上 下
44 / 166

総反攻企図

しおりを挟む
同時期、ワシントンD.C. ホワイトハウス
「ふむ…やはりパイロット、艦船クルーの育成がネックだな。」
各資料に目を通したルーズベルトが呟く。
「御意…申し上げにくき事ながら、序盤の損耗がやはりまだ響いております。」
進捗報告に訪れたニミッツ提督が、軽く額の汗を拭いつつ、大統領に答える。
「お後、錬成途上のまま送り出した、サウスダコタ級戦艦を沈められたのも響いておりますな…。
幸い年明けには、機動部隊随伴型の次世代戦艦アイオワ級が一気に4隻就役致します。
慣熟訓練を考えましても、やはり、本格反攻は来春がよいかと…。」
ううむとルーズベルトは、腕組みをする。
「チャーチルがそれで納得するかどうか。
まぁ、陸海空の支援を上乗せしつつ宥めるしかあるまい…。
それで、最初の反攻地点はどこになるかね?」
「はっ、それも軍部全体で様々な意見がありますが…。」
キング海軍作戦部長の後を引き取り、スティムソン陸軍長官が発言する。
「まず第一には手堅くガダルカナル方面からニューギニアと他の島嶼を奪回していき、マリアナ、フィリピンと兵を進める。

ただ、幸い、例の大型新型爆撃機が、すでに予定より早く初飛行を成功させ、機体、エンジンの問題もクリアしております。
マリアナ諸島を奪いさえすれば、そこを発進基地として日本本土のほぼ全域が爆撃可能圏内にはいります。」
「では、決まりではないか。」
ルーズベルトは手を叩く。
「御意、ただ一部高級軍人は、それならばフィリピンを一気呵成にと主張して止まないですが…」
「…1人しか思い浮かばんな。」
コーンパイプがトレードマークの、現在オーストラリアはプリズベンで燻っている男…。
一同は苦笑する。
「いずれにせよ、日本の現在の戦線、勢力圏拡大は、とうに伸びきったゴム同然。
とても懐に突き込まれた楔を壊すことなど出来ませぬ。」
「うむ。それからは瓦解する一方であろうな。
あとは問題はナチスか…。」
「はっ、ソ連は既に国土の60%強を奪われ、油田はおろか穀倉地帯の過半を失って、地域によっては飢餓も発生しておると…。」
「当然将兵の士気にも関わるな。
今首都はスコボロディノか。ハル、スターリンはなんと?」
「それがここ数週間は、援助援軍のさらなる督促…すらありませぬ。」
「ううむ。」
「いかな我々の援助が遅れた、とは言え明らかに彼らの限界を超えた、不可解なナチスの快進撃ぶりですが…。
ことここに至ると日本の次の相当なる強敵として今から手を打っておきませんと。」
「もちろん承知している。
各位も情報、要請あらば直ぐにこちらに上げて来て欲しい。」
「「御意!!」」

皆の退出後、ルーズベルトは専用電話に手をかける。
「私だ。グローブス准将に…。

…そうだ、うむ。必要とあらば予算はいかようにでも配分する。
計画を半年、いや一年以上前倒しして欲しい。」


一方、こちらはウルシー泊地、戦艦大和、久保拓也大佐の私室である。
ノックに応じて、頼んで設置してもらったドアの鍵を開ける。
開くとその場には…ドイツ空軍制服を見にまとった女性…というより少女。
「おら、内地帰還前に来てやったぞ、感謝は?」
カリンは言葉とは裏腹に、後ろ手にドアを閉め、鍵を閉める。
「ありがとう、カリン…」
久保が言い終わらない内にカリンは抱きついてくる。
一通り唇を交わした後、久保はあることを思い出す。
「ドイツから君宛てに、贈り物だ。
ヒトラー総統自ら手配した、撃墜150機超えを記念しての、柏葉ダイヤモンド騎士鉄十字賞だ。」
(先日の二式大艇の積み荷に入っていたのである)
「マインフューラーから?嬉しい!」
その場で即席の授与式?
勲章をカリンの軍服の胸に着ける。

ん?

久保はそのまま、手の平を恋人の胸に押し当てる。
「ちょ、何してんの!?」
「あ、いや、すこし、うん、膨らんだかと」
「…最近、軍服がきつい。」
なんやかや言って、カリンの頬は赤く上気していた。
それが導火線になり、久保は彼らしからぬ乱暴さで、カリンをベッドに押し倒した。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)

俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。 だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。 また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。 姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」 共々宜しくお願い致しますm(_ _)m

re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ

俊也
ライト文芸
実際の歴史では日本本土空襲・原爆投下・沖縄戦・特攻隊などと様々な悲劇と犠牲者を生んだ太平洋戦争(大東亜戦争) しかし、タイムスリップとかチート新兵器とか、そういう要素なしでもう少しその悲劇を防ぐか薄めるかして、尚且つある程度自主的に戦後の日本が変わっていく道はないか…アメリカ等連合国に対し「勝ちすぎず、程よく負けて和平する」ルートはあったのでは? そういう思いで書きました。 歴史時代小説大賞に参戦。 ご支援ありがとうございましたm(_ _)m また同時に「新訳 零戦戦記」も参戦しております。 こちらも宜しければお願い致します。 他の作品も お手隙の時にお気に入り登録、時々の閲覧いただければ幸いです。m(_ _)m

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

蒼海の碧血録

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。  そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。  熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。  戦艦大和。  日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。  だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。  ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。 (本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。) ※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。

第二艦隊転進ス       進路目標ハ未来

みにみ
歴史・時代
太平洋戦争末期 世界最大の46㎝という巨砲を 搭載する戦艦  大和を旗艦とする大日本帝国海軍第二艦隊 戦艦、榛名、伊勢、日向 空母天城、葛城、重巡利根、青葉、軽巡矢矧 駆逐艦涼月、冬月、花月、雪風、響、磯風、浜風、初霜、霞、朝霜、響は 日向灘沖を航行していた そこで米潜水艦の魚雷攻撃を受け 大和や葛城が被雷 伊藤長官はGFに無断で 作戦の中止を命令し、反転佐世保へと向かう 途中、米軍の新型兵器らしき爆弾を葛城が被弾したりなどもするが 無事に佐世保に到着 しかし、そこにあったのは……… ぜひ、伊藤長官率いる第一遊撃艦隊の進む道をご覧ください ところどころ戦術おかしいと思いますがご勘弁 どうか感想ください…心が折れそう どんな感想でも114514!!! 批判でも結構だぜ!見られてるって確信できるだけで モチベーション上がるから! 自作品 ソラノカケラ⦅Shattered Skies⦆と同じ世界線です

江戸時代改装計画 

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。 「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」  頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。  ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。  (何故だ、どうしてこうなった……!!)  自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。  トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。  ・アメリカ合衆国は満州国を承認  ・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲  ・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認  ・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い  ・アメリカ合衆国の軍備縮小  ・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃  ・アメリカ合衆国の移民法の撤廃  ・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと  確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

処理中です...