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総反攻企図
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同時期、ワシントンD.C. ホワイトハウス
「ふむ…やはりパイロット、艦船クルーの育成がネックだな。」
各資料に目を通したルーズベルトが呟く。
「御意…申し上げにくき事ながら、序盤の損耗がやはりまだ響いております。」
進捗報告に訪れたニミッツ提督が、軽く額の汗を拭いつつ、大統領に答える。
「お後、錬成途上のまま送り出した、サウスダコタ級戦艦を沈められたのも響いておりますな…。
幸い年明けには、機動部隊随伴型の次世代戦艦アイオワ級が一気に4隻就役致します。
慣熟訓練を考えましても、やはり、本格反攻は来春がよいかと…。」
ううむとルーズベルトは、腕組みをする。
「チャーチルがそれで納得するかどうか。
まぁ、陸海空の支援を上乗せしつつ宥めるしかあるまい…。
それで、最初の反攻地点はどこになるかね?」
「はっ、それも軍部全体で様々な意見がありますが…。」
キング海軍作戦部長の後を引き取り、スティムソン陸軍長官が発言する。
「まず第一には手堅くガダルカナル方面からニューギニアと他の島嶼を奪回していき、マリアナ、フィリピンと兵を進める。
ただ、幸い、例の大型新型爆撃機が、すでに予定より早く初飛行を成功させ、機体、エンジンの問題もクリアしております。
マリアナ諸島を奪いさえすれば、そこを発進基地として日本本土のほぼ全域が爆撃可能圏内にはいります。」
「では、決まりではないか。」
ルーズベルトは手を叩く。
「御意、ただ一部高級軍人は、それならばフィリピンを一気呵成にと主張して止まないですが…」
「…1人しか思い浮かばんな。」
コーンパイプがトレードマークの、現在オーストラリアはプリズベンで燻っている男…。
一同は苦笑する。
「いずれにせよ、日本の現在の戦線、勢力圏拡大は、とうに伸びきったゴム同然。
とても懐に突き込まれた楔を壊すことなど出来ませぬ。」
「うむ。それからは瓦解する一方であろうな。
あとは問題はナチスか…。」
「はっ、ソ連は既に国土の60%強を奪われ、油田はおろか穀倉地帯の過半を失って、地域によっては飢餓も発生しておると…。」
「当然将兵の士気にも関わるな。
今首都はスコボロディノか。ハル、スターリンはなんと?」
「それがここ数週間は、援助援軍のさらなる督促…すらありませぬ。」
「ううむ。」
「いかな我々の援助が遅れた、とは言え明らかに彼らの限界を超えた、不可解なナチスの快進撃ぶりですが…。
ことここに至ると日本の次の相当なる強敵として今から手を打っておきませんと。」
「もちろん承知している。
各位も情報、要請あらば直ぐにこちらに上げて来て欲しい。」
「「御意!!」」
皆の退出後、ルーズベルトは専用電話に手をかける。
「私だ。グローブス准将に…。
…そうだ、うむ。必要とあらば予算はいかようにでも配分する。
計画を半年、いや一年以上前倒しして欲しい。」
一方、こちらはウルシー泊地、戦艦大和、久保拓也大佐の私室である。
ノックに応じて、頼んで設置してもらったドアの鍵を開ける。
開くとその場には…ドイツ空軍制服を見にまとった女性…というより少女。
「おら、内地帰還前に来てやったぞ、感謝は?」
カリンは言葉とは裏腹に、後ろ手にドアを閉め、鍵を閉める。
「ありがとう、カリン…」
久保が言い終わらない内にカリンは抱きついてくる。
一通り唇を交わした後、久保はあることを思い出す。
「ドイツから君宛てに、贈り物だ。
ヒトラー総統自ら手配した、撃墜150機超えを記念しての、柏葉ダイヤモンド騎士鉄十字賞だ。」
(先日の二式大艇の積み荷に入っていたのである)
「マインフューラーから?嬉しい!」
その場で即席の授与式?
勲章をカリンの軍服の胸に着ける。
ん?
