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第五章 天の川を一緒に歩こ!
幸せのバーベキュー
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今夜、泊まる予定の山の共同宿泊施設。
この中庭で、お昼はバーベキューとなる。
言うまでもなく、白沢養魚場のニジマスが中心ではあるが、多少の肉類もある。
「佑夏~、資格の成果、見せてくれよ~。」
翠の問いかけに、
「アハハ、そーだね!」
やる氣満々の姫。
常々「子供の為に役に立つ資格は、何でも取っておきたい」と口にしている佑夏は、この春、「ブッシュクラフト」の講習会に参加し、資格を取得している。
Bush-森、茂み。Craft-技能。
山に落ちている木の枝など、天然素材を使ってアウトドアすることである。
「姉ちゃん、でもさ、こんなの、キャンプ用品使えば、済むんじゃないの?」
隼君が不思議そうな顔をする。
「高いキャンプ用品は盗まれたりするから。それに、道具無しで自分で作るのが楽しいのよ。
お金もかからないしね。」
佑夏の言うことは、もっともに聞こえる。
「災害や、遭難した時なんかも役に立ちそうだね。」
僕も感想を口にすると、
「うん、そーなの。直接、生きることに繋がってるしね。」
佑夏は美しいだけのお嬢様ではない、サバイバルさえできる逞しさがある。僕はここにも惹かれるよ。
そして、子供達と一緒に木の枝集めが始まって。
子供というものは、こういった「宝探し」が好きな生き物だ。
みんな、思い思いに、自分の拾った枝を見せ合いながら、はしゃいでいる。
なにしろ、人数がいる。あっという間に使いきれない程の木の枝が集まってしまう。
白魚のような手に軍手をはめ、佑夏は、その左手に持ったサバイバルナイフを使い、次から次へと枝をカットしていく。
「みんな~、刃物は危ないから、大人になってからね~!」
姫のすぐ傍で、ナイフに興味津々の子供達をけん制しながら、斎藤ミユちゃんは佑夏に着かず離れずサポートを。
佑夏のお父さんと隼君も、養魚場の仕事用かと思われるノコギリで、加工に加わっているのは家族愛だな。
「中原、手伝ってくれよ。」
翠にこう言われ、僕はスコップで、地面に穴を掘る。
さらに、そこら中に転がっている石ころと、カットされた木の枝を組み合わせて焚き火台を作っていく。
佑夏と事前に打ち合わせしていたのか、田舎育ちで元々知っていたのか、翠は妙に手馴れている。
子供達も目を輝かせ、我先に石と木を組み合わせていく。
小さな手と手で出来上がっていく焚き火台は、何とも可愛らしい。
やがて、生竹をカットして作られた串に、肉、魚、野菜を刺し通し、お待ちかねのバーベキューの時間だ。
鉄板や網を使わず、直火に直接当てることで、味も良くなりそうである。
川でずぶ濡れになってしまったエリカちゃんも、いい匂いに、既にヨダレを垂らしている。
「佑夏ちゃん、これさ。鉄板と網、持って来ることないから、楽でいいね。」
僕は何か、感動すら覚えてしまう。
翠も同意する
「金串も、だよ。家に置き忘れて持って来れなくて、どうしようもなくなったりしないし、こっちに忘れて失くしたりもしないな。」
そして、姫。
「そーなのよ!使った後の鉄板なんか、洗って綺麗にするの、大変でしょ?こうすれば、後片付けも楽だし、重い物を持って持ち運びすることもないわ。」
そうか、その通りだな。
流石と言うか、何と言うか。
結果..........、信じられないくらい、旨かった!!!!!
