そして、魔王は蘇った〜織田信長2030〜 目指すは日本復活と世界布武!?

俊也

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宣言

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「ちょっと泰年~あたしがバイトから帰っても寝てるなんてナニ考えてんの?メシだっての!てか今夜はお父さん帰ってるし。」
「姉」の声で目が覚める。まぁ身体は爽快であるが。
今の時間は?
いかん、令和の刻限における、20時25分…。これでは…。
膳の間に入ると、卓に見知らぬ男…。こやつが「父」であるか…。貌を一瞥して理解出来た。
信秀(おでい)とは…比較するもばかばかしいか。
志田同様、日々の労苦にひたすら消耗しただけの…。
「聞けば色々疲れてるみたいだな。泰年。」
なるべく子に気を使うような貌と語り口。
ワシの方もなるべく温和な貌と発声を心掛ける。
「ふむ…うぬ…いやそなた達が、ワシを気が違うたと思うてしまうのも無理はない。もしワシが天正の世に、そう曰う者に出おうたら同じ思いしか抱かぬであろう。しかし誠に、ワシは織田三郎信長であり、それ以外の何者でもないのだ。
だが、そなた達にとってはワシは黒田泰年である事。これも誠。
故に直ぐに信長と呼べなどと無理強いはせぬ。
当面は泰年とよんでもかまわぬ。
そしてワシは此処に間借りした上、馳走にもなっておる身。
ひとつの礼節として、そなたらをそれぞれ、親父殿、姉上と呼ぶことにする。無論のちのち形あるものでお返しも致す。」
「あ、ああ。なるほど…」
ワシは卓に座る。
「おおこれは美味そうな、早速頂く。」
そう言ってワシは、飯をかき込む。
5分後。
「美味かったぞ。姉上。ひと風呂浴びてくる。」
「あ、あ、うん…」
「使い方」は既にこの家に何度となく泊まっているハルから聞いている。


…おお、実に素晴らしき心地。これが「ぼでぃそーぷ」と「しゃんぷー」か。単に人肌を清めるのみならず、まるで幼子や若き女子の肌になったかのような…そして、この湯船の…


