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豪爆論破

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露骨に表情を辻は歪めた。
「ギ…と、取り消していただきましょうか、中将殿。」
久保は取り合わない。
「私が皇軍を専横して私物化しているとの言だが…。
少なくとも私はその時々の上官の正規の了承を得て、それぞれの具申を上位の方々や御上に通している。
翻って貴官は何です?
かなり過去をほじるようですが、かのノモンハン事変の際、紛争の不拡大を指示した東京の参謀本部に対し、貴官はよもやよもやの司令官代理と称しての拒絶電報。
ここに居る皆様ご存知のようにこうした事例で司令官に関し代理の規定はなく、これは明らかに陸軍刑法に違反している!
無論辻政信名義の印鑑も、「代理」の記入も、証拠現物は「陸軍第33部隊」に有る。
見せるとすれば!軍法会議の席だが!
結果として貴官が脚色するような華々しい勝利など何処にもなく、局地的、戦術的勝利はあったにせよ戦略的にはソ連に対し完敗。無駄に陛下の赤子を損ない、その責を何人かの現場指揮官に着せて自決を強要している!」
辻の顔色が露骨に青ざめていた。
何か言おうとする前に、久保は畳みかけた。
「さらには開戦劈頭、シンガポールやその他の占領地にて、明らかに度を越した現地住民の虐殺。
無論戦場の極限状況である以上ゲリラやスパイを警戒してやむを得ず、というのはままある。
が、貴官は『シンガポールの人口を半分にせよ。』と命じ明らかに虐殺を自己目的化させていた!これにも複数の証人がいる。
さて、これらの何処に、先程貴官が得意げに説いた皇軍の悠久の大義があるのか!?」

辻は酸素不足の金魚のようにアバアバと喘ぎ、目を泳がせる。

「答えろ!!辻ィーッ!!!」

公の場では初めての久保の怒声に、辻は完全に我を失い、無意味に卓上の書類をかき回し、結局踵を返して足をもつれさせながら室外へと出て行った…。

たっぷり1分間の沈黙の後、梅津陸軍総監が口を開いた。
「久保中将、並びに海軍の御歴々には見苦しいものをお見せしてしまい、お詫びのしようもない…
あれは一旦予備役に入れいずれ正規の処分を下すとして、久保君には本題に戻ってもらえれば。」
久保は無言で梅津に一礼し、張り出された海図を前に話を再開した。
「初めに結論から言います。
万端の体勢を整えても、敵主力艦、作戦機をいくら撃沈撃破しても、我が方は負けます。」
どよめく一同。
「久保航空参謀長、それでは作戦全般を与る者としてあまりに…。」
福留繁先任参謀が呻くように口を開くのを、久保は、軽く片手を挙げて制する。
「…勝てません…が、来寇した敵をことは出来ます。」

!!!???

ますます困惑する一同に、久保は再び語り始める….。前代未聞の作戦…なのだろうかこれは?



アメリカ西海岸、サンディエゴ軍港沖合。
艦載機群訓練中の空母エンタープライズ艦上。
「おー!いい馬力してんね冴えてんねー。」
上空を舞う、「攻撃機」の群れを見やるのは、第51機動部隊戦闘機総隊長ヘリントン中佐達であった。
「あれが噂の、艦上爆撃機と攻撃機を兼ねるという奴ですか。」
「ああ、しかも最大1.6トンの爆弾積んでお釣りがくる化け物だ。」
「これが、全面配備。ジャップもおしまいですね。」
「…だと良いがな。」
言いながらも、我が新鋭機F8Fベアキャットともども、あのAー1スカイレイダーの勇姿には頼もしさを感じずにいられないヘリントンであった。
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