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さらに目覚めゆく意志
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都内某所のシティホテル。
結局、あの直後けだもののように交わるにとどまらず、こうして場所を改めてほぼ一晩継続…
2人してベッド上で朝を迎えてしまった。
「あそこから…貴方ならいくらでも逆転手段はあったはずでしょう?」
絵里香の質問に、苦笑で返す相澤。
「結局…貴方は何者なの?」
「まだ完全には思い出せない。
確かなのは暴力に対しては徹底的に暴力で返し、自分自身の自由をずっと保ち続けるもの…と言うだけだ。」
「…よくわかんないような、わかるような…笑」
「君は何故?
好き好んで生命の保障のない場所に?」
一呼吸置いて、絵里香は語り始めた。
「実は、もう殺してはいるんです」
ほう。
「小学校6年生の時…
公園の公衆トイレに侵入してきた男に、洗面台の所で羽交締めにされかけて…。
無我夢中で手を振り回したら、何故か相手が異常に痛がって…。
そのまま、衝動的に顔面を殴ったら動かなくなってしまったんです。
人がいなくて幸いでした。
返り血もそれほどなかったので、水飲み場で手と顔を洗って、動悸と呼吸の乱れがおさまるの待って家に帰って…。
両親も多分訝しんではいたんでしょうけど、子供なりに辻褄を合わせようと、なんか気持ち悪い男がいたから走って帰って来たと言ったら納得したし…。
女子トイレで撲殺されていた男のニュースが流れた時も、辻褄は合ったと思ってもまさか12歳の娘その本人がとは思いませんからね。
その後しばらくは保護者同伴の集団登下校にはなりましたが、私の所には警察官が形式的に声がけに1回来ただけで、後は何も…。
ただ、そう言うのとは別に、この手に残った感触は忘れられなくなりまして…
何かを殴りたい、壊したい衝動。
望まずに得てしまった力。
どこにぶつけたらいいかと悩んで結局親に頼んで空手道場に通わせてもらう事にしました。
勿論そこでも全力で解放したりなんかできませんけど、適度な発散と同時に力の制御方法を学んだと言う感じですね…。
何度か関東地区や全国区の大会で加減しながらも優勝したりして、それなりに達成感も味わって就職してこの年にもなりましたが…。」
「結局、抑えられてないと。」
「そう笑。
昨日のはイレギュラーですけど、ああいう治安悪いところで私なりに露出の多い服着て
そういう輩どもを誘い出しては叩きのめす。
それが習慣化しちゃって。
しょうがない、もう身体が収まらないんだから。
定期的に貴方の同僚だった時もこっそりやってた…」
「なるほどねえ…
どの道戻れないところまで来ていたんだな。」
ホテルのビュッフェで出される朝の軽食では足りないので、チェックアウトの後に手頃なファミレスに寄り、思い思いのメニューで空腹を満たす。
「さて、しばらく俺と行動を共にしたいのは仕方ないが…。
君の身体能力を十分評価してなお、不安はあるわけだ。
なにしろ君のリーチ自体は170センチ前後しかないわけだからな…。」
絵里香は相澤の言わんとしていることをすぐに理解したようだ。
渋谷へと、とりあえずは電車移動。
傍目には歳の離れたビジネスパーソンの男女の移動にしか映るまい。
「すぐ近くに…行きつけ…あるんだが。」
例の店…だった。
「おや?
物のメンテや補充には早いようだが?
後ろのお嬢さんかね?」
「そうだ。
前紹介だけしてもらったアレを買い取りたい。
俺では取り回し…出来ないことはないが場所や状況を選ぶ。
『彼女なら』ありふれた日常の用品として使いまわせる。」
例の店主…シゲ爺は目を剥いたが、すぐに表情を戻し、奥の間へと手招きをする。
横須賀 在日アメリカ軍司令部
「CIAの調査官殿が、日本くんだりまで何のご用かね」
厳めしいセキュリティの管理下にある司令官室で、部屋の主のロベルト・メンチ中将は疲れたように言った。
大陸からの軍事的威嚇にいささか消耗しているようだった。
「はい。
是非ともお耳にいれたき儀が。
マサハル・アイザワがどうやら再び動きはじめたようです。」
なにっ。
驚愕は示したが、メンチ将軍自身は都市伝説程度の知識しかない。
世界の闇社会で奔放に振る舞い、凶猛なマフィアも大国の警察機構や軍隊も手が出せない。
ただの1人の男。
そんな奴が実在するのかと話半分以下に聞いてはいたが…。
しかし、こうして上からの伝達がある以上が真実なのであろう。
軽い戦慄。
「基本的に、閣下の麾下の在日米軍に具体的にどうこうというのはありません。
しかし、末端の…裏社会スレスレの所で遊んでいるような兵の素行には意を用いて頂きたい。
憲兵にも因果を含めて。
何かの拍子に鉢合わせをする、火種を撒いてしまう可能性はゼロではありません。
後は、銃火器の横流しの類いには気をつけて、軍を縛りすぎない程度の綱紀粛正をお願い致します。」
腕組みをして唸るメンチ。
極東の島国とは言え、自国の大使館以外には普段は遠慮することなく、貴族のように振る舞えるポストに就けた…というのは甘かったようだ。
しかし、本当の本当に実在していたとはな。
一応は暴力を専門化、精密化するプロの1人として、そのマサハルなる男が今後何をするのか純粋な興味がないと言えば嘘になる…。
結局、あの直後けだもののように交わるにとどまらず、こうして場所を改めてほぼ一晩継続…
2人してベッド上で朝を迎えてしまった。
「あそこから…貴方ならいくらでも逆転手段はあったはずでしょう?」
絵里香の質問に、苦笑で返す相澤。
「結局…貴方は何者なの?」
「まだ完全には思い出せない。
確かなのは暴力に対しては徹底的に暴力で返し、自分自身の自由をずっと保ち続けるもの…と言うだけだ。」
「…よくわかんないような、わかるような…笑」
「君は何故?
