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任務完徹

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「何っ!?日本大型機であると!?」
ホワイトハウスにて、ルーズベルト大統領は身を乗り出す。
「はい、目下我が陸軍航空隊が全力で迎撃しておりますが、なにぶん内陸部には旧式機中心で…。
しかもPー38パイロット達の証言によれば、その日本機は…。」
スティムソン陸軍長官の報告に、ルーズベルトは言葉を失った。

六発エンジンの超重爆撃機…だと!?

ようやく生産ラインに乗った我がBー29をも上回る…。
しかし、どこを狙っている?

「予想進路から言いますと…。」
なんだと…。
「総力を挙げて阻止せよ!!」
「御意!!」

アメリカ本土進入1時間半経過。
「またペロハチです!しかも100機はいる!」
「ちいっ!目標接近で高度速度下げたらこれだ!」
「ど、どうします。」
「とにかく撃つんだよ!ブチ墜とせ!」
何があろうがロスアラモスに辿り着かなければ。
あと…。15、いや、20分か。
狂ったように各機の20ミリが火を吹き、少なからぬ敵を墜とすが、多勢に無勢に過ぎる。
そして被弾の衝撃。
やばい。
いかな重装甲の富嶽でも、尾翼やエルロン、プロペラを喰われては…。
野中は唇を噛む。
「…使うぞ。」
数瞬の間を置いて、搭乗員達が頷く。
「野郎ども!かますぞ!改三号噴進爆弾放出!」
「合点承知!」
富嶽各機の後方下のハッチが空き、6本束ねられたロケット発射台が現れ、次の瞬間射出される。

それらはPー38の群れの中に突入した瞬間、爆発した。
合計24発の盛大で凶悪な花火。
ただ爆発しただけでなく、それぞれが無数の焼夷性のある弾子をばら撒いたのである!
次々と火に包まれ、傾き墜ちていくPー38。
難を逃れた機も明らかに算を乱す。

うおっしゃああああああああ!!!
「よし!全機一旦フルスロットル!緩降下で振り切りそのまま目標へ突入!!」

そして…山脈の合間に見えて来た一大施設。
あそこだ。
「投下準備!!」

ロスアラモス サイトY
「空襲だと!?」
「日本がか!?どこから何をどうやって!?」
「分からんがとにかく避難だ!」
スタッフ、学者達は右往左往する、が、巨額の資金を投じた施設ではあるが、そもそも敵国の空襲など想定はしていない。
そして全員が迅速に避難する為の車両も…。

それでも貴重な頭脳たる科学者達を優先的に、トラックや個人所有の車に乗せた瞬間、爆発音が響いた。
そしてそれは立て続けに…。
富嶽4機合計40発の500キロ爆弾が、米国先端科学の粋が集まりし施設を破壊…。
のみならず、この規模の爆発だけでは不自然な猛火の嵐を周辺に拡げる。
原始的ではあるが、爆弾内にガソリン100ℓを収める層を作ってある代物であった。
爆風とあいまり、小規模な火災旋風となったそれは、地上のあらゆる生命を巻き込んでいった。

地獄の業火…だが、彼らが日本にもたらそうとしていたものよりは、これでもささやかな部類だ。

「帰るぞ」
野中の言葉に、皆が頷いた。









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