re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ

俊也

文字の大きさ
上 下
33 / 50

ファイヤーフィスト

しおりを挟む
だが、すでにわがアメリカ側の第三斉射も始まっている。
当然、アイオワ級4艦は大和に攻撃を集中。
すぐに致命傷は無理であろうが今回は砲撃の質と量を!

だが、大和艦長森下信衛は伝声管に向け怒鳴る。
「機関、出力最大!舵中央!
着弾散布界を
「ようそろーっ!!主機、緊急出力!」
それまで27ノットで艦隊運動に加わっていた大和。
その7万4千トンの巨体が一気に加速、30秒で34ノットに達したのである。
米アイオワ級4隻の集中砲火は、大和の500m以上後方のエリアに虚しく水柱を上げる。
「バ、バカな…戦艦に、あんなダッシュ力が…!?」
リー提督は呻く。
そのダッシュの寸前に奴が放った巨弾が…。
「ウィスコンシンに直撃弾!」
…………!!!
副砲付近から貫通、艦底付近で爆発。
いずれかの弾薬庫を入念なダメージコントロールをあざ笑うかのように誘爆させ…。
あとはもはや…。
ようやく大和にも、そして長門級金剛級にも1から3発ずつ命中弾は得られる。
しかし先ほどの浸水で足が鈍ったミズーリに46センチ砲弾が2発直撃…。
再び、リー以下の将兵に戦慄と恐怖が蘇る。
一方で陸奥、比叡、霧島、日向、伊勢も奮戦していた。
陸奥はケンタッキーと一騎打ちの形となり、互いに砲塔を二つ潰し合う。
比叡、霧島はイリノイに砲火を集中。
大破に追い込むが他艦に殴り返され両艦とも同様の深傷を負う。
日向、伊勢も同様、ノースカロライナ中破の代償に上部構造物を破壊され、主砲塔も2ないし3基は潰される。
「あとひと押しだ!」
しかし、大和以外にも日本艦隊は異常であった。
恐らくまだ射撃に連動するレベルでは使いこなせないであろう水上レーダーしかない状態でこの闇の中、光学照準…と言うか目視でここまで正確に砲弾をぶち当ててくるとは!?
やつらの砲術は悪魔か!?
正直「雑魚戦艦」と見ていた金剛型以下の連中に関しても、16インチに満たない砲弾とは言え各艦に満遍なく10数発撃ち込まれては、こちらのノースカロライナ級もそれぞれ機能不全に陥らざるを得ない。
もちろん強かな返礼を食わせてやったとは言え。

…そして、いつしか日の出が迫る。
スプルーアンス提督は艦隊戦の展開に構わず、空海一体のサイパン上陸作戦決行を命じる。
敵戦艦の砲撃圏外の巡洋艦群と、輸送船団護衛の小型「ジープ空母」12隻から飛びたった戦爆連合の艦載機群が猛烈な砲爆撃を開始した。

敵…日本軍は完全に水際防御を放棄したらしく防御陣地の一つもない。
無論、島のめぼしき施設には念入りに艦砲射撃と空爆を加えるが…。
念入りに作っていたらしい奥地や山岳部の野戦陣地で勝負をかけるつもりであろう。

「上陸開始!」
「GO!GO!!GO!!!」
上陸用舟艇から勇猛な海兵隊員達が次々と浅瀬に飛び降り、そのまま上陸していく!
「隊列乱すな!」
「橋頭堡を築け!」
4分の1くらいの海兵隊員が上陸した06:00過ぎ…
「敵機!戦爆連合400以上!方位120より低空侵入!」
インディアナポリス内の司令部は騒然となる。
どこかで敵基地航空隊が、空中退避して夜明けを待っていたのか…!?
が、小型護衛空母群や機動部隊本隊の残存戦闘機群250機以上が、新たな日本機の群れを排除していく。
つぎつぎと狩られる日本側基地航空隊。
だがそれでも猛攻を掻い潜った彗星艦爆や一式陸攻が、敵輸送船団や、既に上陸したアメリカ地上部隊に爆弾の雨を降らせ、あるいは零戦52型が機銃掃射を加える…。

が、徐々に日本機も数を減じ…。
そう思ったころ、悪夢の上塗りが優位な筈のアメリカ側を襲う。

「あ、あらたな敵機急速接近、400いえ500以上!」
なにっ!?
「まさか、硫黄島の基地から!?」
カーニー参謀長がうめく。
!!!
「確かに、彼らならやりかねない!片道でも我々を阻止さえできれば友軍飛行場に不時着すればよいのだからな。」
スプルーアンスは唇を噛む。
勿論事前に硫黄島の軍事施設は徹底的に破壊していた。300機以上の日本機も。
が、日本本土からリレーする形で本命の精鋭を決戦直前に送り込む等、やりようによってはなんとでもなる。

やられた…打つ手がない。
ただ艦隊の対空砲火と残った戦闘機群で耐え抜くしかない。
連中も壊滅するだろうが、こちらも貴重な艦艇や兵員を…。
硫黄島発進部隊隊長、野中少佐の一式陸攻が放った魚雷が、重巡キャンベラを直撃。
そこに彗星の500キロ爆弾が直撃。
爆炎に包まれる…。
火だるまになり、輸送艦に体当たりする零戦も…。

なんとか一連の航空攻撃を耐え抜けば、サイパン上陸作戦はとてつもない犠牲を払いつつも成功はするだろう。
味方部隊、物資の陸上げだけなら。
だが、先刻絶望的な報せがリー提督の戦艦部隊より舞い込んできていた。
「我が方、主力艦全艦が中破以上の損傷、敵も1戦艦(比叡)を失いつつもサイパン方面に向かいつつあり。
本艦隊での阻止は不可能。」

………!!
つまりは、1時間弱で、あのモンスターを含む敵戦艦、巡洋艦群がこちらを射程内に入れてくるということだ。
仮に敵がモンスター…大和一艦のみでさえ相当な脅威である。

どうすべきか…、というより、どこで間違えた!?
思考の迷宮から強引に抜け出し、スプルーアンスは決断する。
「我が艦隊はこのまま踏みとどまり、味方上陸部隊を限界まで援護する!
ミッチャーの艦載機群の残存も今一度再編させよ!」
ぎ、御意!!

たとえ艦隊が壊滅しても、日本艦隊と差し違えれば、再建した艦隊でハルゼーが中部太平洋を制圧してくれる!
我がアメリカにはそれだけの力がある!

そこまで肚をくくった時、再度信じられぬ情報が…。
「日本水上艦隊、前進停止…いえこれは…
反転していきます!」

どういうことだ!?



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?

俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。 この他、 「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」もよろしくお願いします。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小沢機動部隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。 名は小沢治三郎。 年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。 ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。 毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。 楽しんで頂ければ幸いです!

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

皇国の栄光

ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年に起こった世界恐慌。 日本はこの影響で不況に陥るが、大々的な植民地の開発や産業の重工業化によっていち早く不況から抜け出した。この功績を受け犬養毅首相は国民から熱烈に支持されていた。そして彼は社会改革と並行して秘密裏に軍備の拡張を開始していた。 激動の昭和時代。 皇国の行く末は旭日が輝く朝だろうか? それとも47の星が照らす夜だろうか? 趣味の範囲で書いているので違うところもあると思います。 こんなことがあったらいいな程度で見ていただくと幸いです

処理中です...