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真の共栄へ
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「しまった…。考えすぎたか!」
英軍スリム将軍の第一声であった。
多分限定暗号で入念に隠匿し、輸送船団と艦隊を深夜のうちに特定海域に集合させたのであろう。
哨戒機が気づいた時はすでに一大船団が暁の中驀進していたのである。
こちらも困難だとは言え、まだスタンダードな上陸作戦の方が警戒するに値した。
敵の派遣艦隊の規模を思えば…。
だが。陸路に比べ日本軍の上陸作戦規模は…。
錯綜していた情報が徐々に見えてくる。
総数は4万前後!?
やや失笑気味となる英軍司令部。
それで後続部隊が上陸してくる様子もない。
と言うか、それこそ米国に要請し周辺海域を封鎖してしまえば、広大なインドの隅で袋の鼠にしてしまえる。
が…。
日本軍は周辺の中規模な市街地に入って以降は動かず防御に徹すると聞いて、周辺の英軍が包囲すべく機動に入ろうとした時。
今度は第二の、さらなる凶報が舞い込んだ。
チャンドラー・ボースなる独立運動家が日本軍に紛れ込んでいて、その男が独立運動家達専用ラジオチャンネルで繰り返しアジテーションを行なっていたのである。
「我々は日本に従属してではなく、大義に基づいて白人勢力に刃を向けし日本に呼応し主体的に自らの拳を握り立ち上がるべきである!
首を垂れて這いつくばう時は終わった。
立てよ!インド人民達!!」
これに呼応し、元の潜伏活動家に加え一般市民までもが、デリー、チェンマイ、ナーグプルをはじめとする都市部中心に蜂起したのである。
次々と各地の総督府支所が襲われ、イギリス兵は引き倒されて武器を奪われる。
(これら一連の流れには、日本の陸軍中野学校による入念な工作があった訳だが。)
マウントバッテン将軍の英軍総司令部も、鎮圧の為の兵力再配置に追われる。
そうなると本間将軍率いる日本軍、たった4万の存在が、不気味なジョーカーとなる…。
三派に分かれ、しかもいつぞやの銀輪…自転車部隊である。
都市を攻略…する必要はなかった。
蜂起した市民に小銃を渡し、次々と村々や街に自由インド軍の旗を建てさせる。
またイギリス将兵向けには、
総司令部はこっそり逃げ出そうとしている。
日本の総兵力は20万。
日本海軍の主力も向かってきている。
などとあらゆる手段でデマを流させた。
少ないトラックや牛馬で運んだ砲兵に、イギリス軍のみ固まったエリアを砲撃させる。
確保した飛行場に陸海軍の日本航空隊が正午過ぎには進出していた。
しらみつぶしにこちらへ急行するイギリス機械化部隊に痛撃を与え、これ見よがしに市街地で日の丸と新生インド国旗を誇示し、あるいはビラを撒く。
インド人により編成された英軍も、大隊、連隊単位で寝返り始める。
24時間で完全に長大なインド東海岸が制圧される。
いかん…これは。
スリム将軍は天を仰ぐ。
まさか日本軍上陸が、チャンドラ・ボースの出現がインド人民をこれほど刺激し、独立願望に火をつけてしまうとは!
だが、インドの大地を渡すわけにはいかん。
マウントバッテン将軍と談判する。
「インド西部に、イギリス正規軍のみ移動、戦線を整理、火力を揃える。全土に戒厳令を徹底させよ!出歩く現地人はすべて反乱軍と見なし排除する!」
だが、良くてもスピットファイアの前期型しかない空軍は半ば壊滅、機械化部隊も散り散りになるか日本航空戦力の空爆の餌食に。
何より何やかや貴重であった空輸による補給路が絶たれかけているのも将兵の士気を挫き、加速度的に増えていくインド国民軍に同調する現地民の反乱部隊の前に潰走か降伏するのみ。
戦線の把握もままならず、イギリス正規軍はじわじわと西海岸方面に追いやられていく。
何度も無差別攻撃で、火力に物を言わせて反攻しようとするのだが、そもそも通信もさまざまな手段で撹乱妨害されている。
日本人ども…入念な仕込みを!
72時間後、インド駐留イギリス軍10万は、北西部の都市スラト付近の海岸エリアに追い詰められていた。
「ジャァープ!引きこもるかと思いきやとんでもねえ真似を!」
ハルゼー率いる正規空母6隻基軸の機動部隊。
どこでもいい、まずは日本軍どもが抑えた要衝を空爆で…。
大陸南端から500キロに近づいた頃。
「閣下、デリー発のラジオから…」
??
