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上陸より1週間経ち、ハワイから護衛艦隊と地上部隊、膨大な物資が到着。
倍以上にふくれ上がった陸海空の戦力で、再度猛烈な攻勢をかけるアメリカ軍。
だが…。
「何と遠い2キロだ!」
優先目標のアスリート飛行場はもちろん、橋頭堡確保と最初のベースキャンプ設営以降、最大5キロしか戦線を押し出せていないのである。
執拗なまでに張り巡らされた野戦築城、頑強なトーチカに分散配備された重砲群
同じく機関銃座。
重巡レベルの艦砲射撃では、もちろん少しづつ減殺はできるが、やはり戦艦群の破壊力には及ばない。
しかも硫黄島から断続的に日本の銀河、陸軍の重爆飛龍。
それらの夜間爆撃も、もちろん過半数は撃退しているとは言え頭の痛い問題であった。
そもそもこのサイパン島攻略は、新しく配備されつつある超重爆撃機B29の攻撃圏内に日本本土を収める。
そのための飛行場確保が第一目標で、日本もそれゆえに必死の防戦を繰り広げている。
…なら、マリアナ諸島で他に基地化可能な、グアム、テニアンの攻略を優先すれば良いではないか…。
「できるものならとっくにそうしている」
が米軍側の本音であった。
正直戦艦部隊全滅、空母機動部隊も正規空母クラスが艦載機含め半分以上削られるのは最悪の斜め上であった。
それでも補助艦艇や小型護衛空母だけで上陸支援を行えているのがアメリカという国の恐るべき底力であったが、前述の2島にも少なくとも3個師団づつ、日本軍が配置されている以上、現状では海と空の連絡線を断つのが精一杯であった。
その2島にもサイパンと同等の戦力を投入する案も統合参謀本部で強く推されたが、現状早くもサイパンで8000人以上の戦死傷者を出している状況では、慎重にならざるを得ないという結論…。
だが、あと3ヶ月待てば正規空母8隻、戦艦3隻を中軸とし、損傷艦の修理も終わり再度の大攻勢をかけられる。
日本の艦隊再建は間に合うまい。
そこまではとにかく直接間接のサイパン攻略部隊への支援を絶やさず、敵をじわじわ削っていけば良い。
…いずれにせよ、両軍にとっての太平洋戦線屈指の激闘は果てしなく続く事となる。
ハワイ、真珠湾。
「なんだあの着艦は、舐めとんのか!?」
「ハルゼー閣下、恐らくは新人かと…」
暗に再建された機動部隊の、艦載機群のパイロット達のいささかの練度低下を仄めかすカーニー参謀長であった。
「機体壊してたらアイスクリーム禁止にするところだったぞ。」
…とは言え、20%強を占める新人パイロット達も本土で離着艦含め実戦さながらの猛訓練を積んできている。
ただ全般に艦載機としては、F6Fをはじめとする米軍機は日本機に操縦性がどうしても劣ってしまい、たとえば外洋の空母へ着艦は慣れないと難易度が高くなるというだけの事だ。
外洋の最終調整で慣れれば、F6F、F4Uの性能と艦載機全体の数的優位を活かしきり、つまりはアメリカ海軍史上最強の空母機動部隊が完成するという事…。
そしてそれを率いるのは俺、ウィリアム・ハルゼー中将ッッ!
キル・ザ・ジャップス!待っていろヤマモト!
「『今』来られると間違いなく壊滅だよなあ」
長門の艦橋にて、その連合艦隊司令長官山本五十六である。
呉軍港にて、よろばうように入港してくる味方主力艦艇群。
空母、戦艦だけに限っても、無傷か小破レベルで戦闘能力を残すのは信濃、大鳳、瑞鶴、赤城、大和、陸奥のみ。(インド洋派遣艦隊は除く。)
空母は他に使える艦もあるが、それらは艦載機の消耗が激しく、艦艇同様開戦前と同じレベルに再建するのに半年では効かぬという有様であった。
…当然、マリアナ沖に先に再攻勢をかけてくるのがアメリカであるのは火を見るより明らかである。
それも、空母打撃群だけでも日本の優に2倍3倍の戦力を整えて…だ。
こちらは稼働状態の残存艦艇を無理やり再度派遣することすら、燃料事情的にギリギリであるというのに。
正直、サイパンはじめマリアナは、少なくとも大規模な海空の支援は厳しいな…。
山本も、小沢、山口多聞らも、その辺の見解は一致していた…。
あとは軍令部、その上がどう考えるか…。
そしてこちらはワシントンD.C.
