ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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第四章 怪奇!化け猫談義

幸せの手人形

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 何から話そう?
 僕の住む県は、世界的に有名な欅箪笥の産地である。

 それで、僕は時折、無垢材を使った家具を作っている工房に、木工を習いに行っている。

 いきなり「杉・檜の人工林は環境を破壊するから、生命を育む広葉樹を......」みたいな話より、まず、楓家具の良さを分かってもらいたいな。

「楓材は固く、傷が付きにくいんです。小さい子供や、ペットがいても痛みにくいですね。
 木目が美しくて、白い色をしているんで、部屋を白い家具で明るくしたい方に向いています。」
 と、始めてみたが。

 当然の疑問でルミ子さんが、今、僕達が使っている椅子とテーブルを指差しながら、
「せやけど、こら白うあらしまへんよ?楓なんどすなぁ?」

「年数を経ると、少しずつ飴色に変化していくんです。
 僕はこの色が好きなんですけど、ずっと白い色のままがいい人には、向いてないかもしれません。」
 元々は、桐家具の白い色が好きだったんだけど。

 山田さんは、聞く耳持たず、といった様子で、全く会話に入らず、一人黙々と食べ続けている、尊敬に値する。

「この椅子とテーブルはウレタン樹脂じゃなくて、オイル塗装だから、こういう深い味わいが出てくるんですね。
 かなり古いですが、単に劣化していくだけじゃなくて。」
 そう解説していると、佑夏が。

「中原さんは最初、桐の家具が作りたいって言ってたんです。
 あの白い色が好きで、軽いから、お家やお店の中でも、扱いが楽だからって。」

 僕自ら引き継ぐ
「そうなんです。それに、桐は杉より成長が早いです。早いサイクルで植え付けから伐採までできるから、少ない面積で育てられます。森をさほど切り開くこともないと思ったんですけど。」

 小林さんがインテリぶりを発揮し
「東北では、福島県の会津地方が桐の産地ですね。その影響ですか?」

 ちゃんと真剣に答えます
「会津は桐だけじゃありません。広葉樹を中心に森を育て、山のルールに従って利用する文化があります。
 福島県は楓材の産地でもありますよ。」

 ん..........?
 向かいに座っている、ルミ子さんと、理夢ちゃんと水野さんが、何やらクスクス笑っている?
 笑うような話じゃないよな?

 三人とも、僕の背後を見ている。
 後ろに何かいるのか?

 振り向いてみると.........、

 手の平サイズの、三毛猫の楓と、ぽん太が僕の後ろで踊っている???
 思わず、吹き出してしまいそうな、可愛いダンス!

 この手人形は知っている!!
 佑夏が、僕の家に持って来て、苺奈子ちゃんを遊ばせてあげたものだ。

 モナちゃんが、あまりに欲しがるもので、あの子の手に合う小さいサイズの同じ人形を、佑夏はもう一組作って、彼女にプレゼントしていたものである。

 しかし、一体どこに持っていたんだ?

「佑夏ちゃん、何やってんの!?この後、吉岡さんに勉強教えるんだろ?
 バカやってないで、早く食べなよ。」
 あまりのおもろかしさに、僕も、笑いながらも、なんとか一言、絞り出すと

 姫の左手と言うべきか、楓の手人形と言うべきか、が
「は~い!分かりました~!」

 昼間の鴨の群れの時もそうだったが、プロの声優も顔負けの、見事な腹話術。

 だが、この手の平サイズの楓はまるで分かってないようで
「皆さ~ん!こんばんは~!私、楓といいます。中原さんの飼い猫で~す!」
 そう言って、両手を前で合わせ、みんなにペコリとお辞儀をする。

 とてつもなく、可愛らしい仕草だ。

 ルミ子さんが笑い転げながら
「中原さん、猫飼うておるんどすか?えらいカワイイおすなぁ!」

 今度は、佑夏「」が
「はい、楓ちゃんっていうんです。とっても可愛いんですよ。」

 ブサイク猫の、ぽん太だけじゃなく、誰が見ても美少女猫の楓のことも、佑夏はちゃんと「可愛い」と言ってくれる。

 別にゲテモノ趣味とか、そういうことでなく、物のカワイイ所を見つける名人なのかもしれない。

 水野さんが感心した表情で
「すごく良く出来てるわね、佑夏ちゃんが作ったの?」

「は~い!そうで~す!」
 にこやかに答える、手の平サイズの楓と、ぽん太である。

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