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脱出…そして…

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運転手の方に視線を向ける久保。
青ざめた顔をこちらに向ける。
「まぁ、話せば分かるだろうさ。」
言った当人も、無論一片もそんな事を信じてはいないが。
ドアを開ける。
長らしき一人が、歯茎を剥き出しにしながら嗜虐的な笑みを浮かべる。
「案外用心深くて難儀したが、悪運もこれまでだなぁ?国賊久保拓也、超非国民め!
我らが天誅を喰らうがいい!」
「辻の手先か?まぁいい話せば分か…」
「死ねい!!」
直近の二人が刀を振り上げる。
ここまで銃火器や爆弾やらを使わないのは、ある程度は秘密裏に処理しようという思惑か…?
いずれにせよ…。

!!??

斬撃を繰り出した筈の兵士2名が、必殺の一撃を軽く受け流され、同時に地べたに叩きつけられる。
(なんだこいつの体術は!?)
長を初めとする陸軍将校達が軽く怯む。
柔道?合気柔術?いずれも違う。
未知の戦場特化…武術!?
それ以前にこいつ…
4人目が昏倒し戦闘力を喪失したところで、久保はその兵士の日本刀を奪い、襲撃者達に突きつける。
その表情は山口や小沢らは勿論、中村や、カリンですら知らない凄絶なものであった。

「成る程。成る程。確かに貴様ららしい。
南方で無抵抗の市民達をなぶり殺しで来た連中なだけはある。

…帝国海軍軍人を舐めるなよ。
来るなら来い。相手をしてやる。」
歯軋りする音。
「なるべく使わずにと思ったが、天誅が優先だ!
抜け!撃ち殺せ!!」
「ハッ!!」
残る10名程が南部拳銃を一斉に構える。
くっ…。

一気に間合いを詰めて、どこまで斬りまくれるか…
ここで死んでなるものか。
と…その時、襲撃者達の列が崩れる。
瞬時に2人の兵士の首が刎ね飛ばされる。
!!!

お前は…。
「くくくくっ、頭でっかちの青瓢箪が…
この人数の兵士相手に…
来るなら来い?
相手してやる?
面白えじゃねえか。
貴様はやはりこの俺が斬るべき奸物。
貴様を斬って良いのはこの俺のみ!
他の奴らには指一本触れさせん!」

憲兵大佐…四方諒二!!
血塗られた日本刀に、肉食獣の笑み。
敵は更に怯む。
「何をしている…撃…」
次の動作に男達が移る間を与えず。次々と的確な斬撃を浴びせる四方。
久保も再度加わり、体術と、剣道と言うよりどこかフェンシングに似た攻撃で敵を無力化する。
長たる男は勝手にへたり込んでしまい、四方の突きつけた切っ先の前にあえなく観念する。
「大佐殿!」
四方の部下たちが10名ほど駆け寄る。
「オウ、こいつらを積んでけ。全員死んではいない。
手際良く口を割らせろ」
「御意!!」
そして、久保の方を振り返る。
礼を言おうと口を開きかけた所で…。
「東條閣下にご報告し、善後策は講じる。
貴様はとっとと俺の前から失せろ。
俺の殺意が本格的に貴様に向かないうちにだ。」
「すまん!」
瞬間的に敬礼し、運転手の肩を担ぎ、久保は徒歩でホテルへ向かう。
どうにか、岩瀬、浅尾との合流も果たし、部屋の警備を頼むと、久保は泥のように眠りについた。

…そして、帝国を取り巻く情勢は、時間は容赦なく過ぎ、進行し、12月に入ることとなる。

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