「恐らくはわが新生自由インド領海内に居る英米艦艇、その将兵に告ぐ。」
臨時国家代表、ボースの声であった。
「要所で日本軍の義に基づく助力は得たとは言え、我が自由インド政府はここにイギリスの支配を脱し正式に独立を宣言する!」
「…どうせジャップが都合よく傀儡に…おめでたい奴らだ。」
ハルゼーが呟いた直後。
「最初にこれまで我が母国を踏み躙っていた英国軍13万、その他要人。
彼らは現在スラト周辺の沿岸にひしめき、追い詰められている。
すなわちダンケルク…と言えば分かるであろう。生殺与奪は我が方が握っている。
政軍の高官達は皆、直接デリーにて身柄を預かっている。」
!!!
「もうお分かりであろう、イギリスの一般兵や民間業者達を船舶にて救出する時間。
1週間与える。
その間は彼らがそこを動かぬ限りは私たちも監視するのみで手出しはしない。
もし、救出と入れ違いに武装兵を逆上陸、その他我がインド領にて武力行動に出た場合、デリーにて預かる総督府や英軍司令部の人間の無事は保証しかねる。」
「ッこいつらッ!一丁前に取引だと!」
ハルゼーは拳で1人壁ドンをし、怒りを露わにするが…。
無論太平洋艦隊のニミッツに指示を仰がざるを得ない。
そして1時間後、カーニー参謀長の口から忌々しいが予想通りの返答が来た。
「日本…いや、インド新政府の提案に応じるとの事。
貴官は一旦機動部隊をオーストラリアまで引き返させる様にとのことです…これは大統領命令との事で…」
ちょうど30分前、インドは本大戦においては中立を守る。
領土領海に入る者は民間船や航空機であろうと攻撃する…。と言うボースの声明を聞いたばかりであった。
ハルゼーは機動部隊を反転させ、腹いせに日本連合艦隊のトラック泊地に大規模空爆を仕掛けるも、艦艇、航空機から歓楽街に至るまでほぼカラであった。
彼の様な軍人は怒るだけで済んだが、イギリスの指導者チャーチル首相はそうはいかなかった。
報告を受け、オーストラリア、アメリカに船舶の手配を要請する様指示は出したものの、1週間は執務室に引きこもり昼間から酒に溺れるしかなかった。
と、記録にも手記にもある。
「アジア解放のための戦争」と日本サイドが後付けでつけた大義が最も分かりやすく実現してしまった。
これが連合国に与えた打撃は戦闘による敗北以上のものがあった。
無論日本が、政軍両面に顧問を置き支援は行ったとは言え、インドは大戦終了まで独立、中立の立場を貫く事となる。
英軍スリム将軍の第一声であった。
多分限定暗号で入念に隠匿し、輸送船団と艦隊を深夜のうちに特定海域に集合させたのであろう。
哨戒機が気づいた時はすでに一大船団が暁の中驀進していたのである。
こちらも困難だとは言え、まだスタンダードな上陸作戦の方が警戒するに値した。
敵の派遣艦隊の規模を思えば…。
だが。陸路に比べ日本軍の上陸作戦規模は…。
錯綜していた情報が徐々に見えてくる。
総数は4万前後!?
やや失笑気味となる英軍司令部。
それで後続部隊が上陸してくる様子もない。
と言うか、それこそ米国に要請し周辺海域を封鎖してしまえば、広大なインドの隅で袋の鼠にしてしまえる。
が…。
日本軍は周辺の中規模な市街地に入って以降は動かず防御に徹すると聞いて、周辺の英軍が包囲すべく機動に入ろうとした時。
今度は第二の、さらなる凶報が舞い込んだ。
チャンドラー・ボースなる独立運動家が日本軍に紛れ込んでいて、その男が独立運動家達専用ラジオチャンネルで繰り返しアジテーションを行なっていたのである。
「我々は日本に従属してではなく、大義に基づいて白人勢力に刃を向けし日本に呼応し主体的に自らの拳を握り立ち上がるべきである!
首を垂れて這いつくばう時は終わった。
立てよ!インド人民達!!」
これに呼応し、元の潜伏活動家に加え一般市民までもが、デリー、チェンマイ、ナーグプルをはじめとする都市部中心に蜂起したのである。
次々と各地の総督府支所が襲われ、イギリス兵は引き倒されて武器を奪われる。
(これら一連の流れには、日本の陸軍中野学校による入念な工作があった訳だが。)
マウントバッテン将軍の英軍総司令部も、鎮圧の為の兵力再配置に追われる。
そうなると本間将軍率いる日本軍、たった4万の存在が、不気味なジョーカーとなる…。
三派に分かれ、しかもいつぞやの銀輪…自転車部隊である。
都市を攻略…する必要はなかった。
蜂起した市民に小銃を渡し、次々と村々や街に自由インド軍の旗を建てさせる。
またイギリス将兵向けには、
総司令部はこっそり逃げ出そうとしている。
日本の総兵力は20万。
日本海軍の主力も向かってきている。
などとあらゆる手段でデマを流させた。
少ないトラックや牛馬で運んだ砲兵に、イギリス軍のみ固まったエリアを砲撃させる。
確保した飛行場に陸海軍の日本航空隊が正午過ぎには進出していた。
しらみつぶしにこちらへ急行するイギリス機械化部隊に痛撃を与え、これ見よがしに市街地で日の丸と新生インド国旗を誇示し、あるいはビラを撒く。
インド人により編成された英軍も、大隊、連隊単位で寝返り始める。
24時間で完全に長大なインド東海岸が制圧される。
いかん…これは。
スリム将軍は天を仰ぐ。
まさか日本軍上陸が、チャンドラ・ボースの出現がインド人民をこれほど刺激し、独立願望に火をつけてしまうとは!
