re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ

俊也

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レイテ沖海戦②

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シブヤン海。
アメリカ艦載機群第二波350機の猛攻に、宇垣艦隊は晒されていた。
「流石に戦闘機隊では抑えきれんか…」
この目前に迫る雲霞のような敵機の群れを見て、宇垣は大和艦橋で唸る。

「対空戦闘、うちーかたー始め!」
大和の森下艦長も、他の艦も一斉に各種火器を斉射する。
特大の主砲改三式弾が空中爆発し、米軍攻撃機が一撃で40機以上撃墜破される。
だが、敵も果敢に突貫し、また多方面から同時攻撃をかける。
それに対しては大和、武蔵、紀伊以下が高角砲、そして例の二式八連装47ミリ機関砲が濃密な弾幕を張り、電探誘導なしの砲熕兵器としては空前の戦果を挙げていくこととなる。

それでも、完全阻止は出来ない。
武蔵、2発被雷、爆弾3発命中。
長門に魚雷1
重巡高雄も被雷し、速度低下。

その間にも烈風戦闘機隊は第三波の米軍機の群れと渡り合っていたが、あまりに敵が多すぎた。
一応、葛城、伊吹から40機づつを2交代で直掩に上げる…と言う体制ではあったが、その母艦も熾烈な対空戦闘に巻き込まれるとそれすらままならなくなる。
伊吹が爆弾2発被弾との報を聞いた宇垣は決断し、直掩戦闘機隊に指令を送らせる。
「直ちに友軍の陸上基地に退避せよ。
その後は大西中将の第五航空艦隊の指揮下に入るべし。」
機体はともかく、ここで貴重な空母ベテランパイロット達を失う訳にはいかない。

「くっ…すまん大和、艦隊の皆…。」
自らは最後まで空域に残りF6Fの群れを牽制し、その上で離脱した岩本。
艦隊に向け短く敬礼を送る。
武運を…。

「長門にさらに爆弾2発直撃!
第三砲塔使用不能、火災発生!」
「鳥海にも直撃弾!」

「…長官、一旦敵艦載機の攻撃圏外に避退しては…このままではレイテに辿り着く前に…」
小柳参謀長の進言に対し、宇垣はゆっくりかぶりを振った。
「引いても敵の戦力が減殺されるわけではない。
レイテを、フィリピンを奪われれば我が日本は南方との資源ルートを断たれて戦局は絶望的となる。
本土空襲に加え、上陸すら危ぶまれ、それを阻止する戦力も枯渇する。
それがわかっているから米軍は太平洋の全軍を突っ込んでまで奪いにきている。

やるか、やられるか。

これはそういう戦なのだ。」
御意ッ…。
小柳も、他の司令部達も重く頷く。
その会話の合間にも、幾つもの至近弾の衝撃に小刻みに揺れる大和。
「被雷、扶桑です!魚雷2ー!!」
「山城も浸水止まりません!」

…これら旧式戦艦群は本来は別動隊として他の海峡から米艦隊に向かう作戦案であったが、半端に兵力を分散しても敵の圧倒的戦力の前に各個撃破されるのみ。
西村、志摩両中将が進言し、形式的には別指揮系統のまま、2艦隊が臨時という形を取り合流したのだ。
「そうだ!いいよ!こいよ!」
大和級3隻を囲むように旧式戦艦や巡洋艦を配置し、自らはすでにダメージを追った山城に座乗する西村中将。
敵の攻撃を旧式戦艦群に誘引し、大和らをレイテに何としても送り込むのだ。
だが…
艦橋近くに直撃弾。
想像以上に苛烈な攻撃。
囮とはいえもう少し持ち堪えてもらわねば困るが…。
そして、乗り組みの将兵たちに貧乏くじを引かせてしまう事に何も感じない訳ではない。

「艦長!機関全力!まだ脱落させるな!」
「ヨウソロー!」
口に出してはそう命じるしかない。

こちらはアメリカ第三艦隊。

「敵主力艦複数に有効弾与え、確実に減殺していると考えられます。」
「うむ、今少し手を緩めず、後少しだな…。
上陸部隊はどうか?」
スプルーアンスの問いに、カーニーは別のレポートを手に取り応える。
「はっ、敵の地上航空戦力の排除に手間取り、遅延は余儀なくされていますが、明朝には万全の体制で上陸作戦を決行できます。」
「ならばよし、支援艦隊のオルテンドルフがうまくやってくれるだろう…。」
しかし、執拗に陸軍航空隊が南方から事前空襲をしていたというのに…存外に制空権確保に手間取った。
台湾、沖縄経由での兵力補充をうまく日本側がしていたということか…?
こちらからの本土空襲でそれなりに軍需工場の破壊は進んでいるようだが、予備兵力、物資の温存分で…いや、そこを考えても仕方がない。
「北方の敵空母群はどうか?」
「はっ、こちらから繰り出した攻撃隊ですが、確実な空母への戦果は2隻に爆弾命中1か2発づつのみ…。
ですが、その後向こうからこちらに仕掛けてくる様子はありません。
まだ日没までは時間がありますが…。」
「ううむ…。」
流石に敵戦闘機が多数待ち構えていると、数的優勢があっても我が方が攻めあぐねるか…
しかし、それなら反復して損害を厭わず攻撃隊を何故出してこない?
スプルーアンスが首を捻っていた所に、新たな報告が入る。
「偵察機より入電。敵空母部隊、『東方に』変針の模様。」

「なにっ!?」
司令部は軽くどよめく。
こちらに南下か、北上して離脱でもなく東へ…?
まさか…。
カーニー参謀長の呟きに、スプルーアンスも呼応するように口走る。
「彼らはマリアナ方面に…?」
あるいは最悪ハワイすら有りうる。
我が太平洋艦隊はほとんどの戦力をこちらフィリピンに振り向けてしまっている。

日本としてはやぶれかぶれの賭けだろうが、行き先がどこであれこちらの重要拠点が痛撃を受けうる事に変わりはない。
上陸作戦自体は繰り返しての通りもうオルテンドルフ艦隊に支援を任せて差し支えない。
サンベルナルジノ海峡に差し掛かっている敵戦艦部隊は第4次攻撃隊370機で完全に足が止まるであろう。
今次攻撃隊を収容しつつ、こちらも全速力で敵機動部隊を追う!

そう決断したスプルーアンスに、参謀達も同調した。
消耗させたとは言えあの精鋭の敵艦載機群の牙があらぬ方向に向いてはならない…。

日没後、地上基地発進の偵察機彩雲から山口多聞の第一機動艦隊に報告が入る。
「食いついてくれたか…。

敵の機動部隊を引きつけるのだ。
できるだけ多く、できるだけ遠くへ。」

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