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迫り来る脅威?
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「何があったってんだ。」
警視庁組体4課長は内心で頭を抱えた状態。
広域指定暴力団の一角。
その本営が壊滅。
戦闘力を有した構成員は全滅。
幹部の愛人や女中格の者達も混乱して証言は支離滅裂。
「こいつは…全面抗争の火種というレベルじゃありませんよね。」
側近の言に、4課長は頭を掻きむしる。
「ぐぬう。
大陸系マフィアでもここまで徹底するかどうか…。
ヤクザが雇う殺し屋というよりは、軍隊…特殊部隊員がやったような手馴れた感すら感じる…。」
一方、同じ警察でも地方の所轄で、違う角度で思いを巡らす者もいた。
「ですから、この相澤雅治という男を追って下さい。
こいつが上司に何がしかの加害をしてドロンした前後に、暴力団員達の大量殺害事件があった。
どうにもそれが見過ごせんのです。
結果的に無関係だったにしても、この男が傷害の重要参考人となりうることには変わりない…。」
署長は首を捻る。
「まあ、わからんでもない。
馬場くんの言っとることは。
だが、どうにもできんではないか。
法医学の先生方が、現在意識不明の被害者の怪我は事件性証明できずとしておる。
一応こちらでも本庁に報告をして、あとは任せる以外ないだろう。
各方面にカメラの記録等の照会要請くらいはできるかもしれんが、個人情報の踏み込んだ捜査めいたことを令状もなしには…。
それにお前さん自身、もっと他に仕事があるだろう?」
唸りつつも馬場警部補は引き下がらざるを得なかった。
ここか…。
都内下北沢にあるセーフティハウス。
多分そういうニュアンスで使っていたのだろう。
相澤の中の記憶の残滓がそう言っている。
例の店に行った時渡された鍵をつかんだ時、何かの信号が脳に灯ったのだ。
まあ、都内ではそこそこのマンション。
だが、べつに特段セキュリティが厳しいわけでも、飛び抜けて高級感があるわけでもない。
だからこそ紛れ込めるわけで。
家賃も多分先付けで払ってしまっているのだろう。
あっさりと入室できてしまう。
流石に埃にまみれた感はある。
しかし元々最低限のものしか置いていないので、汚部屋と言うにも程遠い。
スミに畳んであった毛布に消臭除菌スプレーを振りまき、とりあえずの安息の場とする。
武器や服装の整理もしたいが、まずは休んでからだ…。
「あれは、明らかに…。」
新宿歌舞伎町の地下。
大陸系マフィアグループ
「チードラゴンズ」
その幹部達が顔を揃えていた。
「ヤツが生きていて、活動を再開したと見て間違いなかろう。
いくら日本のヤクザが腑抜けていても、じきにすぐ気付く。」
「5年前に自分が死んだと意図的に業界に噂をバラ撒いて、別人になりすましていた。
その説が真実とはな」
「長兄、いかがなさいますか?」
壮年の禿げ上がった男性は、腕組みをして唸る。
「居場所特定してプライベートを奇襲。
そんなことは無数の同業者が繰り返しては返り討ちに遭い、最悪潰されていた。
我々も間抜けな先代が兵隊を半分以上削られる失態をかつて…。
だので一つ商談をした。
まあ、餅は餅屋とこの国では言うらしいが…」
視線の先には、サングラス姿の男がいた。
体躯は引き締まった180センチ強。
しかし筋骨にモノを言わせるタイプではなさそうだ。
「明らかに奴にはブランクと言うハンデがある。
個人的には完全体でない奴を葬るのは気が引けますが…
フン…まあ、仕事として割り切りますよ。」
「クク…随分頼もしいな。
無事完遂すれば、月並みだが一生遊べる報酬は用意させてもらう。前金とは比較にならん程にだ。」
本当に殺れてしまえば、燃え尽きて冗談でなく稼業を上がるかもしれんな…
呟いた声は誰にも聞こえなかった。
カチャン。
メンテナンスを終える。
拳銃は2丁か。
あと一つ…違う種類の予備があれば心強いな。
段階が進めばライフルも…。
別個に服装も考えないと…。
そして…
別個に考えていかねばならないのは、まだ朧げな自分の記憶とアイデンティティだ。
とにかく全てが戻るまでは、周囲にまとわりつく暴力をそれを上回る超暴力で排除しつづける…。
敵対すれば殺す。
それだけはこの相澤雅治を貫く正中線だと言うことだけははっきりしている。
肉体も含め、常にベストコンディションとはいかなくとも「使える」道具を揃えておくことはマストである…。
それはそうと。
腹が減った。
街に溶け込むには、当然さりげなく外出は絶やさないようにしなければ。
矛盾するようだが、だからこそ。
近所のステーキ系ファミリーレストラン。
300gの牛肉にライス、そして大量のサラダ。
まあ、先日までのサラリーマン生活だったらば、こんなのでもたまの休みのプチ贅沢と堪能してしまうのだが。
腹が膨れ、コーヒーで一服すると外に出る。
そして電車を乗り継ぎ、新宿へ…。
警官とも何度かすれ違うが、小綺麗なスーツ姿の男に気を止めるものはいない。
一番の歓楽街。
その日中でも薄暗い路地裏に…。
…!
後方からの一撃!
日本刀か!