「ねーお父さんどう思う?あれ…」
「うーん、ちょっと精神の異常などとは違うとおもうがなー。」
…当然、親父殿と姉上は、ワシに聞こえぬ前提で話しておるのであろうが…。
生憎令和の水準の耳では、戦乱の世は生き延びられぬ。
更にワシに関しては、お師さんに厳しく仕込まれておるでな。
「じゃーなんかキャラ作ってなりきってるとか?ハルくんから時々そういう時があるって聞いたけど、今回のは…」
「でも父さんはただの誇大妄想とも思えないんだよなあ。明らかなウソというのは、自分が織田信長であるというだけで。それ以外に話していることは理路整然としている。なにか、まるで信長が此処に実在していたらこう言うだろう…みたいな…」
ほうこの親父殿、なかなかどうして。
「えーじゃあ、お父さん信じちゃうの?」
「いやあそこまでは笑 でも泰年が明らかに怒鳴ったり暴れたりしないで、毎日普通に学校に行っている以上、しばらく様子見るしかないんじゃないか?」
実は既に怒鳴ったり暴れたりしているのだが。
「う、うーんわかった。」
…さて、何時迄も寛いでも居られぬ。ワシは湯船から上がる。
これで身体を拭くと申したな。これもまた…
ふむ、で…寝る際には何を着るのか。
2分後、姉の悲鳴が上がる。
「っきゃあああああああっ!?何見せつけてんのアンタ、別のベクトルでおかしくなったんじゃねーの!?せめてタオル巻けよ!ただでさえアンタはアレが無駄にアレなんだから!」
全裸のワシは、アレとは?と問い返しながら自身の股を見下ろす。
「コレのことか?何故か黒田泰年の身になってみたらこれであるからな。不可思議なものよ。ハハハッ、令和の世においてもコレは尋常にあらず、普通ではないのか。」
「勃○時38センチのドコが普通なのよ、てか着るものくらい事前に…あーもうっ!」
数分後、早くこれ着なと投げつけられたものを纏い、自分の部屋に入る
ほう、これはまた動きやすい…と言うより急がねばならぬ。
ぱそこんを立ち上げる。
ねっとだ。ハルの書き付けどおり、指一本で…たいぴんぐなどと呼べる代物ではないが、検索窓とやらにまずは、3分掛かりつつも「織田信長」と書き込む。
まずは「うぃき」とやらで己の死後以降何が起きたのかを手繰っていかねば。
それにしても大したものだ。よくも此処まで調べたものよ。後世の史家達は…。
むろん微妙に違う所もあるが。
ふむ、やはり秀吉(サル)が天下一統したか。まぁ本能寺以前から漠然とは思っておったが。
清洲会議とやらで上手く立ち回ったものよ。
しかし彼奴、助平なくせに種が薄かったのか、世継ぎを授かるのが遅くなったのが痛かったな。
結局死後にすべてを持っていったのはタヌ公…家康か。
ようも耐えに耐え抜き、機を待ったものよ。
しかし、徳川幕府か…。
確かに、血の気の多い大名どもを従え、民百姓達を平伏させる為には最良の「しすてむ」を作り上げしは間違いない。
だが、鎖国とは悪手も悪手。
南蛮の新鋭の技巧文化を導入するのを、優に200年以上、ほぼ9割9分絶ってしまったのはあまりにも痛い。切支丹の動向と、それに続く南蛮の侵略が恐ろしかったのか?
だがその気になれば秀忠の代あたりで日の本の備えとてけして侮れぬ水準まで高められた筈。いま少し工夫は出来なかったのか…。
まぁ鎖国故の静謐と、後に南蛮の者たちからも称賛される独自の文化を築き得たのも確かじゃが。
その後の黒船来襲、討幕維新、文明開花の流れ、それを日本人ならではの奇蹟と讃える向きもあり、ワシも同調しないでもないが…反面間抜けにも映る。
事実、急造の政治機構、欠陥を抱えた憲法の歪みがもたらしたのが、太平洋戦争なる決定的な破局…。
しかもここで開発、使用された核兵器なるものの脅威が、現在に至るまでに日本という国を危機に晒している。
(額面上は)未だ世界一の超大国アメリカの庇護に頼り、日本の民は、いわゆる「戦後」においてぬるま湯の平和を謳歌しておるようだが…。
大体憲法九条とはなんなのか、ふざけておるのか?
それを念仏の如く唱えておれば他国は攻め入らぬとでも?
核兵器の雨が降ってこないとでも?
そんな根本的な意識すら無くしてしまったのか日本人は?
それを平成末期に変えようとしたのが自民田党、阿部史内閣…。
だが…何があった?
この十年に。
今は憲法民主党が統べる世。
総理大臣は…蓮根?女か…。
その過程…を…調べ…いかんさすがに眠うなった…。
べっどへ、潜る。
それにしても…
哀れなのは、お市の…最期よ。
ワシが執心し、若き頃から狂うたように何度も抱いた、わが、「従姉妹」…。
あの感触、律動…願わくば今一度…。


眠りに、落ちる…。


「ハル、昨日は手数をかけすまなんだな。おおよそ、この450年の流れは掴ませてもらったぞ、しかしネットとは今更だが素晴らしきものだな。パソコンのみならずスマホでも…学びと情報の宝庫なり。しかもSNSとやらで世界中と繋がりうるとは…」
学校へ着き開口一番、ハルと会うなりワシはそう言った。
無論、宮迫、梅沢など邪魔が入ることはない。
「おーノブ、いつの間にか横文字違和感なく使いこなしてんじゃん。やっぱ流石っすねぇ。」
「まあ三時間しか寝れなんだがな。しかも肝心のここ十年の経緯が今ひとつわからなんだ。そこらで眠うなってな。
何故やらかしは多々あったとは言え比較的安定しておった阿部史政権、実質代替の効かぬ与党であった自民田党を捨て…憲法民主党などというキ〇〇イの集まりしかおらぬ党を民草…国民は選んだのじゃ?
朝方ニュースで、蓮根総理とやらの国会演説を聞いたが、酷いなアレは…まだ田舎坊主の説法を半日聴いておった方がマシじゃ。」
「おう流石は信長公ってとこだな。その経緯なんだがな…」
そこに黒いとまでは言わぬが、「不快な気」が割り込んで来た。