ホワイトハウス
「マリアナ諸島が重要なのはわかりますよ?
ですが今の我が合衆国の戦力ならば、一気にフィリピン奪回も十分な余裕をもってできませんかねえ?」
陸軍南方方面軍総司令官、ダグラス・マッカーサー元帥であった。
「それはそうであるが、順序というものがあるだろう。
そもそもサイパン以下の島を制圧し、それでもって新型爆撃機による日本本土空襲で一気戦争を終結に近づける」
反論したのは海軍太平洋艦隊司令長官チェスターにニミッツ提督。
作戦上は最終的には協調しても、個人レベルでは両者は犬猿の仲の一歩手前であった。
「制圧ねえ?ニーミッツ君の機動部隊が日本人の海空戦力を潰し切れてればとっくに終わっていたんですがねえ?」
「!?なにを言われるか!侮辱である!」
「お二人とも控えられよ!大統領閣下の午前である!」
キング海軍作戦部長の言葉に、マッカーサーもニミッツも一旦矛を収める。
そこでルーズベルトは口を開く。
「マッカーサー将軍の言にも一理ある。
が、しかし、日本の機動戦力もかなり消耗させたとは言え危険だ。
それが情報各部門の分析だとマリアナ方面には燃料事情で半年以上は出てこられない。
一方でフィリピン方面ならば総動員で動く余裕がある。空陸と一体となってだ。
故に…、ここは目の前の攻略戦を十分にバックアップしつつ堅実に進めさせる。
その間、来月には起動できる再建、強化した海軍機動部隊で今度こそマリアナを制圧する。
1944春に行う予定の欧州上陸作戦との兼ね合いもある。
太平洋に関してはその方針で進める。」
大統領の言葉に、内心を抑えつつマッカーサー、ニミッツの両名は最敬礼で応える。
倍以上にふくれ上がった陸海空の戦力で、再度猛烈な攻勢をかけるアメリカ軍。
だが…。
「何と遠い2キロだ!」
優先目標のアスリート飛行場はもちろん、橋頭堡確保と最初のベースキャンプ設営以降、最大5キロしか戦線を押し出せていないのである。
執拗なまでに張り巡らされた野戦築城、頑強なトーチカに分散配備された重砲群
同じく機関銃座。
重巡レベルの艦砲射撃では、もちろん少しづつ減殺はできるが、やはり戦艦群の破壊力には及ばない。
しかも硫黄島から断続的に日本の銀河、陸軍の重爆飛龍。
それらの夜間爆撃も、もちろん過半数は撃退しているとは言え頭の痛い問題であった。
そもそもこのサイパン島攻略は、新しく配備されつつある超重爆撃機B29の攻撃圏内に日本本土を収める。
そのための飛行場確保が第一目標で、日本もそれゆえに必死の防戦を繰り広げている。
…なら、マリアナ諸島で他に基地化可能な、グアム、テニアンの攻略を優先すれば良いではないか…。
「できるものならとっくにそうしている」
が米軍側の本音であった。
正直戦艦部隊全滅、空母機動部隊も正規空母クラスが艦載機含め半分以上削られるのは最悪の斜め上であった。
それでも補助艦艇や小型護衛空母だけで上陸支援を行えているのがアメリカという国の恐るべき底力であったが、前述の2島にも少なくとも3個師団づつ、日本軍が配置されている以上、現状では海と空の連絡線を断つのが精一杯であった。
その2島にもサイパンと同等の戦力を投入する案も統合参謀本部で強く推されたが、現状早くもサイパンで8000人以上の戦死傷者を出している状況では、慎重にならざるを得ないという結論…。
だが、あと3ヶ月待てば正規空母8隻、戦艦3隻を中軸とし、損傷艦の修理も終わり再度の大攻勢をかけられる。
日本の艦隊再建は間に合うまい。
そこまではとにかく直接間接のサイパン攻略部隊への支援を絶やさず、敵をじわじわ削っていけば良い。
…いずれにせよ、両軍にとっての太平洋戦線屈指の激闘は果てしなく続く事となる。
ハワイ、真珠湾。
「なんだあの着艦は、舐めとんのか!?」
「ハルゼー閣下、恐らくは新人かと…」
暗に再建された機動部隊の、艦載機群のパイロット達のいささかの練度低下を仄めかすカーニー参謀長であった。
「機体壊してたらアイスクリーム禁止にするところだったぞ。」
…とは言え、20%強を占める新人パイロット達も本土で離着艦含め実戦さながらの猛訓練を積んできている。
ただ全般に艦載機としては、F6Fをはじめとする米軍機は日本機に操縦性がどうしても劣ってしまい、たとえば外洋の空母へ着艦は慣れないと難易度が高くなるというだけの事だ。
外洋の最終調整で慣れれば、F6F、F4Uの性能と艦載機全体の数的優位を活かしきり、つまりはアメリカ海軍史上最強の空母機動部隊が完成するという事…。
そしてそれを率いるのは俺、ウィリアム・ハルゼー中将ッッ!