正確には細身にして仕込み杖に擬装した…。
「ギリギリ躱す勘は残っていたようだな。」
「誰が来るかと思ってたがお前か…。」
言いながらも既にサイレンサー付きのベレッタを数発放つ。
嫌な記憶を揺り起こされたぜ…
撃つ前に躱してやがる。
あらゆる感覚を磨き抜き、駆使してこちらの動きを全て読み取る男。
ー盲刀のリューク
肩口をギリギリ斬撃が掠める。
警視庁組体4課長は内心で頭を抱えた状態。
広域指定暴力団の一角。
その本営が壊滅。
戦闘力を有した構成員は全滅。
幹部の愛人や女中格の者達も混乱して証言は支離滅裂。
「こいつは…全面抗争の火種というレベルじゃありませんよね。」
側近の言に、4課長は頭を掻きむしる。
「ぐぬう。
大陸系マフィアでもここまで徹底するかどうか…。
ヤクザが雇う殺し屋というよりは、軍隊…特殊部隊員がやったような手馴れた感すら感じる…。」
一方、同じ警察でも地方の所轄で、違う角度で思いを巡らす者もいた。
「ですから、この相澤雅治という男を追って下さい。
こいつが上司に何がしかの加害をしてドロンした前後に、暴力団員達の大量殺害事件があった。
どうにもそれが見過ごせんのです。
結果的に無関係だったにしても、この男が傷害の重要参考人となりうることには変わりない…。」
署長は首を捻る。
「まあ、わからんでもない。
馬場くんの言っとることは。
だが、どうにもできんではないか。
法医学の先生方が、現在意識不明の被害者の怪我は事件性証明できずとしておる。
一応こちらでも本庁に報告をして、あとは任せる以外ないだろう。
各方面にカメラの記録等の照会要請くらいはできるかもしれんが、個人情報の踏み込んだ捜査めいたことを令状もなしには…。
それにお前さん自身、もっと他に仕事があるだろう?」
唸りつつも馬場警部補は引き下がらざるを得なかった。
ここか…。
都内下北沢にあるセーフティハウス。
多分そういうニュアンスで使っていたのだろう。
相澤の中の記憶の残滓がそう言っている。
例の店に行った時渡された鍵をつかんだ時、何かの信号が脳に灯ったのだ。
まあ、都内ではそこそこのマンション。
だが、べつに特段セキュリティが厳しいわけでも、飛び抜けて高級感があるわけでもない。
だからこそ紛れ込めるわけで。
家賃も多分先付けで払ってしまっているのだろう。
あっさりと入室できてしまう。
流石に埃にまみれた感はある。
しかし元々最低限のものしか置いていないので、汚部屋と言うにも程遠い。
スミに畳んであった毛布に消臭除菌スプレーを振りまき、とりあえずの安息の場とする。
武器や服装の整理もしたいが、まずは休んでからだ…。
「あれは、明らかに…。」
新宿歌舞伎町の地下。
大陸系マフィアグループ
「チードラゴンズ」
その幹部達が顔を揃えていた。
「ヤツが生きていて、活動を再開したと見て間違いなかろう。
いくら日本のヤクザが腑抜けていても、じきにすぐ気付く。」
「5年前に自分が死んだと意図的に業界に噂をバラ撒いて、別人になりすましていた。
その説が真実とはな」
「長兄、いかがなさいますか?」
壮年の禿げ上がった男性は、腕組みをして唸る。
「居場所特定してプライベートを奇襲。
そんなことは無数の同業者が繰り返しては返り討ちに遭い、最悪潰されていた。
我々も間抜けな先代が兵隊を半分以上削られる失態をかつて…。
だので一つ商談をした。
まあ、餅は餅屋とこの国では言うらしいが…」
視線の先には、サングラス姿の男がいた。
体躯は引き締まった180センチ強。
しかし筋骨にモノを言わせるタイプではなさそうだ。
「明らかに奴にはブランクと言うハンデがある。
個人的には完全体でない奴を葬るのは気が引けますが…
フン…まあ、仕事として割り切りますよ。」
「クク…随分頼もしいな。
無事完遂すれば、月並みだが一生遊べる報酬は用意させてもらう。前金とは比較にならん程にだ。」
本当に殺れてしまえば、燃え尽きて冗談でなく稼業を上がるかもしれんな…
呟いた声は誰にも聞こえなかった。
カチャン。
メンテナンスを終える。
拳銃は2丁か。
あと一つ…違う種類の予備があれば心強いな。
段階が進めばライフルも…。
別個に服装も考えないと…。
そして…
別個に考えていかねばならないのは、まだ朧げな自分の記憶とアイデンティティだ。
とにかく全てが戻るまでは、周囲にまとわりつく暴力をそれを上回る超暴力で排除しつづける…。
敵対すれば殺す。
それだけはこの相澤雅治を貫く正中線だと言うことだけははっきりしている。
肉体も含め、常にベストコンディションとはいかなくとも「使える」道具を揃えておくことはマストである…。
それはそうと。
腹が減った。
街に溶け込むには、当然さりげなく外出は絶やさないようにしなければ。
矛盾するようだが、だからこそ。
近所のステーキ系ファミリーレストラン。
300gの牛肉にライス、そして大量のサラダ。
まあ、先日までのサラリーマン生活だったらば、こんなのでもたまの休みのプチ贅沢と堪能してしまうのだが。
腹が膨れ、コーヒーで一服すると外に出る。
そして電車を乗り継ぎ、新宿へ…。
警官とも何度かすれ違うが、小綺麗なスーツ姿の男に気を止めるものはいない。
一番の歓楽街。
その日中でも薄暗い路地裏に…。
…!
後方からの一撃!
日本刀か!
正確には細身にして仕込み杖に擬装した…。
「ギリギリ躱す勘は残っていたようだな。」
「誰が来るかと思ってたがお前か…。」
言いながらも既にサイレンサー付きのベレッタを数発放つ。
嫌な記憶を揺り起こされたぜ…
撃つ前に躱してやがる。
あらゆる感覚を磨き抜き、駆使してこちらの動きを全て読み取る男。
ー盲刀のリューク
肩口をギリギリ斬撃が掠める。
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