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12月10日。
連合艦隊の主力は、ウルシー泊地に入る。
その直前のタイミングで、各空母は、マリアナ含む各陸上基地からのベテラン中心のパイロット達が駆る戦闘機、攻撃機を収容し、これで実働作戦機1080機となった。
「何度やっても船の上に降りるのは慣れんよなあ。」
第二航空戦隊 空母赤城。
「ベルリン事変以来ノリで付いてきてしまった」相棒のガーデルマンにこぼすルーデル。
サイパン基地では、世界にただ一機のオリジナル「Jシュトゥーカ」を駆り、高度8000からの遥か上空のBー29狙撃(両翼の47ミリ砲による)という離れ技により、21機の空の要塞を屠っている。
その後ろ姿を見ながら、坂井三郎は慨嘆した。
(あの操縦性の恐ろしく悪い機体をお手本の様に着艦させやがった…。
まだ多分数回目位だろうに。
どういう腕ッッ…?)
正直、ひとかどのエースである自負がある自分でも、着艦操作は時折肝が冷えるというのに…。
岩本さんや西澤さん、ホルテンブルク中佐とはまた異次元の…。
もしかして、俺には超えられない壁なのか…?
岩本は翔鶴、西澤は葛城級2番艦伊吹に降りる。
そして…。
「カーテローゼ・伊集院・ホルテンブルク中佐。葛城戦闘機隊総指揮として着任致します。」
「着任を認める。」
敬礼を返す連合艦隊航空参謀長、久保拓也。
何故かその場に立ちあっている山口多聞機動艦隊司令らが笑いを堪えているように見えた…。
そして、深夜2230 久保の私室。
例によって激しく、痛いほど抱きしめ合う二人。
カリンは部屋に来た時点で、軍服の上着を脱ぎ、白いワイシャツのしかも2番目のボタンまで外している。
理性解除のトリガーを引くのをギリギリ堪え、キスを2分ほど交わした後、久保は切り出す。
「今回の戦いの前に、どうしても君に話して置かなければならない事がある。」
「な、なによ。ひ、人をここまで昂らせといて…。」
既にカリンは微かに息が乱れ、頬は上気していた。
「浮気とかそんなんだったら…。」
言いかけて、久保の何とも言えない、どこか哀しげな表情をみて、カリンの思考も切り替わった。半分弱だけ。
「実は、俺は…いまから80年以上先の未来から来たんだ。」
!!??
世迷い言や冗談で片付けるにはあまりにも…。
「…わかった。アンタはバカだけどそう言う嘘はつかない。
全部、聞かせて。」
「ありがとう。
そもそも俺が居た世界では、日本もドイツも1945年、米英ソに惨敗している。」
「……!!」
そこから先の歴史は、これを読む読者諸氏もご存知のものであった。
ドイツの分断。
ベルリン陥落、ヒトラー総統自殺。
日本への本土無差別空襲。
そしてこちらの世界では富嶽隊が頓挫させた原子爆弾の投下。
アメリカによる占領政策。
日本、西ドイツ共に新憲法。より完全な民主化、自由化。
米ソ冷戦。
アメリカの核を含めた軍事力の傘の元での、最低限の自前の武装を許されたぬるま湯の平和。
高度経済成長。
いつしか薄れゆく日本人の国家、民族としてのアイデンティティ。
ソ連崩壊。冷戦終結。
しかし基本形は変わらぬ対米従属。
そんな中経済と軍事両面で台頭する中国共産党。
アメリカとの対立激化。
日本も当然、矢面に立たされ、中国の様々な圧力に晒される。
そして、国防、安全保障の現実から目を背けつづける左翼勢力の国内跋扈。
5年以上に渡って世界を蹂躙した新型感染症の惨禍。
…ここではない違う世界の、膨大な歴史の波濤の前に、ただ呆然とするしかないカリン。
「そんな中、俺は空軍…航空自衛隊の戦闘機パイロットとして任務についていたんだ…。」
久保の話はなお続く。
連合艦隊の主力は、ウルシー泊地に入る。
その直前のタイミングで、各空母は、マリアナ含む各陸上基地からのベテラン中心のパイロット達が駆る戦闘機、攻撃機を収容し、これで実働作戦機1080機となった。
「何度やっても船の上に降りるのは慣れんよなあ。」
第二航空戦隊 空母赤城。
「ベルリン事変以来ノリで付いてきてしまった」相棒のガーデルマンにこぼすルーデル。
サイパン基地では、世界にただ一機のオリジナル「Jシュトゥーカ」を駆り、高度8000からの遥か上空のBー29狙撃(両翼の47ミリ砲による)という離れ技により、21機の空の要塞を屠っている。
その後ろ姿を見ながら、坂井三郎は慨嘆した。
(あの操縦性の恐ろしく悪い機体をお手本の様に着艦させやがった…。
まだ多分数回目位だろうに。
どういう腕ッッ…?)
