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マインフューラー
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1943年、6月22日
梅雨の中休み、今後の夏の暑さを匂わせる陽光。
日本 軽井沢。
「陸軍第33部隊」所属の中村に連れられ、久保とカリンは緑に包まれた道を歩く。
やがて、それなりに立派な、洋風の白い家が見えて来た。
「ここだ。」
中村はそう言って、ドアを2×2回ノックする。
54秒後、ドアは空く。白人の、10代半ば程の少女が応対した。
「カリン姉さん!」
硬かった少女の表情が一変した。
カリンも即座に感応し、破顔して少女を抱きしめる。
「イーダ久しぶりい!背が伸びたねー。
可愛くなったし。」
「カリンさん!」
「姉様!」
奥の部屋に入ると同時に、イーダと同年代の少年少女が10数名程駆け寄る。
「懐かしーみんな元気だった?」
それぞれとハグしたり頭を撫でたりするカリン。
カリンは久保の方を振り返る。
「言ってなかったっけ?私、元々ここの出身だって。」
いや知らないし。
…!!!
しかも…
この子達、それぞれが相当に…。
「殺して」いる…ッッ。
「みな、私の息子、娘達。
そして、ハイドリヒもヒムラーも知らなんだ、『私だけの真の親衛隊』だ。」
部屋の主人が、前よりは気持ち軽やかに歩いて来た。
「ハイル・ヒトラー!」
「ハイル・ヒトラー!!」
「ハイル・ヒトラー!!!」
微笑みながら、片手を挙げて応える「前」第三帝国総統。
カリンも唱和したのち、総統の足元にぬかずく。
「マイン・フューラー…」
半ば涙声である。
ヒトラーも腰を落とした。
「娘よ、お前らしくもない。
ルフトヴァッフェの誰にも負けぬエースに…よくぞ育ってくれたぞ。」
「勿体ないお言葉…。」
…一連の流れを、何とも言えぬ表情で眺めていた久保。
その姿に気づくヒトラー。
「おお、参謀長、よくぞ参られた。」
「お初にお目にかかります。閣下。
日本海軍少将、久保拓也であります。」
敬礼。
カリン共々、少年少女達は、誰が言い出すともなく部屋を出て行く。
「2人とも遠慮なく、座ってくれたまえ。」
3人だけとなった部屋で、ヒトラーはそう言った。
「お言葉に甘えて…。」
ソファに腰掛ける久保と中村。
因みに久保は、尉官時代1年ほどの技術研修目的で、ドイツ駐在歴がある。
中村の補佐を要所で受ければ、一定の会話が出来る。(勿論カリンとの逢瀬の度のアレもある)
「実は最近、あの輝かしいパールハーバーの勝利に始まる、貴官の戦略戦術を私なりに研究しておってな…。」
「は、それは、恐れ多いことで。」
「興味深い共通点を、私なりに見出してな…。」
「は、是非ともお聞かせ願いたく。」
「一見、提督山本と源田殿と君は、かねてから唱えていた、『空母からの航空攻撃主体。』
の有効性を実戦をもって世界に知らしめたかのように見える。マレー沖海戦と合わせてな。
だが…その実アメリカにとって深傷であったのは、戦艦群による艦砲射撃による真珠湾基地機能破壊であった。
先回のハワイ沖海戦も、新時代の空母機動部隊による決戦…と見せて、航空機はあくまで敵の巡洋艦以下の補助戦力の漸減。
そして水雷戦隊の柔軟な活用。
本命は王道を往く…戦艦同士の艦隊決戦で大勢を決する。
日本海軍の諸公…と言うより君は、自らが唱えるドクトリンに拘泥することなく、臨機応変に戦術を使い分けている。
いわば見事なオーダーミックス。
私の敬愛するナポレオン1世のようだ。」
「はっ、いや、本当に恐縮であります。」
他に何か言いたげだな。
「同時に…君は忖度した…。
この国の海軍に隠然と存在する守旧派…。
平たく言えば…。
大艦巨砲主義による、かつてバルチック艦隊を葬った艦隊決戦のシナリオ。
彼らにとっての理想を、あえて具現化して見せた。
違うかね?。」
「御意…閣下のご慧眼には…。」
「ふふ、この辺に関しては戦略というより。もはや政略であるな…。
果たして貴官に野心があるとして、それは軍人の枠にとどまるものであるのかな?」
…………!!
