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大転換
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…この大敗北が、ソ連軍にとっての戦力的破断界を超える損害をもたらしてしまった。
開戦時から戦略爆撃機B―29によるソ連各地への工業地帯への爆撃が行われており(千島列島、満州、および中国国民党軍勢力圏からも発進していた)それが戦術レベルでの損害ともどもボディーブローのように効いてしまったという状態である。
(ここ最近はジェット迎撃機によるこちらの損害も多かったが。)
特にここ1年間は、人民の生活インフラを圧迫し、無理に無理を重ねた兵器増産、兵力動員体制であったのである。
それらが様々な面で破綻しかけていた。
今までのような潤沢な兵力補充が途絶えてしまったソ連軍の戦線は各所で崩壊し、再び連合軍がソ連領に侵入する。
秋の泥濘期は若干進撃が鈍ったが、11月に入ると再び進撃スピードを取り戻した。
スモレンスクを抜き、寒波をものともせずヴィヤジマを奪取。モスクワへと迫る連合軍。
ソ連側もモスクワ前面に兵力をかき集め、絶対阻止の構えである。
12月2日
モスクワ クレムリン 大会議室
「戦闘人員は揃いました。ですが正面装備が十分では御座いません、質も量も…。
正直連合軍相手にまっとうな戦闘が出来るとはとても思えません。」
「コ~ネフ君…」
同志書記長閣下は新たな最高司令官代理の名を呼ぶ。
「君もジュ~コフともどもシベリアへ行くか?んん~?」
「同志スターリン、私はあくまで純軍事的な成算のお話をしておるのでありまして…。」
「コーネフ殿!偉大なる同志スターリンはあくまで貴殿に資本主義者どもの打倒を望んでおられる!
それはわれらが人民全てが乗り越えねばならぬ試練だ!
だとすればいかに成算が低かろうがそれに邁進するのが貴殿の務めであろうっ!」
ラヴレンチー・ベリヤNKVD(内務人民委員部)長官は、みごとなまでにスターリンに追従して見せた。
コーネフは唇を噛む、腹を決めて、勝ち目のない戦場に行くしかないのか…。
「無理なものは無理だ。お前たちが首を括るしかない…。」
⁉
誰だ!
会議室の扉が勢いよく開け放たれ、数十名の武装した兵士たちが乱入してきた。
スターリン、ベリヤ、その他の高官たちに銃を突きつける。
「貴様ら!なんの真似だ!」
べリヤが怒鳴る。
「お静かに。たった今より、あなた方の権力を剥奪させていただきます。」
兵士たちの中から、一人の将官が進み出てきて、そう言った。
「貴様は…ニキータ・フルシチョフ!!一介の政治委員でありながら…こんな…。だいたいわが腹心…
NKVDの警備兵たちはどうした?」
「NKVD?彼らは既に我々に降伏したぞ?腹心というが結構あなたの事を恨んでいたぞ皆…。」
ベリヤは歯ぎしりした。
フルシチョフはスターリンの方に向き直る。
「スターリン。あなたが前線で流させた何千万もの人々の血の恨みが、今こうしてあなたに跳ね返って来たとご理解いただきたい!
夫を亡くした妻。子供を亡くした親。親を亡くした子の恨み。全てが、だ。
軍にも警察にも我々の同志は多数いる。
連合国と講和をし、このソビエトを、いやロシアを人民の為の国家に作り替える。」
言われているスターリンは俯いたまま返事をしない。
「コ、コーネフ元帥!何をしとるかっ!」
ベリヤは喚いた。
「軍のトップたる君が何をぼさっとしとるか!ただちにこいつらを逮捕しろ!射殺しろ‼
人民の敵を粛清しろッ‼」
コーネフは頷き、ゆっくりと立ち上がった。
そしてトカレフを抜き、撃った。
べリヤの脳天に向けて。
コーネフに向けて目を見開いたまま、ベリヤは仰向けに倒れた。
高官たちは一斉に両手を挙げ、自分たちには抵抗の意志がないことを示す。
「スターリン、あなたは殺さない。あなたには強制労働所に入っていただき、今まであなたが弾圧した者たちの塗炭の苦しみを味わっていただく…。」
「…。」
「聞いているのか!おい!」
フルシチョフはスターリンに平手打ちを浴びせた。
床に倒れこむスターリン。その体は小動物のように震えていた。
「ひいい…痛い…痛い…許して…パパ…。」
フルシチョフは大きくため息をつくと、連れて行け、と部下に命じた。
