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「決戦」に向けて…
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翌日の早番後、夕刻に僕は野村さんに電話を掛けた。
「お疲れのところすみません。また、例の球速測定と撮影をお願いしたくて…。」
「なんだ橋ちゃん。まだ諦めていなかったのか。」
そう言いながらも野村さんは一か月後…九月下旬の予定を調べてくれた。
その後はとりとめのない雑談…。
「橋ちゃん彼女はできたのか?」
「いえ、まだ…。」
「早く作りなよ。世界が変わるぜ?橋ちゃんは性格はいいから後は自信だけだな。頑張りや。」
杉野弥生の事を話そうか迷ったが、僕は見合わせた。
もし、すべてを話したら、野村さんはなんて言うだろう。
その後、予定の最終確認をする。
「橋ちゃんよ、前にも言ったけど、そろそろ…。」
「は、はい、わかっています。これを最後の賭けにするつもりです。これで駄目なら就職します。」
予備日も含め、パートナーを確保することが出来た。
あとは、全力を尽くすのみである。
その翌日は遅番で、僕は久しぶりに城田遥と一緒にシフトに入った。
比較的、営業的には暇であった。
「橋本さんって、まだ、野球のトレーニングやってるんですか?」
城田遥の方から、話しかけてくれた。
「うん。続けてるよ、来月末にスピードを図る予定。」
「へえ…凄いですね。何キロが目標ですか?」
「当面の目標は一三〇キロだけど、最終的には一五〇キロ以上を目指したいねぇ。それだけ出ればプロに入れると思うし…。まあ夢のまた夢だけどね、何とか奇跡を起こして見せたい。」
いつになく、舌が滑らかになる。
本来中々他者には恥ずかしくて言えないことだ。一部の人間を除いて。
「夢、ですか。いいですね。私にはまだそういうのないから羨ましいです。」
一組、お客様が来たので、応対をし、商品を渡す。
「城田さんも、学生生活を送るうちにきっと見つかるよ。夢。」
「そうですかね…そうですよね。」
下を向いて爪をいじっていた彼女が、不意に僕の方に向き直る。
「頑張ってくださいよ!一五〇キロ!その次は一六〇キロですよ!世界一目指しちゃってください!応援してます!」
僕は多分頬を赤らめていただろう。うん、ありがとう、頑張るよと答えた。
その台詞を聞き、彼女の制服の胸のふくらみを改めて見やって、僕は杉野弥生を「暫定彼女」として公表したことを少しだけ後悔した
「お疲れのところすみません。また、例の球速測定と撮影をお願いしたくて…。」
「なんだ橋ちゃん。まだ諦めていなかったのか。」
そう言いながらも野村さんは一か月後…九月下旬の予定を調べてくれた。
その後はとりとめのない雑談…。
「橋ちゃん彼女はできたのか?」
「いえ、まだ…。」
「早く作りなよ。世界が変わるぜ?橋ちゃんは性格はいいから後は自信だけだな。頑張りや。」
杉野弥生の事を話そうか迷ったが、僕は見合わせた。
もし、すべてを話したら、野村さんはなんて言うだろう。
その後、予定の最終確認をする。
「橋ちゃんよ、前にも言ったけど、そろそろ…。」
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予備日も含め、パートナーを確保することが出来た。
あとは、全力を尽くすのみである。
その翌日は遅番で、僕は久しぶりに城田遥と一緒にシフトに入った。
比較的、営業的には暇であった。
「橋本さんって、まだ、野球のトレーニングやってるんですか?」
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「うん。続けてるよ、来月末にスピードを図る予定。」
「へえ…凄いですね。何キロが目標ですか?」
「当面の目標は一三〇キロだけど、最終的には一五〇キロ以上を目指したいねぇ。それだけ出ればプロに入れると思うし…。まあ夢のまた夢だけどね、何とか奇跡を起こして見せたい。」
いつになく、舌が滑らかになる。
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「城田さんも、学生生活を送るうちにきっと見つかるよ。夢。」
「そうですかね…そうですよね。」
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「頑張ってくださいよ!一五〇キロ!その次は一六〇キロですよ!世界一目指しちゃってください!応援してます!」
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