re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ

俊也

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鉄火の嵐

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第二次攻撃隊、現地時間13時半にアメリカ任務部隊の上空に到達。
だが帰るべき母艦を失ってなお、F4Fワイルドキャット30機が燃料と弾の続く限り喰らいついてくる。
その時点で12機を喪うが、無論日本側も退かない。
先ずはボロボロで後方離脱しかけていたサラトガに殺到。
魚雷2発、爆弾3発を浴びせトドメをさす。
エンタープライズにも魚雷3本、爆弾1発が命中し、かろうじて航行しているのが奇跡の状態。
そこから残りの機は戦艦2隻に殴りかかる。
が、ワシントンに爆弾1発浴びせたのみ。
激しい対空砲火に13機を喪う。
機数が少ないこともあり、ここで打ち止めとせざるをえず反転する。

やはり、日本側も貴重なパイロットを…今回も半分弱は喪ってしまった。
しかしそれに見合う戦果は挙げた…筈!
第二次攻撃隊友永少佐は自身にそう言い聞かせて空中集合終わり次第、速やかに母艦に引き返す。

16:00
攻撃隊収容。
最後の直掩機を下ろすタイミングを一航艦司令部が測っている時。

瑞鶴よりの偵察機より入電。
『米艦隊、空母を分離し戦艦基幹とし、依然進路変えず、ガ島に向け直進中』
なんだと!?
小沢も参謀達も驚愕した。
完全に空からの援護なしで水上艦のみで…。
いかん。
強行突破し態勢の整わないガダルカナル上陸直後の第二師団に艦砲射撃を浴びせようと?

航空戦力は正直これ以上消耗は出来ない。
というより夜間攻撃、着艦は危険すぎる。
しかも敵新鋭の2戦艦が有する対空砲火の強力さ…。
ここは…、と思っていたところで味方より入電である。
金剛座乗の第二艦隊司令近藤信竹中将。
序列的には小沢より上、というより、南方方面での水上艦作戦を一手に担っていた。
「これは…近藤提督。」
「状況は把握した。小沢くん、餅は餅屋…ここは我々に任せてくれまいか。」
数瞬、間を置いて、小沢は了解しましたと返す。
「では空母群は駆逐艦7隻を護衛に後退する。事後は近藤中将が戦艦4隻を中軸に敵新鋭戦艦を迎え撃つ!」
「了解致しました!」

みな、航空の人間とは言え海軍軍人である。
今次大戦初、太平洋における戦艦対戦艦の砲撃戦…。
恐怖でも昂りでもない戦慄を感じていた。

せめて、300浬以上離れての事ながら見届けなければ。
「敵さんも見上げた敢闘精神だな。
しかし、それだけの成算があるのかもしれん。
異様に高い対空砲火での被撃墜といい、何かはあるな…。」
飛龍の艦橋において、山口多聞中将はひとりごちた。


かくて金剛級「4姉妹」、愛宕、高雄を中心とする水上部隊は、ガダルカナル沖、北方50キロ付近で、アメリカ軍新鋭戦艦2隻と相対する。
アメリカ第61任務部隊の、実質的指揮は戦艦ワシントン座乗、ベテランのリー少将が執る。

20:05
先に新装備のSGレーダーで、アメリカ艦隊の軽巡ヘレナが日本艦隊を発見する。
距離は2万m
リー提督はすかさず全艦にT字戦法を取らせ、敵に横腹を見せ全ての砲を解放する体勢に。
「各艦、レーダーと連動、目視でも確認しつつ砲撃開始!」
「「アイ・サー!」」
戦艦ワシントン、ノースカロライナの40センチ砲を中心に、一斉に砲と魚雷を斉射するアメリカ艦隊。
「発砲炎確認!」
駆逐艦綾波の見張員が叫ぶ。
「よし、全艦一斉回頭!」
近藤中将の号令一下、若干いびつではあるが単縦陣の同航戦で互いに撃ち合う形である。
2斉射目で両軍初の直撃は、ワシントンが日本側比叡に与えたものであった。
第三砲塔使用不能…。
「怯むな!撃ち返せ、2艦で敵戦艦1隻に砲火集中!」
元々見張員達の6.0を超える強力な視力。
その上わざわざ砲火を絶やさずにいてくれるのだから闇夜に提灯であった。
今度はワシントンが榛名、霧島から直撃3発を喰らう。
装甲は抜かれなかった、ものの、第一砲塔が旋回不能。火災発生。
そして砲弾の破片がレーダーと通信設備を一時使用不能にする。
手負の比叡も2発、ノースカロライナに直撃を与え第二砲塔、副砲、高角砲が破壊される。
が、その後魚雷2発、砲弾1発を受け、浸水で速力19ノットにまで低下する。
「比叡には駆逐艦をつけ、ガダルカナル方面に後退させよ。」
霧島が、巡洋艦主砲の直撃を何発か受けつつも比叡を庇う位置につく。
重巡愛宕、高雄は大小の至近弾をうけつつも、戦艦群とは別行動で猛進、距離5千を切ったところで駆逐艦6隻ともども必殺の酸素魚雷を放つ。
指揮を取るのは第二艦隊隷下の、第一水雷戦隊田中頼三少将。
重巡ペンサコーラ他2隻沈没、戦艦ノースカロライナに2発。
駆逐艦7隻撃沈。
わずか15分で鮮やかな戦果を挙げると高速で離脱した。
これで勢いづいた戦艦群も改めてアメリカ2戦艦に砲撃を集中。
ついにワシントンが弾薬庫誘爆、大火災を起こし、また喫水線付近に砲弾を受けたノースカロライナが大量の浸水。
そこへ魚雷攻撃も加わり両艦とも航行不能となった。
03:18、後方のフレッチャー中将から、生存者救助の上、後退するよう命令が下される。
状況を確認した日本側第二艦隊近藤中将も、牽制射撃を行いつつ後退を命ずる。
こちらも戦艦比叡大破に加え霧島、榛名中破、駆逐艦6隻を失い、追撃の余裕なしと判断したのだ。

一方のアメリカ第61任務部隊は昨日日中の損害に加え戦艦2隻、巡洋艦3隻、駆逐艦9隻を喪失。
これはアメリカ海軍の機動兵力が限りなく0に近付いてしまったことを意味し、軍中央はもちろん、ホワイトハウスに与えた衝撃は甚大であった。
さらなる凶報を受けたルーズベルトには、とにかく新鋭空母機動部隊の復活編成と、一部高官しか知らない「あの計画」をこれまた急がせる。
それしかドス黒い不安を晴らす手段はなかった。

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