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竜王覚醒

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そして…
高志は指示された最上階をも制圧し、ビル屋上へと…。
「ようこそ、神崎高志君。ファイナルステージへ。」
…やはり、こうなるよな…。
15m先に、白石七瀬が…。
2Fの男そっくりな風貌の人物に抑え込まれ、頭に拳銃を突きつけられていた。
そして…高志自身にも、6名の華国工作員と見られる男達のライフルが…。
中央の人物…三つ子の長兄、関高が冷徹に言い放つ。
「冷静に状況を見たまえ。
君が仮に例の縮地技でコンマ数秒で私に肉薄したとしても、その前に私の指は反応し、愛しの彼女の脳天は撃ち抜かれる。
そして彼女の命を度外視して暴れたとしても、ここにいるもの全てが軍での実戦経験のあるプロだ。」
高志は一瞬目を細める…

詰み…なのか。

「見えてきました!豊橋市街…!」
パイロットの言葉に、ケンは特製の超望遠カメラを起動させる。
…居た!
一同は息を呑む。
想定される最悪に近い状況。
どうする…
じりじりとした焦燥が一同の背中を焼く。
あのビル上空までは…たっぷり3分はかかる!

草原教会総本部
溜池犬作会長は、よだれを垂らさんばかりの表情。
ぐふふふ。
遂に、邪教徒どものカリスマが無様に死ぬ瞬間が見られる。
奴らに決定的な絶望を…
その上で真の救世主は誰かという事を教えねば。
いずれ華国共産党政府がこの国を支配しても、そこの事実上の「国教」の主はこのワシだ。
布石はすでにいくつも打っている。

そして…。
「詰みだという事が理解出来たなら、二人とも生き抜き豊かな暮らしを続ける方法が一つある。
華国首都の方角に向け土下座し、共産党に忠誠を誓え。
そして日本国王(天皇陛下への蔑称)を呪え。
そうすれば、華国にて、贅を尽くした生活を約束してやろう。むろん一連の出来事は動画で世界中に流れる。」
…。
高志は瞑目した。
膝が動きかけた時。
「駄目!」
他ならぬ七瀬の声。
「難しいことはわからない。でも、それをやったら、命より大事なものを無くしてしまうってことだけは分かる!私も一緒に行くから…。」
高志の目に光!
そして内奥の、身体感覚をも超えた何か…。
そして、言葉を紡ぐ。
「断る。
日本は華国の属国ではない。
ここは日本、我々は日本人だ!
畏くも天皇陛下がおわす神の国。
大アジアを照らす光。

共産主義カルト国家に屈する膝はない!!」
…!
関高の眉間に深い皺。
…関翔…と呟く。
200m先の、7階建てビル屋上に居た三つ子の次兄が反応した。
彼が扱うは、M82バーレット重狙撃銃。
いわゆる対物ライフルである。
こいつなら、この距離ならば、確実に奴の頭を文字通り吹っ飛ばせる…。
引き金に…湧き上がる快楽と共に、関翔は引き金を引いた。
秒速850mという狂気じみた速度。
ほぼ一瞬で「銀の弾丸」は神崎高志の側頭部を直撃。
どさりと、「邪教徒のカリスマ・怪物少年」が斃れ伏す。

「高志ィー!!!」
「高志さん!」
「ガッデム!狙撃の可能性に気づかねえとは…」
「主よ…」
ヘリコプターの中は悲哀と絶望の叫びに満ちた。

「神崎くん…。神崎くん…。」
関高の腕を離れ、よろよろと歩み寄る七瀬。
関高は最早無理には止めなかった。
もう使い道の無くなった女。
録画を止めた後、殺すなり売り飛ばすなり何とでも…。
高志の「遺体」に縋り付く七瀬。
「ありがとう。かんざ…高志くん。
おねえちゃんの為に戦ってくれて。
そして、私に前を向かせてくれた。

…これからでしょ。高志くん。

起きて。」
唇を重ねる。

どくん!!

!!!!!???

くわっと開いた。
他ならぬ神崎高志の瞳が。
そしてゆらりと立ち上がる。

どうなってる!?
これはなんなんだ!?
かつてないほどに、顔を歪める関高。
傷口どころではない筈の頭部の破口が、完全に塞がって…いや、そもそも最初からそんなもの開いていなかった!?
当たってもいなかった!?
幻覚でも見せられていたのか!?
いやありえん。

「お、おい、何が起こってんだコレ!?」
「高志さん。」
「『至った』のだ彼は。
正中線が、宇宙レベルに…それもこの銀河系を悠々超えるレベルに…。」
ウィリーの後をさくらが引き継ぐ。
「いつか東郷先生が言われていた…。
竜の器の中から更に研鑽を重ね目醒める王。

護国竜王。

高志さんが…。」

「女もろとも殺せ!!!」
関高の指揮の下、6名の手練れが高志一人目掛け一斉射撃。

無駄だ。

無数の銃弾はすり抜ける。七瀬を抱えた高志が信じられぬ動体視力と速度ですり抜け、片手でいなしていたのだ。
「シャア!!」
怒り狂った関高は、自ら突進し高志に、拳と蹴りを猛スピードで乱打するが…。
高志は涼しい顔をして、文字通り左手の中指一本で、全ての攻撃をあしらい、最後にデコピン。 
ただの、デコピン。

「ぐはああっ!!??」
部下達の足元まで吹き飛ばされる関高。
しかし、全身のダメージを強引に無視して立ちあがろうとする。
!!??
砂糖の城のように、関高の肉体が崩壊していく。

「あああああああああああああ!?」
遂には全身が細切れとなり、ただのぶちまけられたミンチとなって果てる…。

すううっと、呼吸を整える高志。

それを見て、残された部下達は全員銃を捨て、その場に土下座する。

「冗談じゃねえ、あんなもんに付き合いきれるか。」
一部始終を見た関翔は、逃げる準備にかかる。
とりあえず南米にでも高飛び…

!!??

文字通り。地に足がついていない?
振り返ると、自分の首根っこを指2本でホールドして、悠々片腕で持ち上げる男…ビキニパンツ一丁!?
そして巨大な筋肉の城…。


まだ回っているカメラを見つけ、高志は呼びかけた。
「これから、華国や新鮮国は様々な攻撃を更に激しく、狡猾に加えてくるだろう。
みんなは、日本の国に誇りを持って、堂々と持ち場を守ろう。
俺は日本の、陛下の剣となり盾となり、正義の鉄槌を奴らに加えつづける。
改めて今気付いた。それが、俺の天命だ。」

拳の価値は 第一部 完結
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