見せてみたんです。
そしたら、姉ちゃん、“うん、この人!中原くんに感じ似てる!顔は全然、似てないけど゛って。」
小野.......伸二?
佑夏ちゃん、君には、僕がサッカー界のレジェンドに見えるのか?
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