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紅蓮の雷
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敵はB29にあらず!
ある程度は予想していたにせよ、その報は大本営各方面に衝撃を与えた。
「情報にあったB32と言うならここまで来襲できる…とは言え数があまりに…いかなアメリカでも…。」
右往左往する航空副参謀福留少将らを、参謀総長たる山本五十六が一喝した。
「だが現実、事実だ。
今はとにかく邀撃、そして帝都に居る同胞…陛下の赤子を護ることに専念すべし!」
帝都防空司令官(書類上は戦闘機総監の指揮下に入る。)の加藤建夫少将が報告する。
「陸軍基地からも、疾風(零戦76型の陸軍名)123機が既に発進済み。
お後は全高射砲部隊も即応体制です。他の旧式機は空中退避。
パイロットも中堅の下くらいですし、B29以上の難敵相手に無駄死にさせたくない故に…。」
「わかりました。」
山本は頷く。
海軍の厚木、横須賀からも同様の報告。
あとは肝心の総監…彼女が機上からの指揮にならざるを得ないことと、久保が不在ということだが…。
出来うる手を打つしかない。
先行したのは陸軍疾風、飛行64戦隊であった。
「敵大編隊を肉眼で確認!」
高度1万超えではあるが、どうにか300m程度の優位は取れた。
「うおっ…」
指揮官檜少佐は呻く。
デカい、なおかつこの機数。
これが噂の「この世界の」B32ピースメーカー…ッッッ。
改めてとてつもない国と戦争をしているのだと痛感する。
だが…無論引けぬ。
「全機、2機1組でかかれ!
狙いはエンジン、主翼、コクピット!
効率よく行け!」
「疾風」は咆哮、そしてモーターカノン30ミリを含めた機関砲を唸らせる。
そしてB32の方からも、軍艦の対空砲火並みの弾幕…。
しかし、やや遅れて駆けつけた海軍の零戦76型152機の群れともども、想定以上の苦戦を強いられる日本側防空部隊…。
「30ミリが効かねえだと!?」
海軍の武藤金義少尉である。
正確にはダメージは与えてはいる。
しかし、エンジンや防弾燃料タンク等を直撃しても、最低4~5発は当たらないと有効打にならない。
しかも自動消火装置の性能もこちらのそれとは段違い…。
それでも辣腕の荒鷲たちは断続的に撃墜戦果を上げるが、2機がかりで下手すれば全弾叩き込まねば墜とせない代物。
そして全方位への防御火網で少なからぬ犠牲をこちらも出している。
まずい…。
檜も武藤も唇を噛む。
ただでさえ高速高高度戦闘機がまだ足りていないってのに…。
「まじいぜ、まじいんだけど…」
武藤は呟く。
「へっ、おとといきやがれってんだ。
ワルキューレの姐さんよ。」
同時に鳴り響く轟音。
戦略機ノルニル、そして増加試作機も合わせた量産型零戦88型初期ロット44機であった!
「来やがった、ジェット機だ!」
「狼狽えるな、ものの数ではない。
編隊崩さず、弾幕射撃継続!」
米爆撃隊総指揮官パワー准将は冷徹に言い放つ。
想定の範囲内。
423機のわがB32ピースメーカー…空中艦隊の前にはご自慢のジェット機も…。
実際900キロオーバーの速度で弾幕を突破し、30ミリ機関砲4門の火力を活かし猛威を振るう88型の群れ。
しかしキルレシオが上がってなお、多勢に無勢感は否めない。
しかも高空の、B32側にとっての逆風になるかと思われたジェット気流も、連中はものともせず500キロ以上の速度を維持している。
むしろこちらの76型あたりが操縦がままならない局面もあった。
火力と防御力も併せ、白昼堂々来たのはけして所謂「舐めプ」ではなかった。
「だけど、止めるしかない、退けない!」
ホルテンブルグ戦闘機総監…カリンは、自らの愛機、戦略機ノルニルの火力を解放する。
機首に装着された47ミリ機関砲2門。
それを単発打ちするカリン。
!?!?
