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第三部スタート ホワイトハウス・ダウン!?
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1943年12月26日
アメリカ合衆国 ワシントンD.C. ホワイトハウス
合衆国大統領フランクリン・D・ルーズベルトは、執務卓の眼前の書類…日本帝国に事実上の講話受諾の旨伝える親書に愛用の万年筆を走らせようとしていた。今まさに…。
目を覆わんばかりの対日戦の犠牲に、世論も欧州戦線に集中すべしの方向に傾斜。
そして態々向こうから中国大陸での権益の共有(実質譲渡と言うに等しい)
さらには三国同盟の脱退を申し出ている。
これは我が方の政治的勝利。
そのように強硬派も言いくるめることもできよう。
彼のペンの先が紙面にキスしかけた瞬間。
ぐわっと扉の開く音。
!?
誰だ?いやかなりの人数の気配。
「書類から手をお離しください。ルーズベルト前大統領閣下。」
顔を上げるルーズベルト。
…!!
巨大軍産複合体
「セブン・シスターズ」の要人が軒並み顔を揃えていた。
元々ルーズベルトに侍っていた、副大統領ウォレス、ハル国務長官ら高官達も怯む空気。
前回の顔ぶれと、一部、違う。
軍人のスティムソンも怯む、美々しいが高圧的な何かを…。
スーツの群れの中心から、長身の白人男性。
40歳手前という実年齢より若々しい。
しかしその印象以上に…。
「き、君は…キース・ライアン…博士。」
ルーズベルトはうめくように言った。
黙って微笑み返すライアン。
「何の用かと思えば…。
いくらあなた方でも
、通用しないぞこんな横槍は…。」
精一杯毅然として応えたルーズベルトであったが、スーツの群れからは冷笑が返されるのみ。
「横槍は貴方の今のご判断です。
この大戦後、アメリカが世界の政治経済を掌中におさめる。
その過程の戦いを、よりにもよって我が方圧倒的優位にある時点で、しかも成り上がりの日本人に実質勝ちを譲るような真似…。
大統領とは言え正直看過いたしかねます。」
「圧倒的…優位…?」
何を言っているのだ、此奴らにこそ我が国、我が軍の現状がわかりすぎるほどわかっているは…
!!!
ルーズベルトの頭部全体に、鈍器で殴られたような激痛。
「は…が…」
そのまま机に突っ伏してしまう。
「大統領閣下!」
「そら言わぬことではない。
明後日の方向に根を詰めすぎるからですぞ。」
薄笑いを浮かべるライアン。
しかし、周囲の男達は迅速に動き、医療スタッフらしきチームにルーズベルトを託す。
そして…当たり前の様に…
合衆国大統領の席に腰を据えるライアン。
「!!おま…なんのつもりだ!
クーデターでも起こしたつもりか!
許されるとでも…」
いきりたったスティムソンの前に一枚の書類。
「なっ…。」
「おわかり頂けたでしょうか。
前大統領自らのサインで、この私も副大統領兼大統領特別顧問のポストを昨年の時点で拝命し、そして有事の際の臨時代行の指名を頂いているのです。」
「……!!」
そ、そんなことが、この合衆国の最中枢で…。
呻くが、どうしようもない。
「さて…」
すっ、と「副大統領」ウォレスに向き直るライアン。
「臨時代行の権限は無論貴方にもあります。
ご自身の選択次第では、代わりに此処に座って頂くことも可能ですが?Mr.ウォレス?」
「いっ、いえ…私…いや当職にはお受けしかねる大任と…そのあの、ライアン新大統領…閣下を輔弼する現在の職務を、当面は…」
「そうですか。」
ニコリと笑って、正面に向き直るライアン。
「では早速…ソ連方面の情勢から。」
「はい、最新の情報を統合しますと、ウラル方面から我が友邦ソ連はナチスドイツをじわじわと押し戻しております。
半年強で最低でもモスクワ奪回はできるかと。」
秘書官然とした白人女性が、当たり前のように進み出て報告する。
なんてことだ…
スティムソンは内心呻いた。
何を普通に仕切ってるんだよ。
だが、どうしようもない。
国民にはオブラートに包み「キース・ライアン新大統領」と言う現実が違和感なく受け入れられるように報道されるのだろう。
「時にスティムソン陸軍長官?」
「む、はい?」
「難渋しているという対日戦ですが、新たな戦略爆撃のアプローチ。
それの準備が整いつつあります。」
「はい?」
わからん。
何かはあるのだろう。
しかし、悠々表に出ず安楽椅子で指だけ動かしていれば良い筈のこいつらが、ここまでドラスティックに我が国を統御しにかかるとは…。
何が目的なのだ…?
