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手詰まり?

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Bー29被撃墜43機
同じく海軍F6Fも82機
新鋭F4Uも75機未帰還。
しかも母艦や基地に帰還した機体も過半数が爾後使用不能なレベルで損傷。
一連の報告を受けたフレッチャーは愕然とした。
しかも万全の自信を持って送り出したF4Uコルセアをすら寄せ付けない敵新鋭機だと!?
「こちらのガンカメラに収まっているのがあったら…とにかく情報が欲しい。」
それだけ声を絞り出すのが精一杯であった。
甲板の眼下では、また修理不能とされたヘルキャットが海洋投棄されていた。

空母エンタープライズ上では、ヘリントンが甲板上で腕組みをしていた。
目の前で、味方F6Fの若手が機を壊しつつも滑り込み、軽傷で助け出されるのを見て胸を撫で下ろす…。
(とにかくなんでもよいから皆、1人でも多く生きて帰って来い。)
赤みがかった空を見上げる。
生き延びさえすれば、より経験を積み、腕を上げてベテランの域に近づけるのだ。
兄弟同然のヴァンが、レキシントンⅡの方に戻っていないとの話も伝わって来たが…。いまは部下の無事を祈るほかない。
最悪墜とされても脱出してくれれば…。

それにしても…ジャップ、いや日本人達を侮っていた。
上は大統領から下は前線の俺達まで。
奴らはチェスの達人の様に、こちらが万全を期して打つ手をことごとく先読みしてくる。
戦略と言い、兵器開発と言い…。
多分国や軍の首脳クラスではあるまい。おそらくは特定の集団か、あるいは個人か…。

いや、俺レベルが考える事ではないな…。

日本 呉軍港 戦艦大和 長官室。
「なんとか、基地施設被害は3割程度で収まりましたか…。」
報告書に目を通し、大きく息をつく久保。
「当方の被撃墜は54型のみ17機。そのうち生還できたパイロットは10人か…まぁ一方的勝利と言って差し支え無かろう。」
小沢GF長官の言葉に、御意。とのみ答え頷く久保。
戦死した7人は…いつもどんな勝ち戦でも、いっときはそういう方向に考えを巡らせてしまう。
無論、次の作戦もその次も、パイロットや各戦線の兵士達を駒と割り切って動かす。
それに徹する覚悟は出来ているのだが。
いつか自分自身が「比較的少なく済んだ犠牲」の中に入る可能性はある。
その程度の覚悟は既に出来ている。
「ところでだ。
内地に下がった…訓練や教育に勤しむ多くの艦攻、艦爆乗りからは、俺達の出番はまだかと不満噴出のようだが…。参謀長どのには副案が?」
小沢長官の言葉に、珈琲を一口すすり、久保が答える。
「はっ、その件でありますが…。
まだ、艦爆の急降下爆撃はまだ良いとして、敵艦に肉薄しての艦攻の雷撃は今後犠牲ばかりが増えるという展開が容易に予想できます。
敵戦闘機の緻密な防空網を突破したとしても、さらに強化されていくであろう米艦隊の対空砲火の槍ぶすまの中では…。
故に、開発中の十六試艦攻に大幅に手を加えまして…。」
ほう、と小沢が身を乗り出す。
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