正直、ひとかどのエースである自負がある自分でも、着艦操作は時折肝が冷えるというのに…。
岩本さんや西澤さん、ホルテンブルク中佐とはまた異次元の…。
もしかして、俺には超えられない壁なのか…?
岩本は翔鶴、西澤は葛城級2番艦伊吹に降りる。
そして…。
「カーテローゼ・伊集院・ホルテンブルク中佐。葛城戦闘機隊総指揮として着任致します。」
「着任を認める。」
敬礼を返す連合艦隊航空参謀長、久保拓也。
何故かその場に立ちあっている山口多聞機動艦隊司令らが笑いを堪えているように見えた…。
そして、深夜2230 久保の私室。
例によって激しく、痛いほど抱きしめ合う二人。
カリンは部屋に来た時点で、軍服の上着を脱ぎ、白いワイシャツのしかも2番目のボタンまで外している。
理性解除のトリガーを引くのをギリギリ堪え、キスを2分ほど交わした後、久保は切り出す。
「今回の戦いの前に、どうしても君に話して置かなければならない事がある。」
「な、なによ。ひ、人をここまで昂らせといて…。」
既にカリンは微かに息が乱れ、頬は上気していた。
「浮気とかそんなんだったら…。」
言いかけて、久保の何とも言えない、どこか哀しげな表情をみて、カリンの思考も切り替わった。半分弱だけ。
「実は、俺は…いまから80年以上先の未来から来たんだ。」
!!??
世迷い言や冗談で片付けるにはあまりにも…。
「…わかった。アンタはバカだけどそう言う嘘はつかない。
全部、聞かせて。」
「ありがとう。
そもそも俺が居た世界では、日本もドイツも1945年、米英ソに惨敗している。」
「……!!」
そこから先の歴史は、これを読む読者諸氏もご存知のものであった。
ドイツの分断。
ベルリン陥落、ヒトラー総統自殺。
日本への本土無差別空襲。
そしてこちらの世界では富嶽隊が頓挫させた原子爆弾の投下。
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日本、西ドイツ共に新憲法。より完全な民主化、自由化。
米ソ冷戦。
アメリカの核を含めた軍事力の傘の元での、最低限の自前の武装を許されたぬるま湯の平和。
高度経済成長。
いつしか薄れゆく日本人の国家、民族としてのアイデンティティ。
ソ連崩壊。冷戦終結。
しかし基本形は変わらぬ対米従属。
そんな中経済と軍事両面で台頭する中国共産党。
アメリカとの対立激化。
日本も当然、矢面に立たされ、中国の様々な圧力に晒される。
そして、国防、安全保障の現実から目を背けつづける左翼勢力の国内跋扈。
5年以上に渡って世界を蹂躙した新型感染症の惨禍。
…ここではない違う世界の、膨大な歴史の波濤の前に、ただ呆然とするしかないカリン。
「そんな中、俺は空軍…航空自衛隊の戦闘機パイロットとして任務についていたんだ…。」
久保の話はなお続く。
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