新訳 零戦戦記 選ばれしセカイ

俊也

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集結、そして…

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1943年(昭和18年)4月2日
ウルシー泊地。
大日本帝国連合艦隊。
その名だたる主力艦がほぼ揃いつつあった…。

そして、精鋭戦闘機隊台南空を中心とする艦載航空機も。
例によって戦線縮小で余裕が出来、ベテランが交代で内地に引き上げ休養しつつ、若手を指導するという流れを経ての事である。
その若手も、機体、燃料事情等の条件が思ったより良く、ベテランの先輩たちに徹底的に「愛情あふれるご指導」を賜る機会に恵まれた。
実践経験は無いとは言え、もはやジャクとは呼べない水準…。
そして、なんとか全機動部隊に、金星62型エンジン搭載の零戦54型が行き渡ったのも大きい。

新鋭装甲空母、葛城。
「うむ、すこし危なっかしいが、みな着艦をこなせる腕には仕上がっているようだ。」
一機一機に敬礼をしつつ、第一機動艦隊司令長官、山口多門は呟く。
「御意。あとは士気ですな。」
航空参謀長久保拓也少将はそう返す。
戦闘機隊総隊長笹井醇一中佐と、副隊長カーテローゼ・伊集院・ホルテンブルグ少佐も、ここ葛城に降り立っていた。
「ほう、さすがに大きい(総排水量4万8千トン)な。しかも500キロ爆弾の直撃にも耐える甲板か。」
「凄いですね。搭載機数も90機強…。」
(残念ながら、今更だけど空母機動部隊に関してはドイツは遠くおよばないわね…。)
内心の声をカリンは押し殺す。

もう「あの」マインフューラーが率いる、私にとっての祖国ドイツは存在しないのだ…。
今は気持ちを切り替え、次の新生アメリカ機動部隊との決戦に全力を挙げるのみ。

そしてその夜。
パイロットの小隊長クラス以上を集めた作戦訓示が行われた。
山口多聞と、久保拓也が壇上に立つ。
最前列には笹井とカリンが座り、共に鋭い目線。
山口が、口を開いた。
「ここまで大兵力を集結させたからには、諸君も連合艦隊が大規模作戦に出るであろうと言う事は、推察しておると思う。
そう。我々はこの稼働全艦をもって一転攻勢に出る。」
攻勢…?
誰かが漏らした疑問の声に、山口は頷く。
「そうだ。我々は…当初検討されていたマリアナ沖決戦案を捨て、敵の中枢にむけ侵攻し、アメリカ機動部隊に決戦を挑む!
目標は…。」
久保航空参謀長が後を引き取る。
指揮棒を伸ばし、壁面の地図の一点を指す!
…!!??
「我が連合艦隊の目標は…。
ハワイ!!
ここならば米軍も陸海空の総力を結集させざるを得ない!
それを我々は一気に殲滅する!!」
どよめく一同。
しかし戸惑いというよりは、やってやろうではないかという士気の高揚に繋がっていくのが見て取れた。
「無論、詳細は今後詰めていく。
山口司令。お願いします!」

「私からは一つのみ。
見敵必殺!!
あらゆる敵を果敢に叩けッッ!!
必ず!戦果を挙げるッッ!!」

「「はいッッ!!」」

連合艦隊旗艦大和。
こちらからも、艦隊共用無線で全員に目標を伝えている。
「まずはやはり、山口君の機動部隊が頼りだ。
最終的には久保君の頭脳、作戦であるな…。
頼むぞ。」
小沢連合艦隊司令長官は自室の窓から葛城の方を見やり、ひとりごちる。


…一方、その葛城の久保の私室では。
「本当に良かった…。フューラーが日本に無事に…。」
「ああ、だけどカリン。本来は超機密だからな。」
「わかってる…嗚呼…。」
言葉を交わしつつ、互いに抱き合い激しく求め合う。
カリンの身体の線が、鍛えられつつもより母性的になった。
その点を指摘すると、
「誰のせいなんだか。」
と返されたが。








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