「オラ出欠とるぞ!と、その前に…立てキサマら!」
(よりによって牟田口かよ…)
雅治(ハル)が微かに舌打ちする。
他の生徒達も似たような反応だった。
いずれにせよ、渋々皆立ち上がる。
後で聞いたが、生徒指導部長にしてこのクラスの体育教師、牟田口連屋だった。
「昨日捕まえた奴らが言うには、キサマら志田先生が体調悪くなったのをいいことにバックれて帰ったらしいな。担任代行のこの俺が落とし前をつける!」
流石に生徒達の表情が引きつる。
そこで牟田口が下卑た笑いを浮かべる。
「安心しろ、キサマら全員にとは言ってない。
誰か帰ることを煽った奴がいるんだろう。
そいつを制裁するだけで勘弁してやる。誰だ!?」
もう先が読めてしまった。
「黒田!」
「黒田です!」
「こいつですこいつ!」
3分の2の生徒が、一斉にワシを指差す。
「てめーか、つったくロクな生き物じゃねーな?何のために生きてんだ?
…オラ早く前に来い!」
立ち上がりかけたワシの腕をハルが掴む。
此奴、やはり意外と…
小声で囁いてくる。
「バカやめろ、お前が行くこたねぇだろ。正直に俺が言う…せんせ…」
ワシはハルの口を塞ぐ。
「よい、案ずるな。」
牟田口のもとへと歩み寄る。黒田の肉体、細胞の記憶が、これまでこの筋骨逞しい教師に受けた仕打ちを訴えている。
それに合わせるかのように、ワシはそれなりに演技をしつつ、怯えたような表情と姿勢をとる。
胸倉を掴んでくる牟田口。
「何度も言うが、親や教育委員会に訴えても無駄だからなぁ。俺の親父は与党系の県会議員の大物…」
齢40近くにはなるであろうに、未だそんな思慮で動いているのか。
内心呆れているワシをよそに、右の平手を振り上げる牟田口。
まぁ田所には及ばぬにせよ、此奴の膂力もなんやかや言って侮れまい。
「右の頬を…」
「あ?」
「打たれたら、左の頬を差し出せ。だったかの」
「ナニをゴニョゴニョ言ってんだテメーワ!!」
ばちんという音。
床に倒れ伏す黒田…ではなく、ワシ。
さすがにどよめく周囲。
牟田口の方は勝ち誇ってると思いきや、名状し難い違和感に顔をしかめていた。
それはそうであろう。
恐らくは牟田口も、令和の世なりに何かをやり込んだ男。アレが判らぬならただのうつけじゃ。
叩いたのに、叩けていない…
ワシは平手が飛んで来た刹那、皮一枚のみを叩かせ、(つまり音だけ派手に鳴らし)後は体躯をひねり受け流し、倒れ伏して見せたのである。
牟田口は残る鬱憤を晴らすかのように、怒声をあげる。
「俺とクラスの皆に土下座しろ!そうすれば停学、退学は勘弁してやる。」
やれやれ。これで基本的人権なんちゃらとは笑止なり。
ワシは言われるがままにした。
「申し訳ござら…ございません」
「ちっ…とっとと席に戻れ、出欠とるぞオラ!」

「ダッセー黒田。まぁいつもだけどよ」
「生きててなんか楽しいことあんのかな?」
「飛び降りればいいのに笑」
そんな声が聞こえる。
席に戻るワシに、すまねえと小声で囁くハル。
気に病むなと返す。