そして各官庁とラジオ局の制圧が終わった旨報告を受けると高らかに宣言した。
「ロシア全土、および全世界に向けて放送せよ、暴君が倒れた、と。
そして連合国に講和の申し入れをするのだ!」
開戦時から戦略爆撃機B―29によるソ連各地への工業地帯への爆撃が行われており(千島列島、満州、および中国国民党軍勢力圏からも発進していた)それが戦術レベルでの損害ともどもボディーブローのように効いてしまったという状態である。
(ここ最近はジェット迎撃機によるこちらの損害も多かったが。)
特にここ1年間は、人民の生活インフラを圧迫し、無理に無理を重ねた兵器増産、兵力動員体制であったのである。
それらが様々な面で破綻しかけていた。
今までのような潤沢な兵力補充が途絶えてしまったソ連軍の戦線は各所で崩壊し、再び連合軍がソ連領に侵入する。
秋の泥濘期は若干進撃が鈍ったが、11月に入ると再び進撃スピードを取り戻した。
スモレンスクを抜き、寒波をものともせずヴィヤジマを奪取。モスクワへと迫る連合軍。
ソ連側もモスクワ前面に兵力をかき集め、絶対阻止の構えである。
12月2日
モスクワ クレムリン 大会議室
「戦闘人員は揃いました。ですが正面装備が十分では御座いません、質も量も…。
正直連合軍相手にまっとうな戦闘が出来るとはとても思えません。」
「コ~ネフ君…」
同志書記長閣下は新たな最高司令官代理の名を呼ぶ。
「君もジュ~コフともどもシベリアへ行くか?んん~?」
「同志スターリン、私はあくまで純軍事的な成算のお話をしておるのでありまして…。」
「コーネフ殿!偉大なる同志スターリンはあくまで貴殿に資本主義者どもの打倒を望んでおられる!
それはわれらが人民全てが乗り越えねばならぬ試練だ!
だとすればいかに成算が低かろうがそれに邁進するのが貴殿の務めであろうっ!」
ラヴレンチー・ベリヤNKVD(内務人民委員部)長官は、みごとなまでにスターリンに追従して見せた。
コーネフは唇を噛む、腹を決めて、勝ち目のない戦場に行くしかないのか…。
「無理なものは無理だ。お前たちが首を括るしかない…。」
⁉
誰だ!
会議室の扉が勢いよく開け放たれ、数十名の武装した兵士たちが乱入してきた。
スターリン、ベリヤ、その他の高官たちに銃を突きつける。
「貴様ら!なんの真似だ!」
べリヤが怒鳴る。
「お静かに。たった今より、あなた方の権力を剥奪させていただきます。」
兵士たちの中から、一人の将官が進み出てきて、そう言った。
「貴様は…ニキータ・フルシチョフ!!一介の政治委員でありながら…こんな…。だいたいわが腹心…
NKVDの警備兵たちはどうした?」
「NKVD?彼らは既に我々に降伏したぞ?腹心というが結構あなたの事を恨んでいたぞ皆…。」
ベリヤは歯ぎしりした。
フルシチョフはスターリンの方に向き直る。
「スターリン。あなたが前線で流させた何千万もの人々の血の恨みが、今こうしてあなたに跳ね返って来たとご理解いただきたい!
夫を亡くした妻。子供を亡くした親。親を亡くした子の恨み。全てが、だ。
軍にも警察にも我々の同志は多数いる。
連合国と講和をし、このソビエトを、いやロシアを人民の為の国家に作り替える。」
言われているスターリンは俯いたまま返事をしない。
「コ、コーネフ元帥!何をしとるかっ!」
ベリヤは喚いた。
「軍のトップたる君が何をぼさっとしとるか!ただちにこいつらを逮捕しろ!射殺しろ‼
人民の敵を粛清しろッ‼」
コーネフは頷き、ゆっくりと立ち上がった。
そしてトカレフを抜き、撃った。
べリヤの脳天に向けて。
コーネフに向けて目を見開いたまま、ベリヤは仰向けに倒れた。
高官たちは一斉に両手を挙げ、自分たちには抵抗の意志がないことを示す。
「スターリン、あなたは殺さない。あなたには強制労働所に入っていただき、今まであなたが弾圧した者たちの塗炭の苦しみを味わっていただく…。」
「…。」
「聞いているのか!おい!」
フルシチョフはスターリンに平手打ちを浴びせた。
床に倒れこむスターリン。その体は小動物のように震えていた。
「ひいい…痛い…痛い…許して…パパ…。」
フルシチョフは大きくため息をつくと、連れて行け、と部下に命じた。
そして各官庁とラジオ局の制圧が終わった旨報告を受けると高らかに宣言した。
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