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機動防御!!

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3月5日
総統大本営ヴォルフスシャンツェp. 21
戦勝の報告が、次々ともたらされてくる。
僕は大会議室のテーブルの上で、地図を睨みつけていた。
(さすがはマンシュタイン!まさに芸術的な用兵だ…。)
「これでハリコフ方面の敵は概ね排除できましたな。あとはハリコフ市街への突入
あるのみ…。」
カイテルの言葉に、僕はゆっくりとかぶりを振った。
「いや、恐らくマンシュタインは直ぐには市街地突入させたりはしないだろう。
強引にやれば市街戦が泥沼化し、スターリングラードの二の舞になりかねん。」
はたしてマンシュタインはSS第2機甲軍団を主力とし、ハリコフを徐々に締め上
げる戦略を採った。
8日にはハリコフ北方のチルクヌイを奇襲占領。北東からハリコフに蓋をする。
9日にはハリコフ~ベルゴロドの線を抑え、周辺の残敵を掃討し、ハリコフを完全
包囲する。
満を持して、パイパー戦闘団が先頭を切りハリコフ市街に突入する。
もはやソ連軍にまともな戦力は残っておらず、14日にはハリコフは陥落した。
「フォッフォッ、仕上げにもそっと分捕って戦線を安定させるとするか のう。」
ハウサー率いるSS機甲軍団はハリコフからさらに北東へ進み、ベルゴロドをも陥
落させる。
さ ら に ク ル ス ク 方 面 に 大 き く 突 出 し た ソ 連 軍 に 猛 攻 を か け よ う と 目 論 ん だ マ ン シ
ュタインであったが、雪解けによる春の泥濘期に入り、装甲車両の移動に大きく制
限がかかってしまったこと、友軍も疲弊し休養を必要としていることなどから断念。
ここに独ソ戦線は一旦小休止に入ることとなる。
僕は大本営で一人、地図上の一点を指で叩いていた。
今回のこの流れはほぼほぼ「史実」通りだ。
南方軍集団が僕に早期からフリーハンドの権限を 与えられたことで、もしかしたら
多少戦果は増えているかもしれないが。
正念場はここから…。
僕の最高司令官としての力量が試されるのは…次だ!
指先には「Kursk」と記されていた。
執務室で僕は一人腕組みし、クルスク方面の地図上に機甲部隊を現す駒を並べる。



青が我が軍、赤がソ連赤軍である。

(この、大きく突出したソ連軍大兵力を如何に潰すか…。
やはり史実どおり南北からの挟撃しかないか…。

史実だとヒトラーはⅤ号戦車パンターやフェルディナント駆逐戦車といった新兵器の数が揃うのを待ったため、ソ連側に十分な防御陣地構築等の対策をする時間を与えてしまっている…。
さらに時間を失ったことによりアメリカとイギリスのシチリア上陸を許してしまい、作戦中止の憂き目にあう…。
では早く仕掛けるのがよいのかというと、なんとも言えん…。
史実のそれなりに大きな戦果も装備の充実を待ったが故とも言えるしな…。
もう少し攻め筋を考えねば…)
ああ、腹が減った。


ノックの音、従卒が食事を運んできた。

なんだこれは…

数種類の野菜を入れたスープの中に、3個ほどの挽肉の大きな塊がごろり…。
いい匂いだ。
スープをすする…旨い。
肉と野菜の出汁が効いていて…。
挽肉も合い挽き肉っぽかったが美味だ。
枯れかけていた脳みそに再びエネルギーが沸いてくる。

後で聞いたらダンプリングというドイツの家庭料理らしい。
これも時折、リクエストすることにしようか…。


食後、コーヒーをすすりながら再び地図と睨めっこ…していると、ボルマンが入ってきた。
「総統閣下、恐れ入りますが…その…フロイラインが直接大本営にお見えです。
今は別室にてお待ちいただいておりますが…」
「フロイラインって…」
言いかけて僕は気がついた。この時点でアドルフ・ヒトラーに関連付けられる女性は一人しかいない…。
「わかった、すぐに行く。」


「ごめんなさい、なんども手紙を書いたのだけど返事がないものだから…
あなたの軍務の邪魔をしてはいけないとは思っていたんだけど…。」
僕の私室に入るなり、エヴァ・ブラウンは目を潤ませそう言った。
美しさというより、一種の母性を感じさせる容貌だ。

「い、いや、こちらこそ済まない。けして君の事を忘れていたわけではないんだ。」
取り繕うようにそう言ったが、実際は「僕」にとって初めて会う女性なのだ。
それでもぎこちなく抱きしめる。
かすかに肩が震えているのは、僕やまわりの状況に一種のおびえを抱いているが故か。

「アドルフ…会わない間に、何か、変わった?」
ぎくりとした。
「い、いや、どうかな、ここ最近疲れているからじゃないかな…。」
狼狽や焦り。
…それらとはまったく別のものがむくむくと湧き上がってくる。

30歳そこそこの、程よく豊満な肉付きの女性に対して、20代の男がもっとも容易にいだくであろう衝動…。
僕はエヴァに強引にキスすると、そのままベッドに押し倒した。
「アドルフ…?」
当惑はしたが、軍服を脱ぎ捨て、衝動を解放した僕に、エヴァは逆らわなかった。




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