re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ

俊也

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レイテ沖海戦③

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ハワイ、アメリカ太平洋艦隊司令部。
「なにっ。」
報告を受け、ニミッツ太平洋艦隊司令長官はデスクから思わず立ち上がる。
まさか、あの慎重居士のスプルーアンスが。
「見え透いた囮ではないか!
すぐに元の海域に戻るよう命令を!」
「ですが閣下、マリアナ、そしてここハワイを守るまとまった機動戦力が皆無なのも事実です。」
「それぞれの基地航空隊等の備えは十分ですが、例えばマリアナを強襲されて敵本土空襲が停滞するレベルのダメージを受ける危険性は…否定できませぬ。」
参謀達の言葉にも一理はある。
どの道今後は組織的に使う力を失うであろう自軍の機動部隊と、マリアナやハワイの我が要衝と差し違えさせる。
日本人達ならやりかねない。。
しかも敵通信記録の傍受からもブラフでなく本当にマリアナ方面を狙っているらしいことが判明しつつあった。
これで仮にB29の戦略爆撃部隊に損害が生ずれば、陸軍との関係もややこしくなりかねない。。

しばしスプルーアンスの阻止行動を、追認の形で放置するか…。
どの道敵空母部隊は何処にいても脅威であり、彼に与えられた裁量で叩くのは止められないという面はあるのだ…。

3時間ほど、その考えで明確な指示をニミッツは下すことをあえてしなかった。
その間に、第三艦隊、その主力第38空母部隊はミッチャー提督の指揮の元、計580機という大編隊にて日本空母部隊に殴りかかる。
(上手くいけば戦闘能力喪失。それでなくとも敵空母甲板を破壊して当面使用不能にできれば良いのだ…。
一定の打撃を与えて、レイテ方面の戦況によってはまた戻ればよい。)
まだ残る疑念を、スプルーアンスはそう考えることで封じ込める。
味方の帰還は薄暮もしくは日没後となるが、訓練上は問題ないはず…。

そして、こちらは日本第一機動艦隊。
「よし、全力で食いついてくれたかっ…」
山口多聞司令は拳に力を込める。
「電探、偵察機の誘導に従い『艦載機』は稼働全機発進せよ!」
そう、烈風のみならず、攻撃機流星改も…。
同じアメリカの爆撃、攻撃機に当たれば性能的には優位、撃墜はむずかしくとも妨害には十分であろうという発想っっ…!

敵戦を確認
「ヘイ構わん、殺すぞ!」
ヘリントン総隊長の号令一下、猛禽のごとくアメリカ艦載機群は襲いかかる。
やや練度には落ちるグラマンF6F、少数だがF4U戦闘機の群れだが、2機1組で必死に日本の烈風隊に喰らいつく。
返り討ちに遭うのも少なくはないとは言え…。
激しい空中戦が全空域で繰り広げられた。

「クッ、奴らもなりふり構わずか!」
流星改に食いつかれる、アメリカ雷爆撃隊。
元々主翼に持っている流星改の20ミリ機関砲の射撃に対し、後方機銃で撃ち返す。
そんな乱戦を突破し、少なからぬアメリカ機が日本空母部隊に殺到する。
当然、直衛の戦艦伊勢、日向をはじめとする猛烈な対空砲火に被害を出しつつも、それでも喰らいつく。
「翔鶴に直撃弾2発!」
「大鳳も被雷1!
航行には支障なし!」
次々と飛び込む被害報告。
旗艦信濃にて腕組みをしたまま、無言で仁王立ちする山口多聞。
その信濃にも爆弾3発が命中し、振動の余波か艦内電気系統が一時停止するが、程なく回復し、航行、離着艦には支障なし。
装甲甲板の面目躍如であった。
だが、そこに、大鳳と翔鶴、蒼龍の被雷、被弾の報告が追加される。
持たぬか…?
「複数の電探が、新たな敵戦爆の接近を補足。
300は超えております!」
ぐっ…。

「キリが無い…、墜としても墜としても…!」
藤浪のみならず日本側戦闘機隊も疲弊と無力感を味わいつつあった。
本来は母艦に戻り、残弾補給をしたいところであるが、もう輪形陣の真ん中に米軍機が大量侵入している。
「手詰まりとなったら戦闘空域圏外に極力出て凌ぐように。
けして体当たりなどの短慮はするな。」
山口多聞司令からの厳命に従うほかなかった。
そして…。

「敵空母、2隻(翔鶴と龍驤)は撃沈確実。
他も5隻に中破以上の損傷は与えております。」
報告を受け、スプルーアンスが大きく息をつく。
攻撃隊を危険ではあるがとにかく全機収容し、夜間偵察は絶やさず…翌朝になっても進路変更の気配が見られないなら再度攻撃隊を出すか…。
キンケイド、オルテンドルフら率いる上陸支援艦隊の砲爆撃も順調のようだ。
このまま、レイテに明朝満を辞して上陸できよう。
スプルーアンスは周囲の幕僚らにも交代で休むよう告げ、一旦私室に下がる事とした。
今重要な時だからこそ、頭を少しでも休ませて疲弊した状況での判断を迫られる事を避けたかったのだ。
彼がそうして睡眠を優先してもしなくても変わらなかったのだが、とにかく最悪の現実が翌朝に突きつけられることとなる。
「護衛空母艦隊タフィ3のスプレイグ少将より緊急入電!
我、サマール沖にて敵戦艦部隊に遭遇せり…と!」
「!!??」
やられた…!

まんまと元海域の東方200キロまで釣られ、敵の水上艦隊に隙を与えてしまった。
彼らのうち戦艦2隻、巡洋艦3隻撃沈、多数艦に痛撃を与え、北西に転進させるまでは確認し、その脅威は去ったのだと決めつけてしまった。
しかし、彼らは再び反転し、一気にサンベルナルディノ海峡を突破したのである。

痛恨の極み…。
「第38任務部隊は何処にありや。
全世界が知らんと欲す。」
そのハワイ太平洋艦隊司令部からの入電がある頃には、スプルーアンスは麾下の全艦隊を再度西方に反転させていた。
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