好き好んで生命の保障のない場所に?」
一呼吸置いて、絵里香は語り始めた。
「実は、もう殺してはいるんです」
ほう。
「小学校6年生の時…
公園の公衆トイレに侵入してきた男に、洗面台の所で羽交締めにされかけて…。
無我夢中で手を振り回したら、何故か相手が異常に痛がって…。
そのまま、衝動的に顔面を殴ったら動かなくなってしまったんです。
人がいなくて幸いでした。
返り血もそれほどなかったので、水飲み場で手と顔を洗って、動悸と呼吸の乱れがおさまるの待って家に帰って…。
両親も多分訝しんではいたんでしょうけど、子供なりに辻褄を合わせようと、なんか気持ち悪い男がいたから走って帰って来たと言ったら納得したし…。
女子トイレで撲殺されていた男のニュースが流れた時も、辻褄は合ったと思ってもまさか12歳の娘その本人がとは思いませんからね。
その後しばらくは保護者同伴の集団登下校にはなりましたが、私の所には警察官が形式的に声がけに1回来ただけで、後は何も…。
ただ、そう言うのとは別に、この手に残った感触は忘れられなくなりまして…
何かを殴りたい、壊したい衝動。
望まずに得てしまった力。
どこにぶつけたらいいかと悩んで結局親に頼んで空手道場に通わせてもらう事にしました。
勿論そこでも全力で解放したりなんかできませんけど、適度な発散と同時に力の制御方法を学んだと言う感じですね…。
何度か関東地区や全国区の大会で加減しながらも優勝したりして、それなりに達成感も味わって就職してこの年にもなりましたが…。」
「結局、抑えられてないと。」
「そう笑。
昨日のはイレギュラーですけど、ああいう治安悪いところで私なりに露出の多い服着て
そういう輩どもを誘い出しては叩きのめす。
それが習慣化しちゃって。
しょうがない、もう身体が収まらないんだから。
定期的に貴方の同僚だった時もこっそりやってた…」
「なるほどねえ…
どの道戻れないところまで来ていたんだな。」
ホテルのビュッフェで出される朝の軽食では足りないので、チェックアウトの後に手頃なファミレスに寄り、思い思いのメニューで空腹を満たす。
「さて、しばらく俺と行動を共にしたいのは仕方ないが…。
君の身体能力を十分評価してなお、不安はあるわけだ。
なにしろ君のリーチ自体は170センチ前後しかないわけだからな…。」
絵里香は相澤の言わんとしていることをすぐに理解したようだ。
渋谷へと、とりあえずは電車移動。
傍目には歳の離れたビジネスパーソンの男女の移動にしか映るまい。
「すぐ近くに…行きつけ…あるんだが。」
例の店…だった。
「おや?
物のメンテや補充には早いようだが?
後ろのお嬢さんかね?」
「そうだ。
前紹介だけしてもらったアレを買い取りたい。
俺では取り回し…出来ないことはないが場所や状況を選ぶ。
『彼女なら』ありふれた日常の用品として使いまわせる。」
例の店主…シゲ爺は目を剥いたが、すぐに表情を戻し、奥の間へと手招きをする。
横須賀 在日アメリカ軍司令部
「CIAの調査官殿が、日本くんだりまで何のご用かね」
厳めしいセキュリティの管理下にある司令官室で、部屋の主のロベルト・メンチ中将は疲れたように言った。
大陸からの軍事的威嚇にいささか消耗しているようだった。
「はい。
是非ともお耳にいれたき儀が。
マサハル・アイザワがどうやら再び動きはじめたようです。」
なにっ。
驚愕は示したが、メンチ将軍自身は都市伝説程度の知識しかない。
世界の闇社会で奔放に振る舞い、凶猛なマフィアも大国の警察機構や軍隊も手が出せない。
ただの1人の男。
そんな奴が実在するのかと話半分以下に聞いてはいたが…。
しかし、こうして上からの伝達がある以上が真実なのであろう。
軽い戦慄。
「基本的に、閣下の麾下の在日米軍に具体的にどうこうというのはありません。
しかし、末端の…裏社会スレスレの所で遊んでいるような兵の素行には意を用いて頂きたい。
憲兵にも因果を含めて。
何かの拍子に鉢合わせをする、火種を撒いてしまう可能性はゼロではありません。
後は、銃火器の横流しの類いには気をつけて、軍を縛りすぎない程度の綱紀粛正をお願い致します。」
腕組みをして唸るメンチ。
極東の島国とは言え、自国の大使館以外には普段は遠慮することなく、貴族のように振る舞えるポストに就けた…というのは甘かったようだ。
しかし、本当の本当に実在していたとはな。
一応は暴力を専門化、精密化するプロの1人として、そのマサハルなる男が今後何をするのか純粋な興味がないと言えば嘘になる…。
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