一機のB32が胴体を一撃でへし折られる。
さらに別の機が主翼を叩き折られて…。
「隊長!」
「慌てるな。もう5分で東京上空だ。」
たしかに…。
ノルニルとジェット零戦隊の奮迅をもってなお、山火事をバケツの水で消そうとするような絶望感と焦燥感。
操縦操作は沈着にしつつも、カリンは内心歯軋りしていた。
その時、無線電話に高笑い。
「うわっはははは!
どけどけどけどけい!赤松様のお通りでい!
敵も味方も轢き殺すぞコノヤロウ!!笑」
あのおっさん…一応海軍機に準じたカラーリング…
「第3の戦略機」雷電か!
緩降下、とは言え時速1000キロに迫るスピード。
そして気がつけば砕かれ炎上し瞬く間に墜ちていく7機のB32。
大きくゴツい。零風やノルニルよりも。
なにしろ30ミリ機関砲両翼5門づつ。
機首には47ミリが当然2門
他の戦略機にも増して、後世のシューティングゲームで雑魚敵を薙ぎ払う感覚…。
ちなみに心臓たるエンジンは3基!
ネ150 推力は零戦88型の48%増しである。
これは合計3機の戦略機に使われていたが…。
それを3発、上昇力は高度1万まで2分15秒。
耐Gスーツがまだ初歩的な段階の為、例えば水平速度や急激な機動はまだ抑え気味にするしかない。
だがこの巨鳥の群れに鉄槌を下すには十分であった。
「遅いわよ!アンタ…」
言いながらもカリンもまた、次々とB32を屠る。
明らかに敵編隊は算を乱していた。
「いやあ、申し訳ない嬢ちゃん…じゃねえ総監どの。
覚まそうと珈琲をがぶ飲みしたら、今度はションベンが止まんなくてな。
小官はこのまま敵右翼まで突破分断していく!」
「わかった。一機でもとにかく削って!」
なんか機上電話の受話口からも匂っているような錯覚を覚えるが…。
赤松貞明少尉しかいないのだ、アレを乗りこなせるのは…。
「クッ、また厄介な化け物が、流行ってんのか日本では!!?」
パワー准将は怒りつつも、勝機を見出しつつあった。
東京沿岸部市街が、眼下に…。
ある程度は予想していたにせよ、その報は大本営各方面に衝撃を与えた。
「情報にあったB32と言うならここまで来襲できる…とは言え数があまりに…いかなアメリカでも…。」
右往左往する航空副参謀福留少将らを、参謀総長たる山本五十六が一喝した。
「だが現実、事実だ。
今はとにかく邀撃、そして帝都に居る同胞…陛下の赤子を護ることに専念すべし!」
帝都防空司令官(書類上は戦闘機総監の指揮下に入る。)の加藤建夫少将が報告する。
「陸軍基地からも、疾風(零戦76型の陸軍名)123機が既に発進済み。
お後は全高射砲部隊も即応体制です。他の旧式機は空中退避。
パイロットも中堅の下くらいですし、B29以上の難敵相手に無駄死にさせたくない故に…。」
「わかりました。」
山本は頷く。
海軍の厚木、横須賀からも同様の報告。
あとは肝心の総監…彼女が機上からの指揮にならざるを得ないことと、久保が不在ということだが…。
出来うる手を打つしかない。
先行したのは陸軍疾風、飛行64戦隊であった。
「敵大編隊を肉眼で確認!」
高度1万超えではあるが、どうにか300m程度の優位は取れた。
「うおっ…」
指揮官檜少佐は呻く。
デカい、なおかつこの機数。
これが噂の「この世界の」B32ピースメーカー…ッッッ。
改めてとてつもない国と戦争をしているのだと痛感する。
だが…無論引けぬ。
「全機、2機1組でかかれ!
狙いはエンジン、主翼、コクピット!
