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豪球炸裂ガールの秘密 続
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「とにかく、コレを見てくれ。」
言われずとも目を皿にする明智。
脚上げ以降は、他のメジャー級速球投手もモーションは大体皆速いが、彩奈はその中で更に群を抜いていた。
これは…。凄い。
肘を上げたテイクバックから、自然に肩全体が弓を引くように背中側に入っていく。
それが…普通の入り方ではなかった。
多少は速球投手にはあるアクションだが、あまり過剰に肘を背中側に入れることはタブーとされる。
肩肘の負担になり故障に繋がるし、大体逆にパワーロスになってしまうからだ。
だが彩奈のこれは…背骨を中心として身体が綺麗に縦に折りたたまれるように、そして胸郭もナチュラルに柔らかい。
鳥の羽ばたきのように。
何だコレはたまげたなあ。
そしてここから下半身、股関節、骨盤と伝わって来たエネルギーが最大限に、ムチのしなりとなって増幅されるのは想像に固くない。
それからリリース寸前まで、野球漫画の誇張表現すら超えるような胸、肩甲骨周り全体を使った最後のしなりの曲線が素晴らしい。
肩関節の外旋と言われる力の解放寸前の捻りも、プロの一流でも170から180°程度。
しかし彩奈は230°に迫る。
「さらに驚くべきことは…」
真船博士は続ける。
それぞれの筋肉の、伸ばされてから反射的に収縮するスピードが、100m走世界記録保持者をもどうかしたら上回る可能性があると言う事だ。
「たぶんこの子の主観では、伸びやかに気持ちよく投げようとしたら勝手にコレらの運動回路が発動したって感じだろう。
どこにも力みを感じない。
つまり故障のリスクが低い。
あと無駄に疲労もなく、推測だが筋肉そのものの回復も早い。
とにかく、とんでもないギフテッド。
超天才ということだ。」
モニター画面で、真船博士は天を仰いだ。
明智洸太郎も腕を組む。
「さらには俺のフォームを真似るだけでなく、そこから自分に最適なフォームを頭でイメージしてそのまま実践する頭脳と身体感覚の連動…。」
「そうだ、それもあるな…。
つーか、洸太郎ちゃんよ、彩奈ってか総見寺家ってなんなんだ?」
「それは大いなる謎…に今なりました。」
互いに苦笑するしかない。
筋肉の質、一つをとっても常人離れしている。
彼女をうまく御しながら甲子園を目指す。
その前に立ちはだかる全国区の強豪を倒す。
それは簡単な事でもあり、難しい事でもある。
でも、彼女の謎に迫る事。
それが甲子園やプロ入りに匹敵する俺の「野球」なのかもしれないな。
「ありがとうございました、先輩。」
「いや、俺も誰かに話したかった事だしな。
それに礼なら、お前さんが議員先生やその上になった時にこっちの予算を盛ってくれや。はっはっ。」
「やったー!討伐成功!
