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裏切りと遁走と
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1942年12月30日
ドイツ、ベルリン総統官邸。
いまやユーラシア大陸の過半を版図に加えた大帝国のあるじは目を覚ます。
ふふ…。
最早、宿敵ソ連もほぼドイツ第三帝国の版図…。
アメリカが参戦した時は肝を冷やしたが、盟邦日本が存外に頑張ってくれている。
いずれ各種新兵器が完成すれば、ソ連は勿論英米も屈服する。
その時こそ、真の、神聖第三帝国の完成となろう。
それはそれと…。
朝食を摂らねばな。
主治医のモレルが数ヶ月前、突然心臓発作で倒れて以来、妙に体調が良い。
(親衛隊のシェンク軍医大佐が現在の主治医)
それ故の空腹なのだが…。
呼び鈴を鳴らす。
人が近づく雰囲気。
だが変だ。
!!!
従軍経験者には判る。
これは…。
ばあん、とドアが開かれ、黒服のSS隊員達が雪崩れ込んで来た。
20数名全員が小銃を構える。
「何だ貴様達は!
私をドイツ総統アドルフ・ヒトラーと知ってのことか!?」
「お前はもう総統などではない。
ただの貧相な小男だ。
理想的アーリア人たる私には程遠い。」
大股で入ってきたのは、「金髪の野獣」
親衛隊最高幹部、ラインハルト・ハイドリヒであった。
「貴様ハイドリヒ…のぼせ上がるのも大概に…。」
「それはこちらのセリフだ伍長殿。
そもそもお前のような醜悪な生き物がNSの人種政策を語るなど笑止千万!
私こそが真のフューラーとしてゲルマン民族を導くべきであるのだ。」
「…貴様なぞには務まらんよ。」
「フン。吠えてろ。
おい、連れていけ。」
両脇から屈強な隊員が抑えようとした時。
その2人の首があらぬ方向に折れ、どさりと崩れ落ちる。
!!!???
なにが起きた。
「総統、保険をかけておいて正解でしたな。」
「うむ!」
「お前…オットー・スコルツェニー!」
特殊作戦のスペシャリストは、ハイドリヒ達の前に立ちはだかる。
「クソッ、もろともに撃ち殺せ!」
次の瞬間、次々と薙ぎ倒されていく。
両手に凶銃ルガーをもち、米国の西部劇の如く「親衛隊」の制服を着た年端も行かぬ少女に、ハイドリヒの部下達が。
なんだコイツらは!?
思考が追いつかぬうちに、ヒトラーと例の2人は執務机後方の隠し扉から逃れる。
ハイドリヒの部下がこじ開けようとするが、重火器無しでは無理であった。」
「クッ、増援を呼べ!
そして、ゲシュタポも増派してベルリンに緊急配備!」
美大落ちめ、どこへ逃げようと無駄だ。
必ず捕らえて殺す。あるいはどこぞの収容所に。
既にハイドリヒはヒムラーも支配下に置いていた。
「総統、こちらです。」
「うむ…。」
地下避難路の出口…。
そこは陸軍戦車の訓練場であった。
目の前には、見慣れぬシルエットの戦車。
「お待ちしておりました。マイン・フューラー。」
ミハエル・ヴィットマン武装SS中尉。
東部戦線の戦車エースは、この度配備が始まった新鋭5号戦車パンター。
「手狭にはなりますが、キール軍港までお送り致します!」
「ご苦労、叙勲以来だな!」
「覚えていて頂き光栄の極み!」
パンターの周囲は4号戦車後期型4両や補給車両が固める。
当然検問はあったが、これ自体が強力な戦闘単位となっており、
「新鋭戦車の運用訓練である!」
とヴィットマンに言い張られては、親衛隊員達も強引な検査は出来なかった。
そして、20時間後、キール軍港。
「ご案内致します。マインフューラー。」
なんと海軍総司令官エーリヒ・レーダー提督自らの応対であった。
新鋭潜水艦 Uー810。
可潜深度、可潜時間、航続力、排水量。
いずれも世界最高レベルの新鋭潜水艦であった。
「貴官がハイドリヒの意に逆らうとはな。」
握手を交わしつつ、ヒトラーはそう言った。
「はは…彼奴の女性問題について過去に色々とありましてな。
その有難い新総統殿には、当面面従腹背で参ります。」
「恩に着る。」
スコルツェニーに促され、ヒトラーは桟橋を歩く。
中途でふっと振り返る。
「イーダ、君は遠く家族から離れても良いのか?」
先刻の二丁拳銃の少女は栗色の髪を靡かせ微笑む。
「私は終生、フューラーにお供致します。」
「おお、わが娘よ。」
ヒトラーは少女を抱きしめる。
かくてUー810はキールを出港。
目指すは、友邦日本であった。
ドイツ、ベルリン総統官邸。
いまやユーラシア大陸の過半を版図に加えた大帝国のあるじは目を覚ます。
ふふ…。
最早、宿敵ソ連もほぼドイツ第三帝国の版図…。
アメリカが参戦した時は肝を冷やしたが、盟邦日本が存外に頑張ってくれている。
いずれ各種新兵器が完成すれば、ソ連は勿論英米も屈服する。
その時こそ、真の、神聖第三帝国の完成となろう。
それはそれと…。
朝食を摂らねばな。
主治医のモレルが数ヶ月前、突然心臓発作で倒れて以来、妙に体調が良い。
(親衛隊のシェンク軍医大佐が現在の主治医)
それ故の空腹なのだが…。
呼び鈴を鳴らす。
人が近づく雰囲気。
だが変だ。
!!!
