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魔法が解けた?
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伊万里の先制特大アーチ。
そのどよめきが残る中、流石にナインがマウンドに集まる。
が、予想に反して彩奈は涼しい顔のまま。
超身体能力と野球のそれもだが、彼女の頭の中身も正直意味不明だ…。
明智も内田、成川らもそんな事を思いながら、型通りの励ましの言葉をかけるしかなかった。
審判が軽く睨んで来たので、さっと守備位置に皆戻る。
急かしすぎなんだよ、決勝くらいじっくりやらせてくれよな。
5番キャッチャー野田。
彼もまた堂々たる体躯である。
彩奈は変わらぬ滑らかなフォームで、158キロをアウトローに投げ、それを野田は逆らわずに打ち返す。
実にあっさりと。
『くぉれもいったかー!?
伸びる、伸びる!バックスクリーン右、入ったー!
止まらない帝王打線の猛威!
あの総見寺彩奈から瞬く間に3点!』
『けして甘いコースでは無かったんですがねえ。』
落胆の呻きを、帝王側スタンドの大歓声がかき消す。
打った野田は笑顔こそ浮かべたが、当たり前のようにガッツポーズもなく淡々とダイヤモンドを一周、次打者連山とハイタッチを交わすのみ、ベンチも歓喜というより余裕の笑みであった。
ファラリス学園側は、自分たちのお通夜ムードをかき消そうと必死で声出しをする。
「彩奈頑張れ!」
「ここ締めていきましょう!」
そうは言ってもデビュー戦初の失点、しかも3失点である。
マウンド上の本人は表情一つ変えないが。
そして6番連山。
『三遊間抜け…!
いや海藤が押さえた、逆シングルから…間に合った一塁、アウトー!!』
ようやくチェンジで有る。
ふうっ。
少しため息をついただけ、あとは軽やかでさえある歩調で戻る彩奈。
ナインも声を掛け合い、なるべくいつも通りの雰囲気を保とうとする。
マネージャーの遥も含め…だが、隣に座る監督は無言で腕組み。
(泰然自若…に見えて戦意喪失、思考停止だなあれは…)
決勝までいき帝王学園と渡り合った。
その既成事実があれば一応クビは繋がる。
あとは妙な事故なく終わってくれれば。
そんな感じだろうなと明智は考え、トップバッターに声をかける。
「海藤。」
「わかってる。なるべく見ていくぜ。」
しかし、デカい。
マウンド上に立つと特に。
伊万里羅堂、帝王の牙。
ホームランを打った時と同じく淡々と、いや冷淡と言いたくなるくらいに作業的に投球練習。
軽く145キロ。だがこの高さで普通にオーバースローで角度つけて投げてくる。それだけでも脅威である…。
『さあ言わずもがなのスーパーエース伊万里、ファラリスのトップバッターに…
161キロ!』
!!!
失投ではなく狙いすましてど真ん中に。
海藤は手を出さないつもりが手が出ない、と言った態になってしまう。
回転数は2750回/分と落ちるものの超一流の域に変わりなし。
明らかにレベルが違うと言いたげである。
2球目、空振り!
い、今…。
「パワーカーブか…。」
ネクスト後方で成川がうめく。
確かにうちの彩奈がストレートの威力とコントロール一本で抑えるのは凄いが。
それを上回るパワーピッチングにこれを混ぜられるとかなりキツイ!
『最後は160キロを空振り三振!』
大歓声と共に、帝王学園応援スタンドに「K」ボードが一枚。
立浪もストレートを一球カットしたのみ。
あとはボール一球挟みパワーカーブ155キロに空振り三振。
そして、3番総見寺彩奈である。
「彩奈さーん!」
「彩奈ホームランお願い!」
『さあ、ここで奇跡の野球女子、総見寺の登場だ!
極超高校級の怪物、伊万里にどう対するか!?』
『流石に長打狙いはキツイと思いますよ…なるべく…』
!!
鍛治山氏の解説を掻き消すような快音!