やっぱり京ちゃんとのコンビが1番だよー」
クラスメイトでは唯一友達と言ってよい、言い方はあれだが他の女子からは地味メガネキャラ扱いされている小川京子とネットゲーム、ボイスチャットをしている総見寺彩奈。
『う、うん、ありがとう。
でも本当にいいの?うちの母さんの入院費を立て替えてくれるなんて…。』
「いいの、いいの、ゲーム実況のスパチャで私が自分で稼いだものだし。
ここまできたら京ちゃんと卒業したいじゃん」
『ありがとう、彩奈ちゃん…』
「もう、大袈裟だなあ。あそこの火龍も狩りにいく?」
『あっ、あした弟の弁当つくらなきゃなんないから』
「そっかあ。うん、楽しかった。
こっちもハッチーがうるさいから寝ようかな。」
『うん、ありがとう。おやすみー』
そのままベッドに飛び込む彩奈。
もちろん親友との時間は楽しい。
しかしリアルに牙を剥いてくるグラウンドのモンスター達を狩るのはもっと…。
なんやかや寝落ち配信も20分そこそこで、眠りに落ちてしまった…
ちなみにSNSなどの騒ぎは一切目にしていない…。
言われずとも目を皿にする明智。
脚上げ以降は、他のメジャー級速球投手もモーションは大体皆速いが、彩奈はその中で更に群を抜いていた。
これは…。凄い。
肘を上げたテイクバックから、自然に肩全体が弓を引くように背中側に入っていく。
それが…普通の入り方ではなかった。
多少は速球投手にはあるアクションだが、あまり過剰に肘を背中側に入れることはタブーとされる。
肩肘の負担になり故障に繋がるし、大体逆にパワーロスになってしまうからだ。
だが彩奈のこれは…背骨を中心として身体が綺麗に縦に折りたたまれるように、そして胸郭もナチュラルに柔らかい。
鳥の羽ばたきのように。
何だコレはたまげたなあ。
そしてここから下半身、股関節、骨盤と伝わって来たエネルギーが最大限に、ムチのしなりとなって増幅されるのは想像に固くない。
それからリリース寸前まで、野球漫画の誇張表現すら超えるような胸、肩甲骨周り全体を使った最後のしなりの曲線が素晴らしい。
肩関節の外旋と言われる力の解放寸前の捻りも、プロの一流でも170から180°程度。
しかし彩奈は230°に迫る。
「さらに驚くべきことは…」
真船博士は続ける。
それぞれの筋肉の、伸ばされてから反射的に収縮するスピードが、100m走世界記録保持者をもどうかしたら上回る可能性があると言う事だ。
「たぶんこの子の主観では、伸びやかに気持ちよく投げようとしたら勝手にコレらの運動回路が発動したって感じだろう。
どこにも力みを感じない。
つまり故障のリスクが低い。
あと無駄に疲労もなく、推測だが筋肉そのものの回復も早い。
とにかく、とんでもないギフテッド。
超天才ということだ。」
モニター画面で、真船博士は天を仰いだ。
明智洸太郎も腕を組む。
「さらには俺のフォームを真似るだけでなく、そこから自分に最適なフォームを頭でイメージしてそのまま実践する頭脳と身体感覚の連動…。」
「そうだ、それもあるな…。
つーか、洸太郎ちゃんよ、彩奈ってか総見寺家ってなんなんだ?」
「それは大いなる謎…に今なりました。」
互いに苦笑するしかない。
筋肉の質、一つをとっても常人離れしている。
彼女をうまく御しながら甲子園を目指す。
その前に立ちはだかる全国区の強豪を倒す。
それは簡単な事でもあり、難しい事でもある。
でも、彼女の謎に迫る事。
それが甲子園やプロ入りに匹敵する俺の「野球」なのかもしれないな。
「ありがとうございました、先輩。」
「いや、俺も誰かに話したかった事だしな。
それに礼なら、お前さんが議員先生やその上になった時にこっちの予算を盛ってくれや。はっはっ。」
「やったー!討伐成功!
やっぱり京ちゃんとのコンビが1番だよー」
クラスメイトでは唯一友達と言ってよい、言い方はあれだが他の女子からは地味メガネキャラ扱いされている小川京子とネットゲーム、ボイスチャットをしている総見寺彩奈。
『う、うん、ありがとう。
でも本当にいいの?うちの母さんの入院費を立て替えてくれるなんて…。』
「いいの、いいの、ゲーム実況のスパチャで私が自分で稼いだものだし。
ここまできたら京ちゃんと卒業したいじゃん」
『ありがとう、彩奈ちゃん…』
「もう、大袈裟だなあ。あそこの火龍も狩りにいく?」
『あっ、あした弟の弁当つくらなきゃなんないから』
「そっかあ。うん、楽しかった。
こっちもハッチーがうるさいから寝ようかな。」
『うん、ありがとう。おやすみー』
そのままベッドに飛び込む彩奈。
もちろん親友との時間は楽しい。
しかしリアルに牙を剥いてくるグラウンドのモンスター達を狩るのはもっと…。
なんやかや寝落ち配信も20分そこそこで、眠りに落ちてしまった…
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