アメリカ合衆国 ワシントンD.C. ホワイトハウス
合衆国大統領フランクリン・D・ルーズベルトは、執務卓の眼前の書類…日本帝国に事実上の講話受諾の旨伝える親書に愛用の万年筆を走らせようとしていた。今まさに…。
目を覆わんばかりの対日戦の犠牲に、世論も欧州戦線に集中すべしの方向に傾斜。
そして態々向こうから中国大陸での権益の共有(実質譲渡と言うに等しい)
さらには三国同盟の脱退を申し出ている。
これは我が方の政治的勝利。
そのように強硬派も言いくるめることもできよう。
彼のペンの先が紙面にキスしかけた瞬間。
ぐわっと扉の開く音。
!?
誰だ?いやかなりの人数の気配。
「書類から手をお離しください。ルーズベルト前大統領閣下。」
顔を上げるルーズベルト。
…!!
巨大軍産複合体
「セブン・シスターズ」の要人が軒並み顔を揃えていた。
元々ルーズベルトに侍っていた、副大統領ウォレス、ハル国務長官ら高官達も怯む空気。
前回の顔ぶれと、一部、違う。
軍人のスティムソンも怯む、美々しいが高圧的な何かを…。
スーツの群れの中心から、長身の白人男性。
40歳手前という実年齢より若々しい。
しかしその印象以上に…。
「き、君は…キース・ライアン…博士。」
ルーズベルトはうめくように言った。
黙って微笑み返すライアン。
「何の用かと思えば…。
いくらあなた方でも
、通用しないぞこんな横槍は…。」
精一杯毅然として応えたルーズベルトであったが、スーツの群れからは冷笑が返されるのみ。
「横槍は貴方の今のご判断です。
この大戦後、アメリカが世界の政治経済を掌中におさめる。
その過程の戦いを、よりにもよって我が方圧倒的優位にある時点で、しかも成り上がりの日本人に実質勝ちを譲るような真似…。
大統領とは言え正直看過いたしかねます。」
「圧倒的…優位…?」
何を言っているのだ、此奴らにこそ我が国、我が軍の現状がわかりすぎるほどわかっているは…
!!!
ルーズベルトの頭部全体に、鈍器で殴られたような激痛。
「は…が…」
そのまま机に突っ伏してしまう。
「大統領閣下!」
「そら言わぬことではない。
明後日の方向に根を詰めすぎるからですぞ。」
薄笑いを浮かべるライアン。
しかし、周囲の男達は迅速に動き、医療スタッフらしきチームにルーズベルトを託す。
そして…当たり前の様に…
合衆国大統領の席に腰を据えるライアン。
「!!おま…なんのつもりだ!
クーデターでも起こしたつもりか!
許されるとでも…」
いきりたったスティムソンの前に一枚の書類。
「なっ…。」
「おわかり頂けたでしょうか。
前大統領自らのサインで、この私も副大統領兼大統領特別顧問のポストを昨年の時点で拝命し、そして有事の際の臨時代行の指名を頂いているのです。」
「……!!」
そ、そんなことが、この合衆国の最中枢で…。
呻くが、どうしようもない。
「さて…」
すっ、と「副大統領」ウォレスに向き直るライアン。
「臨時代行の権限は無論貴方にもあります。
ご自身の選択次第では、代わりに此処に座って頂くことも可能ですが?Mr.ウォレス?」
「いっ、いえ…私…いや当職にはお受けしかねる大任と…そのあの、ライアン新大統領…閣下を輔弼する現在の職務を、当面は…」
「そうですか。」
ニコリと笑って、正面に向き直るライアン。
「では早速…ソ連方面の情勢から。」
「はい、最新の情報を統合しますと、ウラル方面から我が友邦ソ連はナチスドイツをじわじわと押し戻しております。
半年強で最低でもモスクワ奪回はできるかと。」
秘書官然とした白人女性が、当たり前のように進み出て報告する。
なんてことだ…
スティムソンは内心呻いた。
何を普通に仕切ってるんだよ。
だが、どうしようもない。
国民にはオブラートに包み「キース・ライアン新大統領」と言う現実が違和感なく受け入れられるように報道されるのだろう。
「時にスティムソン陸軍長官?」
「む、はい?」
「難渋しているという対日戦ですが、新たな戦略爆撃のアプローチ。
それの準備が整いつつあります。」
「はい?」
わからん。
何かはあるのだろう。
しかし、悠々表に出ず安楽椅子で指だけ動かしていれば良い筈のこいつらが、ここまでドラスティックに我が国を統御しにかかるとは…。
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