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羽ばたく夢 牢獄の深さ
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ネットニュースを見ると、ファースト・ドア社の某テレビ局敵対的買収の動きが報じられていた。
「堀根氏の野望。とどまることを知らず。」
「プロ野球団に飽き足らず、今度はテレビ局に食指。」
「拝金主義者の化けの皮、剥がれる。」
「古き良き日本の慣習を破壊する男、堀根浩二」
マスメディアではそんな声が溢れているようであった。
だが。
僕は信じる。堀根氏が革命を起こしてくれると。
そしてその波に乗って、僕自身も自分の人生に革命を起こすのだ。堀根氏が財界なら、僕はスポーツ界で。いつか並び称される存在になって見せる。
思い描いた理想のカリスマに、僕はなれると信じていた。信じたかった。
三日経ったが、セカンドピクチャーからの返信は来ない。
ちょうど休日だったので、正午に弥生に駅前に呼び出された。
給料日ではないのでお金を無心される心配はないが、あまり長時間付き合わされるとトレーニングの時間が確保できなくなってしまう。
程々にとどめておきたいんだがな…。
駅前改札で待ち合わせし、互いが視界に入りかけた際、弥生が友人らしき女性とばったり出くわした。
僕は常々きつく言い含められている通りに、踵を返して弥生と距離を取り、女性の視界に入らないようにした。
…お互いの友人や、親兄弟に、二人の関係が露見することを極端に弥生は嫌がっていた。
(二人で歩いているとき、離れて歩いてと指示されることも一度や二度では無かった。)
「ああ良かった会えて。橋ちゃんが唯一の癒しだよ…。」
正式に恋人にする気はないくせに、弥生は事あるごとにそんなことを言う。
例によって駅前のマックで、彼女は仕事の愚痴を延々とこぼし、それに飽きるとなぜか芸能界のゴシップに話題を転じた。
「あの女優、二十五歳年上の俳優と結婚したんだよね。私もどうせするならそのくらい年上がいいな。」
一瞬僕は目を丸くした。
弥生が結婚を意識した発言をするとは。
だが。
「だってそれくらい男の方がオジサンなら、体の関係もそれほどなくてもいいでしょ。結婚しても絶対そういう関係は嫌だから。」
ああ、やっぱり弥生は弥生か。
男女間のスキンシップ、セックスにまつわるアレコレを頑なに拒絶する。
歪な恋愛観。
まあそういう考え方もありだろう。個人の自由だ。
だがこの僕はどうなる?
君一人が自分で作った牢獄の中に安住し続けるのは自由だが、現実には僕もそこに延々と投獄されているのだ。精神的、金銭的に縛られて。
かといって彼氏、恋人としての尊厳も与えられるわけでもなく…。
君にとって僕は何なんだ?
もっと言えば、君が考える二人のゴールってどこにあるんだ?
「堀根氏の野望。とどまることを知らず。」
「プロ野球団に飽き足らず、今度はテレビ局に食指。」
「拝金主義者の化けの皮、剥がれる。」
「古き良き日本の慣習を破壊する男、堀根浩二」
マスメディアではそんな声が溢れているようであった。
だが。
僕は信じる。堀根氏が革命を起こしてくれると。
そしてその波に乗って、僕自身も自分の人生に革命を起こすのだ。堀根氏が財界なら、僕はスポーツ界で。いつか並び称される存在になって見せる。
思い描いた理想のカリスマに、僕はなれると信じていた。信じたかった。
三日経ったが、セカンドピクチャーからの返信は来ない。
ちょうど休日だったので、正午に弥生に駅前に呼び出された。
給料日ではないのでお金を無心される心配はないが、あまり長時間付き合わされるとトレーニングの時間が確保できなくなってしまう。
程々にとどめておきたいんだがな…。
駅前改札で待ち合わせし、互いが視界に入りかけた際、弥生が友人らしき女性とばったり出くわした。
僕は常々きつく言い含められている通りに、踵を返して弥生と距離を取り、女性の視界に入らないようにした。
…お互いの友人や、親兄弟に、二人の関係が露見することを極端に弥生は嫌がっていた。
(二人で歩いているとき、離れて歩いてと指示されることも一度や二度では無かった。)
「ああ良かった会えて。橋ちゃんが唯一の癒しだよ…。」
正式に恋人にする気はないくせに、弥生は事あるごとにそんなことを言う。
例によって駅前のマックで、彼女は仕事の愚痴を延々とこぼし、それに飽きるとなぜか芸能界のゴシップに話題を転じた。
「あの女優、二十五歳年上の俳優と結婚したんだよね。私もどうせするならそのくらい年上がいいな。」
一瞬僕は目を丸くした。
弥生が結婚を意識した発言をするとは。
だが。
「だってそれくらい男の方がオジサンなら、体の関係もそれほどなくてもいいでしょ。結婚しても絶対そういう関係は嫌だから。」
ああ、やっぱり弥生は弥生か。
男女間のスキンシップ、セックスにまつわるアレコレを頑なに拒絶する。
歪な恋愛観。
まあそういう考え方もありだろう。個人の自由だ。
だがこの僕はどうなる?
君一人が自分で作った牢獄の中に安住し続けるのは自由だが、現実には僕もそこに延々と投獄されているのだ。精神的、金銭的に縛られて。
かといって彼氏、恋人としての尊厳も与えられるわけでもなく…。
君にとって僕は何なんだ?
もっと言えば、君が考える二人のゴールってどこにあるんだ?
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