キル・ザ・ジャップス!待っていろヤマモト!
「『今』来られると間違いなく壊滅だよなあ」
長門の艦橋にて、その連合艦隊司令長官山本五十六である。
呉軍港にて、よろばうように入港してくる味方主力艦艇群。
空母、戦艦だけに限っても、無傷か小破レベルで戦闘能力を残すのは信濃、大鳳、瑞鶴、赤城、大和、陸奥のみ。(インド洋派遣艦隊は除く。)
空母は他に使える艦もあるが、それらは艦載機の消耗が激しく、艦艇同様開戦前と同じレベルに再建するのに半年では効かぬという有様であった。
…当然、マリアナ沖に先に再攻勢をかけてくるのがアメリカであるのは火を見るより明らかである。
それも、空母打撃群だけでも日本の優に2倍3倍の戦力を整えて…だ。
こちらは稼働状態の残存艦艇を無理やり再度派遣することすら、燃料事情的にギリギリであるというのに。
正直、サイパンはじめマリアナは、少なくとも大規模な海空の支援は厳しいな…。
山本も、小沢、山口多聞らも、その辺の見解は一致していた…。
あとは軍令部、その上がどう考えるか…。
そしてこちらはワシントンD.C.
ホワイトハウス
「マリアナ諸島が重要なのはわかりますよ?
ですが今の我が合衆国の戦力ならば、一気にフィリピン奪回も十分な余裕をもってできませんかねえ?」
陸軍南方方面軍総司令官、ダグラス・マッカーサー元帥であった。
「それはそうであるが、順序というものがあるだろう。
そもそもサイパン以下の島を制圧し、それでもって新型爆撃機による日本本土空襲で一気戦争を終結に近づける」
反論したのは海軍太平洋艦隊司令長官チェスターにニミッツ提督。
作戦上は最終的には協調しても、個人レベルでは両者は犬猿の仲の一歩手前であった。
「制圧ねえ?ニーミッツ君の機動部隊が日本人の海空戦力を潰し切れてればとっくに終わっていたんですがねえ?」
「!?なにを言われるか!侮辱である!」
「お二人とも控えられよ!大統領閣下の午前である!」
キング海軍作戦部長の言葉に、マッカーサーもニミッツも一旦矛を収める。
そこでルーズベルトは口を開く。
「マッカーサー将軍の言にも一理ある。
が、しかし、日本の機動戦力もかなり消耗させたとは言え危険だ。
それが情報各部門の分析だとマリアナ方面には燃料事情で半年以上は出てこられない。
一方でフィリピン方面ならば総動員で動く余裕がある。空陸と一体となってだ。
故に…、ここは目の前の攻略戦を十分にバックアップしつつ堅実に進めさせる。
その間、来月には起動できる再建、強化した海軍機動部隊で今度こそマリアナを制圧する。
1944春に行う予定の欧州上陸作戦との兼ね合いもある。
太平洋に関してはその方針で進める。」
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