だが、インドの大地を渡すわけにはいかん。
マウントバッテン将軍と談判する。
「インド西部に、イギリス正規軍のみ移動、戦線を整理、火力を揃える。全土に戒厳令を徹底させよ!出歩く現地人はすべて反乱軍と見なし排除する!」
だが、良くてもスピットファイアの前期型しかない空軍は半ば壊滅、機械化部隊も散り散りになるか日本航空戦力の空爆の餌食に。
何より何やかや貴重であった空輸による補給路が絶たれかけているのも将兵の士気を挫き、加速度的に増えていくインド国民軍に同調する現地民の反乱部隊の前に潰走か降伏するのみ。
戦線の把握もままならず、イギリス正規軍はじわじわと西海岸方面に追いやられていく。
何度も無差別攻撃で、火力に物を言わせて反攻しようとするのだが、そもそも通信もさまざまな手段で撹乱妨害されている。
日本人ども…入念な仕込みを!
72時間後、インド駐留イギリス軍10万は、北西部の都市スラト付近の海岸エリアに追い詰められていた。
「ジャァープ!引きこもるかと思いきやとんでもねえ真似を!」
ハルゼー率いる正規空母6隻基軸の機動部隊。
どこでもいい、まずは日本軍どもが抑えた要衝を空爆で…。
大陸南端から500キロに近づいた頃。
「閣下、デリー発のラジオから…」
??
「恐らくはわが新生自由インド領海内に居る英米艦艇、その将兵に告ぐ。」
臨時国家代表、ボースの声であった。
「要所で日本軍の義に基づく助力は得たとは言え、我が自由インド政府はここにイギリスの支配を脱し正式に独立を宣言する!」
「…どうせジャップが都合よく傀儡に…おめでたい奴らだ。」
ハルゼーが呟いた直後。
「最初にこれまで我が母国を踏み躙っていた英国軍13万、その他要人。
彼らは現在スラト周辺の沿岸にひしめき、追い詰められている。
すなわちダンケルク…と言えば分かるであろう。生殺与奪は我が方が握っている。
政軍の高官達は皆、直接デリーにて身柄を預かっている。」
!!!
「もうお分かりであろう、イギリスの一般兵や民間業者達を船舶にて救出する時間。
1週間与える。
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もし、救出と入れ違いに武装兵を逆上陸、その他我がインド領にて武力行動に出た場合、デリーにて預かる総督府や英軍司令部の人間の無事は保証しかねる。」
「ッこいつらッ!一丁前に取引だと!」
ハルゼーは拳で1人壁ドンをし、怒りを露わにするが…。
無論太平洋艦隊のニミッツに指示を仰がざるを得ない。
そして1時間後、カーニー参謀長の口から忌々しいが予想通りの返答が来た。
「日本…いや、インド新政府の提案に応じるとの事。
貴官は一旦機動部隊をオーストラリアまで引き返させる様にとのことです…これは大統領命令との事で…」
ちょうど30分前、インドは本大戦においては中立を守る。
領土領海に入る者は民間船や航空機であろうと攻撃する…。と言うボースの声明を聞いたばかりであった。
ハルゼーは機動部隊を反転させ、腹いせに日本連合艦隊のトラック泊地に大規模空爆を仕掛けるも、艦艇、航空機から歓楽街に至るまでほぼカラであった。
彼の様な軍人は怒るだけで済んだが、イギリスの指導者チャーチル首相はそうはいかなかった。
報告を受け、オーストラリア、アメリカに船舶の手配を要請する様指示は出したものの、1週間は執務室に引きこもり昼間から酒に溺れるしかなかった。
と、記録にも手記にもある。
「アジア解放のための戦争」と日本サイドが後付けでつけた大義が最も分かりやすく実現してしまった。
これが連合国に与えた打撃は戦闘による敗北以上のものがあった。
無論日本が、政軍両面に顧問を置き支援は行ったとは言え、インドは大戦終了まで独立、中立の立場を貫く事となる。
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