効率よく行け!」
「疾風」は咆哮、そしてモーターカノン30ミリを含めた機関砲を唸らせる。
そしてB32の方からも、軍艦の対空砲火並みの弾幕…。
しかし、やや遅れて駆けつけた海軍の零戦76型152機の群れともども、想定以上の苦戦を強いられる日本側防空部隊…。
「30ミリが効かねえだと!?」
海軍の武藤金義少尉である。
正確にはダメージは与えてはいる。
しかし、エンジンや防弾燃料タンク等を直撃しても、最低4~5発は当たらないと有効打にならない。
しかも自動消火装置の性能もこちらのそれとは段違い…。
それでも辣腕の荒鷲たちは断続的に撃墜戦果を上げるが、2機がかりで下手すれば全弾叩き込まねば墜とせない代物。
そして全方位への防御火網で少なからぬ犠牲をこちらも出している。
まずい…。
檜も武藤も唇を噛む。
ただでさえ高速高高度戦闘機がまだ足りていないってのに…。
「まじいぜ、まじいんだけど…」
武藤は呟く。
「へっ、おとといきやがれってんだ。
ワルキューレの姐さんよ。」
同時に鳴り響く轟音。
戦略機ノルニル、そして増加試作機も合わせた量産型零戦88型初期ロット44機であった!
「来やがった、ジェット機だ!」
「狼狽えるな、ものの数ではない。
編隊崩さず、弾幕射撃継続!」
米爆撃隊総指揮官パワー准将は冷徹に言い放つ。
想定の範囲内。
423機のわがB32ピースメーカー…空中艦隊の前にはご自慢のジェット機も…。
実際900キロオーバーの速度で弾幕を突破し、30ミリ機関砲4門の火力を活かし猛威を振るう88型の群れ。
しかしキルレシオが上がってなお、多勢に無勢感は否めない。
しかも高空の、B32側にとっての逆風になるかと思われたジェット気流も、連中はものともせず500キロ以上の速度を維持している。
むしろこちらの76型あたりが操縦がままならない局面もあった。
火力と防御力も併せ、白昼堂々来たのはけして所謂「舐めプ」ではなかった。
「だけど、止めるしかない、退けない!」
ホルテンブルグ戦闘機総監…カリンは、自らの愛機、戦略機ノルニルの火力を解放する。
機首に装着された47ミリ機関砲2門。
それを単発打ちするカリン。
!?!?
一機のB32が胴体を一撃でへし折られる。
さらに別の機が主翼を叩き折られて…。
「隊長!」
「慌てるな。もう5分で東京上空だ。」
たしかに…。
ノルニルとジェット零戦隊の奮迅をもってなお、山火事をバケツの水で消そうとするような絶望感と焦燥感。
操縦操作は沈着にしつつも、カリンは内心歯軋りしていた。
その時、無線電話に高笑い。
「うわっはははは!
どけどけどけどけい!赤松様のお通りでい!
敵も味方も轢き殺すぞコノヤロウ!!笑」
あのおっさん…一応海軍機に準じたカラーリング…
「第3の戦略機」雷電か!
緩降下、とは言え時速1000キロに迫るスピード。
そして気がつけば砕かれ炎上し瞬く間に墜ちていく7機のB32。
大きくゴツい。零風やノルニルよりも。
なにしろ30ミリ機関砲両翼5門づつ。
機首には47ミリが当然2門
他の戦略機にも増して、後世のシューティングゲームで雑魚敵を薙ぎ払う感覚…。
ちなみに心臓たるエンジンは3基!
ネ150 推力は零戦88型の48%増しである。
これは合計3機の戦略機に使われていたが…。
それを3発、上昇力は高度1万まで2分15秒。
耐Gスーツがまだ初歩的な段階の為、例えば水平速度や急激な機動はまだ抑え気味にするしかない。
だがこの巨鳥の群れに鉄槌を下すには十分であった。
「遅いわよ!アンタ…」
言いながらもカリンもまた、次々とB32を屠る。
明らかに敵編隊は算を乱していた。
「いやあ、申し訳ない嬢ちゃん…じゃねえ総監どの。
覚まそうと珈琲をがぶ飲みしたら、今度はションベンが止まんなくてな。
小官はこのまま敵右翼まで突破分断していく!」
「わかった。一機でもとにかく削って!」
なんか機上電話の受話口からも匂っているような錯覚を覚えるが…。
赤松貞明少尉しかいないのだ、アレを乗りこなせるのは…。
「クッ、また厄介な化け物が、流行ってんのか日本では!!?」
パワー准将は怒りつつも、勝機を見出しつつあった。
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