なにっ。
逆方向レフトに高々と飛球が上がる。
大歓声がファラリス学園サイドから!
しかし…。
あーやっぱり。
彩奈自身の呟き通り、ラインから外れてスタンドに入るファウル。
「あーおしーい!」
「…でも、あの彩奈が流さざるを得ない球。」
そんな声も聞こえる。
横目で軽く打球の行方を確認しただけで、表情は変わらぬ伊万里。
2球目。
『ああー!総見寺完全にボールが見えてない空振り!
…ひゃ、163キロだあー!!』
今度は帝王学園サイドが湧く番であった!
「流石だぜ、スイッチ入ったな伊万里!」
「伊万里さーん」
「これ完全試合あるぞ。」
(次は十中八九アレが来る。しかしわかっていても打てるかどうか。)
成川や明智が思い巡らすなか、伊万里は第3球。
この男にも遊び球と言う概念はないようだった。
果たして156キロ、ど真ん中から斜め下に急旋回する魔球。
彩奈のバットは…。
キィィン!
!!!!?
がばっとキャッチャー野田がマスクを外し立ち上がる。
嘘だろ…。
『何と打ち返したぁー!伊万里最高難度の球を!
余裕のバット投げ確信歩き、総見寺彩奈!
何という…ライト諦めたスタンド上段です!
いつ以来か、帝王の牙が被弾するのは!』
「うおおおおおお!」
「やってくれましたなあ!」
スタンド、ベンチともファラリスサイドはお祭り状態であった。
まだ1点返しただけとはいえ、あの伊万里羅堂からホームラン!
『いやいやこれは何と言いますか…』
『何とも申しかねますが、ともあれ打ってからホームランでも全力で走りませんと。』
どこかズレた事を言うしかない鍛治山氏。
次打者、4番に入った明智は8球粘るもアウトロー162キロを空振り三振。
帝王学園の攻撃となる。
「ふふ、ただでは転ばぬかあの女子も」
まだ鬼内監督は余裕の笑みで有る。
そのどよめきが残る中、流石にナインがマウンドに集まる。
が、予想に反して彩奈は涼しい顔のまま。
超身体能力と野球のそれもだが、彼女の頭の中身も正直意味不明だ…。
明智も内田、成川らもそんな事を思いながら、型通りの励ましの言葉をかけるしかなかった。
審判が軽く睨んで来たので、さっと守備位置に皆戻る。
急かしすぎなんだよ、決勝くらいじっくりやらせてくれよな。
5番キャッチャー野田。
彼もまた堂々たる体躯である。
彩奈は変わらぬ滑らかなフォームで、158キロをアウトローに投げ、それを野田は逆らわずに打ち返す。
実にあっさりと。
『くぉれもいったかー!?
伸びる、伸びる!バックスクリーン右、入ったー!
止まらない帝王打線の猛威!
あの総見寺彩奈から瞬く間に3点!』
『けして甘いコースでは無かったんですがねえ。』
落胆の呻きを、帝王側スタンドの大歓声がかき消す。
打った野田は笑顔こそ浮かべたが、当たり前のようにガッツポーズもなく淡々とダイヤモンドを一周、次打者連山とハイタッチを交わすのみ、ベンチも歓喜というより余裕の笑みであった。
ファラリス学園側は、自分たちのお通夜ムードをかき消そうと必死で声出しをする。
「彩奈頑張れ!」
「ここ締めていきましょう!」
そうは言ってもデビュー戦初の失点、しかも3失点である。
マウンド上の本人は表情一つ変えないが。
そして6番連山。
『三遊間抜け…!
