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そして、出逢う。

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予定通り?
東條の「告発」で、関東軍中枢から解任され、予備役となった石原。
昭和14年初夏。
久保共々、訪れたのは、海軍連合艦隊司令長官に就任したばかりの山本五十六大将であった。
事前に側近に、「あんな山師の漫談をなんで聞かなきゃならん」とぼやいていた山本であったが、実際に聞かされた話は、その想像の斜め上であった。
「ギリギリの所で踏みとどまり」追い払おうとした山本であったが、久保の口から発せられた真珠湾航空攻撃案、それだけならまだしもその「成功」後の展開。
次期主力戦闘機の活躍とその後の凋落。
その戦闘機の長所と致命的弱点。
日本サイドにとっては最悪の航空消耗戦と、あげくの自分自身の戦死…。

(この男は…確かに「知って」いる!)
まぁ、正直例の「水を石油に」詐欺に引っかかったばかりでアレだが…。
この男は本物だ。

試しに時間を取り、三菱専属のテストパイロットと偽り、未来では空軍擬き?戦闘機パイロットであったと言う、その男を96式艦戦に乗せて見せると、見事な機動を連発し、海軍士官達を感嘆させた。
挙句に支那戦線での実戦経験あるパイロット3人に模擬空戦で勝ってしまったとなると…。
「たまげたなぁ…。
一連の話、この山本ようよう承知申した。
それで貴君は、この後何を望む!?」
「…できますれば、まずは海軍技術士官として、新型艦戦の試作にいささか携わりたいと。」
「ふふふ、成る程、既に軍歴があるのならば、それも有りだな。
了解した。尉官待遇ならば俺の一存でも何とかなる。そこいらはどうにかする。」
「ありがとうございます!」

そして、山本も石原のシナリオ…久保=未来から来た男と言う真実は知らぬ風を装う事になる。東條同様に。
だので、本作冒頭の源田との会話はほぼ演技であったということである。

そして、話は久保の三菱出向時代に…。
すでにここに来て1週間になる。
後に零戦となる十二試艦戦は、事実上堀越技師主導の栄搭載型試作機は数機完成。
正式採用も時間の問題なのだ。
でもそれではならぬのだ。
堀越技師とは何度か話し合いを重ねる。
が、堀越氏も現状の機体の致命的弱点は承知しつつも「現状のエンジン出力で軍部の要求を叶えるには、これしかないでしょう」で、話が止まってしまう。
久保としても、ギリギリ機動力を損なわない程度の強度、防弾強化、を提案するも、速度と航続力の低下が無視できないレベルとなると気づくに時間はかからなかったか…。
(結局は、米国とのモータリゼーションとの差か…。)
お茶を啜り、溜息を吐く久保。
「そういえば大尉殿…。」
「何か?」
「ここ第二設計室の向かいの部屋には行かれましたか?」
「いえ、ただの事務室の一つと聞いていたので。」
「実は、私たちが進めている設計の第二案を一人の人物が勧めているのです。もう完成しているかも知れません。」
「??よく意味がわかりませんが、何故一々隔離するような真似をして…設計の予備案自体は、悪い発想ではないでしょうけど。」
「ある理由で、設計担当者がその人物と知れると、軍部がそれだけの理由で拒絶するかもしれないとウチの社の幹部が聞かずに…。
ですが、時折り我々が思いもつかぬ斬新な設計案を見せてくれることは事実。
異形の才能と言いましょうか。
もしかしたら…。」
「…少し、外しますね。」
久保はよく事情を飲み込めないまま、廊下を挟んで向かい側の部屋に向かう。

ノックをする。
「…はい。」
か細い声。
あれ?もしかして…。
「失礼…します。」
振り向いた事務服姿の…「女性」!?
しかも、20歳行くか行かないかの若さ。
なんならもっと下にも見える。
髪は、現代風に言えばセミロング…くらい。
どこから儚げな美しさが。
「まど…か?」
思わず口に出してしまっていた。
「違います。私は笠原 めぐみ。」
「あ、申し訳ない、失礼致しました。
海軍技術大尉、久保拓也です。」
敬礼後、ゆっくりと、彼女が一心不乱に書いていたらしき図面に近づく。

失礼をば…

!!
これは…
零戦であって、零戦でない。
俺のそれに近いが、どこかが、全く…。
まさか…。







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