先刻承知のことだが、佑夏の味付けが、また絶妙である。
男の子はもちろん、女の子さえ、目に色を変えて貪りついている有り様だ。
ビールが無いことに、不満そうな顔もせず、佑夏のお父さんも、美味しそうに頬張っている。
「みんな~!後片付けが大事なのよ!ちゃんと手伝ってね~!」
食べ終わり、後片付けの段になると、逃げて行こうとする子供がいるが、こういう行いは許さない姫。
「炭はこのままだと、自然に還れないから、完全に燃やして灰にするの。
森の肥料になりま~す。」
佑夏は、子供達に呼び掛ける。
水をかけて、消火した灰をスコップで一輪車に載せ、林に戻す。
どの子も、まるで、いいことをしているかのような表情になり、ウキウキしているようだ。
火を起こし、灰を生み出せる動物は、地球上で人間だけ。
人間もまた、自然の一部なのである。
江戸時代には、既に日本では灰肥の技術が確立されていたそうだ。
水車小屋の実用化にしても、少しは日本人であることに誇りを持っていいかもしれない。
かくて、バーベキューをした跡は、そこで、火を使った痕跡一つ無いくらい、グランド整備の見本のように、綺麗になっている。
この中庭で、お昼はバーベキューとなる。
言うまでもなく、白沢養魚場のニジマスが中心ではあるが、多少の肉類もある。
「佑夏~、資格の成果、見せてくれよ~。」
翠の問いかけに、
「アハハ、そーだね!」
やる氣満々の姫。
常々「子供の為に役に立つ資格は、何でも取っておきたい」と口にしている佑夏は、この春、「ブッシュクラフト」の講習会に参加し、資格を取得している。
Bush-森、茂み。Craft-技能。
山に落ちている木の枝など、天然素材を使ってアウトドアすることである。
「姉ちゃん、でもさ、こんなの、キャンプ用品使えば、済むんじゃないの?」
隼君が不思議そうな顔をする。
「高いキャンプ用品は盗まれたりするから。それに、道具無しで自分で作るのが楽しいのよ。
お金もかからないしね。」
佑夏の言うことは、もっともに聞こえる。
「災害や、遭難した時なんかも役に立ちそうだね。」
僕も感想を口にすると、
「うん、そーなの。直接、生きることに繋がってるしね。」
佑夏は美しいだけのお嬢様ではない、サバイバルさえできる逞しさがある。僕はここにも惹かれるよ。
そして、子供達と一緒に木の枝集めが始まって。
子供というものは、こういった「宝探し」が好きな生き物だ。
みんな、思い思いに、自分の拾った枝を見せ合いながら、はしゃいでいる。
なにしろ、人数がいる。あっという間に使いきれない程の木の枝が集まってしまう。
白魚のような手に軍手をはめ、佑夏は、その左手に持ったサバイバルナイフを使い、次から次へと枝をカットしていく。
「みんな~、刃物は危ないから、大人になってからね~!」
姫のすぐ傍で、ナイフに興味津々の子供達をけん制しながら、斎藤ミユちゃんは佑夏に着かず離れずサポートを。
佑夏のお父さんと隼君も、養魚場の仕事用かと思われるノコギリで、加工に加わっているのは家族愛だな。
「中原、手伝ってくれよ。」
翠にこう言われ、僕はスコップで、地面に穴を掘る。
さらに、そこら中に転がっている石ころと、カットされた木の枝を組み合わせて焚き火台を作っていく。
佑夏と事前に打ち合わせしていたのか、田舎育ちで元々知っていたのか、翠は妙に手馴れている。
子供達も目を輝かせ、我先に石と木を組み合わせていく。
小さな手と手で出来上がっていく焚き火台は、何とも可愛らしい。
やがて、生竹をカットして作られた串に、肉、魚、野菜を刺し通し、お待ちかねのバーベキューの時間だ。
鉄板や網を使わず、直火に直接当てることで、味も良くなりそうである。
川でずぶ濡れになってしまったエリカちゃんも、いい匂いに、既にヨダレを垂らしている。
「佑夏ちゃん、これさ。鉄板と網、持って来ることないから、楽でいいね。」
僕は何か、感動すら覚えてしまう。
翠も同意する
「金串も、だよ。家に置き忘れて持って来れなくて、どうしようもなくなったりしないし、こっちに忘れて失くしたりもしないな。」
そして、姫。
「そーなのよ!使った後の鉄板なんか、洗って綺麗にするの、大変でしょ?こうすれば、後片付けも楽だし、重い物を持って持ち運びすることもないわ。」
そうか、その通りだな。
流石と言うか、何と言うか。
結果..........、信じられないくらい、旨かった!!!!!
先刻承知のことだが、佑夏の味付けが、また絶妙である。
男の子はもちろん、女の子さえ、目に色を変えて貪りついている有り様だ。
ビールが無いことに、不満そうな顔もせず、佑夏のお父さんも、美味しそうに頬張っている。
「みんな~!後片付けが大事なのよ!ちゃんと手伝ってね~!」
食べ終わり、後片付けの段になると、逃げて行こうとする子供がいるが、こういう行いは許さない姫。
「炭はこのままだと、自然に還れないから、完全に燃やして灰にするの。
森の肥料になりま~す。」
佑夏は、子供達に呼び掛ける。
水をかけて、消火した灰をスコップで一輪車に載せ、林に戻す。
どの子も、まるで、いいことをしているかのような表情になり、ウキウキしているようだ。
火を起こし、灰を生み出せる動物は、地球上で人間だけ。
人間もまた、自然の一部なのである。
江戸時代には、既に日本では灰肥の技術が確立されていたそうだ。
水車小屋の実用化にしても、少しは日本人であることに誇りを持っていいかもしれない。
かくて、バーベキューをした跡は、そこで、火を使った痕跡一つ無いくらい、グランド整備の見本のように、綺麗になっている。
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