そして、昼休み。
「そんなことよりもだハル。この10年でナニがあったか、詳しく教えてくれぬか。
今度は2人で購買に行き、気分で「自分の」カネで買ったピザパンとやらを食しながら、問いかける。
「ああ、それはとりあえず、2020年秋の第二波コ○ナウイルスパニックに遡るな。」
「あの世界的疫病騒ぎか」
「そう、そこで経済面の混乱を危惧して、逡巡したのか阿部史内閣が第二次緊急事態宣言の発令が冬まで遅れてしまって…。死者数が5桁に跳ね上がってしまったんだよなぁ。そんで当時の野党は一転攻勢。蓮根筆頭に猛批判。
…まぁ宣言早く出したら出したらで批判するんだけどなアイツらは。」
「ふむ、世界的にもほぼ同様かそれ以上のパニックで、大恐慌に拍車がかかった…」
「うん、で、ネットとリアル双方で阿部史政権への、経済的に苦しい国民達の憎悪を煽ったのが…いまは貧困対策相でいらっしゃる山本山小太郎様って訳さ。」
「れいわ海援隊か…」
「そう、アイツらはソースも怪しいようなモリモリ問題の証拠とやらを何度となく蒸し返ししつこく拡散して…。
さらには阿部史総理夫人の不倫騒動だな。で、内閣支持率が20%切っちまって…自民田党内からの突き上げも厳しくなり…」
最後のピザパンをウーロン茶で流し込み、ワシは大きな溜息をつく。
「とどめは自民と曲がりなりにも連立してた、『光の党』の寝返りだな。」
「あの草原教会なるカルトと言う…そういう奴らを母体とした党が…」
「そう、多分それも山本山と、共産あたりが暗躍したんだろうけどな…まぁそれで衆院で、内閣不信任案が可決され2022年春に総選挙。
めでたく、日本初の女性総理大臣蓮根女史、連合政権誕生ってわけさ。」
「確か、真っ先にやったのが中国への尖閣と対馬の割譲…売却であったな。」
「そう、目先の10兆円につられてな、文字通りの売国奴だぜ…」
「…うつけにも程がある…」
そこで、ワシとハルの席のすぐ横の扉をノックする音。
「…お館様、御寛ぎの所失礼致します。」
「サルか…構わぬ。入れ。」
扉が開く。その顔を見て、周囲が軽くざわめく。
なにしろあの、椎名藤次「先輩」であるのだから。
こちらの足元にひれ伏そうとするのを慌てて制する。
「たわけ、周囲の目というものがある。今は立ったままでよい。それで、何かあったか?」
「は、まず昨日の一件に関する警察と学校の対応でありますが…。
一通り、田所含め喋れる様には回復したようですが…どうも警察への証言がバラバラで…他校の集団に襲撃されたとか、内輪揉めとかいってるようでして、警察も学校も訳が分からぬといった感じですね。」
「ふむ…」
ハルは、な?言っただろ?という視線をこちらに向ける。
「中に数名、『1人にやられた』と言ってる奴もいるみたいですが、怪我の状況から全員素手でやられたと分かっている警察は、ほとんど相手にしていない感じですね。
なにしろあの、アメリカのプロモーターと仮契約する程の豪腕田所と凶器(ドーグ)持った奴ら20何名を素手で1人で叩きのめすなんて、ここ令和の世ではアクション映画の世界ですから…。
まぁそんなこんなで、未だアイツらはお館様には当分辿りつけないのでご安心召されませ。」
「うむ、で、栄方面の動きは?」
「まだ動きはないっすね、そもそも昨日の一件を知らない奴らばかりですし、田所の側近が連絡取れないのを訝しんでるくらいですかね。
ただまぁあんな田所でも練習する時はスマホ切って集中して長時間やるって話ですし。逆に女や男の所に行ってることもありますし。
まぁこちらも当分は…」
「ようわかった。ご苦労、サル。これ位では足りぬであろうが取り急ぎの礼だ」
1万円札を2枚。断固固辞するサルに強引に押しつける。
「当分警察や栄の方は良い。こちらに来たら来たで考えれば良い事。それより別枠で頼みたき儀がある。」
「なんなりと!」
ワシはノートの1ページを破り、四つ折りにしたものをサルに渡す。
「なるべく早く、この件を調べてくれい。」
サルは一読し、文面そのものをスマホで写し取る。
「全力にて調べまする。では、授業も近いのでこれにて御免!」
足早に立ち去るサル。

「ねーちょっとアレ見た?」
「うん、あの怖い系の椎名先輩がキモヲタのあいつなんかにペコペコしてる…」
「しかもなんか黒田の奴、先輩の事サル呼ばわりしてたし。」
「あの屋上で田所先輩達がボコられたってのやっぱガチかよ…F組のツレに聞いたら梅沢も平瀬も来てないっていうし…
まさか黒田が?」
「ありえねー笑お前だって今朝牟田口とのアレ見ただろ。」
「訳わかんねー…なにがあったってんだよ…」