久保はそのまま、手の平を恋人の胸に押し当てる。
「ちょ、何してんの!?」
「あ、いや、すこし、うん、膨らんだかと」
「…最近、軍服がきつい。」
なんやかや言って、カリンの頬は赤く上気していた。
それが導火線になり、久保は彼らしからぬ乱暴さで、カリンをベッドに押し倒した。
「ふむ…やはりパイロット、艦船クルーの育成がネックだな。」
各資料に目を通したルーズベルトが呟く。
「御意…申し上げにくき事ながら、序盤の損耗がやはりまだ響いております。」
進捗報告に訪れたニミッツ提督が、軽く額の汗を拭いつつ、大統領に答える。
「お後、錬成途上のまま送り出した、サウスダコタ級戦艦を沈められたのも響いておりますな…。
幸い年明けには、機動部隊随伴型の次世代戦艦アイオワ級が一気に4隻就役致します。
慣熟訓練を考えましても、やはり、本格反攻は来春がよいかと…。」
ううむとルーズベルトは、腕組みをする。
「チャーチルがそれで納得するかどうか。
まぁ、陸海空の支援を上乗せしつつ宥めるしかあるまい…。
それで、最初の反攻地点はどこになるかね?」
「はっ、それも軍部全体で様々な意見がありますが…。」
キング海軍作戦部長の後を引き取り、スティムソン陸軍長官が発言する。
「まず第一には手堅くガダルカナル方面からニューギニアと他の島嶼を奪回していき、マリアナ、フィリピンと兵を進める。
ただ、幸い、例の大型新型爆撃機が、すでに予定より早く初飛行を成功させ、機体、エンジンの問題もクリアしております。
マリアナ諸島を奪いさえすれば、そこを発進基地として日本本土のほぼ全域が爆撃可能圏内にはいります。」
「では、決まりではないか。」
ルーズベルトは手を叩く。
「御意、ただ一部高級軍人は、それならばフィリピンを一気呵成にと主張して止まないですが…」
「…1人しか思い浮かばんな。」
コーンパイプがトレードマークの、現在オーストラリアはプリズベンで燻っている男…。
一同は苦笑する。
「いずれにせよ、日本の現在の戦線、勢力圏拡大は、とうに伸びきったゴム同然。
とても懐に突き込まれた楔を壊すことなど出来ませぬ。」
「うむ。それからは瓦解する一方であろうな。
あとは問題はナチスか…。」
「はっ、ソ連は既に国土の60%強を奪われ、油田はおろか穀倉地帯の過半を失って、地域によっては飢餓も発生しておると…。」
「当然将兵の士気にも関わるな。
今首都はスコボロディノか。ハル、スターリンはなんと?」
「それがここ数週間は、援助援軍のさらなる督促…すらありませぬ。」
「ううむ。」
「いかな我々の援助が遅れた、とは言え明らかに彼らの限界を超えた、不可解なナチスの快進撃ぶりですが…。
ことここに至ると日本の次の相当なる強敵として今から手を打っておきませんと。」
「もちろん承知している。
各位も情報、要請あらば直ぐにこちらに上げて来て欲しい。」
「「御意!!」」
皆の退出後、ルーズベルトは専用電話に手をかける。
「私だ。グローブス准将に…。
…そうだ、うむ。必要とあらば予算はいかようにでも配分する。
計画を半年、いや一年以上前倒しして欲しい。」
一方、こちらはウルシー泊地、戦艦大和、久保拓也大佐の私室である。
ノックに応じて、頼んで設置してもらったドアの鍵を開ける。
開くとその場には…ドイツ空軍制服を見にまとった女性…というより少女。
「おら、内地帰還前に来てやったぞ、感謝は?」
カリンは言葉とは裏腹に、後ろ手にドアを閉め、鍵を閉める。
「ありがとう、カリン…」
久保が言い終わらない内にカリンは抱きついてくる。
一通り唇を交わした後、久保はあることを思い出す。
「ドイツから君宛てに、贈り物だ。
ヒトラー総統自ら手配した、撃墜150機超えを記念しての、柏葉ダイヤモンド騎士鉄十字賞だ。」
(先日の二式大艇の積み荷に入っていたのである)
「マインフューラーから?嬉しい!」
その場で即席の授与式?
勲章をカリンの軍服の胸に着ける。
ん?
久保はそのまま、手の平を恋人の胸に押し当てる。
「ちょ、何してんの!?」
「あ、いや、すこし、うん、膨らんだかと」
「…最近、軍服がきつい。」
なんやかや言って、カリンの頬は赤く上気していた。
それが導火線になり、久保は彼らしからぬ乱暴さで、カリンをベッドに押し倒した。
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