re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ

俊也

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パールハーバー、運命の歯車ひとつ

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1941(昭和16)年12月1日の御前会議。
その場にて、対米英開戦やむなし、そして宣戦布告後の陸海軍の作戦展開の最終確認が行われた。
この時昭和天皇が何を思われたか、発言されたかは確たる記録としては残っていない。

慚愧の極み…。
そう、帰りの車で東條は漏らしたと言う。

そして、現地時間12月7日早朝。
30分前にハワイ全将兵に伝えられていたアメリカ陸軍航空隊は、カーチスP40、42機を取り急ぎ発進させ、他の索敵機とともに哨戒に当たらせていた。
またアメリカ太平洋艦隊司令部も、真珠湾に居る戦艦群の主機を起動させて、湾外退避の準備を進めていた。
が…あくまで念には念をと言うスタンス。
理論上は不可能ではないにせよ、太平洋の半分を横断して日本の艦隊や艦載機がここハワイを攻撃するなどと言うことは正直、想像の外であった。

太平洋艦隊司令長官キンメル大将にせよ、末端の兵たちにせよ…
だが、現地時間午前8時53分…。
オアフ島上空、アメリカ陸軍戦闘機隊。
「全く形だけとはいえ、面倒臭いな、ガソリンと労力の無駄…。」 
「!待て!」
明らかに本日の予定にない方角から3桁は下らぬ黒い機影。
なんだあれは…。

無線を開きかけた瞬間、コクピットに機関砲弾が叩き込まれる。
その某中隊長機のみならず、完全に優位な位置に占位されたアメリカP40戦闘機隊は、見たこともないシルエットの戦闘機群に次々と屠られていく。
「どうやら奴らは只の哨戒…総出での敵戦闘機迎撃も無いな。
しゃ!奇襲成功、トラ、トラ、トラや!」
日本海軍航空隊、第一次攻撃隊隊長、淵田美津雄中佐は、戦史に残る電文を遅らせる。
やがて雲が切れ、真珠湾内の全景が見える。
「ト連送や!全軍突撃!」
スロットルをあおり、真珠湾に殺到する日本海軍航空隊。

戦艦ウエストバージニア甲板。

これまでの流れで、のんべんだらりと対空砲群を整備していた水兵達。
「こんな日に訓練?」
「荒っぽい…荒っぽくない?」
「いや、違う、見ろ!翼にミートボールだ!
クソッタレ!」
「やべえぞ!通報できるところに全部…」
轟音と激震。
土手っ腹に魚雷を食らったのだ。しかも複数同時に…。
バカな…こんな浅い湾内で…!?

同様の混乱は米軍各艦、各施設において繰り広げられていた。
流石に完全に頭になかったわけではない事態に対してなので、艦や地上施設からの対空砲火、あるいは陸軍の航空基地からの一部戦闘機の発進などで、憎むべきジャップに局地的には損害を与える米将兵。
だが…。
全般に日本側の航空機の性能、いやそれ以上に卓絶していたのはパイロット達の技量と勇気であった。
特にあのくすんだ白っぽい戦闘機の群れ。
その強さは悪魔的ですらあった。
新型のP40に乗り、どうにか離陸し敵攻撃機3機を撃墜した手練れのテイラー中尉でさえ、その脅威を痛感していた。
(今回墜としたのは艦上攻撃機…だが奴は同等の条件でドッグファイトをしたらとても勝てない…!)

太平洋艦隊司令部。
キンメル司令長官に出来ることは、最早窓の外で繰り広げられる惨劇を呆然と見つめる事だけであった。
不覚…長距離探索が可能な哨戒機が不足していたとは言え、宣戦布告の報せを本国から受けて30分の間にもっとやれることはあった筈だ。
いくら敵が予想の斜め上の奇襲をここにしてきたとは言え…。
海軍軍人として、後日私は当然責任を取らねばならない。
だが!
ここからできるベストは尽くす。
最後に勝つのは合衆国だ!