…そんな会話から意識を外し、ワシはハルに向き直る。
「何か言いたそうだから代わりに言ってやろう。世界一統とまで吹いたワシが、なぜこんな箱庭の中でケチな争いに巻き込まれたまま、くすぶっているのか、此処から一息に羽ばたくことを考えていないのか、というところか?」
「流石は信長公、で、お考えは?」
「…YouTubeであろうな、まずは。」
「はははっ!さすがだぜ!ノブの存在とカリスマを、手っ取り早く伝えるにはそれが一番。
で、俺に手伝えと?」
「うむ。泊りになるがよいか。」
「OK OK、久々にお前んとこのベッドで一緒に寝るのも悪くねえな!
心配するな、お前はただ思いの丈をぶつけるだけでいい。細かいことは任せとけ。はははっ。今から楽しみだぜ!」
やがて、午後の始業のベルが鳴る…。

放課後。
ともに帰路に着く二人。

家には誰もいない。姉君も大学なりバイトとやらなりに行っているようだ。
当然持たされている鍵で、扉を開ける。
「ちわー、おじゃましまーす。」
ハルも一応そう言いつつ上がり、男2人、密室に…
「よし、取り敢えずまずはお前のアカウントつくるぞ。
心配すんな。広告収入は全部ノブに入るようにしてやるから。」
パソコン…PCに向かうハル
「よう分かった。頼むぞ」
「うん、それとTwitterの方にも作らないとな。
プロフ写真は…あとでいいや。」
「成る程、拡散手段は多い程良いというわけじゃな…。」
「さすがよく分かっていらっしゃる…。」
「で、撮影の方は?」
「焦るな焦るな笑 まずはお互いシャワー浴びてスッキリしようや。大体カメラ映りってのがな…。」
「であるな。まずは客人のお前が先に…」
「いや、ノブが…ってか…」
「うむ、時間が勿体にゃあて。」
「一緒に入るかぁ!」

かくして青年2人は制服を脱ぎ、風呂場へ。

…ほう。
コレほどまでに均整のとれ、贅肉のかけらもなき見事な身体とはな。
数瞬見とれてしまう。
無論田所辺りの偉容には及ばぬ。
だがそれとは全く異質な機能美。
やはり此奴は…
ワシが思わずハルの胸筋に手を伸ばしかけた時。
先に握られた(・・・・)
「相変わらず無駄に…だな」
「まぁ、当面は綺羅以外には使わぬ。女子には。」
「あんなお姉ちゃんが居てねえ…まぁいいや、ちゃちゃっと洗うもん洗って出るぜ。」
微妙に「硬く」なったワシを見たハルは若干焦り、以降の手順を急ぐ。
そして、脱衣所兼洗面所に出て、互いに身体を拭く。
もちろん今度は部屋着を用意しておる。
ハルも体育着に着替えた。
ドライヤーなるものをかけ、外に…
「ちょい待て、お前そのボサボサ頭のままで世界に顔を晒すつもりか?」
「いかんのか?」
「いかんでしょ。…時間あれば行きつけの美容室紹介してっとこだが、しゃあない俺がやってやる。鏡向け。
一応自分用のワックス持ってきといて正解だったぜ…」
10分後、自身の顔と髪を見る。
正直、これで良いのかもわからぬ。
だがハルに任すしかない。

「あれー?ハルくん今日も?もしかして泊まってく?」
…姉上がお帰りか。
「はい。お世話んなります。すいませんシャワー頂きました。」
「あ、今夜お姉さんと寝たくなったぁ?」
ナニを考えておるのだこの姉君は。
「いやーマジそーしてえとこなんすけど、今夜はノブ…いやヤスと寝ますよ。なんだかんだ色々あるんで…」
「あっ…(察し)そう…うん、ゆっくりしていってね。ご飯美味しいの作ってあげる。」
「ありがとうございます!」
姉君は自室へと一旦引き上げる。
「さて、ちゃちゃっと取り掛かるかぁ!」
「うむ」
ワシらも自室に入り、撮影位置、カメラアングル等を慎重に選ぶ。
そして決めた位置にあぐらをかく。
「オッシ、したらカメラ用意すっか。スマホだけど。」
「ふむ。今更じゃがつくづく便利な世よ」
「だろうな。
よし、一分後にいくぞ。台本なんか…」
「無用なり。」
「よっしゃ。あと30秒。あとは存分にぶつけろ!令和に降りたった織田信長の全てを!」
3…2…1 |現在(いま)!




