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同胞相撃つ?一転攻勢

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正面!あれが、「反乱軍」です。
報告を受けたスメラギ方面軍将軍、ミュラーは顔を歪めた。
「くっ、面倒な事になった…」
いや、面倒で済めばよいのだが。
『あくまで我が方の兵士を多数害している反乱軍だ。
そちらの同胞とは言え、いや同胞だからこそ躊躇わずに鎮圧せよ』
アラカス軍からの命令に近い要請だ。
聞き及ぶ流れなら、例の魔導士の力量は悪魔的。
我が隊は甚大なる犠牲者を出すだろう。
かと言って、「反乱軍」側の勧告など受けられるはずがない。
皇国の騎士として、軍の秩序としての命令遵守。これは守られるべきことだ。
それ以前に、反乱軍になびいてしまったら…裏切りはしないまでも降伏や戦線離脱をしてしまったら…
チョーサカがアラカス艦隊の攻撃に……
投石射撃のみならず奴らは陸戦隊も船に囲っている…さらされてしまうだろう。
今の我が軍の半分以上はチョーサカに家族がいる。

つまりは、たとえ囮として未知の力相手に膨大な犠牲者を出しても、駐留軍の勝利に貢献しなければいけないのだ…。
みなが緊張と幾らかの恐怖を抑えつつ、足や馬を「反乱軍」に向け進める。
仕方あるまい…私が先頭を進み、任務を完遂しなければならない。
奴らとアラカスの板挟み、踏み台や捨て石にされたとしても…
次の瞬間。
何かが飛来した。
大量の…石つぶて!?
「ぐおっ!」
「があっ、目が、目があ!?」
「い、息が…」
ほぼ全軍が白煙に包まれ、馬も座り込み人も悶絶してしまう。

「クッ!役立たずが!
もう少しは粘れスメラギの連中は…!」
アラカスの軍師、将校達は舌打ちする。
「フン…だがこれで奴ら反乱軍は、同胞を魔術で葬るのと引き換えに…側面の高地にいる我々に隙を見せたことになる!
まさに時は今、全軍突撃!初撃で崩して後は包囲殲滅せよ!!」
「御意!」
件の魔導士が連続で力を振るったと言う報告はない。
よしんば振えたとしても間に合わない。
これまでとは軍勢の質と量が違いすぎる。
斜面で加速して一気に500mまで!
よし!
このまま押し潰せいい!
アラカス側将軍のコーディエは勝利を確信していた。

次の瞬間…。
完全に向こうへ向いているとばかり思っていた反乱軍が…正確には(彼らが精確には知らない)20式小銃の向きが、こちらに志向され…。
「はなてっ!!」
ドパパパパパパパパ!!!
これに実体化させた軽機関銃ミニミも加わる。
それら30丁前後と残り1000人は38式小銃。
そして俺の10式戦車の砲撃。
たったそれだけでも、この世界においては超魔術に等しい破壊力となるのである。
「ぐおおっ!」
「前衛の味方が!」
「怯むな!進め!肉薄すればこちらのものだ!」
「がっ、落ち着け、馬が!」

「前の仲間や…スメラギの奴らはこれにやられたのか!?」
確かにあまりにも…我々の思う戦争の概念を超えている。
武器や兵士の補強、治癒の補助に、我が国も魔導士を組織化して使っている。
だが、直接的戦闘能力として、誰かが最早神話レベルの超魔術を使っていると言うのは想像の斜め上すぎた。
無数の火箭を放つ謎の鉄火矢も、さらに恐るべき鋼鉄の虎も、その誰かがもたらしたものだろう。
よりによって、この私が率いる軍が相対する羽目になるとは…
ああクソが、ボウガンの射程の遥か手前で兵たちが斃れていく…。
退く…べきなのか!?

周囲の将兵も明らかに及び腰。
包囲をしようともちろん何度も万単位の兵力を迂回させてもすぐに察知され、鉄の虎や鉄火矢の餌食となる。

そして…。
じわじわと敵がその火力の嵐を纏いつつ
そのままにじり寄ってくる…。
ぐぬっ、どうすれば…。
!!
「狼煙はあげたか!?」
副官は一瞬なんのことかと思ったがすぐに気がついて答える。
「はっ、沖合の艦隊には攻撃、陸戦隊上陸命令を…
しかし返答も、艦隊が動いたとの報告も…。」
「………!?」

「向こうも上手く行ってくれたようだ。」
端末を覗き、俺は呟く。
距離を詰めてきた敵の一隊に120ミリ砲をぶっ放す。
そう、自爆用ドローン。
比較的小型のをたった8機だが、木造の戦艦に叩き込み大火災を起こさせるには十分であろう。
現に沖合いのアラカス艦隊は大混乱に加え甚大な損害とこちらの斥候からは報告が入っている。
その報が敵将に届くのももう少しだろう。
…少し早いが、仕掛けるか。

魔導兵器、召喚!
次の瞬間、アラカス軍の前面に10数両の鋼鉄の虎…!
10式も実体化した既存のとは別に3両
だが残りは…。
シルエットは似ているが戦車ではない。
89式装甲戦闘車。
それが全戦線に砲塔部分からの30ミリ機関砲弾の嵐を浴びせる。

さらには、上空からはA10が4機…
マシマシの鉄火の暴風を浴びせる。
「あひいいいいいいい!」
どうにかねじ伏せていた恐怖が決壊し、アラカス兵の大軍は雪崩をうって逃走する。
鉄の猛獣たちは鉄火の嵐と共に迫撃する。
「逃げるな!敵前逃亡は斬る…!」
将軍は自ら叱咤するが、副将たちは最早これまでですと将軍を後方へと馬ごと引っ張る。

この直前に、チョーサカ沖合の艦隊壊滅の報が司令部に届いていたのも大きい。
(なんなんだ、一体なんなんだ…
こんなのは最早戦ですらない…)
恐怖と屈辱に震えながらも、最低限の責任感で自軍に潰走でなく撤退という秩序を持たせようとするコーディエであった。

「よし!追撃やめい!
撃ち方もやめい!」
馬上からスルーズが叱咤し、高らかに勝利を宣言する。
万歳!
万歳!万歳!!

ふう、なんとかなったか…。
西風と共に、同胞スメラギがいた方角の巨大な煙幕が晴れていく。
どよめく俺の周囲。
最初に対したスメラギの護衛軍は、みな倒れ伏してはいたが、戦死者は居なかったのだ。
そう、大量の鎮圧用催涙弾。
それで馬に振り回されたり、悶絶し倒れ伏してずっと無力化されてはいたが…。時間が経てば行動力を回復できる状態だったのだ。
彼らを使役し、こちらに噛ませとしてぶつけたアラカス軍側が殲滅されたと勘違いしたのも仕方ないことだ。

とにかく、これで…。
「お分かりいただけましたかな?」
俺は、スメラギ護衛軍指揮官のミュラー将軍に向け声を張る。
どうにか立ち上がったミュラー。
苦笑しながら歩み寄り、俺の方からも近づいて最終的には握手を交わすこととなる。
これで我が「反乱軍」はより強力な戦闘単位となった…。
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