ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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第二章 霧ヶ峰のヤマネ

幸せの星空

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 最高にロマンチックな時間だー!!

 佑夏と二人きり、美しい霧ヶ峰の星空を見ながら、僕達は仰向けに横たわっている。

 木々のザワザワしたざわめきが、祝福してくれているように感じられてしまう。

「あら?フクロウの声がするね。可愛いなー♡」

 君の声には負けるよ、佑夏ちゃん。

「葵さんね、横浜のかなり大きい病院に勤めてるんだって。街中にあるみたい。」

「ふ~ん。」
 まあ、どうでもいいや。

「すごくストレスとプレッシャーがかかるらしいの。頭がおかしくなりそうなくらい。」

「だろうね。」

 佑夏は、昼間見たヤマネの森の方向に目をやりながら
「葵さん、職場のロッカーに、東山先生のヤマネの写真集、入れてあるって言ってたわ。」

「ロッカーに?それで何するの?」

「休憩時間にヤマネの写真、ジーッと見るって。ストレスが癒されるらしいのよ。」

「へぇ~、そんな使い道あるんだね。東山さんのヤマネの写真、カワイイからな~。」

「うん。それで、どうしても東山先生に会いたくて、葵さん、出版社に何度もお願いしたそうなの。」

「だから、このツアーが実現したのかな?」

「そうかもしれないわね。私も、来れて本当に良かったわ。」

 水野葵さんの奏でる、カリンバの音色はまだ聞こえている。

「葵さん、幸福論、知ってたの。」

「そうなの?なんで?」

「心療内科で取り入れてる病院が多いんだって。アランだけね。ヒルティとラッセルは難しいから。」

「アランは精神治療につながってるんだね。」

「そうよ。表情や話し方とか、簡単にできて心が前向きになるのが多いの。」

 君とこうやって、大の字になって星空見てると、俺の心も前向きなるよ、佑夏ちゃん。

「アクビが人を幸せにするとかね。脳を冷やして、気持ちに余裕が生まれるのよ。
 教育実習で、アクビしてる子、多かったけど、だから私、何も言わなかった。」

「そりゃ、驚きだね。合氣道の稽古でやってみようかな?ハハハ!」

「ふふ、武術の稽古でアクビするとこなんか無いわね。
 葵さんに、”卒論は幸福論なんです”って言ったら、なんか喜んでくれたわ。」

「氣が合うんだね。」

「とっても。葵さん、すごくいい人よ。患者さんのこと、本当に大事に考えてる。」

 綺麗な星空の下だと、佑夏との一体感も普段より強く感じられる。
 心まで強く結ばれているようだ。

「今、ここに来てる人達は、みんな素敵な人ね。小林さんも、吉岡さん達も、山田さんも。
 私、会えて良かった。」

「山田さんも?あの人、何だか変だよ。目がギョロギョロしてて、気味が悪いって。」

「そんな風に、見た目の印象で人のこと決めつけるのは良くないわ。
 山田さん、すごく優しくて心のあったかい人よ。」

「ホントかな?」

「ホントよ。フフフ。」

 いい雰囲気の絶頂。
 すると、その時、

「ねえ、中原くん、.........。」

「ん?」

 佑夏の手が伸びて来て、僕の髪に触れる。

 月明かりで照らされた佑夏の顔を見ると、彼女はジッと僕を見つめている。
 並んで横になったままだ。

 エー!!?

 こ、この態勢は!?キスですかーーー!?

 

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