従軍経験者には判る。
これは…。
ばあん、とドアが開かれ、黒服のSS隊員達が雪崩れ込んで来た。
20数名全員が小銃を構える。
「何だ貴様達は!
私をドイツ総統アドルフ・ヒトラーと知ってのことか!?」
「お前はもう総統などではない。
ただの貧相な小男だ。
理想的アーリア人たる私には程遠い。」
大股で入ってきたのは、「金髪の野獣」
親衛隊最高幹部、ラインハルト・ハイドリヒであった。
「貴様ハイドリヒ…のぼせ上がるのも大概に…。」
「それはこちらのセリフだ伍長殿。
そもそもお前のような醜悪な生き物がNSの人種政策を語るなど笑止千万!
私こそが真のフューラーとしてゲルマン民族を導くべきであるのだ。」
「…貴様なぞには務まらんよ。」
「フン。吠えてろ。
おい、連れていけ。」
両脇から屈強な隊員が抑えようとした時。
その2人の首があらぬ方向に折れ、どさりと崩れ落ちる。
!!!???
なにが起きた。
「総統、保険をかけておいて正解でしたな。」
「うむ!」
「お前…オットー・スコルツェニー!」
特殊作戦のスペシャリストは、ハイドリヒ達の前に立ちはだかる。
「クソッ、もろともに撃ち殺せ!」
次の瞬間、次々と薙ぎ倒されていく。
両手に凶銃ルガーをもち、米国の西部劇の如く「親衛隊」の制服を着た年端も行かぬ少女に、ハイドリヒの部下達が。
なんだコイツらは!?
思考が追いつかぬうちに、ヒトラーと例の2人は執務机後方の隠し扉から逃れる。
ハイドリヒの部下がこじ開けようとするが、重火器無しでは無理であった。」
「クッ、増援を呼べ!
そして、ゲシュタポも増派してベルリンに緊急配備!」
美大落ちめ、どこへ逃げようと無駄だ。
必ず捕らえて殺す。あるいはどこぞの収容所に。
既にハイドリヒはヒムラーも支配下に置いていた。
「総統、こちらです。」
「うむ…。」
地下避難路の出口…。
そこは陸軍戦車の訓練場であった。
目の前には、見慣れぬシルエットの戦車。
「お待ちしておりました。マイン・フューラー。」
ミハエル・ヴィットマン武装SS中尉。
東部戦線の戦車エースは、この度配備が始まった新鋭5号戦車パンター。
「手狭にはなりますが、キール軍港までお送り致します!」
「ご苦労、叙勲以来だな!」
「覚えていて頂き光栄の極み!」
パンターの周囲は4号戦車後期型4両や補給車両が固める。
当然検問はあったが、これ自体が強力な戦闘単位となっており、
「新鋭戦車の運用訓練である!」
とヴィットマンに言い張られては、親衛隊員達も強引な検査は出来なかった。
そして、20時間後、キール軍港。
「ご案内致します。マインフューラー。」
なんと海軍総司令官エーリヒ・レーダー提督自らの応対であった。
新鋭潜水艦 Uー810。
可潜深度、可潜時間、航続力、排水量。
いずれも世界最高レベルの新鋭潜水艦であった。
「貴官がハイドリヒの意に逆らうとはな。」
握手を交わしつつ、ヒトラーはそう言った。
「はは…彼奴の女性問題について過去に色々とありましてな。
その有難い新総統殿には、当面面従腹背で参ります。」
「恩に着る。」
スコルツェニーに促され、ヒトラーは桟橋を歩く。
中途でふっと振り返る。
「イーダ、君は遠く家族から離れても良いのか?」
先刻の二丁拳銃の少女は栗色の髪を靡かせ微笑む。
「私は終生、フューラーにお供致します。」
「おお、わが娘よ。」
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