呉軍港
日本海軍連合艦隊。
旗艦長門。
「トラ、トラ、トラです!」
通信士官が飛び込み、司令部は沸き立つ。
だが連合艦隊司令長官、山本五十六は、無言で腕組みをしたまま、頷くのみ。
その後入ってくる華々しい戦果を聞き、敵主力戦艦群が事実上壊滅、そう聞いて、
「そうか、空母はおらなかったか。」
口に出してはその一言のみであった。
元々、真珠湾を数隻がバラバラに頻繁に出入りしている状況は把握していたので、湾内にいるかどうかは運任せ…そう考えていた。
それよりも…。

南雲中将率いるハワイ沖の日本海軍第一航空艦隊。
着艦、帰投してくる機体、そのパイロット達は英雄の御帰還とばかりに整備員や空母乗組員達に迎えられた。
同時にその整備員達はは一通り勝利の雄叫びを上げると、健在のパイロット達と共に慌ただしく準備を始める。

そう、さらなるである。
南雲司令は不安気な表情…
敵空母の位置が不明、ハワイ、真珠湾方面も最初から全力で攻撃を仕掛けて来る。
だがやらねばならない…らしい。
山本さん、最初は現場判断に任せると言っていたんだがなぁ、このまま勝ち逃げしたいのが本音なんだが。

「ご懸念なく、薄暮攻撃、夜間着艦の訓練も抜かりなくやっております。」
源田実航空参謀はそう言うが…。
そして第一段攻撃隊の帰投から1時間後、第二段攻撃隊が発艦する。
その数192機。補用機も合わせ、上空直掩戦闘機隊を残した総力を挙げての再攻撃である。

一方…この一報を受けて怒り狂ったアメリカの「もう一つの艦隊」司令官がいた。
ウィリアム・ハルゼー提督である。
自身が率いる空母エンタープライズを基幹とする第16任務部隊でウェーキ島の警戒に向かっていたのだが、真珠湾攻撃さる、の一報を受け、キンメル長官に直訴し、憎むべき日本空母部隊の逃げ道を塞ぐべく北西に進路を取り、索敵機を飛ばす。

しかし、結局彼の行動は一手違いとなってしまうのだが…。

そして、日本側の第二段攻撃である。
キンメルが血眼になって整えた戦闘機108機、無数の対空砲火の迎撃体制
それをかいくぐり、あるいは撃墜し、果敢に目標に切り込む。
第一目標は巨大燃料タンク群。
一般に思われる程、つつけばすぐ爆発炎上するようなヤワなシロモノではない。
が、流石に時限信管つきの250キロ爆弾を数発同時に受ければタンク損壊、燃料の大量流出は避けられない。
攻撃開始10分後についに巨大な火柱を上げ、コンビナート全体が炎に包まれる。

そして第二の目標は敵戦艦群への止めである。
「その場で大破させても、アメリカなら短期間で修理し戦線復帰させてしまう。」
そう言う危惧故に、浅深度魚雷など様々な工夫をして、実際大戦果を挙げたわけだがまだ足りない。
主力戦艦の主砲塔、艦橋など、戦艦の戦艦たる構造物を完全破壊して廃艦にしなければならない。
97式艦上爆撃機が、これで看板とばかりに800キロ徹甲弾をつぎつぎと水平投下する。
ある艦は主砲弾薬庫に引火爆発。
またある艦は艦底に巨大な破口。
戦艦ネバダに関しては真っ二つに折れ完全喪失。
無論アメリカも今度は全力で反撃、迎撃。
先の第一段攻撃を遥かに上回る58機と言う犠牲を日本側に強いた。が…。

戦艦ウエストバージニア以外の7隻は全て完全喪失と言ってよいダメージを被り、港湾施設も破壊。
まだ艦内や周辺にいた海軍乗組員、将兵らの人的損害も今回のみで1800名に達した。

確かに日本海軍虎の子の空母艦載機群も消耗した。(夜間着艦時、さらに機体32機を喪失…この上敵潜水艦に捕捉されなかったのが不幸中の幸いであった。)
だが、この真珠湾攻撃は、戦術的にも戦略的にも、考えうる最大の戦果を挙げたのである。




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