「令和の日本、そして、21世紀にいる世界の皆さん。
ワシは織田三郎信長である。
令和12年 2030年5月の世に、約450年の時を超え、日本の平凡な家庭の一青年の肉体を借りて蘇った。
こう申せばそなた達は当然…ワシが気が違ったと思うてしまうであろう。是非もなき事。
信じ難き思いは察する。だが、それが真実なのである。
さてワシは、ほんの2.3日、この日本のみにおいてであるが…。
21世紀の素晴らしき技術革新、絢爛なる文化を堪能した。
この今現在ワシが、こうして使っておるネット…これだけでも奇蹟…こうして世界…地球と繋がりうる訳であるからな。
だが反面。この世界、そして我が日本は如何か?
世界的な恐慌。日本においてさえ何処ぞのうつけな左翼政権の失政で失業率8%に迫る勢い、株価が8千を切っても誰も驚かぬ現状。
自殺者も昨年遂に5万を超えた。
海外に再び目を転ずれば、あの悪夢のコ○ナパニックが2023年にようよう収束しても、人種、民族間の差別憎悪が殊更に煽られ、各地で暴動激化、治安が崩壊しておるっ!
とくに額面上は未だ軍事、経済両面で最強であるはずのアメリカが…。
自治区が乱立し、分断崩壊寸前…。

お主ら、分かるか?
だれが暗躍し、この状況をもたらしたか?
そうアカ共、共産主義者だ!
やつらは最初は甘言をもっておぬしらに近づくであろう。
やれ人権尊重だ、最低賃金引き上げだ、女性への差別禁止だ、福祉の充実だ、自然の保護だ、平和主義だ、核廃絶だ、原発反対だなどと…。
 
うつけが!騙されるな!

とくにわが日本において、政財官、メディア…
その中枢にまで奴らは巣食っておる…
元々日本にルーツを持たず、内心日本精神を憎悪し、それらを隠しておる少ならからぬ連中と手を取り合いつつな…やがて世界中で同様に実行する実験台と日本を成し、人々が知らず知らず、アカの社会の到来を渇望するよう仕向ける。
このままでは日本国民を、そして陛下を、この国の良き伝統、精神の根本が破壊されかねん。
愚かにも現在の蓮根内閣…
奴らの中枢たる大国に媚び、尖閣対馬を売り渡したばかりか、こともあろうにここに来て空の護りF 35を全機赤い大国に売り払おうとしておるっ!!
全く見上げた大うつけ振りよ!
これで本来の同盟国たるアメリカの信を決定的に失い、在日米軍は再来年にも完全撤退…。
要衝沖縄の命運は風前の灯…。
友邦台湾は未だ陥ちずとは言え…
もし防共の防波堤たる日本が崩壊することあらば、一気呵成に奴らは全世界同時革命に踏み切り、赤い旗を世界中に翻すであろう。
では我らは何をすべきか。
共産主義者どもを根切り…即ち皆殺しじゃ!!

すべてのアカを皆殺し

|政治(まつりごと)にしゃしゃる宗教家を皆殺し

女性蔑視だなどと因縁をつけ日本の素晴らしきカルチャー、表現を萎縮させる過激派フェミニストを皆殺し

被害者面をなお繰り返し日本に寄生する一部外国人を皆殺し

反原発などと吹き周り日本のエネルギー源を奪い弱める活動家を皆殺し

リベラルを称し、瑕疵はあったにせよ日本を強めようとした阿部史政権を引き摺り下ろした左翼メディアを皆殺し

未だに大東亜戦争を虚言を弄してまで犯罪呼ばわりする奴らを皆殺し

このクニの形そのものでおわす天皇陛下、日の丸、君が代を葬ろうとする奴らを皆殺し


チベット、ウィグル、対馬を見よ。
ワシにもお主らにも、逡巡するいとまは、無い」


撮影を終え、ふとハルの顔を見ると、貌が紅潮し、息が荒くなっていた。
「凄い、凄えよノブ。この俺が、これほど…昂ったんだ。世界中に流せばどうなっちまうか。
…あははっ!ある意味怖くもあるな。」
「そうか。ハルに言われれば心強し。」
互いに躰を寄せ合う。
「ただ昂りはワシの説話故…のみではあるまい?」
「ああ、正直そうだ、ホントは編集、アップロードしてからと思ったが…」
「互いに抑えきれぬな、この昂り!」
「ああ!」
互いの身をベッド上へ移す。
ハルはワシに抱きつき、唇を押し当ててくる。





10分後、拭き取るべきものを拭き、呼吸が整ったところで、ふたりは接吻…キスを交わす。

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女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

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じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

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