確かに並みの人物ではない事は百も承知のつもりであったが。
先に主導権を握られた。
ここから俺の望む方向に、どう軌道修正していくか…。
梅雨の中休み、今後の夏の暑さを匂わせる陽光。
日本 軽井沢。
「陸軍第33部隊」所属の中村に連れられ、久保とカリンは緑に包まれた道を歩く。
やがて、それなりに立派な、洋風の白い家が見えて来た。
「ここだ。」
中村はそう言って、ドアを2×2回ノックする。
54秒後、ドアは空く。白人の、10代半ば程の少女が応対した。
「カリン姉さん!」
硬かった少女の表情が一変した。
カリンも即座に感応し、破顔して少女を抱きしめる。
「イーダ久しぶりい!背が伸びたねー。
可愛くなったし。」
「カリンさん!」
「姉様!」
奥の部屋に入ると同時に、イーダと同年代の少年少女が10数名程駆け寄る。
「懐かしーみんな元気だった?」
それぞれとハグしたり頭を撫でたりするカリン。
カリンは久保の方を振り返る。
「言ってなかったっけ?私、元々ここの出身だって。」
いや知らないし。
…!!!
しかも…
この子達、それぞれが相当に…。
「殺して」いる…ッッ。
「みな、私の息子、娘達。
そして、ハイドリヒもヒムラーも知らなんだ、『私だけの真の親衛隊』だ。」
部屋の主人が、前よりは気持ち軽やかに歩いて来た。
「ハイル・ヒトラー!」
「ハイル・ヒトラー!!」
「ハイル・ヒトラー!!!」
微笑みながら、片手を挙げて応える「前」第三帝国総統。
カリンも唱和したのち、総統の足元にぬかずく。
「マイン・フューラー…」
半ば涙声である。
ヒトラーも腰を落とした。
「娘よ、お前らしくもない。
ルフトヴァッフェの誰にも負けぬエースに…よくぞ育ってくれたぞ。」
「勿体ないお言葉…。」
…一連の流れを、何とも言えぬ表情で眺めていた久保。
その姿に気づくヒトラー。
「おお、参謀長、よくぞ参られた。」
「お初にお目にかかります。閣下。
日本海軍少将、久保拓也であります。」
敬礼。
カリン共々、少年少女達は、誰が言い出すともなく部屋を出て行く。
「2人とも遠慮なく、座ってくれたまえ。」
3人だけとなった部屋で、ヒトラーはそう言った。
「お言葉に甘えて…。」
ソファに腰掛ける久保と中村。
因みに久保は、尉官時代1年ほどの技術研修目的で、ドイツ駐在歴がある。
中村の補佐を要所で受ければ、一定の会話が出来る。(勿論カリンとの逢瀬の度のアレもある)
「実は最近、あの輝かしいパールハーバーの勝利に始まる、貴官の戦略戦術を私なりに研究しておってな…。」
「は、それは、恐れ多いことで。」
「興味深い共通点を、私なりに見出してな…。」
「は、是非ともお聞かせ願いたく。」
「一見、提督山本と源田殿と君は、かねてから唱えていた、『空母からの航空攻撃主体。』
の有効性を実戦をもって世界に知らしめたかのように見える。マレー沖海戦と合わせてな。
だが…その実アメリカにとって深傷であったのは、戦艦群による艦砲射撃による真珠湾基地機能破壊であった。
先回のハワイ沖海戦も、新時代の空母機動部隊による決戦…と見せて、航空機はあくまで敵の巡洋艦以下の補助戦力の漸減。
そして水雷戦隊の柔軟な活用。
本命は王道を往く…戦艦同士の艦隊決戦で大勢を決する。
日本海軍の諸公…と言うより君は、自らが唱えるドクトリンに拘泥することなく、臨機応変に戦術を使い分けている。
いわば見事なオーダーミックス。
私の敬愛するナポレオン1世のようだ。」
「はっ、いや、本当に恐縮であります。」
他に何か言いたげだな。
「同時に…君は忖度した…。
この国の海軍に隠然と存在する守旧派…。
平たく言えば…。
大艦巨砲主義による、かつてバルチック艦隊を葬った艦隊決戦のシナリオ。
彼らにとっての理想を、あえて具現化して見せた。
違うかね?。」
「御意…閣下のご慧眼には…。」
「ふふ、この辺に関しては戦略というより。もはや政略であるな…。
果たして貴官に野心があるとして、それは軍人の枠にとどまるものであるのかな?」
…………!!
確かに並みの人物ではない事は百も承知のつもりであったが。
先に主導権を握られた。
ここから俺の望む方向に、どう軌道修正していくか…。
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