いや海藤が押さえた、逆シングルから…間に合った一塁、アウトー!!』
ようやくチェンジで有る。
ふうっ。
少しため息をついただけ、あとは軽やかでさえある歩調で戻る彩奈。
ナインも声を掛け合い、なるべくいつも通りの雰囲気を保とうとする。
マネージャーの遥も含め…だが、隣に座る監督は無言で腕組み。
(泰然自若…に見えて戦意喪失、思考停止だなあれは…)
決勝までいき帝王学園と渡り合った。
その既成事実があれば一応クビは繋がる。
あとは妙な事故なく終わってくれれば。
そんな感じだろうなと明智は考え、トップバッターに声をかける。
「海藤。」
「わかってる。なるべく見ていくぜ。」
しかし、デカい。
マウンド上に立つと特に。
伊万里羅堂、帝王の牙。
ホームランを打った時と同じく淡々と、いや冷淡と言いたくなるくらいに作業的に投球練習。
軽く145キロ。だがこの高さで普通にオーバースローで角度つけて投げてくる。それだけでも脅威である…。
『さあ言わずもがなのスーパーエース伊万里、ファラリスのトップバッターに…
161キロ!』
!!!
失投ではなく狙いすましてど真ん中に。
海藤は手を出さないつもりが手が出ない、と言った態になってしまう。
回転数は2750回/分と落ちるものの超一流の域に変わりなし。
明らかにレベルが違うと言いたげである。
2球目、空振り!
い、今…。
「パワーカーブか…。」
ネクスト後方で成川がうめく。
確かにうちの彩奈がストレートの威力とコントロール一本で抑えるのは凄いが。
それを上回るパワーピッチングにこれを混ぜられるとかなりキツイ!
『最後は160キロを空振り三振!』
大歓声と共に、帝王学園応援スタンドに「K」ボードが一枚。
立浪もストレートを一球カットしたのみ。
あとはボール一球挟みパワーカーブ155キロに空振り三振。
そして、3番総見寺彩奈である。
「彩奈さーん!」
「彩奈ホームランお願い!」
『さあ、ここで奇跡の野球女子、総見寺の登場だ!
極超高校級の怪物、伊万里にどう対するか!?』
『流石に長打狙いはキツイと思いますよ…なるべく…』
!!
鍛治山氏の解説を掻き消すような快音!
なにっ。
逆方向レフトに高々と飛球が上がる。
大歓声がファラリス学園サイドから!
しかし…。
あーやっぱり。
彩奈自身の呟き通り、ラインから外れてスタンドに入るファウル。
「あーおしーい!」
「…でも、あの彩奈が流さざるを得ない球。」
そんな声も聞こえる。
横目で軽く打球の行方を確認しただけで、表情は変わらぬ伊万里。
2球目。
『ああー!総見寺完全にボールが見えてない空振り!
…ひゃ、163キロだあー!!』
今度は帝王学園サイドが湧く番であった!
「流石だぜ、スイッチ入ったな伊万里!」
「伊万里さーん」
「これ完全試合あるぞ。」
(次は十中八九アレが来る。しかしわかっていても打てるかどうか。)
成川や明智が思い巡らすなか、伊万里は第3球。
この男にも遊び球と言う概念はないようだった。
果たして156キロ、ど真ん中から斜め下に急旋回する魔球。
彩奈のバットは…。
キィィン!
!!!!?
がばっとキャッチャー野田がマスクを外し立ち上がる。
嘘だろ…。
『何と打ち返したぁー!伊万里最高難度の球を!
余裕のバット投げ確信歩き、総見寺彩奈!
何という…ライト諦めたスタンド上段です!
いつ以来か、帝王の牙が被弾するのは!』
「うおおおおおお!」
「やってくれましたなあ!」
スタンド、ベンチともファラリスサイドはお祭り状態であった。
まだ1点返しただけとはいえ、あの伊万里羅堂からホームラン!
『いやいやこれは何と言いますか…』
『何とも申しかねますが、ともあれ打ってからホームランでも全力で走りませんと。』
どこかズレた事を言うしかない鍛治山氏。
次打者、4番に入った明智は8球粘るもアウトロー162キロを空振り三振。
帝王学園の攻撃となる。
「ふふ、ただでは転ばぬかあの女子も」
まだ鬼内監督は余裕の笑みで有る。
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